【映画とは、人生を2時間で切り取るものだ】。そんな視点からつづる、1000文字の映画コラム。いろんな映画をきっかけに、生き方について考えてみませんか。ありふれた日常のなかで、答えを探すあなたに、ぜひ。
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映画のなかの人生…「クイルズ」★★★
発行日: 2001/5/30━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆ ★ ☆ 映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ ★
★ ☆ ★ in Mail Magazine ☆ ★ ☆
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Vol.15 クイルズ★★★ 2001.05.30(水)
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【1】STORY
倒錯の天才・サド侯爵は、今日も想像の翼を広げ、
人々を背徳へと誘うクイルズ=羽ペンをふるっていた。
【2】Review
「ハンニバル」よりグロ、「ハンニバル」より高尚。
【3】Column
想像の翼は、自らを守るための麻薬にすぎないのか。
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マルキ・ド・サドの物語というから、
どちらかといえばエロを予想していましたが、
意外にもほとんどはグロ、でもそこまでひどくもなく、
むしろこれは高尚な文学者の物語なのかもしれません。
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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
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18世紀末フランス、精神病棟の奥深く。
今日もサド侯爵は羽ペン=クイルズをふるっていたが、
その内容は世間の好奇にさらされることとなり…。
【こんなときに観よう!】
この映画を観よう!と思うとき?
…どんなときでしょうねぇ。
と聴きたくなってしまいますが。
なんか、危ない自分が見つかってしまったときに、
それを肯定してくれる映画…かもしれません。
【公開劇場ガイド:日比谷スカラ座2】
スカラ座2も、どこかで書いた気がしますが。
とにかくシネコンよりも長方形の映画館で、
こぢんまりとした、横の広がりがない館内は、
何か異様な雰囲気さえあります。
私はL、M列あたりの席に座ることにしています。
階段にきちんと列名が書いてあるので、ご参考まで。
そうです、とにかく真ん中が私の好みなのです。
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┃2┃ Review (観終わったあなたへ)
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この映画は、何となく売り方を間違えている気がする。
ポスターをみても、コピーをみても、
単なるポルノグラフィをイメージさせるのはよくない。
現代の日本人が、サドと聴いたら、
たしかにエログロに考えるかも知れないが、
本来、彼は単なる退廃的な文学者である。
内容も、情報過剰な現代社会で読んでみれば、
「驚くほどエロ」というわけでもない。
だから、この映画自体も、「目を覆うほどエロ」
というシーンは、それほどあるわけではない。
ただ、グロはあからさまにグロであるので、
その道に弱い人は、要注意。
そもそも、この映画が本来描こうとしているのは、
内容はともかく、センスは平凡だった作家サドが、
どうしてこれほどまでに書くことにこだわり、
徹底的な反抗に身を浸していったのか、という点だろう。
その意味では、よくできていた気もするが、
単に名優たちが頑張りまくって救われていた気もする。
結局、侯爵も神父も最後に大事なものを失うが、
いまいち、そのあたりのスジが読みづらい。
せっかく哲学的なテーマを背景にしているのだから、
現実の批判一辺倒であるサド、
理想一辺倒である神父、
そして現実をうまく利用とする院長、
というそれぞれの構図を、
もっと鮮明に打ち出せばよかったのに。
と思っていたら、そんな小説は日本にあるそーです。
藤本ひとみ『侯爵サド』(文春文庫、2000年)
http://www.syugo.com/germinal/review/0039.html
なるほど、読んでみたいですが、時間があるかな…。
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┃3┃ Column (観終わったあなたへ)
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この映画のテーマは、実はタイトルのとおり、
クイルズ=羽ペン、すなわち「書く」ことの力である。
この映画の冒頭には、
サドが怯えて過ごさなければならなかった、
革命期の恐怖政治が描かれる。
貴族はいつ、断頭台に連行されるかわからない、
そういう時代をサドは過ごした。
彼にとって、現実は悪夢だった。
それらは否定の対象だった。
ゆえにそれが否定される世界に、
自らの夢を馳せたとしても、不思議ではない。
その夢をつづるクイルズは、
彼にとって、魔法の翼だったのだ。
それを知りながらも、
彼から翼を奪わざるを得なかった神父。
理想に燃え、神の理念を全うしようとした彼も、
現実という悪夢には、抵抗することができなかった。
そうして、現実に屈した侯爵と神父は、
最後になって、ともに大切なものを失ってしまう。
二人は、自らの主義・主張にとらわれるうちに、
本当に大事な、素直な気持ち…
「語るべきこころ」を失ってしまったのだ。
しかし失ったものは、なかなか取り戻せない。
だから最後に、神父もまた、クイルズを要求する。
自らの妄想を、加速させる魔法の翼。
そしてそれは、自らが失った何かを、
覆い隠すための麻薬にも他ならなかったのである。
実際、ボクもこうして、
自分の考えを言葉にしてみるうちに、
こころのなかにあるだけでは気づかなかった、
いろいろなことを発見する。
書くことは、自分の世界を築き上げ、
まさに「かたち」にしていく、
最高の手段であることは、およそ間違いがない。
しかし、それだけでは終われない。
自分の世界は、誰かと重ねてこそ、
ともに抱いてこそ、意味があるものだ。
書くことは、伝えることだ。理解されることだ。
自分だけではない、他人のこころのなかさえも、
「かたち」にできるから、言葉には意味がある。
ボクは、ボクだけではない、誰かの気持ちを、
今日も言葉に変えていくよう、願い、
努めていかねばならないのだ。
5/28 日比谷スカラ座2にて。
"Quills"
★次回予告「メトロポリス」………………………………………………
原作・手塚治虫、脚本・大友克洋、監督・りんたろう。
強力なスタッフをそろえたこの作品は、
マニアック化しつつある日本アニメに新風を吹き込めるか。
少なくとも、原作きれいにリニューアルされ、
むしろ大友的な世界観に塗り替えられているが、
本質はどこまで描き直されただろうか。
そしてテヅカテヅカしい原作の、哲学的かつ、
先の見えない展開はどれだけ生かされているか。
で、次回もお楽しみに。
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【映画のなかの人生、映画のような人生。in Mail Magazine】
Vol.15 2001年5月30日 発行者:Ak.
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