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蔵元日記(ムートン・イヤー?)

発行日: 2003/1/16

◇■■■■        蔵 元 日 記         ■■■■

■ 旭酒造株式会社  http://asahishuzo.ne.jp/

■このメールに関するご意見ご感想は→ webmaster@asahishuzo.ne.jp

■          2003年1月16日 vol.062


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  目  次

 ◆ 蔵元日記(ムートン・イヤー?)

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▼蔵元日記(ムートン・イヤー?)

前回のメルマガは新年早々小難しい話で失礼しました。今年は未年ですの
で羊にちなんだ軽い話題で一つ。私の好きな言葉でこんなのがあります。

「われ一位たり得ず。されど二位たるを潔しとせず。われムートンなり」

ラフィット等と並んでボルドーワインの格付け一級に輝くムートンのオー
ナーであるフィリップ男爵の言葉ですね。ラベルにもちゃんと書いてある
そうです。私は読んだ事ありませんけど。これでも大学で第二外国語は仏
語をとったんですが。単位と語学力の間には広い河が流れているようで
す。

ま、私の不勉強はともかくとしてムートンの話に戻りますと、代々のオー
ナーのロスチャイルド家はユダヤ人で、しかも時の皇帝ナポレオンと不仲
という事もあって19世紀のボルドーワインの格付けで第二級にされてし
まいます。

この無念の格付け二級のムートンを20世紀初頭に引き継いだのがロス
チャイルド家のフィリップ男爵で、それ以後この言葉をモットーに、完璧
を目指す情熱と妥協を許さない姿勢でシャトーを徹底的に改善し、最高の
ワインを求めていきます。

「世界のムートン」と並べたら世の愛好家から石が飛んでくるかもしれま
せんがまさにこの言葉が私どもが獺祭を世に出し続ける心と通じるものが
あるんです。

私どもも常に最高を目指しています。しかし、この戦いの始末の悪いとこ
ろは終わりの無い戦いということです。しかもそのうち「この前の獺祭の
ほうがよかった」なんて自分のところの酒まで幻のライバルとして登場し
てきたりすることです。

だけど何時かは次の言葉をはいてみたいですね。これがかっこいいんです
よ。

ムートンはフィリップ男爵の努力が実って20世紀の後半に悲願のボル
ドー格付け一級になるんですが、その時以降男爵の言葉は次のように変わ
ります。

「われ一位なり。かって二位なりき。されどムートンは変わらず」
何時か言いたいですね。酒を造っているものの夢じゃないでしょうか。
「されどムートンは変わらず」フィリップ男爵の誇りと夢と何より夢は必
ず実現するという強い意志を感じます。

旭酒造も昭和59年に父から引き継いで、酒質・販売体制、そのあまりの
課題の多さに地べたを這いずる様な努力の続いた時も、それらに少し見通
しが立って獺祭を発売した時も、そして今も、私どもの心は常に変わりま
せん。いつも最高のものを追い求めています。そして、それは今まで変わ
らなかったように10年先20年先も変わりません。

今の世の中はもう少し軽い方が流行りなんでしょうが、やっぱり日本人に
生まれたらフランス人の後塵を拝していてはいけない。

未だ新年の屠蘇に酔っているのかとお叱りを受けそうなので未年メルマガ
第二号「初夢編」を終わります。


(製造研修)

今週から、製造課長である西田と麹担当兼務の製品課長である山田が各々
一週間づつの製造研修に出張します。目的はもろみ管理と麹です。彼らは
二人とも旭酒造に入って酒造りをおぼえました。ですから、旭酒造の酒造
りしか知らず、一度他所に研修に出したいと思っていました。

こういう場合、東広島にある酒類総合造研究所(竹下内閣時代に計画され
た地方分権目的の国立機関地方移転のほとんど唯一の成功例)が酒蔵の子
弟などを対象に開催している醸造研修に参加する事が一般的なんですが、
旭酒造の場合は仕込みが純米吟醸に特化していることもありそれに参加さ
せることが必ずしもよいことにならないと逡巡しておりました。

つまり、こういうことです。全ての酒蔵が指導対象の国の機関ですからど
うしても普通酒の仕込みが研修対象になります。すると、日頃吟醸仕込ば
かりで白刃の上を渡っているような仕込をしているのに研修に行ったら幅
5メートルもある手すり付の歩道橋を渡るような仕込の研修をするように
なります。これでは研修にならないばかりか反対に悪影響になります。

もちろん、原理は一緒で普通酒の原理を突き詰めたものが吟醸酒の仕込み
ですから、失礼なことを言うなといわれればそのとおりなんです。ところ
がこの事は矛盾しているようですが経験の豊富な人間にとっては普通酒の
仕込から吟醸の仕込みが理解できるんです。しかし、うちの社員は平均年
齢が30歳すれすれという事でもわかるようにその意味では経験不足ばか
り。それも入った最初から麹は突きハゼの吟醸麹だけ、仕込みは長期低温
発酵の吟醸もろみだけしか見てないんですから、普通酒の麹や仕込を見た
ら青天の霹靂で、「酒とはこんなものか」「今までの苦労はなんだったの
か」「社長にだまされた」というに違いないんです。

そうなったら大変だから出すに出せなかったんですが、その辺り吟醸だけ
に特化して教えてやろう、一番厳しいところを見せてやろう、というとこ
ろがあったんです。

普通は酒蔵にとってこの時期は春の新酒鑑評会の出品酒の仕込みで、一番
大変な時期です。旭酒造でも一人でも戦列から外れるのは痛いんです。と
はいえ、社員に豊富な経験をつんで成長の栄養にしてもらいたくて、出す
ことにしました。

ということは製造関係のキーパーソンが週代りで一人づついなくなるんだ
から大変です。そうすると日頃口だけで手が動かず、杜氏兼務の「口先介
入」社長も現場作業を受け持たざるを得なくなります。

この二週間、麹をまた分担しております。いや、体力が要りますね。これ
だけ汗をかけば日頃の不摂生でついた脂肪も落ちますでしょうか。乞う、
ご期待。




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『まぐまぐ( http://www.mag2.com/ )』(ID 000023022)、
を利用しています。

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 ◆発行    山口県玖珂郡周東町獺越2167-4
 ◆発行人   桜井 博志
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