【映画とは、人生を2時間で切り取るものだ】。そんな視点からつづる、1000文字の映画コラム。いろんな映画をきっかけに、生き方について考えてみませんか。ありふれた日常のなかで、答えを探すあなたに、ぜひ。
- 最新号:2008-09-25
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映画のなかの人生…Vol.356「父と暮せば」★★★★
発行日: 2004/9/10
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☆ ★ ☆ 映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ ★
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【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。
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Vol.356「父と暮せば」★★★★ 2004.9.10(金)
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【1】STORY
終戦直後の広島。被爆者の若い女が、淡い恋心を抱いたとき、
その恋の応援団長として、死んだはずの父親が現れる。
【2】Michelin
岩波ホールにて単館上映。シニアな方々で大変な混雑です。
【3】Review
名優2人の演技だけで、原爆の悲劇をぐっと引き出す。
【4】Column
愛する者を失った時、遺された者にできることは何か。
_____________________________________________ちちとくらせば
一途な悲劇のヒロインなら誰にもマネできない、宮沢りえ。
頑固一徹、渋い男をやらせればいぶし銀の原田芳雄。
この2人を引き合わせて、父娘に設定しただけで、
この映画の成功は、ほぼ決まっていたようなものかも。
<オフィシャルサイト>
http://www.chichitokuraseba.com/
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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
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終戦直後の広島。図書館勤めの若い女が住んでいるあばら屋。
彼女がある男に淡い恋心を抱いたとき、死んだはずの父が現れる。
目の前にある幸せと、ただ一人生き残ったことの孤独と呵責で、
葛藤する娘を父は懸命に励まし、叱咤し、ともに泣くのだが…。
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┃2┃ 上映館ミシュラン (観ていないあなたへ)
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岩波ホールでの単館上映です。
混んでるハズはないな、と思っていたのですが、
ところがどうでしょう、大変な混雑でした。
ご年配の方々で、朝からずーっとにぎわっております。
「月・水・金は、特に混みますよ」と係の人の弁でした。
整理番号はないものの、定員入替制になってますから、
手頃な時間帯の場合、売り切れてしまうことが考えられます。
どんなに遅くとも30分前には劇場に着いた方が良いでしょう。
駅からは出口すぐ上なので、近いし分かりやすいはずです。
なお、このホールはスクリーンがとても小さいです。
しかも、舞台のとても奥まったところにかけてあるので、
ここはかなり前に座った方が、「映画らしく」感じます。
前から1〜3列目でもちょうどいいかもしれません。
変に「映画館」を期待すると、肩すかしかも…。
▼神保町 岩波ホール 上映中
月〜土・祝11:30/2:00/4:30/6:50〜終8:30
日11:30/2:00/4:30〜終6:10
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┃3┃ Review (観ていないあなたへ)
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【ポイント】★★★★
<内訳>
テーマ :★★★★★
ストーリー :★★★
キャスト :★★★★★
スタッフ :★★★
やれやれ、宮沢りえと原田芳雄か。
どちらも役者ですねぇ。
それだけで、映画になっちゃうんだもんなぁ。
この映画は、基本的に2人劇です。
舞台劇だったと聞いてますが、まあ、そうでしょう。
それを映画にする時点で、登場人物を増やしたりして、
物語に幅を持たせるなどの変化も考えられるわけですが、
この映画では、それを選択しませんでした。
むしろ、スクリーンという手法を用いて、
二人の人間がどのような葛藤を抱え、
苦しみ、そして明日を切り開いていくのか、
丹念に見つめていくことを、選択しました。
なので、映画のように物語が大きく展開したり、
いろんな場面が、多彩な映像で彩られたりはしません。
そういう意味での映画らしさは、この映画には求められない。
その代わり、スポットを100分浴び続ける、
宮沢りえと原田芳雄の2人の演技がすごいです。
最初は、父娘漫才のような軽妙さもありますが、
やがてヒロインが背負った悲劇、原爆を生き残った重さ、
そして父と娘の物語を迂回して、
最後には生きることの価値に至るまで、
すべてをたった2人の演技と語りで、表現してしまう。
原爆の恐ろしさ、それが生み出した悲劇については、
いままでも本やテレビ番組を通して、
何度も語られ、語り尽くされてきたものでもあります。
そこにあるエピソードは、「そういうのもあったよな」と、
話として聴いているものも、多いかもしれません。
ただ、それをこの2人の名優の手で、
あたかもいま、目の前にある現実であるかのように、
再現することによって、感じる悲劇の重さは、
戦争実録ドキュメントとは、また別の重みがあります。
同じエピソードでも、1人1人の日常のなかから、
こうして浮かび上がってくるものを観ていると、
「ああ、こんなことは繰り返してはならないな」と、
胸にしみ入ることは必至です。
そういう意味で、テーマ的には素晴らしいものがあると思います。
8月、戦争を考える映画が続いたなかでも、珠玉の作品。
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┃4┃ Column (観おわったあなたへ)
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愛する人を失った時、遺された者に何ができるだろう。
どんなに泣いても、叫んでも、愛する人は戻ってこない。
この映画のヒロインにとっては、
愛する人が戻ってこないのは、自分のせいではない。
戦争のせいだ。原爆のせいだ。
そして個々人が背負っている運、不運。
あの日、あの時、あの瞬間に、
この広島にいたか、どうか。
外にいたか、どうか。
そして空を見上げていたか、どうか。
それだけで、人の生き死にが決まっていた。
彼女は生き残った。そして誰もがいなくなった。
その喪失感。その絶望。
自分だけが、生きていることへの疑問。
それから3年の月日のなかで、
彼女は自分への疑問を抱いたまま、生きていた。
雷にもおびえ、自らの記憶におびえ、
そして、目の前の幸せにまで、おびえていた。
死んでいった友人や家族を差し置いて、
こんな私が、幸せになったりしていいのだろうか。
恋に身を焦がしたりして、いいのだろうか。
まして結婚や、家族を持つことなど…。
原爆病を患い、余命幾ばくもないこの身なのに。
誰もが死んだのに、生き残った自分は罪深い。
そして何より、父親を守れなかった自分は罪深い。
苦しんでいる娘を見るに見かねて、
父親は彼女を訪ねてきたのだろう。
それは彼女の中にいる、力強い父親の姿だ。
父親は、彼女の本当の幸せを思っている。
だから、彼女が好きな人への思いを断ち切ろう、
目を背けようとするたびに、彼女をたしなめ、励ます。
幸せになれ、過去ばかり振り返るな、と。
人は、あまりの絶望に苦悶している時こそ、
その脳裏には、見果てぬ最愛の人の姿が蘇る。
それは、愛する人に対する無力さへの悔悟と同時に、
最愛の人からの励ましを、無意識のうちに求めているからだ。
たとえ、その場にいなくても、亡くなったとしても、
人間は愛する人の姿形を、そのやさしい言葉を、
思いやりのあるまなざしを、心に思い浮かべることができる。
そしてそこに、希望を見つけることができるのだ。
「オレの分まで生きて、幸せになるんだ」
「この哀しみを、語り継いでいく家族を作れ」
たとえ生死の境を隔てても、本当の愛はあなたを見捨てない。
不可能を可能に、絶望を希望に、
哀しみを生きる強さに変えていく力を与えてくれること、
それこそが愛することの、大いなる価値なのだから。
2004/9/10 岩波ホールにて。
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┃5┃ 次回予告 ほか
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その他、筆者からのお知らせなどなど。
★次回予告「スウィングガールズ」…………………………………
「ウォーターボーイズ」で完全にメジャー入りした矢口史靖監督。
その待望の最新作は、女の子、文化系クラブが舞台のようで。
でも、矢口監督が描くのは、いつだって青春の楽しさへの郷愁。
泣いて笑って感動できる物語作りでは、彼の右に出る者はいない?!
で、次回もお楽しみに。次回は火曜。
http://www.swinggirls.jp/
★今後の予定など………………………………………………………
来週は、あと以下の2本の予定。
「CODE46」http://www.code46.net/
マイケル・ウィンターボトムがSF映画?を撮ったもの。
サマンサ・モートン主演ってのが魅力ですね。
「珈琲時光」http://www.coffeejikou.com/
ホウシャオフェン監督の最新作は、東京が舞台の物語。
この映画のロケ地は、何と筆者の自宅から数百m…。
<それ以降>
その他、ヴェネツィアグランプリの「父、帰る」や、
http://chichi-kaeru.com/
シャリーズ・セロンがオスカーに輝いた「モンスター」、
http://www.gaga.ne.jp/monster/
その他、監督が替わったら面白くなったらしいという
「バイオハザードII」、SF映画の「アイ,ロボット」、
ジャン・ジャック・アノーによる動物系感動ものの、
「トゥー・ブラザーズ」など、とにかく話題作だらけです。
★連絡先は………………………………………………………………
【メールお待ちしてます!】
今回のメールマガジンはいかがでしたか?
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【休刊情報やちょっとしたコメントなど…】
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上記のサイトからなら、かしこまったメールにすることなく、
一行だけでもコメントやリクエストを書き込めます。
また、筆者の近況や休刊情報もこちらです。適宜ご確認を。
【他の映画のバックナンバーを探したいな…】
ウェブサイト:http://www.lares.dti.ne.jp/~espoir/
上記のサイトをゼヒゼヒ!訪れてみてください。
これまでの映画タイトルが五十音順で並んでいます。
また、今後の掲載予定や筆者の近況なども、連載中。
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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
Vol.356 2004年9月10日
発行者:Ak. espoir@lares.dti.ne.jp
(C)2001-2004 Ak. All rights reserved.
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