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◆ 蔵元日記(新入社員)

発行日: 2006/3/10

◇■■■■        蔵 元 日 記         ■■■■

■ 旭酒造株式会社  http://asahishuzo.ne.jp/

■このメールに関するご意見ご感想は→ webmaster@asahishuzo.ne.jp

■          2006年3月10日 vol.119


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  目  次

 ◆  蔵元日記(新入社員)

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▼ 蔵元日記(新入社員)

平均年齢の若いことが売り物の旭酒造の製造スタッフも流石に時の
流れには勝てず一年ごとに平均年齢が上がっていきますが、今年は
少し下がりそうです。と、言うのは、この四月から大学を卒業して
22歳の弘津君が入社するからです。尤も、二月からよんどころ無い
事情で休んでいる麹担当者に代わって製麹の指揮をとっている松村
君(本来は瓶詰め担当)のサブとしてすでに来てもらっていますか
ら、四月から正式入社といっても、本人としては感動のないことお
びただしいかも知れません。

彼も本来は公務員志望で、一次試験をパスしていたのにそれをやめ
て旭酒造に入社してきた変り種です。そうすると、「日本酒が好き
で、酒が造りたくて」というよくあるパターンのようですが、彼は
旭酒造に入社が決まるまで日本酒にさしたる関心はなかったようで
す。純粋に地元の企業として興味を持ち、その結果として旭酒造に
入社したいと申し込んできたようです。

実を言うと、旭酒造の社員はこのパターンが多く、「日本酒が好き
で」という思いからという社員は過去少数で、面接で聞いてみると
「日本酒なんて飲んだことない」と答えた社員がほとんどです。

これは、業界としては若年者の需要開発が出来ていないということ
で憂うべきことですが、旭酒造としては好都合なんです。酒は本来
「米を担いでなんぼ」「ホースを引いて走ってなんぼ」で出来る。
担当者段階の思い入れで出来るんじゃじゃなしに、作業の連続の結
果として出来る。酒造りというものは、まず酒蔵の根本理念があっ
て酒の方向性が決まり、その上にその方向性に最適の技術が選ばれ
る。理念の上に技術が乗る。そんな考え方の旭酒造にとってはなま
じっか知っているより知らないほうがいいんですね。

もちろん、安心していただきたいのは、この酒蔵で日本酒に初めて
出会った彼らが日本酒にはまって行くことです。その意味では、よ
く言われることですが、現実に彼らの出会ってきた飲酒シーンに
「また飲みたくなる日本酒」がなかったということでしょうね。

ただ、ひとつ困るのは、入ってきた彼らを見ていると、現代の機械
文明至上主義(注1)から来てると思うんですが、養老先生(注2)言う
ところの「ああすればこうなる」式の硬直した考え方をしている者
がほとんどなんです。

酒造りはテクノロジーが大事でマニュアルで酒は出来ると公言して
いる私が言うのもへんですが、酒造りは「結局分からないというこ
とが分からない」と本質は理解できないんです。学校の勉強は必ず
正解がありますが、酒造りに正解はありません。最近、酒造りのメ
カニズムもかなりのところまで解析されて、その結果やっと「最終
的に解析しつくすことは不可能ということがやっと解析された」状
態と思います。

これが分からないとマニュアルを渡されて造る酒造りから先に進む
ことが出来ません。つまり、70点は取れるけど、98点は取れない
し、98点を狙ったけど結果として85点しか取れなかった「次点とし
ての85点」も取れるわけないんです。

おかげさまで、そんな社員の中にもぽつぽつそのあたりを理解して
いる社員が出てきています。これから何人の製造スタッフがこのこ
とを理解することが出来るかが旭酒造としても次のステップに進む
ことが出来るか否かの勝負の別れ目と考えています。(まったく今ま
で聞いたこともない考え方を要求される社員のほうは大変でしょう
が)

ところで、毎年数人が入ってくるということは、毎年数人がやめて
いくということです。小さな酒蔵ですから、なかなか彼らの希望に
応えてやる事も出来ず、また育てきることの出来ない自分の力不足
に対するもどかしさと貴重な青春の一時期をかけてくれた彼らに対
しての申し訳なさで一杯なんですが、最近ちょっと隠れた自慢があ
ります。

それは再就職先として酒蔵を選ぶ人間が過半数を超えていることで
す。そこで続くかどうかは別ですが、それだけ魅力あるものと酒蔵
を捉えてくれているということですね。ま、旭酒造はあの社長が問
題だからやめたけど、酒蔵の仕事そのものは面白いし将来性あるも
のと捉えてくれているということですから、ちょっとうれしい。



(注1)この機械文明至上主義の感覚は、地元に本社のある中小企業
が少なく、地元の主要産業が大企業の出先工場である、つまり
「手」はあるけど「頭」が地元にない、「手」としての機能性ばか
りが求められ自分の「頭」で考えることは許されない地方都市の場
合特に顕著にあると思います。

(注2)後存知「馬鹿の壁」や「スルメを見てイカが分かるか」など
のベストセラーを著した東京大学元教授


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『まぐまぐ( http://www.mag2.com/ )』(ID 000023022)、
を利用しています。

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 ◆発行    山口県玖珂郡周東町獺越2167-4
 ◆発行人   桜井 博志
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