【映画とは、人生を2時間で切り取るものだ】。そんな視点からつづる、1000文字の映画コラム。いろんな映画をきっかけに、生き方について考えてみませんか。ありふれた日常のなかで、答えを探すあなたに、ぜひ。
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映画のなかの人生…Vol.378「ユートピア」★★
発行日: 2004/11/13
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☆ ★ ☆ 映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ ★
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【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。
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Vol.378「ユートピア」★★ 2004.11.12(金)
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【1】STORY
予知能力者の男は、度重なる悲惨な予知夢に悩んでいた。
続けてその予知夢に現れる女性を救おうと彼は挑むが…。
【2】Michelin
シネセゾン渋谷での単館上映。ガラガラです。
【3】Review
つまらなくはないが、取り立てて面白くもないのが残念。
【4】Column
明日が見えてしまう絶望なんて、絶望のうちに入らない。
_____________________________________________________Utopia
サスペンス週間の最後は、ヨーロッパはスペインから。
「IF ONLY」「恋のトルティーヤスープ」では、
恋愛映画を巧みに描く実力を放ったマリア・リポル監督が、
なぜか一転、サスペンスに取り組んだという意欲作、です。
<オフィシャルサイト>
http://www.wisepolicy.com/utopia/
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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
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予知能力者の男は、度重なる悲惨な予知夢に悩まされていた。
孤児だった彼の里親は、予知夢の先にある人を救えという。
続けてその予知夢に現れる女性を救おうと彼は挑むのだが、
彼女は地元ゲリラに捕らわれ、その一味として暗躍しており…。
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┃2┃ 上映館ミシュラン (観ていないあなたへ)
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シネセゾン渋谷での単館上映です。
ま、混んでません。というかがら空きです。
いまは他にずいぶんといい映画がありますからねえ…。
これだけ地味だと、話題性には欠けるでしょう。
お好きな時間に、お好きな席で観られると思います。
▼渋谷 シネセゾン渋谷 上映中
12:00/14:20/16:40/19:00〜終21:00
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┃3┃ Review (観ていないあなたへ)
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【ポイント】★★
<内訳>
テーマ :★★★★
ストーリー :★★
キャスト :★★
スタッフ :★★★
悪い映画ではないんですけどねぇ。
いい映画でも、ないんですよねぇ。
つまらなくはありません。
最後まで、きちんと興味を惹きつけます。
男が見た予知夢は、果たしてどのようにして、
再現されてしまうのか、それとも…?と思うから。
このあたりの持っていき方は、「IF ONLY」同様、
マリア・リポルという監督の才能を非常に感じます。
予知夢の場面では、ボカした映像をふんだんに用いて、
映画そのものを夢の中への誘いのように表現もしている。
また、男女が出逢い、惹かれあう様子を描かせれば、
本棚を挟んで向き合う場面も、風呂場で手当てする場面も、
彼女はセリフ回しが非常に巧みで、とても微笑ましい。
この辺の演出では、他のどんな監督よりも突出していると、
再確認できたので、正直、胸をなで下ろしたりもしました。
ヒロインには「靴に恋して」の主役だったフラれた女、
さまよえる刑事の役には「ドーベルマン」の悪徳刑事と、
キャストも意外と充実していて、個々のシーンは楽しめる。
でもねぇ。この映画、話自体がつまらないんだな…。
予知能力者が見る夢が、結局は現実になっていき、
そしてご都合通りに恋に落ち、危機に直面する二人。
うーむ。サスペンスなのに、あまりにも予想どおり!
サスペンスというのは、観客の予想を裏切るべきで。
「SAW」はその頂点を競うべき作品なのですが、
この映画には、そういう部分が、何一つとしてない。
ラブコメだったら、全て予定調和でもいいんですが、
やっぱり、サスペンスで結末が読めたらダメでしょう。
これは、監督のテーマがあまりに明確だった点も、
逆にネックになっているのでは、と思います。
だって、予知夢=宿命と人生に関する考察だなんて、
「ロード・オブ・ザ・リング」ですら描かれてますから。
やっぱり、マリア・リポルという人は、
おとなしくラブコメディを撮っていた方が、
しっくり来るし、とてもいいと思うんだけど…。
まあ、今週は3本もサスペンスを観てきましたが、
こうしてみると、「テーマから入るヨーロッパ」と、
「エンタメとしてはいる米国流」の違いは明確ですね。
もっとも、「SAW」はオーストラリア発ですが。
受け入れられたのはハリウッドですから、そうしておきます。
一方で「オールド・ボーイ」は、ハリウッド流に、
エンタメを追求して、古風に楽しませてくれつつも、
最後にどうしても、説教みたいな部分が出てしまう。
もちろん、テーマも娯楽性も兼ね備えていることが、
5つ星には条件なのですが、それは中途半端で終わる、
ということもありうる、非常に高いハードルでもあります。
これを超えるには、サスペンス映画でいうならば、
「レクイエム・フォー・ドリーム」のような斬新さと、
質の高い、人間への考察、探求心が必要とされている。
そういう映画に出逢うのは…なかなか難しいですね、実際。
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┃4┃ Column (観おわったあなたへ)
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初めて、ある会社から内定をもらった時のこと。
もらえるとは思っていなかったこともあり、正直、戸惑った。
初めてということもあり、もらえば少しは嬉しいものかと、
おぼろげに思ってはいたのだが、実際には、
そんな気持ちは、ちっとも湧いてこなかった。
むしろ、こみ上げてきたのは暗澹たる憂鬱と、
これから先の自分に関する未来予想図だ。
ああ、いよいよ、あのサラリーマンへの、
泥沼の第一歩を踏み込んでしまった。
これから先、会社の、世の中の歯車となり、
勢いで結婚し、子どもを産み、育て、
特に何の変哲もない人生を送ってしまうのだろうか、と。
未来には、希望を抱けるものと、そうでないものがある。
自分の未来をのぞいてしまうと、楽しいこともあれば、
一方で、とんでもなく絶望的なこともあるだろう。
この映画は、そんな未来を確実に予想できる、
予知能力者が、自分の未来に苦しむ物語だ。
他人の悲劇ばかりを予知してしまい、
無理に否定しようとして、いつも鼻血を流している。
彼は自分の未来に、明るさのカケラも見いだせない。
里親は、彼に「予知夢を防ぐよう努めろ」という。
けれども、彼がどんなに頑張っても、
自爆テロの犯人は自爆し、ゲリラの襲撃は成功する。
恐るべき未来を予言しながら、何もできない自分。
ただ生きているよりも、数倍の不安と絶望が、
彼の下には押し寄せ、だから彼は逃げ出したのだ。
未来を見ながら生きる世界に、ユートピアなど存在しない。
そんな集団がいたところで、社会に何も貢献しない、と。
しかし、果たして彼の予知夢は必ず当たるのだろうか。
彼の予知夢は、外れることが決してないものなのか。
私は自分のことを振り返る。
会社に内定をもらってから、7年が経った。
あの時の私は、いまの自分を想像できただろうか。
いや、全くできなかっただろう。
残念ながら、私は会社の歯車にも、
社会の歯車にも引っかからず、
勢いで結婚もしなければ、子どものひとりもいない。
むしろ会社に一度入り、そこを卒業することで、
この社会を悠然と泳ぎまわってすら、いるようだ。
いま思いかえせば、内定をもらったあの時の絶望、
暗澹たる憂鬱とは、いったい何だったのだろうか?
そんなもの、大いに笑い飛ばしてしまいたくなる。
そして、大いに笑い飛ばせばいいのだ。
未来はそんなに簡単に、人間に予測できるものではない。
勝手に決めつけて、暗い気分でいるなんてことは、
人生の可能性を、自らすり減らしているようなものだ。
それはたとえ、あなたが予知能力者だったとしても。
100%確実な未来は、誰にも描くことができない。
それが白紙である以上、未来の正体とは、
自らの手で、必ず変えることができるのだから。
2004/11/12 シネセゾン渋谷にて。
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┃5┃ 次回予告 ほか
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その他、筆者からのお知らせなどなど。
★次回予告「エイプリルの七面鳥」…………………………………
来週は家族映画ウィーク、ということで第一弾はアメリカから。
死期が近づいた母親を迎えるために、親不孝娘が一念発起、
苦手な料理に立ち向かい、何とか七面鳥に取り組みます。
オスカーにもノミネートされていた、話題作の1つです。
で、次回もお楽しみに。次回は火曜。
http://www.gaga.ne.jp/april/
★今後の予定など………………………………………………………
来週は家族映画週間なので、家族について考える映画ばかり。
ロシアのおばあちゃんが孫のためにパリを訪れる「やさしい嘘」、
ジェニファー・コネリー主演の文藝大作「砂と霧の家」の予定。
再来週は金城武主演の「ターンレフト、ターンライト」、
ビートたけし他、豪華キャストを揃えた「血と骨」、
ウォルター・サレスの前作「ビハインド・ザ・サン」、
そしていよいよ公開、宮崎アニメ「ハウルの動く城」の予定。
今月末も、まだまだ3本ペースが続きます。
「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」「青い車」
「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」
の3本を予定しています。ああ、忙しい。
★連絡先は………………………………………………………………
【メールお待ちしてます!】
今回のメールマガジンはいかがでしたか?
ご意見、ご質問、ご感想などをお気軽にお寄せください♪
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一行だけでもコメントやリクエストを書き込めます。
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【他の映画のバックナンバーを探したいな…】
ウェブサイト:http://www.lares.dti.ne.jp/~espoir/
上記のサイトをゼヒゼヒ!訪れてみてください。
これまでの映画タイトルが五十音順で並んでいます。
また、今後の掲載予定や筆者の近況なども、連載中。
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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
Vol.378 2004年11月12日
発行者:Ak. espoir@lares.dti.ne.jp
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