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【映画とは、人生を2時間で切り取るものだ】。そんな視点からつづる、1000文字の映画コラム。いろんな映画をきっかけに、生き方について考えてみませんか。ありふれた日常のなかで、答えを探すあなたに、ぜひ。

  • 最新号:2008-09-25
  • 発行周期:火・金・(木)
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  • 創刊日:2001-03-20
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映画のなかの人生…Vol.624「クリムト」★★☆

発行日: 2006/11/6






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☆ ★ ☆  映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ ★
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【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。


_             _______________
  Vol.624「クリムト」★★☆        2006.11.6(月)
 ̄              ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  【1】STORY
   死の床に就いたクリムトは、幻の女レアを追いかけてきた
   自分の人生を振り返りながらも、彼女にたどり着けない。

  【2】Michelin
   シネスイッチ銀座、渋谷ル・シネマでの2館上映です。

  【3】Review
   伝記映画に名を借りた、崇高な哲学映画。面白いが眠い。

  【4】Column
   たとえ人生が終わっても、人は何も手にすることはない。

______________________________________________________Klimt

「コンエアー」のようなアクションから吸血鬼探しに至るまで、
プルーストや「リバティーン」などの文藝作品にも出てくれば、
果ては自分自身の穴にまで入ってしまう怪優マルコヴィッチ。
新作は、画家クリムトの生涯を演じる伝記物、のような映画。

<オフィシャルサイト>
http://www.klimt-movie.com/


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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
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死の床に就いたクリムトは、自己の人生をさまよい歩いていた。
芸術家たちとの果てしない論争、スキャンダルの数々の一方で、
彼自身は幻の女レアを追い求め、さまざまな女性遍歴を重ねるが、
いつまでも彼女にはたどり着けないまま、人生は終わりを迎える。


┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃2┃ 上映館ミシュラン (観ていないあなたへ)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

シネスイッチ銀座、渋谷ル・シネマでの2館上映です。
混雑状況は、それぞれのサイトをご参考に…と思いますが、
更新はいつも遅れてるので、あんまり当てにならなかったり。
http://www.cineswitch.com/konzatu/
http://www.bunkamura.co.jp/shokai/cinema/time/

ちなみに筆者は月曜の17時の回に入りましたが、
渋谷はとても空いていました。銀座も同じでは?
どちらも似たような映画館ですから、お好きな方へ。

▼銀座 シネスイッチ銀座 
 10:10/12:30/14:50/17:10/19:30〜21:20(終)

▼渋谷 ル・シネマ 
10:50/12:55/15:00/17:05/19:10〜21:00(終)
(日)の19:10の回は¥1000均一 


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┃3┃ Review (観ていないあなたへ)
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【ポイント】★★☆

<内訳>
テーマ   :★★★
ストーリー :★
キャスト  :★★★
スタッフ  :★★★

これは伝記映画じゃありませんね。
いつぞやのモディリアーニも、伝記じゃありませんでしたが、
この映画は最初から、伝記映画にしようとは思っていません。

そもそも、この映画のラウル・ルイス監督は「見出された時」、
要はプルースト「失われた時を求めて」の監督だったわけで、
本作は、それと全く同時代を描いているわけです。

この時点で、共通点が模索されるのは当然のことで、
監督としては、前作を乗り越えた内容を考えたいわけです。
筆者はその「見出された時」を観ていませんが、
プルーストはイヤと言うほど読まされたので(学生時代に)、
この20世紀文学の世界観は、よく分かっているつもり。

おそらく監督が目指したのは、まさにその世界観で、
時系列的な物語を打破した、自分探しの旅がこの映画のテーマ。
クリムトとは誰だったのか?それをクリムト自身が探し歩く。
死の床に就いたいま、あらゆる人生の出来事を振り返りつつ…。

ところが実際のところは、クリムトは淡泊な人物で、
「自分を表現の対象にはしない」と言い切ってるわけで。
そんな彼が、死ぬ間際とはいえ、自分探しに徹するのは、
この時点で、実在しているクリムト像とはだいぶ違うような。

彼が振り返るさまざまな出来事は、確かに、
クリムトが好色家で、スキャンダラスな人物だったこと、
退廃的な画風、権力者との関係、戦いなどのイメージを、
断片的には伝えてくれますが、彼の人生全体を伝えてはくれない。

そもそもこの人がどこに生まれて、どんな家庭で、
どんな風に育ち、どんな絵を描いて、認められ、
そして格闘し、困難にぶつかり、生きぬいたのか。
そんな伝記映画的な要素は、すっかり放棄されています。

ぶっちゃけた話、そんな部分に監督は興味がないわけで。
クリムトの人生なんかより、この映画はもっと哲学なんです。
探しても探しても、幻の女が見つからない自分探しの旅。

「うる星やつら ビューティフルドリーマー」のように、
物語なんかに興味はなく、映画は同じ所をぐるぐる回るだけ。
だから発想は面白いんだけれど、映画としては…眠い…。

途中で芸術論争や、ヴィトゲンシュタインの登場など、
当時の哲学的要素がふんだんに取り入れられ、描かれる。
性的、退廃的で、オリエンタリズム満載の映像描写も面白い。
マルコヴィッチ演じるクリムトは、本人の写真にそっくりですが、
しかし…自分探しの主人公に、あんまり個性は要らなかったり…。

まあ、物語そっちのけで、おかしな人生旅行の旅に出る、
インテリたちのストイックなトリップに出るつもりなら、どうぞ。
しかし、伝記映画を期待した人々は、呆然としただろうなぁ。


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┃4┃ Column (観おわったあなたへ)
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この映画を観て、本当のクリムトの姿を知りたくなった。
実際には、彼は非常にリアリストで、芸術家である一方、
実に合理的なビジネスマンとして、芸術運動を推進したようだ。

既存の権力に立ち向かい、新進気鋭の芸術家たちを集め、
「分離派」として、彼らに活動の場所を保証した手腕は、
問題作を連発する一方で、現実を見すえる目を持っていた証だ。

だからなのか、彼は「表現対象としては自分に興味がない」。
もともと装飾芸術の一家に生まれ育った彼は、
画家としても、カッチリ枠にはまった何かを描く。

日本の屏風のように金箔が敷き詰められた背景に、
エロティックな女性の姿が、ぼんやりと平面的に浮き上がる。
そこに自分の姿があっても、何の飾りにもならないのだろう。
そこには、誰もが「そそられるべき何か」が必要だったのだ。

ただ、自分の人生にもいよいよ、終わりが見えてきたとき。
彼自身には、彼の人生こそ「そそられるべき何か」だったろう。
振り返ってみれば、いったい自分は何者だったのか?
彼もまた、プルーストのように自己に興味があったはずだ。

外交官のように、てきぱきと判断する現実的な自分。
自分の芸術を愛してくれる、多くの女性やパトロンたち。
そして何よりも、自分自身が最後まで追い求めた憧れの女。

アトリエにある3つの扉を、開いては閉じ、開いては閉じ。
それぞれの人々を行き来しながら人生は回っていく。
現実的な自分は、パトロンたちを愛するように戒める。
パトロンたちは、彼の憧れを心配そうに見つめている。
しかし、彼自身は憧れの女のために、何もかもを捧げていく。

それでも、何も手に入れることができない。
いつの間にか、アトリエには雪が降りしきる。
人生の冬が、目の前にやってこようとしている。

ひょっとするとクリムトは、実は死の床に就く前から、
その事実に、とっくの昔に気づいていたのだろうか。
何をやっても、人生はぐるぐる回って、何も手に入れられない。

憧れは永遠に憧れのまま、壁に飾られるままなのだ。
だからこそ、クリムトはその憧れを絵に描いて見せ、
極度に装飾として、立体感のない絢爛美を誇るそれは、
我々にそこはかとない、夢への失望を漂わせるのかもしれない。

2006/11/6 渋谷ル・シネマにて。


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┃5┃ 次回予告 ほか
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その他、筆者からのお知らせなどなど。


★次回予告「上海の伯爵夫人」………………………………………

「日の名残り」で有名なケン・イシグロの小説がまたも映画化。
今回は大戦中の上海を舞台に、社交界での恋愛劇を描きます。
レイフ・ファインズ、真田広之ら、豪華なキャストも加わって、
濃厚な大河ロマン風恋愛映画になっている、と思われますが。

で、次回もお楽しみに。次回は水曜の予定。
http://www.wisepolicy.com/thewhitecountess/


★今後の予定など………………………………………………………

今週のもう1本は、「ウール100%」の予定。
岸田今日子と吉行和子が演じるおばあちゃんたちが、
トンでもなくファンタジックな世界を生み出す奇抜な映画。
http://www.klockworx.com/wool/

来週以降は、とりあえず以下のような予定。
いよいよ年末には大作映画も待ち受けています。
だいたい以下のリストで、今年は終わると思います。

注目はケン・ローチのカンヌ受賞作「麦の穂をゆらす風」。
同じくカンヌをにぎわせた、今敏監督の「パプリカ」。
渡辺謙が主役を演じる硫黄島の2本目も、凄そうですね。
アメリカ人が日本の精神を描くと、いったいどうなるの?

「明日へのチケット」http://www.cqn.co.jp/ticket/
「Unknown」http://www.movie-eye.com/unknown/
「ウィンターソング」http://www.winter-song.jp/
「麦の穂をゆらす風」http://www.muginoho.jp/
「パプリカ」http://www.sonypictures.jp/movies/paprika/
「プラダを着た悪魔」
http://movies.foxjapan.com/devilwearsprada/
「007カジノロワイヤル」
http://www.sonypictures.jp/movies/casinoroyale/
「武士の一分」http://www.ichibun.jp/
「硫黄島からの手紙」
http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/
「王の男」http://www.kingsman.jp/
「こまねこ」http://www.komaneko.com/feature/
「あるいは裏切りという名の犬」
http://www.eiga.com/official/aruinu/

というわけで、今後ともお楽しみに。


★最新情報はブログにて!!…………………………………………

ブログには過去掲載作などがまとめて載っています。
http://filmandlife.seesaa.net/

※ 実はケータイからも同じアドレスでみられます。要Check!

ブログなら、かしこまったメールをすることもなく、
小さなコメントや、筆者へのリクエストを書き込めます。

また、筆者が映画を見終わった直後の感想や、休刊情報、
映画とは全く関係ない筆者の近況まで、いろいろ掲載中。
ぜひぜひアクセスしてください!!


★これまでのバックナンバー…………………………………………

バックナンバー、メルマガの紹介や登録関係などについては、
それぞれ以下のページをご参照くださいませ。

http://www.mag2.com/m/0000197069.html(まぐまぐ)
http://www.melma.com/backnumber_33635/(メルマ)

メルマのバックナンバーは、第1号から掲載されています。
ただし検索機能がついておりませんので、
ここ1年については、ブログの方が探しやすいと思います。
http://filmandlife.seesaa.net/(筆者のブログ)


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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
 Vol.624 2006年11月6日
 発行者:Ak. http://filmandlife.seesaa.net/
 (C)2001-2006 Ak. All rights reserved.
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  • 年間100本以上の映画を観ている作家のたまご。良い物語と、生き方を考えさせるテーマを求めて、今日も映画館に足を運びます。もう1000本以上も観ているんですけどね…。

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