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蔵元日記2002/03/01

発行日: 2002/3/1

◇■■■■        蔵 元 日 記         ■■■■

■ 旭酒造株式会社  http://asahishuzo.ne.jp/

■このメールに関するご意見ご感想は→ webmaster@asahishuzo.ne.jp

■          2002年3月1日 vol.045


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  目  次

 ◆ 蔵元日記(アクシデント)

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▼蔵元日記(アクシデント)

酒蔵をやっていますと、春風駘蕩の毎日なんてほとんどありません。何か必
ずトラブルを抱えているのが当たり前で、「人間はある一定以上悩む能力が
無いから大丈夫。救われている。」とうそぶく毎日です。尤も、と、いうこ
とは何も無い無風が続くとグチグチ小さな事を気にし始めるので、社員や女
房から見たら何か大きな悩みを抱えさせておくほうが穏やかで良いと考えて
いるかもしれません。

で、最近のアクシデント二例。


新人津川君の盲腸。

今年の四月から入社予定の日大四年生の津川君。彼は四月一日の正式入社ま
で、後は卒論のリポートだけを提出すれば卒業単位に達するということで、
三月卒業までの一月を入社前研修にやってきました。(優秀なんですね。ウ
ン十年前の私は、部活と楽しい学生生活の四年間の当然の帰結として年次取
得可能のフル単位を取らないと卒業できない現実に悩まされていました。す
べての試験の答案とリポートに就職先が決まっていることを欄外に記入して
アピールし、合格すれすれの答案にいくらかでも温情点の上乗せを期待して
いましたけど。)

研修2日目に、丁度寒造りの取材にやってきたテレビ局の目にとまり、集中
的に取材されていました。(山口県内の人は見た人も多いと思うんですが、
「プラス1やまぐち」で放映されたあの新人蔵人です。)

ところが、その彼が夕方事務所に顔を出して「腹が痛くてたまらないから、
早めにあがって良いか」と聞いてきたそうです。その様子を見て、ただ事
じゃないと感じた先輩同僚達の、「それは医者に行かなくっちゃ駄目。」と
いう意見を聞いて最寄の病院に診察してもらいに行った彼はそのまま盲腸と
診断されて入院してしまいました。

実際に切った盲腸を見せてもらった女房によると、全長15cm、ソーセージ
ぐらいの立派な盲腸だったそうです。本人に言わせると、手術は麻酔の効き
が悪くて、「痛くて痛くて」というものだったそうですが、「なぜ、みんな
盲腸と聞くと笑うんでしょうか。病室で隣り合ったじいちゃんの反応も盲腸
は病気じゃないというものでしたし、それも笑いながら話すんですよ」と首
をひねっていました。

だけど、わかりますよね。生命の危険の無いとされる病気にかかった知り合
いに対し、がんばれよの意味をこめて笑うって。反対にここで笑ってもらえ
るパーソナリティと、なんとなく笑えないパーソナリティでは長い人生にず
いぶん違うと思うんですよね。(もちろんいい気味と思われるようじゃどう
しようもないですけど)酒蔵も愛嬌が大事ってね!?


麹担当者のダウン

それより深刻だったのは麹担当者のダウン。麹の小野田君はその物事を一点
目指して追求する性格から「獺祭」の麹担当としてなくてはならない人間で
す。彼を見ていて、麹の担当者にとって麹をイメージする力、その目標に対
して現在の麹室で作業中の蒸米がここはこんな状態であそこはこんな状態そ
こはこんな状態だから全体としてこういう状況にあるということが理解でき
る力がいかに大切か、反対に言うといかに彼が優れているかわかったんです
が。

その彼がダウンしちゃった。

今年の復帰は絶望的で、何とかこの秋に彼が酒蔵に帰って来るまで現在のス
タッフで耐えるしかないという状況です。私も「ヤバイなぁー」と思ったん
です。

だけど悩んでもしょうがない。じゃ、どうする。

考えてみればあまりにも彼が優秀だったゆえにみんなが寄っ掛かっている。
麹の作業がブラックボックスになっている。代わりの人員が育たない状態
だったんですよ。

先ほど出た津川君(この時点ではまだ盲腸になっていなかった)からは「教
えていただければ小野田さんが倒れている間の麹作業は自分がやります」と
いう申し出もありましたけど、最初から麹担当にしちゃうと、麹というのは
酒蔵にとって大事な部門ゆえに彼の製造技術者としての将来性を狭めちゃう
ようで、彼なら教え込めば即戦力として程度まではすぐできるだろうとはわ
かっていたんですが、首を縦に振れませんでした。

悩むうちに、例によってピンチはチャンスに変えれば良いと思い出しました。

ちょうど良いから、ある一定のライン・欲を言えば70点の出来の麹ぐらい
誰でも出来るように作業標準を作りたかったし、何とか技術をもう少しわか
りやすい文章に落とせるように解析しよう・それがほんとの酒蔵の社長の仕
事と考え始めました。

で、まあ今年は自分でやるのが個々の作業の状況が一番分かりやすいから5
月までは自分が首を突っ込んでやろう、但し、楽をしたいので、完全に昼に
発生する作業に位置付けられる蒸米の引き込みから種切までは山田君に任せ
て手伝いに回り、夜間作業は自分でやろう。

彼は仕事を全体的に把握する力があるので、やっとスムーズに動き出した瓶
詰部門から抜くのは惜しいんだけど、彼の下に二人ほどつけてやってもらお
う。(尤もここまでの作業で50%の成否は決まっちゃうので、残りの夜間
作業を私がやるといっても実際の麹製造の巧拙という点では気楽なもんなん
ですが)

ということで現在麹の夜間作業は私がやっています。(今年の「獺祭」は大
丈夫だろうか?・・・)女房は私がそれほど高尚な仕事はしていない(!)
ということは知りませんから、夜毎度毎度起きていく私を見て「大変ね」と
いいますし、出荷部門の田中のおばちゃんは「社長は何が起こっても平気な
顔をしているね」と誉めてくれるし、個人的には実際の作業に携わっている
という高揚感はありますし、ちょっと気分の良い毎日です。社長としてこの
程度で気分が良いようじゃ駄目なのはわかっているんですけどね。そうそ
う、小野田君から結構早く復帰出来そうという電話もありました。彼のため
にもちょっと安心。

こんな調子で波高しの毎日をあっちにぶつかりこっちにぶつかりで過ごして
います。


ここまで読んでいただいて理解いただけたと思うんですが、製造する酒のほ
とんどが純米吟醸酒でデジタルな機械では制御しきれない微細な範囲で微妙
な制御を作業上必要とするため、人間の手でせざるを得ないものが多いので
す。

と、言うことは技術が個人に帰属しやすくなるんですが(たとえば杜氏のよ
うに)、私どもはそれをよしとせず酒蔵が持とうとしています。

これこそがいつまでも「獺祭」の品質を守る秘訣、昨年より今年・今年より
来年より優れた「獺祭」を出すための秘訣と考えています。


おとこのおんなの間には?

女房と娘の買い物に広島の街中を引きずりまわされながら、そう言えば自分
も夏のジャケットに合うパンツが欲しいと思いつきました。

基本的には私は洋服を買うときは疑わしきは罰せずじゃありませんが、少し
でも首をひねるようなとこのある服は買わない主義です。

だから買うときはほんとに自分が欲しいと思う服しか買いません。よって、
娘が「お父さんはあのセーターしか持ってないんかね。いつ見ても同じ服
じゃね。」と笑ってましたが、結果として一シーズンずっと同じ服を毎日着
ていることもあります。

で、良いのがあったんで買ったんですが、金を支払う段になって自分の予想
より三割ぐらい高い価格に目をむきました。

それを見て女房と娘が笑い転げていました。

何度も試着してもちろん価格もじっくり見てやっと決める自分たちの買い物
の仕方との違いが面白かったんでしょう。なんせ、こっちは服を買いに店に
入るときはわき目も振らず欲しい服を探してなるべく早く買う。一目見てな
ければとっととその店を出る。店員さんに「どんな洋服をお探しですか?」
と声を掛けられる前に勝負を決してしまわなければいけないんです。声を掛
けられたらもう買わなきゃいけないという強迫観念に取り付かれる上に、そ
の意識に過剰反応して声を掛けられたら無愛想な返事をして買わずに店を出
てしまう方ですから。

女房の買い物にかける熱意の半分でも私もかけたら。もっとワードローブも
充実してくるんでしょうがね


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『まぐまぐ( http://www.mag2.com/ )』(ID 000023022)、
を利用しています。

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 ◆発行    山口県玖珂郡周東町獺越2167-4
 ◆発行人   桜井 博志
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