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【映画とは、人生を2時間で切り取るものだ】。そんな視点からつづる、1000文字の映画コラム。いろんな映画をきっかけに、生き方について考えてみませんか。ありふれた日常のなかで、答えを探すあなたに、ぜひ。

  • 最新号:2008-09-04
  • 発行周期:火・金・(木)
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  • 創刊日:2001-03-20
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映画のなかの人生…Vol.361「愛の落日」★★★☆

発行日: 2004/9/24

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 ☆ ★ ☆  映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ ★
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【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。


_              ______________
  Vol.361「愛の落日」★★★☆       2004.9.24(金)
 ̄               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  【1】STORY
   終戦直後の仏領ヴェトナム。優雅な生活を送る駐在記者。
   地元で民兵をかき集める将軍には、何やら不穏な動きが…。

  【2】Michelin
   日比谷スカラ座2にて、1日2回だけ上映。やや混み。

  【3】Review
   恋愛混じりのスパイ映画を、キャストと映像が盛り上げる。

  【4】Column
   負け組をいたぶる大国の構図は、男女関係にそのまま重なる。

_________________________________________The Quiet American

マイケル・ケイン、ブレンダン・フレイザー主演の男臭いドラマ。
ケインはこの映画で、オスカーに再びノミネートされています。
原作は「ことの終わり」のリバイバルも記憶に新しいG・グリーン、
撮影はウォン・カーウァイの目=クリストファー・ドイル、
監督は「パトリオット・ゲーム」「ボーン・コレクター」の
フィリップ・ノイス。うーむ、これだけ並べれば面白くて当然。

<オフィシャルサイト>
http://www.ainorakujitu.jp/


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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
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第二次大戦直後の仏領ヴェトナム。駐在記者である英国の老紳士。
愛人を囲って優雅に生活していたが、米国の若者と出会って一転。
時を同じくして、サイゴンでは地元有力者が民兵をかき集めている。
果たして彼の目的は。そして米国の若者の意外な正体が…。


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┃2┃ 上映館ミシュラン (観ていないあなたへ)
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日比谷スカラ座2にて、1日2回だけの上映になっています。
今週までは4回上映だったのですが。動員はイマイチですかね。
でも、けっこうマイケル・ケインと同年代のご婦人がたくさん…。

ここは平日でもいつでも、全席指定でやっていますから、
席を選ぶときは、ちょっと後ろ寄りを選んだ方が観やすいです。
前段の方は段差が少ないので、けっこう見上げになりますので。

▼日比谷 日比谷スカラ座2 上映中
11:35/2:00


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┃3┃ Review (観ていないあなたへ)
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【ポイント】★★★☆

<内訳>
テーマ   :★★★★
ストーリー :★★★
キャスト  :★★★★★
スタッフ  :★★★★

いったい誰なんでしょうね、このタイトルを付けた人は。
「愛の落日」って、明らかにコテコテのラブロマンスですよね。
もちろんそれが狙いなんだろうけど、結果につながってるのかな…。

何てったって、「ボーン・コレクター」とかの監督だもの。
そんな、男と女のラブロマンスになるわけがない。
序盤こそケインとフレイザーで、女性の取り合いみたいな、
そんな展開もありますが、その件は次第に隅に追いやられる。

むしろ、フランス支配下の南ヴェトナムで、
テイ将軍という地元有力者が、何やら不穏な動きをしている。
彼の動向を探る英国人記者は、フレイザーの助けも借りつつ、
次第にその核心へと迫っていく…というスパイ映画が本線。

その間にも、ケインはフレイザーとなぜか出逢う機会があり、
彼の協力や助けを得ながらも、女性の件では対立を続け、
そして事件の核心に迫っていくに連れ、若者の正体が分かり、
男はいよいよ、大きな決断を最後に迫られる。
果たして若者の正体は。気になる恋の行方はいずこ?

ちょっと恋愛映画に傾き気味で、中途半端感のある物語を、
監督は何とか、「スパイ映画」として成立させようとしている。
だから1時間45分、最後まで飽きずに観ることができた。
変にラブロマンスを盛り上げなかったのが、むしろ正解でしょう。

それを盛り上げる、ドイル撮影のヴェトナムの街並みは美しい。
「地球で最後のふたり」よろしく、東南アジアのデルタ地帯は、
ドイルにとって、光と影を演出する格好の舞台のようだ。

マイケル・ケインも、仕事はやり手でも、性格は気ままで、
自分や愛人に嘘をついている身勝手な英国の老紳士を好演。
彼が、思わず嘘をつくジレンマを人間らしく演じないと、
この男は単なる最悪オヤジになってしまうので、とても重要。

フレイザー青年も久々に観ましたが、相変わらず好青年っぽい。
しかし、ますます太ってきたように見えるのは…役作り?
ヒロインを務めるのは、「夏至」でも美貌が輝いていた、
ヴェトナム女性なんだけど、この映画でもステキに見える。
欧米人と並ぶと、清楚な雰囲気がいっそう際だつのがよい。

といったわけで、スパイ映画として面白かったこの映画。
制作の背景にあるのは、間違いなく現代のイラク情勢でしょう。
アメリカのエゴで、世界各国の罪なき人々が被害を被るのは、
今も昔も変わっていないこと、この映画でも伝わってきます。
かのアンソニー・ミンゲラや、シドニー・ポラックが、
クレジットに名前を連ねたのも、そうした事情があるのでしょう。


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┃4┃ Column (観おわったあなたへ)
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勝ち組、負け組という言葉が、世に出てから久しい。
残念ながら、競争社会が意識されるようになれば、
そこに勝者と敗者が生まれるのは当然のことだ。

この映画のヒロイン=ヴェトナムの女性は、
明らかに負け組に入ってしまった側である。

良家の美しい子女でも、いまでは欧米人のダンスをして、
お愛想をとっていかなければ、生計を立てられない。
かつて東南アジアでも有数の繁栄を収めたヴェトナムが、
英仏の植民地にされてしまった歴史が、そこに重なる。

その搾取を、優雅に楽しんでいる英国の老紳士。
しかし、それもいまや本社からの要請で、風前の灯。
かつての勝ち組だった英国も、戦後は火の車となり、
採算に合わない植民地は、いとも簡単に放り出された。
その国の今後の行方など、何も考えないままに。

けれども、植民地からの搾取は、まだむさぼりたい。
どん欲な人間の本性を、この英国の老紳士は体現する。
本国には家族がいるけれども、愛人も放り出したくないエゴ。
「英国に行こう」と嘘をついて、離婚はしないという身勝手。
本当は愛人の人生なんて、何ひとつ考えてはいないのだ。

そこに飛び込んできた、米国人の青年。
彼は感情の赴くままに行動し、正義を振りかざす。
英国人のものだったヴェトナム人の女性に、
いきなり横恋慕して、愛を告白したりもする。

そして英国記者の「植民地支配」を暴き出し、
彼女を自分のものにして、精いっぱい愛そうとする。
確かに彼は、彼女を、ヴェトナムのことを必死に、
生命を賭けてまで愛そうとしていた。それは間違いない。

けれども彼の行為を、ヴェトナム人はどう思っただろう。
結局は、自分がいちばん嫌いなコミュニストの彼に、
かわいい女の子を獲られたくなかったからではないのか?

そして、そのために彼もまた、多くの嘘をついて、
あまりにもたくさんの、罪なき人々を傷つけ、
ヴェトナムに無用な災厄を招いたのではないだろうか?

英国人の紳士も、米国人の青年も、
美しいヴェトナム人の彼女を愛していた。
彼らなりのやり方で。そして、彼らなりの思惑で。

国家というのは時として、人間のエゴがそのまま集約され、
凝縮され、そして増幅されたような行動をとることがある。
彼らの身勝手さは、そのままヴェトナム戦争に通じている。
その、あまりにも恐ろしい悲劇を目の当たりにしたとき。

英国人の紳士は、初めて気がついたのだ。
ヴェトナム人たちの、真の気持ちに。
愛する女性の哀しみ、負け組に生まれついた悲劇。
彼女たちをいたぶる、英仏米の横暴な振る舞い。

もう、彼女から目をそらすことはない。
そっと抱きしめて、踊り続けよう。
それが本当の、平和への祈りになると信じて。

2004/9/24 日比谷スカラ座2にて。


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┃5┃ 次回予告 ほか
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その他、筆者からのお知らせなどなど。


★次回予告「父、帰る」………………………………………………

昨年のヴェネツィア映画祭グランプリ作品というロシア映画。
失踪してきたお父さんがいきなり帰ってくる、というドラマ。
となれば当然、家族をめぐるドラマになるのでしょう。
「ディープ・エンド・オブ・オーシャン」の逆バージョンか?

で、次回もお楽しみに。
次回はいろんな事情で、月曜にさせてください。すみません…。
http://chichi-kaeru.com/


★今後の予定など………………………………………………………

来週はシャリーズ・セロンが、デブデブに太る役作りで、
凶悪な犯罪者を演じオスカーに輝いた「モンスター」のほか、、
ウィル・スミスのSF映画の「アイ,ロボット」、
久々にやってきたフレンチコメディ「世界でいちばん不運で幸せな私」、
一方でシリアスな刑事ドラマ「二重誘拐」などから、選びます。

「モンスター」http://www.gaga.ne.jp/monster/
「アイ、ロボット」http://www.foxjapan.com/movies/irobot/
「世界でいちばん不運で幸せな私」
http://www.albatros-film.com/movie/sekai/index.html
「二重誘拐」http://www.foxjapan.com/


★連絡先は………………………………………………………………

【メールお待ちしてます!】
今回のメールマガジンはいかがでしたか?
ご意見、ご質問、ご感想などをお気軽にお寄せください♪
メールアドレス:espoir@lares.dti.ne.jp

※ なお、頂いたメールは本誌で紹介することがあります。
  匿名希望の方は、その旨をお書き添えください。よろしくです。

【休刊情報やちょっとしたコメントなど…】
http://blog.melma.com/00033635/
上記のサイトからなら、かしこまったメールにすることなく、
一行だけでもコメントやリクエストを書き込めます。
また、筆者の近況や休刊情報もこちらです。適宜ご確認を。

【他の映画のバックナンバーを探したいな…】
ウェブサイト:http://www.lares.dti.ne.jp/~espoir/

上記のサイトをゼヒゼヒ!訪れてみてください。
これまでの映画タイトルが五十音順で並んでいます。
また、今後の掲載予定や筆者の近況なども、連載中。

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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
 Vol.361 2004年9月24日
 発行者:Ak. espoir@lares.dti.ne.jp
 (C)2001-2004 Ak.  All rights reserved.
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ペンネーム : Ak.

  • 年間100本以上の映画を観ている作家のたまご。良い物語と、生き方を考えさせるテーマを求めて、今日も映画館に足を運びます。もう1000本以上も観ているんですけどね…。

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