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映画のなかの人生…Vol.373「みんな誰かの愛しい人」★★★★
発行日: 2004/11/2━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆ ★ ☆ 映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ ★
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【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。
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Vol.373「みんな誰かの愛しい人」★★★★ 2004.11.2(火)
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【1】STORY
ある大作家の娘の少女。彼女は自分に言い寄る人々がみな、
父親目当てで、誰も自分を愛していないと嘆いていた。
【2】Michelin
銀座テアトルシネマでの単館上映。週末は満席でしょう。
【3】Review
コミカルだが、テーマは複雑難解に埋め込まれている。
【4】Column
自分勝手な言葉のなかで、相手の心にたどりつくために。
____________________________________________Comme une image
「ムッシュ・カステラの恋」では、社長だがさえない中年男の、
珍妙なラブコメディを、人間味豊かに描いたアニエス・ジャウィ。
彼女の新作は、カンヌでも脚本賞を受賞し、審査員も絶賛。
果たして今度は、どんな会話で楽しませてくれるのでしょうか?
<オフィシャルサイト>
http://www.gaga.ne.jp/dare-ai/
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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
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ある大作家の娘の少女。彼女は自分の継母も、恋人も、友人も、
自分のそばの誰もが父親目当てで、自分には無関心だと思いこむ。
その父親も、歌手を目指す自分には全く無関心。彼女はその歌の
女性教師に希望を託すが、これまた実は父親のファンだったり…。
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┃2┃ 上映館ミシュラン (観ていないあなたへ)
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銀座テアトルシネマでの単館上映です。
思ったほどは混んでませんでした。大混雑かと思いきや。
おそらく、3回目の16:20の回か、週末をのぞけば、
それなりに座ることはできるのではないでしょうか。
まあ、ここは定員入替制なので、早く来ればそれでいいのですが。
さっさと整理番号を確保して、銀座をのんびり歩いていれば、
いい余暇を過ごすことができると思います。
内容的にも、じっくり考えることが多いテーマなので、
映画の後、ゆっくりお茶を飲む時間をとっておきましょう。
▼銀座 銀座テアトルシネマ 10/30(土)より
(土日水9:00)11:10/13:45/16:20/18:55〜終20:50
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┃3┃ Review (観ていないあなたへ)
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【ポイント】★★★★
<内訳>
テーマ :★★★★★
ストーリー :★★★
キャスト :★★★★
スタッフ :★★★
非常に、深い映画ですね。実にフランス映画です。
といって特に、重苦しい映画ではありません。
日常的な会話を、コミカルに楽しむのもフレンチだし、
そのなかから、人間と人間の生き方を考えるのもフレンチ。
ジャウィはきっと、ルコントのように、
フランス映画の王道を今後も歩んでいく人なのでしょう。
もっとも、最初からコメディとうたってはいないので、
中盤からいくつか面白いシーンが続くのですが、
最初は「ここで笑っていいのかな」と戸惑うかも。
大声で笑ってください。笑えるシーンが多いですから。
深刻に悩んでいる男に向かって、鈍感なオジサンが、
「キミ、青酸カリなら隣の棚だよ」と言うシーンのほか、
毒舌や軽妙なタッチの会話が、この映画には満載です。
ただし、テーマはとても複雑難解。
この映画は、人と人との関係性について真剣に捉えています。
大作家の名声を目当てに、人々がおべっかを使う様子。
ひとつ名声を得てしまえば、人間が変わってしまうこと。
口先だけの愛の言葉で、騙されてしまう人間の悲しさ。
いつだって人のせいにして、自己を反省しない人間の傲慢。
コミカルな物語のなかに、そうしたエピソードを、
1つ1つ、宝石のように埋め込んでいるのがこの映画。
ただしそこに、あんまり統一性は持たせていません。
人間は、いろんなことで変わっていき、明日も生きる。
傷つくときもあれば、いつか自分を再発見することもある。
そういう映画なので、すっきり感動する物語ではないです。
感動的なエピソードで、涙をボロボロ流したいなら違います。
そうしたまとまりのなさも、人生の1つの側面であって、
そこから何を見つけ、どのように考えていくのかも、
この映画は、私たち観客に選択権を与えているのでしょう。
まあ、私はそこにある程度の見解があった方が好きですが。
なのでストーリーとしては★3つにしておきました。
ジャウィはもちろん、ジコチュウ作家を悠々と演じている、
バクリ氏の「ムッシュ・カステラ」とは違う演技にも注目。
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┃4┃ Column (観おわったあなたへ)
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「ステキな作品ね」
自分が書いた物を、誰かに褒められたとしよう。
さて、それをあなたはどのように受け止めるだろうか。
「1.本当にステキな作品だと、この人は思っている」
それであれば、それに越したことはない。嬉しい。
「2.本当は違うが、意図があってそう述べている。」
この際、自分に対する評価はともかくとして、
どこかで相手の「意図」を探らなければなるまい。
多くの場合、残念ながら後者のパターンが多い。
そのため、人はいつも相手の言葉の中に、
相手の意志を探そうとしてつまずき、路頭に迷っている。
だから、ある大作家の娘の日常は、とても大変だ。
自分に気がない相手からも、愛の言葉を囁かれる。
自分を嫌っている相手すらも、自分を褒めたり、
持ち上げたりすることは、いまでは日常茶飯事だ。
何度も裏切られてきた過去がある。
人から褒められようと、どんなに努力しても、
舞台に立ってみても、歌を歌ってみても、
どんなに下手でも、叱られることは決してない。
それは誰もが、自分に関心がないからだ。
たったひとりの身近な肉親、父親でさえ。
彼女はいつしか、人の言葉を額面通りに受け取らない、
内向的で、気むずかしい人間になっていた。
でも、誰も自分は悪くないと思っている。
人を踏み台にして、何かを得ようとしている自分。
それが誰かを傷つけているなんて、誰も分かっていない。
「あなたは何でも人のせいにしているわ」
誰かを罵って初めて、人は自分の身勝手に気づく。
では自分は、本当に自分を顧みているだろうか、と。
ようやく売れっ子になった気鋭の作家は、
育ててくれたエージェントや友人を切ろうとしている。
パーティでは、額面通りの言葉なんてどこにもない。
自分では最悪の作品も、そこでは稀代の傑作だ。
この世界は、自分勝手な人間で満ちあふれている。
そのくせ、誰もが誰かに愛されたいと願っている。
いったい、本当の愛の言葉はどこにあるのだろう。
誰かの本当の心には、どうすればたどり着けるのか。
虚ろな言葉と言葉を介し、すれ違っていく心と心。
それはまるで、1つのコーラスのように、
同じ歌詞でも、高い音や、低い音を奏で、
誰ひとりとして、同じキーでは歌っていない。
では、真のメロディはどこにあるのか?
それは、じっと相手の歌声に、耳を傾けるしかない。
その人の歌は、へたくそかもしれない。
あなたよりずっと高いキーで、歌うかもしれない。
だから、相手とキーを合わせなくてもいい。
せめて美しいハーモニーを奏でたいのだ。
誰が聞いているか分からない、
自分勝手なカラオケよりも、
人と人とが発する言葉のなかに、
美しい「心の和音」を、探していきたい。
2004/10/31 銀座テアトルシネマにて。
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┃5┃ 次回予告 ほか
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その他、筆者からのお知らせなどなど。
★次回予告「春夏秋冬そして春」……………………………………
「悪い男」では、韓国に根づく儒教的道徳観をひっくり返し、
風俗嬢とそのポン引きの、倒錯的恋愛関係を描いたキム・キドク。
ところが今回は、そうした背徳からは一転し、仏門の世界を描く。
春夏秋冬、人生をほろ苦くも笑いと戒めを込めて描く力作です。
で、次回もお楽しみに。次回は木曜。
http://www.kimki-duk.jp/spring/
★今後の予定など………………………………………………………
金曜は、「隠し剣、鬼の爪」http://www.kakushiken.jp/の予定。
「たそがれ清兵衛」に続く、山田洋次の時代劇映画シリーズ2作目。
2匹目のドジョウなのか、ウナギなのか、そしてまたシリーズ化か?
来週は、料理をめぐる家族ドラマ「エイプリルの七面鳥」、
http://www.gaga.ne.jp/april/
「CUBE」より怖い、凄いと評判の低予算映画「SAW」、
http://sawmovie.jp/
そして何よりカンヌグランプリの「オールド・ボーイ」の予定。
http://www.oldboy-movie.jp/
再来週は「IF ONLY」のマリア・デポル監督「ユートピア」、
金城武を久々に観にいくなら「ターンレフト、ターンライト」、
やさしいおばあちゃんのまなざしを描く「やさしい嘘」、
ビートたけし他、豪華キャストを揃えた「血と骨」、
ウォルター・サレスの前作「ビハインド・ザ・サン」から、
3本を選んできます。どれにしようかな…。
★連絡先は………………………………………………………………
【メールお待ちしてます!】
今回のメールマガジンはいかがでしたか?
ご意見、ご質問、ご感想などをお気軽にお寄せください♪
メールアドレス:espoir@lares.dti.ne.jp
※ なお、頂いたメールは本誌で紹介することがあります。
匿名希望の方は、その旨をお書き添えください。よろしくです。
【休刊情報やちょっとしたコメントなど…】
http://blog.melma.com/00033635/
上記のサイトからなら、かしこまったメールにすることなく、
一行だけでもコメントやリクエストを書き込めます。
また、筆者の近況や休刊情報もこちらです。適宜ご確認を。
【他の映画のバックナンバーを探したいな…】
ウェブサイト:http://www.lares.dti.ne.jp/~espoir/
上記のサイトをゼヒゼヒ!訪れてみてください。
これまでの映画タイトルが五十音順で並んでいます。
また、今後の掲載予定や筆者の近況なども、連載中。
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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
Vol.373 2004年11月2日
発行者:Ak. espoir@lares.dti.ne.jp
(C)2001-2004 Ak. All rights reserved.
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