【映画とは、人生を2時間で切り取るものだ】。そんな視点からつづる、1000文字の映画コラム。いろんな映画をきっかけに、生き方について考えてみませんか。ありふれた日常のなかで、答えを探すあなたに、ぜひ。
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映画のなかの人生…Vol.610「薬指の標本」★★
発行日: 2006/9/26
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☆ ★ ☆ 映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ ★
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【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。
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Vol.610「薬指の標本」★★ 2006.9.26(火)
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【1】STORY
研究所の事務員に転職した女。そこでは依頼人に頼まれた、
あらゆるものを「標本」にする仕事が行われているという。
【2】Michelin
渋谷ユーロスペースでの単館上映。ほぼ空いています。
【3】Review
小説の映像化止まり。原作を読んだなら、面白いだろう。
【4】Column
あなたの標本になるまで束縛されたい、そんな愛し方。
________________________________________________l'Annulaire
小川洋子原作の小説が、フランスで映画になったという異色作。
「博士の愛した数式」など、いろいろ映画になっていますが、
フランス人が映画にするとどうなるのでしょう。予告編を観ると、
内容はなかなかサスペンスフルで、大人っぽいようですが…。
<オフィシャルサイト>
http://www.kusuriyubi-movie.com/
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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
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工場を辞め、港町で、ある研究所の事務員に転職した若い女。
そこでは依頼人から預かったあらゆるものを標本にするという。
次々と奇妙なものを受け付ける一方、所長は女に興味を抱き、
女もまた所長に惹かれ、研究所の実態が次第に明らかになる…。
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┃2┃ 上映館ミシュラン (観ていないあなたへ)
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渋谷ユーロスペースでの単館上映です。
そんなに混んでいません。
いちおう定員入替ではありますが、お好きな時間に。
▼渋谷 ユーロスペース : 上映中
10:20/12:30/14:40/16:50/19:00〜終20:45
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┃3┃ Review (観ていないあなたへ)
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【ポイント】★★
<内訳>
テーマ :★★★
ストーリー :★
キャスト :★★★
スタッフ :★★
きっと、原作は面白いんだろうな。
映画は2時間弱、やや退屈でしたが、まあまあ。
この映画は、あまり説明的な要素がありません。
主人公は独白しないので、彼女の心理描写は、
すべてが映像に委ねられることになっている。
けれども、この心理描写にまとまりが感じられない。
港町を転職先に選ぶ理由が分からないのに始まり、
転職先を選ぶ理由、所長を好きになってしまう理由、
同室の男に惹かれる理由、最後に大きな決断をする理由。
何だか、どれもとってつけたような心の動きで、
個々の場面では分かるけれど、全体を通した一貫性がない。
まるで他人の日記を、飛ばし読みしているようなモノで、
ある日の出来事は理解できても、内面のポリシーが見えづらい。
きっと、原作をそのまま映像化したんだろうな。
わざわざ日本の小説をフランス人が映画にしたんだから、
相当な思い入れで、自分の感じたものを映画にしたんだろう。
でも、それは原作を知ってる人には理解されても、
原作を知らない人に対して、伝えるものになっているかな。
少なくとも筆者には、この物語を通じたテーマが、
分かりはしても、心に訴えてくることは、あまりなかった。
何度も本誌で記述していることだけれども、小説と映画は、
物語性の位置づけが、まるで異なる次元にあるモノだから、
映画は映画で、場面を並び替えたり、叙述を加えたり、
いろんな工夫で物語を形づくらないと、小説を超えられない。
どうせ映画を撮るなら、小説と同じモノじゃなくて、
小説を超えるモノを撮ろう、くらいに考えないと。
「あの小説の感動をもう一度」なんて、
小説を読んだ人しか分からないわけで、
映画で初めて観る人には、全く関係ないんです。
逆に、小説を読んだ人には、この映画はきっと楽しいでしょう。
あの小説の、あの場面が、イメージとして、
そこに見えてくるわけで、原作者のコメント通り、
「あの小説に戻ったかのような気分」を味わえるはず。
主演の女は、ウクライナ人のスーパーモデルなんだそうで、
筆者には彼女の官能的な様子ばかりが、印象に残りました。
せっかく、サスペンスフルな設定で、謎も多くて、
いろんな味つけをすれば、きっと面白かっただろうに…残念。
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┃4┃ Column (観おわったあなたへ)
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愛する人には、身も心も捧げてしまいたい。
自分が、誰かの想い出に、いつまでも永遠に残るように。
そういう愛し方もあるだろう。
誰もがそんな愛を選ぶとは思わないが。
少なくとも、この映画はそこに希望を見いだす。
仕事を探して、女がたどり着いたのは奇妙な研究所。
誰もが自らの不安を、標本にして預けていくという。
捨てることはできないが、自らからは追い出したい。
そんな代物を持ってきては、次々と人々が出入りする。
誰もが自分の記憶を、好きなように選びたがる。
誰もが自分の想い出を、輝かしいものに読み替える。
そんなステキな想い出ばかりを、額縁の写真とか、
小さな小物や、いつぞやの贈り物なんかにして、
自らの標本として、そばにおきたがっているのだ。
そのなかで、不安な標本は捨てられない。
彼らの想い出の捨て場所に、研究所は選ばれている。
都合のいい人生のために、振り返らない想い出を消していく。
どうせ、そのうち不都合になるのなら、
最初から、標本になるような想い出は要らないのでは?
愛する人からの贈り物とか、かけがえのないものなんて。
そもそも、ともに過ごす必要なんて、ないんじゃないの?
まるで、ホテルで同室を利用する男女のように。
文字どおり「すれ違い」ながら、同じ部屋を利用する二人。
二人はお互いを尊重し、気を遣いながらも、何も起きない。
想い出に決して残らない、そんな恋愛もあるかもしれない。
実際、いまやコミュニケイション不足が叫ばれて、
セックスレスとか、家庭内離婚とかが話題になり、
くっつきすぎない男女関係の方が、遥かにメジャーだ。
愛する人に寄りかかるような生き方は、ずっと息苦しい。
自分の足にぴったりの、最適な靴を履くように。
それは履きやすいが、余裕がなく、ちょっとでも太れば、
途端に、自らの足下を窮屈に苦しめるのである。
それでも、彼女はそんな愛し方を選ぶのだ。
愛する人の想い出に、標本として残りたい。
彼の住まう地下室に、いつまでも並べてほしいのだ。
たとえ、自らの小さな、この薬指だけでも。
時代に逆らう、そんな愛し方をあなたはどう思うか。
きっと、多くの人が、実はそんな愛に憧れている。
自らをさらけ出して、恋人に投げ出せるような生き方に。
だったら、スクリーンの外でも実践すればいいのに。
おとぎ話は、教訓を得るために描かれるんじゃないの?
憧れはいつも、あなたが手にする時を待っているのだから。
2006/9/26 渋谷ユーロスペースにて。
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┃5┃ 次回予告 ほか
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その他、筆者からのお知らせなどなど。
★次回予告「記憶の棘」……………………………………………
ニコール・キッドマン主演、これもまた不可思議なサスペンス。
彼女は意外と変な映画に出ていて、「バースデイガール」や、
「アザース」など、ひどい内容も多いのですが、これはどうかな?
彼女の髪型がショートになった、ってのだけが注目なのかな…。
で、次回もお楽しみに。次回は水曜の予定。
http://www.kiokunotoge.jp/
★今後の予定など………………………………………………………
金曜は「ストロベリーショートケイクス」の予定。
池脇千鶴、中越典子ら、若手女優を並べた、
ほっこり系の小さな映画のようです。、
http://www.strawberryshortcakes.net/
来週は「カポーティ」がやってきますね。
筆者は国際線のなかで観てしまったのですが、
もう一度、映画館できちんと観ようと思います。
フィリップ・シーモア・ホフマンのオスカー受賞作。
http://www.sonypictures.jp/movies/capote/
その他、フランスのファンタジーサスペンス「奇跡の朝」、
http://www.longride.jp/kiseki/
ツァイ・ミンリャンの最新作「西瓜」の予定。
http://www.tml-movie.jp/
10月はいまのところ、以下のような予定。
ブライアン・デ・パルマが久々に復活する、
「ブラック・ダリア」が面白いかもしれません。
「ワールドトレードセンター」が、もっと超大作ですが。
韓国で大ヒットしたという「トンマッコル…」も注目作。
素朴なハートフルムービーでは、韓国にかなわないかも。
対抗できそうな日本映画は「幸福のスイッチ」か。
沢田研二は、どんな映画でもいい味出してるからなあ。
「ブラック・ダリア」http://www.black-dahlia.jp/
「ワールドトレードセンター」http://www.wtc-movie.jp/
「トンマッコルへようこそ」http://www.youkoso-movie.jp/
「幸福のスイッチ」http://www.shiawase-switch.com/
「サンキュー・スモーキング」
http://www.foxjapan.com/movies/thankyouforsmoking/
「ウール100%」http://www.klockworx.com/wool/
「クリムト」http://www.klimt-movie.com/
「上海の伯爵夫人」http://www.wisepolicy.com/thewhitecountess/
というわけで、今後ともお楽しみに。
★最新情報はブログにて!!…………………………………………
ブログには過去掲載作などがまとめて載っています。
http://filmandlife.seesaa.net/
※ 実はケータイからも同じアドレスでみられます。要Check!
ブログなら、かしこまったメールをすることもなく、
小さなコメントや、筆者へのリクエストを書き込めます。
また、筆者が映画を見終わった直後の感想や、休刊情報、
映画とは全く関係ない筆者の近況まで、いろいろ掲載中。
ぜひぜひアクセスしてください!!
★これまでのバックナンバー…………………………………………
バックナンバー、メルマガの紹介や登録関係などについては、
それぞれ以下のページをご参照くださいませ。
http://www.mag2.com/m/0000197069.html(まぐまぐ)
http://www.melma.com/backnumber_33635/(メルマ)
メルマのバックナンバーは、第1号から掲載されています。
ただし検索機能がついておりませんので、
ここ1年については、ブログの方が探しやすいと思います。
http://filmandlife.seesaa.net/(筆者のブログ)
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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
Vol.610 2006年9月26日
発行者:Ak. http://filmandlife.seesaa.net/
(C)2001-2006 Ak. All rights reserved.
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