映画のなかの人生…Vol.791「I'm Not There.」★★☆
発行日時: 2008/5/3┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1960年代のアメリカ。ギター片手にフォークソングを歌う少年や、
ロックミュージックへの転向、社会から隠遁生活を送る謎の男、
映画俳優など、シンガーソングライターたちが社会のレッテルや、
ファンの期待に戸惑いながらも、生きていく様子をそれぞれに描く。
┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃2┃ 上映館ミシュラン (観ていないあなたへ)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
有楽町、渋谷シネマライズでの2館上映です。
そんなに混んでいないので、お好きな時間にどうぞ。
▼有楽町 シネカノン有楽町2丁目
10:00/12:45/15:30/18:20〜20:45(終)
※ 5/9(金)まではレイトショーあり21:05〜23:20(終)
▼渋谷 シネマライズ
11:25/14:15/17:05/19:55〜22:25(終)
┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃3┃ Review (観おわったあなたへ)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【ポイント】★★☆
<内訳>
テーマ :★★★
ストーリー :★
キャスト :★★★★
スタッフ :★★★★
>テーマ ★★★<
1人のアーティストを、どのようなカタチで語ればいいのか、
映画的な課題に挑戦していく実験作としては、非常に面白い。
>ストーリー ★<
6人の男たちのエピソードが、細切れに並行していくのだが、
それぞれは物語らしくもなく、ついていくのは非常につらい。
>キャスト ★★★★<
ケイト、ベイル、ヒースらの名優達がシンボルになっているので、
物語の切り分けができている。ケイトは難解な男の素振りを熱演。
>スタッフ ★★★★<
エピソードの羅列を廃して、人物の多彩な本質を描くために、
さまざまな実験を盛り込んだ挑戦は評価できる。疲れますが…。
>総評 ★★☆<
これはとても意欲的な実験映画です。
多くの人にはクエスチョンだろうし、
この映画を通じて、全く何も知らない人が、
ボブ・ディランを理解することは、期待しづらいでしょう。
しかし、これまで多くの伝記映画が、
本人のエピソードを、イタズラに羅列するだけで、
話題になるのは主演俳優の「モノマネ」だけだったり、
どうも、人物を描くという視点が薄くなりがちなところ、
この映画はその本質に深く切り込む点で、興味深い。
今は亡きヒース・レジャーらをスクリーンで観られたり、
ケイト・ブランシェットが難解な口ぶりを演じたりと、
ひとつひとつの場面には見どころも多く、面白いところも。
オススメはできませんが、変わった映画に興味があるなら。
┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃4┃ Column (観おわったあなたへ)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この絵は、何を言いたいのだろう。
この曲は、どんなメッセージがあるのだろう。
どんな作品を目の前にしても、
私はふと、立ち止まって考える。
そこには、何らかの作り手の意図があり、
何らかの目的や、考えがあるのではないかと。
しかし、本当に作り手は、
そこまでのことを考えているのだろうか。
この絵に、重苦しさが漂っているのは、
たまたま選んだ色彩の偶然ではないのか。
この曲に、メッセージを読み取れるのは、
たまたま選んだ言葉の偶然ではないのか。
芸術には、どこまで意図があり、
どこまで偶然が、関わっているのだろう?
もちろん、作り手にはそれなりに、
意図や想いがあるのかもしれない。
しかし、それはどこまで反映され、
そしてどこまで反映できるだろうか?
この映画に出てくる、6人の男たちは、
自分の曲や映画、作品に何を残しているか。
明確に意図があるのは、ギター片手に、
走り回っている少年だけである。
それ以外の男たちは、
どこかで自分に嫌気が差している。
自分というより、社会が求めている、
自分の姿に対して、嫌気が差している。
自分は音楽だけで、社会を変えるわけじゃない。
自分は時代を代表するために、
歌を作って、歌っているわけじゃない。
ボクは、特定の誰かのためだけに、
歌を歌っているワケじゃないんだ。
勝手に期待して、勝手に賞賛して、
勝手に喜ぶのも、けなすのも勝手だが、
ボクの人生は、君たちのものじゃない。
君たちが望んでいる、
ボブ・ディランはそこにいないんだ。
この映画には1人も、ディランは出てこない。
いるとすれば、I'm not there.と語るタイトルだけ。
それでも、評論家や批評家たちは、
芸術作品を観て、メッセージを探るだろう。
難解なパズルのなかに、作り手の意図を、
あぶり出したり、組み合わせたりするだろう。
この映画にも、ディランは1人も出てこない。
けれども、ディランの存在を探ろうとするだろう。
しかし、それは無駄だ。作品と作り手は違う。
芸術は意図だけではなく、偶然のたまものでもある。
だからこそ、芸術家は楽しい仕事であり、
作品から、ディランが誰かとは語れないのだ。
ディランは人間であり、作品ではないのだから。
2008/5/2 渋谷シネマライズにて。
┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃6┃ 次回予告 ほか
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
その他、筆者からのお知らせなどなど。
★次回予告「There Will Be Blood」…………………………………
ダニエル・デイ=ルイスのアカデミー賞主演男優賞受賞作。
オスカー関連作品も、これでほぼひと揃いでしょうか。監督は、
「マグノリア」以来の鬼才ポール・トーマス・アンダーソン。
この人の映画は長いイメージしかないんですが…まあ、いいや。
で、次回もお楽しみに。次回は祝日ですが、火曜の予定。
http://www.movies.co.jp/therewillbeblood/
★今後の予定など………………………………………………………
来週の残りは、フランスと北欧のビミョーな群像劇を2本。
前者は「愛する者よ、列車に乗れ」の脚本家によるもの。
後者はオフビートの王国、北欧の鬼才による作品との噂。
「モンテーニュ通りのカフェ」
http://www.montaignecafe-movie.jp/
「愛おしき隣人」http://kittoshiawase.jp/
その他、今月は以下のような予定。
やっぱりキム・ギドクの新作は気になるなあ。
他にも、サラ・ポーリーが監督業に進出とか、
篠原哲雄監督がまた田中麗奈を起用、とか。とか。
というわけで、これからもお楽しみに。
「ブレス」http://www.cinemart.co.jp/breath/
「ミスト」http://www.mistmovie.jp/
「チャーリーウィルソンズウォー」http://www.charlie-w.com/
「マンデラの名もなき看守」http://mandela.gyao.jp/
「アフタースクール」http://www.after-school.jp/
「パリ、恋人たちの2日間」http://www.paris-2days.com/
「アウェイフロムハー」http://www.kimiomo.com/
「山桜」http://yamazakura-movie.com/
このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます
- サッカー日本代表ネットワーク・メールマガジン
- 日本代表やJリーグを中心とした国内外のサッカー情報を 毎日お届けします。 WEB版日本代表ニュースを中心に編集します。
- ホントに面白い映画はコレだ! 今週の映画瓦版
- プロの映画批評家が編集発行する週刊メールマガジン。毎週公開される映画を独自の視点からランキング。充実したDVD情報も好評です!
- 週刊アカシックレコード
- 02年W杯サッカー韓国戦の「誤審」を世界で唯一「前日」に誌上予測し、誤審報道を「常識化」した推理作家(金正日の「遺書」で始まる「中朝戦争」後の北朝鮮...
- 宮崎正弘の国際ニュース・早読み
- 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
- こんな映画は見ちゃいけない!
- 映画批評系メルマガで読者数No.1! プロの編集者が簡潔な文章と的確な表現で書き下ろす「1分で読める新作映画批評」です。映画紹介だけのメルマガにはな...
![メルマガスタンド[メルマ!]](/img/common/melma_logo.gif)








