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蔵元日記(能登輪島)

発行日: 2003/11/25

◇■■■■        蔵 元 日 記         ■■■■

■ 旭酒造株式会社  http://asahishuzo.ne.jp/

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■          2003年11月25日 vol.072


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  目  次

 ◆ 蔵元日記(能登輪島)

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▼蔵元日記(能登輪島)

前回の蔵元日記で能登に行った話にちょっと触れましたが、ニューヨーク
に出張する2日前に能登へ行って来ました。

上野発能登半島行きの地酒列車と次の夜の能登半島各地の会場(11ヶ
所)で開かれる食談義の一会場にゲストで呼んで頂いたものです。残念な
がら地酒列車のほうは2日後にニューヨーク行きを控えてこれに参加する
とアメリカできっと二日酔いで死んでいるに違いないと思われたので夜間
の部は敵前逃亡(?)させていただいて、食談義当日の昼間だけ乗車する
ということで許してもらいました。

これは能登空港開港記念行事としてNPO法人である「能登ネットワーク」
が企画した行事で、このわた・いしり醤油、勿論「開運」の波瀬杜氏や天
保正一さんなど優れた能登杜氏などに伝承される酒造技術など能登の優れ
た食文化を全国に発信したいという目的で開かれたものです。

ゲストは豪華(私以外は)で作家の勝谷誠彦さんやピアニストの国府弘子
さん・フルートの赤木りえさんなど。特に居酒屋を巡るエッセイで有名な
太田和彦さんは個人的に著書のファンでもありますから、写真で見るだけ
だった本人に実際に接して感激しました。自分の会場はほっといて大田さ
んの話を聴きに行きたいぐらいでしたが残念。

と、いうようなええかげんな私が何の話をするゲストで呼ばれたかという
と「技能を受け継ぐ/無濾過時代の旨い酒」というテーマだそうです。旭
酒造が私と社員だけで酒を造っていることが面白がられて呼ばれたようで
す。

ま、会場である輪島市の中島酒造の社長も談義に加わるようですし、何よ
りこの蔵元日記に何度も登場しているフルネットの中野社長もコーディ
ネート役で参加されるそうですから心強かったんです。

実際は食談義の会場に着いて見ると中島酒造の本宅の奥座敷が会場で、す
でにお膳も準備されていて宴会の雰囲気。ほんとは十分ぐらい冒頭で話を
しろといわれて準備していたんですがそれも話したかどうかわからないう
ちに宴会に突入していました。

会に参加していた某証券会社のキャリアOLの方から「わたしたちの仕事
にも一脈通じる話で面白かった」というお褒めの言葉と一緒に「だけど酒
を飲んでいる姿はまったくのんべのオジサンでしたね」という鋭い観察も
いただきました。(ま、会場が良かったのと美人が多かったということで
男の性で談義より宴会になってしまったとお許しをいただきたいと思いま
す)

だけどホントにすごいお宅で、上がりかまちから奥座敷まで4メートル幅
の、私なんざ滑らないようにするのに精一杯というぐらい磨き上げた黒檀
のような見事な廊下がついていることでもわかるようにさすが輪島の旧家
という趣のある奥座敷でした。

勿論食器も輪島塗を中心にすごいものです。ただ、何よりびっくりしたの
は料理の美味しかったこと。普通地方都市で出てくる料理ですから、砂糖
を使いすぎていたり、濃すぎたり、はたまた最近流行の味はともかくテー
ブルの装飾だけ一流みたいなモノがでてきそうなものですが、まったく違
いました。

抑制された趣味の良さとでも言いますか、非常に洗練されているんです。
派手じゃないけど粗野でもない。全国に漆器産地はたくさんあるのに全国
制覇した輪島塗のお陰で全国の名旅館や料亭、そして旧家と輪島という地
域がつながりがあったからじゃないかなと思うんですが、単なる地方都市
の組み立てじゃないんですね。その前の週に行ったフロリダやその後行っ
たニューヨークのボリュームだけはすごい料理と好対照でした。

料理だけでなく器も奥座敷も洗練されていますけど全体に金をかけて作っ
たという感じは毛ほども見せないんです。

ここが大事じゃなかろうかと思うんですが、確かに現在このぐらいの組み
立ては結構出来ます。金をかければ出来るんですが、だけどここまで行こ
うとすると生半可な金のかけ方じゃ出来ないと思います。

能登半島の人々が数百年をかけて醗酵熟成させた文化を、現代の消費文明
がただ「取り寄せて」「要素を組み合わせて」「混ぜ合わせて」作る為に
は膨大な金がかかると思います。

最後に閉会レセプションで感想を求められて話したのはこんなことでした。

能登は素晴らしい。こんな文化は一朝一夕で出来ない。
私は旭酒造の社長兼杜氏として「酒は技術で出来る」と日頃話していま
す。だけど技術を追求すればするほど技術だけで出来ない酒の奥深さを感
じています。同じ米と麹を使ってなぜ中国人が造れば紹興酒になり、日本
人が造れば清酒になるんでしょう。同じ麦を使ってもなぜウイスキーは蒸
留したては飲めた代物じゃなくて麦焼酎は「ハナタレ」といわれて珍重さ
れるほど最初から美味しいんでしょうか?

上手く話せませんがここには技術だけで語れない何かが有るように感じま
す。つまり日本酒にとって技術は大切なものですが技術だけで素晴らしい
お酒が出来上がるほど「やわ」なものではないんではないでしょうか。

同じように能登は混ぜたりくっつけたりして出来るものではないので大切
にしていただきたい。

いや、自分で書きながらかっこよすぎてまいっちゃうんですが、よく考え
てみれば自分が一番今回能登に来て勉強したんですね。

能登と同じように日本酒というものは日本民族の育ててきた精神風土と歴
史抜きには出来ないものです。前回の蔵元日記でも書きましたがこの形の
まま外国にも提案していきたいと思います。このあたり外国人から見たら
非常に理解し難いかもしれませんがきっとわかると信じて提案していきた
いと思います。

奇しくも先日の新聞によりますとあの「トヨタ」が「クールな日本」を前
面に打ち出すイメージ戦略に転換を始めたそうです。





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『まぐまぐ( http://www.mag2.com/ )』(ID 000023022)、
を利用しています。

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 ◆発行    山口県玖珂郡周東町獺越2167-4
 ◆発行人   桜井 博志
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