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【映画とは、人生を2時間で切り取るものだ】。そんな視点からつづる、1000文字の映画コラム。いろんな映画をきっかけに、生き方について考えてみませんか。ありふれた日常のなかで、答えを探すあなたに、ぜひ。

  • 最新号:2008-09-04
  • 発行周期:火・金・(木)
  • 読んでる人:522人
  • 創刊日:2001-03-20
  • Score!:96点
  • コメント数 : 0
  • メルマガID:33635
  • バックナンバー:全て公開
  • 発行者サイト:あり
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映画のなかの人生…Vol.350「誰も知らない」★★★★☆

発行日: 2004/8/13


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 ☆ ★ ☆  映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ ★
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。


_                 ___________
  Vol.350「誰も知らない」★★★★☆    2004.8.13(金)
 ̄                  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  【1】STORY
   母親が家出し、残された4人の兄妹。小6の長男は事情を
   察しながらも、気丈に妹や弟たちの世話を続けて暮らす。

  【2】Michelin
   シネカノン有楽町ほか。遅くとも2時間前到着が必須!

  【3】Review
   淡々とした映像の連続が、観客の深い想像を誘っていく。

  【4】Column
   子どもが「子ども」になれない社会が、どうして許される?

_______________________________________________Nobody knows

是枝監督の最新作は、今年のカンヌ映画祭でも話題作。
何てったって、史上最年少の主演男優賞を受賞したんですから。
柳楽優弥の名前は、いまや世界の映画界の知るところとなり。
是枝監督の作品がこれだけ注目されるのも、初めてですね。

<オフィシャルサイト>
http://www.daremoshiranai.com/


※ お詫び
1日遅れてしまい、すみませんでした。
その「リディック」★★★ですが、
あまり語るところがないこともあり、
blogにてレビューを公開する予定ですので、
そちらをご参照ください。申し訳ありません。
http://blog.melma.com/00033635/

★ 祝!350号!
本当にまあ、よくまだ続いているもんですね(笑)。
自分で自分にびっくりしてしまうくらい。
それでもいまだに、一銭にもなってませんが…。

前身も含めると、そろそろ全部で600本を紹介し、
期間も足かけ5年以上にもなりますが、まだ続きます。
皆さまも今後ともよろしくご愛顧の程を。


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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

母親と暮らす4人の兄妹は、存在も隠され、学校にもいけない。
家庭を切り盛りするのは小6の長男。ある日、母親が家出し、
長男は事情を察したが、それでも4人の生活を守ろうと、
彼は自分を犠牲にしながら、気丈に妹や弟たちの世話を続ける。


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┃2┃ 上映館ミシュラン (観ていないあなたへ)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ものすごい混んでますね。この週末からようやく、
シネカノン有楽町と渋谷シネアミューズでの2館上映になります。
それでも、混雑はもう目も当てられないでしょうね。

シネカノン有楽町は、閉館したシネ・ラ・セットの代わり?で、
新しくできたばかりのミニシアターです。
狭いんだろう、とタカをくくっていたのですが、
意外に広くて、びっくりしました。こりゃあ充分だ。

スクリーンも座席数に対して大きく、いい映画館でした。
「ミニシアターは狭くてどうも」という人も、問題なく。
一方で、渋谷はその「ミニ」シアターですから、
ある程度の大きさを求めるなら、有楽町がいいでしょう。

なお、本当に大きなスクリーンを求めるなら、
来週末から新宿テアトルタイムズスクエアでも公開なので、
ここが最大になります。ここまで待ってもいいかも。

というのも、現在、大変な混雑です。
自分は平日初回の1時間前に行ったのに、
すでに「残りわずか」で、2人並びではほぼ最前列。
渋谷で公開になっても、その動員力は微々たるものなので、
今後もこの大混雑が続くもの、と予想されます。

しかし幸い、この映画館は定員入替なので、
とにかく朝1で整理券を確保!
これさえしておけば、いい席にちゃんと座れます。
最低でも2時間前、週末なら3時間以上前にはいないと。
17時くらいになると、もう整理券はなくなっています。
観るには覚悟が必要。そう思っておいてください。

▼有楽町 シネカノン有楽町 上映中
10:30/1:25/4:20/7:15〜終9:50 

▼渋谷 シネ・アミューズ イースト/ウエスト 8/14(土)より
10:00/12:40/3:35/6:30〜終8:55 

▼新宿 テアトルタイムズスクエア 8/21(土)より
12:30/3:30/6:30〜終8:55 

▼関内 横浜ニューテアトル 8/20(金)まで
10:30/1:15/4:00/6:45〜終9:15 


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┃3┃ Review (観ていないあなたへ)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【ポイント】★★★★☆

<内訳>
テーマ   :★★★★★
ストーリー :★★★
キャスト  :★★★★★
スタッフ  :★★★★

内容的には、いままでどおりの是枝映画でした。
なので、これまで通りの4つ星なのですが、
今回はテーマが抜群ですから、☆1つを追加します。

是枝映画というのは、基本的に物語はありません。
あるシチュエイションを設定した上で、
そこに関わる人々の心の揺れや葛藤を、
ひとつずつ象徴的なシーンによって切り取っていく。

たとえばそれは、母親に見捨てられた絶望だったり、
そして兄として気丈に振る舞う気づかいだったり、
普通に学校に通う子どもたちへの羨望だったり。

観客は、その1つ1つの映像に込められた意味を、
順繰りに読みとりながら、自分自身の物語に重ね、
自分なりの意味、解釈を想像するように要求されます。

是枝映画というのは、物語を観客がイメージする映画です。
なので、普通の映画、普通に感動モノ!を想像していくと、
その淡々とした映像の連続と物語の不在に、
肩すかしを食らって、ひょっとすると退屈すると思います。

実際、人物たちを「切り取る」シーンについて、
是枝監督は思いついたモノをすべて映像化して押し込むので、
いささか展開が単調で、次第に怠惰になることもあります。
今回も、物語性を求める筆者にはちょっと眠かった…。

しかし、本作がこれまでの是枝映画と決定的に違うのは、
最初に設定したシチュエイション、テーマが絶妙だったこと。
「ワンダフルライフ」では、設定は天国の人々でした。
「ディスタンス」では、設定は新興宗教と加害者、被害者。

観客に対して、想像を要求しているにもかかわらず、
一方でその設定が超現実的な世界にあるので、
そこには相応の解釈力が必要だったように思います。
そのため、観客に対してけっこうな壁があって、
楽しい人には楽しくも、分からない人には分からなかった。

ところが今回は、いま身近にある日常、東京が舞台。
出てくるのはコンビニ、学校、公園、ありふれたアパート。
登場人物たちは、誰もが経験してきた少年・少女時代。
観ている側が想像を重ね合わせる余地が、幾重にもある。

そして、そのか弱き子どもたちが、手をつなぎ、
「ディスタンス」では焼き払われた「喪失」という過去が、
ここでは確実に、乗り越えられようとしている。
人々の「距離」は縮まり、「誰も知らない」日常が、
ここではポジティヴに、確実に描かれているのです。

演じる少年少女たちも、自然そのままによく撮れている。
主演の柳楽優弥は、誰かに甘えたい年頃にもかかわらず、
気丈に自分を犠牲にし、それでも時には爆発してしまう、
つらい少年の身の丈をそのままに表現しました。
充分カンヌの主演男優賞に値する活躍だったと思います。

これだけ観客が押しかけて、大変観るのが困難ですが、
それでも観るだけの価値はある映画、と言えるでしょう。
この映画を観ると、自分たちの日常がいかに満たされ、
恵まれているかを、誰もが振り返るでしょうから…。

「ワンダフルライフ」★★★★
http://www.lares.dti.ne.jp/~espoir/shokai/990422.htm

「ディスタンス」★★★★
http://www.lares.dti.ne.jp/~espoir/shokai2001/20010620.htm


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┃4┃ Column (観おわったあなたへ)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

この映画を観て、最初に思い出したのが、
アリエスの「子どもの誕生」という本だ。

それによれば、かつてヨーロッパでは、
子どもは全く尊重されていなかった。
たとえ子どもが何人亡くなろうと、
彼らは墓碑銘にすら、刻まれることはなかった。

その彼らが、「子ども」として扱われるのは、
ブルジョワジーによる英才教育が始まりだという。
資本家たちが、自らの後継者を育てるために、
彼らには特別な地位が与えられ、学校制度が始まる。

「学校」に行ける、それは子どもの特権だ。
子どもは大人とは違う、だから特別な教育の場がある。
そしてそれが、子どもらしさの所以でもあるのだ。

要は社会の発達が、人間の効果的成長を求めて、
「子ども」時代を作り出し、彼らの振る舞い、
粗暴で、やんちゃで、無垢な行いを認めていった。
いまや「子どもの人権」さえ、議論される時代だ。

そうした社会の発展の極限にある都市、東京。
その都会の片隅に、なぜかいまさら、
学校に行けない子どもたちがいる。

母親に「幸せへの足かせ」と思われ。
身勝手に愛され、そして捨てられ。
幾ばくかのカネだけが、彼らへの代償だった。

普通の「子ども」として生きられない屈辱。
父親に捨てられ、母親にも裏切られた絶望。
それでも、小さな妹や弟たちに対して、
両親の代わりとして振る舞おうという自覚。
少年は、絶望の中でも気丈に生きようとしている。

でも、学校には行きたい。友だちも欲しい。
目一杯遊びたい。おいしいモノを食べたい。
子どもとして当たり前の欲望が目の前をちらつく。
安易な犯罪への誘惑が、頭の中で揺れている。

それでも、彼は人生をあきらめない。
だって自分が諦めたら、みんな離ればなれになるだろう。
これ以上、誰かが家族に裏切られてしまったら、
いったい何を信じて生きればいいのか、分からないじゃないか!

絶望の中でもがきながらも、少年は歯を食いしばり、
その思春期の全てを、学校ではなく家庭に費やしていく。
これだけ、発展と繁栄を繰り返してきた社会の片隅で。
子どもが「子ども」になれないなんて、そんな矛盾があるか!

おそらく、絶えず欲望を満たしていく資本主義の発展は、
親を「親」ではなく、ただの個人に変えてしまった。
子どもを一瞬の欲望の対象、副産物に変えてしまった。
カネで養えばいいだけの、弱いつながりに変えてしまった。

子どもたちはこんなに、親を求めているのに。
子どもたちはこんなに、「子ども」になりたいと願っているのに。

でも、そんな現実を、誰も知らない。
子どもたちが、懸命に生き、愛する者を守れず、
倒れ、泣き、途方に暮れて、生きていることを知らない。

ニュースが今日も、実の親たちに
殺されていく子どもたちを報せている。
でも、そんな哀しい現実も、
ニュースになるまでは、誰も知らない。
繁栄の果てにたどり着いた、家族の崩壊。
たとえそれが、隣のアパートで起きている現実だとしても…。

2004/8/13 シネカノン有楽町にて。

P.アリエス「子どもの誕生」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4622018322/qid=1092386615/ref=sr_8_xs_ap_i1_xgl/249-9214378-1907551


┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃5┃ 次回予告 ほか
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
その他、筆者からのお知らせなどなど。


★次回予告「ぼくセザール10歳半1m39cm」………………………

なんだか重い映画が続いているので、ちょっと軽い映画を。
こちらの子どもは、もっと元気なやんちゃ小僧らしいです。
横浜のフランス映画祭では観客賞を受賞したという、
ちょっと楽しむにはよろしいフランスのコメディ映画。らしい。

で、次回もお楽しみに。次回は火曜。
http://boku10.com/

★今後の予定など………………………………………………………

来週のもう1本は、「華氏911」を観てきます。
もう言うまでもない、マイケル・ムーア監督の話題作。
徹底的に反ブッシュ、反戦を訴える彼の熱情のほとばしりが、
カンヌのパルムドールにまで達したという興味深い映画。
http://www.kashi911.com/


★連絡先は………………………………………………………………

【メールお待ちしてます!】
今回のメールマガジンはいかがでしたか?
ご意見、ご質問、ご感想などをお気軽にお寄せください♪
メールアドレス:espoir@lares.dti.ne.jp

※ なお、頂いたメールは本誌で紹介することがあります。
  匿名希望の方は、その旨をお書き添えください。よろしくです。

【休刊情報やちょっとしたコメントなど…】
http://blog.melma.com/00033635/
上記のサイトからなら、かしこまったメールにすることなく、
一行だけでもコメントやリクエストを書き込めます。
また、筆者の近況や休刊情報もこちらです。適宜ご確認を。

【他の映画のバックナンバーを探したいな…】
ウェブサイト:http://www.lares.dti.ne.jp/~espoir/

上記のサイトをゼヒゼヒ!訪れてみてください。
これまでの映画タイトルが五十音順で並んでいます。
また、今後の掲載予定や筆者の近況なども、連載中。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【映画のなかの人生、映画のような人生。】
 Vol.350 2004年8月13日
 発行者:Ak. espoir@lares.dti.ne.jp
 (C)2001-2004 Ak.  All rights reserved.
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