| >> 記事トピックス一覧 |
月刊漢方鍼医 2008年3月号
発行日時: 2008/3/1今月の所感 隅田 真徳
昨年4月の在る日、杏雨書林より私に仁和寺版「黄帝内経太素」巻21.27の影印、翻字、注釈の書が謹呈されてきました。
東洋鍼灸以来の友人荒川緑氏が今回の作業に加わっていた由にて、私を謹呈リストの端に「そっと加えておいた」との事情によるものでした。この書の末文(小曽戸洋氏筆)が大変興味深く、日本で鍼灸に携わる者の基礎知識として共有したいと願い、下記に転記いたします。
成立と伝承
『黄帝内経太素』全三十巻は、唐初(六二〇年代頃)、通直郎守太子文学の任にあった楊上善の撰になる『黄帝内経』の注解書である。内容は『素問』『霊枢』の文章を類別し、摂生・陰陽・蔵府・経脈・輸穴・診侯・証候などの篇目に再編集して自らの注釈を加えたものである。
楊上善自身が『素問』『霊枢(針経・九巻)』を再編して『太素』の本文を作ったのか、あるいは『太素』本文はそれ以前から存在していたのか否かについてははっきりしないが、『素問』『霊枢』から『太素』へと発展したことは間違いないであろう。『太素』の篇目の方が『素問』『霊枢』のそれよりも古いと主張する人もいるが、首肯できない。ただし、現伝の『素問』『霊枢』は北宋時代に校勘され、印刷出版されたテキストに基づいているため、文字の古態という面では日本旧伝の『太素』のほうが明らかに唐代の旧を伝えている。
中国ではこの楊上善注『太素』は北宋代までは伝わったが、南宋に至って亡失した。
日本への伝来
日本へ『太素』が渡来したのは八世紀の中頃、遣唐使によってである。あるいは天平勝宝六年(七五四)、有名な鑑真来日時の遣唐使帰国船で運ばれた可能性も高い。舶載された『太素』はただちに評価され、『黄帝内経』のテキストとしてそれまでの『素問』『針経』の座を奪い、天平宝字元年(七五七)の勅令で医学教科書の筆頭に指定された。
『太素』の医学教科書としての優位はおよそ五百年間も続いたが、十三世紀末に林億ら新校正注『素問』の南宋刊本が伝来し、さらに十四世紀に『霊枢』の元刊本が渡来してからは、『黄帝内経』のテキストの座は再び『素間』『霊枢』に奪還され、次第に忘れ去られる存在となった。
仁和寺本の発見
江戸時代の文政年間(一八一八〜三〇)、医学古典研究を揺るがす大発見があった。久しく世から姿を消していた宝典『黄帝内経太素』が京都仁和寺の秘庫から出現したのである。
唯一この世に残った『黄帝内経太素』は、丹波頼基(丹波康頼の八代の孫)が仁安二年(一一六七)から翌年にかけて手写した平安時代抄本である。この頼基抄本はどういう経緯か仁和寺の秘庫に入り、長年人知れず眠りについていた。それが江戸後期、忽然と姿を現したのである。
まず巻二十七が市中に流出して京の名医・福井榕亭(一七五三〜一八四四)の入手するところとなり、文政三年(一八二〇)、福井家はこれを模刊して公開し、『太素』研究の口火を切った。ついで浅井正翼・小島宝素らが仁和寺本の砂写に尽力。江戸の考証医学者らに伝写された。現在、仁和寺庫外流出分(香南書屋所蔵本)を含め、全三十巻中二十五巻分の現存が確認されている。
この仁和寺本『太素』の発見は、当時日本で隆盛を極めつつあった考証医学派の人々に衝撃を与え、古典研究の重要資料として迎えられた。多紀元堅の『素問紹識』、渋江抽斎の『霊枢講義』、森立之の『素問攷注』など幕末考証学の『内経』研究のめざましい成果は、『太素』の出現に負うところが大きい。
中国人も自国で遥か昔に失われた『太素』の発見に驚いた。その存在が中国に知られたのは、明治十七年(一八八四)に楊守敬が日本から影抄本を持ち帰ってからである。日本では従来、巻二十七の福井家本を除いて『太素』は出版されなかったが、中国では幾種もの版本が出た。その代表的なものが中華民国十三年(一九二四)刊の粛延平本で、かつて『太素』といえばその影印や活字印本に拠るしかなかった。しかし粛延平本には仁和寺庫外流出(杏雨書屋書蔵本)の巻二十一・巻二十七や、明治新出の巻十六、その他一部は収められておらず、かなりの不完全本であった。仁和寺所蔵『太素』の全貌は、一九八一年の写真版出版によって、初めて明らかとなった。最近中国から日本写真版を参考とした活字校訂本が出版されたが、むろん杏雨書屋本は参照されていない。
杏雨書屋所蔵の残巻
京都仁和寺の秘庫に久しく眠り続けていた佚存書『黄帝内経太素』(仁安年間・丹波頼基抄本)のうち、巻二十一と巻二十七の二巻は化
政年間に流出して京都の名医・福井家の蔵に帰した。
巻二十七は前述のように文政三年(一人二〇)福井家によって影刻されている。影模者の源随は従来不明とされていたが、福井榕亭の次男山本恭随(一七九六〜一八六八、名は有功、別号は達所・樫翁、典薬大允)のことである。恭随二十五歳のときの影紗と知れる。
福井家の文政影刻本は精巧な出来映えで、原本が影印されていなかった従来においては、巻二十七に関しては文政影刻本に拠るのが最善であった。巻二十一はどういうわけか福井家は影刻しなかった。
福井家の蔵していた仁和寺本『太素』巻二十一・二十七残巻は、昭和二十五年、神田喜一郎氏の斡旋により、武田長兵衛氏に譲渡された。記録には同年十一月十七日とある。すなわち本書影印の原本である。
この『太素』巻二十一・巻二十七は昭和五十六年五月の第七回香南書屋特別展示会で部分的に展示されたことがあり、『香南書屋図録』(開館二〇周年記念、一九九人)にも一部分の図版が掲載されているが、全面的に公開されたことはかつて一度もなかった。このたびの
カラーによる全部分の影印と翻字注の出版は、従来の『太素』研究を補完する意味ではむろんのこと、日本の古代医学文化史、さらに広く日本書誌学上において意義深いことといえよう。
********************************************************************
3月本部研修会案内
〈日時〉平成20年3月9日(第2日曜日)
〈会場〉中野サンプラザ8F
〒164-8512中野区中野4−1−1 TEL 03-3388-1177
◆開会・点呼
9:30 出欠点呼
9:40 〜 10:00《医事寸言》 会長:福島賢治
【研修部】
10:00 〜 12:00 <実技公開>
福島賢治・加賀谷雅彦・堤 卓郎
12:00 〜 13:00 昼食
13:00 〜 16:30 <臨床実技研修>
取穴・基本刺鍼・臨床実技研修・反省会
【養成講座】
10:00 〜 12:00
「治療院経営について」 進行 神岡孝弘
ー患者の意識改革は治療家の意識改革からー
12:00 〜 13:00 昼食
13:00 〜 16:30 <臨床実技研修>
取穴・基本刺鍼・臨床実技研修・反省会
【入門講座】
10:00 〜 12:00 <基礎講義>
「お灸と刺絡治療」新井敏弘
12:00 〜 13:00 昼食
13:00 〜 16:30 <臨床実技研修>
取穴・基本刺鍼・臨床実技研修・反省会
※17:00 〜 18:00 理事会
18:00 〜 21:00 総会資料検討会議
********************************************************************
地方組織活動日程
鹿児島漢方鍼医会
日時 3月23日(第4日曜日) 午前10時より
場所 県立老人福祉会館 (鴨池)
内容 午前 素問読み合せ
午後 実技
愛知漢方鍼医会
日時 3月16日(日) AM9:45〜PM16:00
場所 蒲郡市生きがいセンター4F 401号室
内容 午前 基礎講義 題未定 代表
症例検討 安藤
午後 素問講義 痹論 渡部
実技研修
大阪漢方鍼医会
日時 3月16日(日) 10時〜
場所 エル大阪604号室
内容
1時間目:基礎講義(前半:上辻先生 後半:山本先生)
2時間目:古典講義(上辻先生)
3時間目:基礎実技 基本刺鍼・取穴・脈診について
4時間目:応用実技 小里方式での実技
名古屋漢方鍼医会
日時 3月23日 AM10:00〜PM4:30
場所 北区生涯学習センター
内容 午前 霊枢 日比野
入門 今村・大井
午後 臨床発表 梅原
実技 モデル患者をあげ治療
東京漢方鍼医会
日時 3月23日(日)10時〜
場所 スマイル中野
内容 午前 臨床検討 宇野
午後 臨床実技研修
神戸漢方鍼医会
日時 3月28日(金)午前10時
場所 ピブレ会館 3階C会議室
内容
10:30ミニシンポジュウム 「臨床病床論・感熱」水谷
11:30休憩
12:30「難経」読み合わせ
13:30「素問」読み合わせ
14:30実技研修
16:30終了
福岡漢方鍼医会
日時 3月23日(日曜日) 9:30分開始
場所 あいあいセンター(福岡市立心身障害福祉センター)7階小研修室
日程
9:30 会務報告
10:00 気血津液と五蔵の生理病理
12:00 昼食
13:00 実技(取穴、基本刺鍼、小里方式)
16:00 終了
滋賀漢方鍼医会
日時 3月16日(第3日曜日)9時40分から16時55分まで
場所 草津市立まちづくりセンター(309号室)
電話番号077‐562‐9240
内容 出席者点呼・会務報告
午前
五臓の生理−「まとめ」小林久志先生
「臨床あれこれ」 小阪尚徳先生
午後
「取穴」「基本刺針」「小里方式」
17時過ぎから 指導者研修会(307号室)
********************************************************************
ご案内とお知らせ
1.第15回夏期学術研修会滋賀大会ご案内
主題 「漢方はり治療の実際」 テーマ(仮) 基礎技術から証決定を踏み固める
主催 滋賀漢方鍼医会 協力 漢方鍼医会本部
会場 ロイヤルオークホテル スパ&ガーデンズ
〒520-2143 滋賀県大津市萱野浦23番1号 TEL 077-543-0111
期日 平成20年8月24日(日)25日(月)
内容 会長講演・基調講義・実技シンポ・臨床実技研修(4時限6時間)
費用 参加費用には研修費・懇親会費・1泊4食分を含みます。
◆本部会員42.000 地方会員43.000 学生43.000 一般45.000
付添い20.000
◆宿泊されない方は28.000(研修費と2食分を含みます)
ただし、懇親会に参加される場合は10.000追加(要予約)
申込〆切:平成20年6月30日
実行委員会:委員長・二木清文 副委員長・小林浩二
〒522-0201 彦根市高宮町日の出1408 TEL 0749-26-4500
Eメール supermogusaman@ybb.ne.jp
HP http://www.shigakanpou.com/15th-kakiken/top.html
2.学術テープ(12・2月) 申込先:漢方鍼医会録音部
(雑録)「医事寸言 12月2月」福島賢治
(研修)「脉状診-1 難経による病症伝変論」加賀谷雅彦
「病理病証論-4 湿証について」福島賢治
「脉状診-2 難経による病症伝変論」加賀谷雅彦
「病理病証論-5 風証について」福島賢治
(養成)「婦人科疾患」渡部恵子
「誤治調整 良い脉、悪い脉」二木清文
シンポ「難病患者への取り組み」司会 橋上信也・芳沢志保
シンポジスト 新井康弘・天野靖之・小林浩二
「開業にむけて」天野靖之
(入門)「衛気営気の概念と手法」森本繁太郎
「頸肩背部と腰仙、鼠径部の治療」隅田真徳
********************************************************************
編集後記
花粉症の本格的な季節になって参りました。私は大丈夫ですがみなさんはいかがでしょうか?治療室にも花粉症の患者さんが多く来られることでしょう。腕の見せ所ですね。
(神岡)
このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます
- たま漢方堂の『健康豆知識〜春夏秋冬〜』
- 和漢薬専門・たま漢方堂がお贈りするメールマガジン。毎日を健やかに過ごすためにチョット役立つ話をお届けします。
- 癌めーる
- 医師・医療従事者・医療ジャーナリストなどの専門家の協力のもと、西洋医学・東洋医学などの垣根を作らず癌に関する情報を公正に配信し、一般人が癌に関する正...
- 医療21
- 21世紀は生命科学が急速に進展し、それに伴ない医療も大きく変わろうとしています。「医療21」は医療・健康・薬学に関する情報を提供するメルマガです。遺...
- e-doctor ドクタースマートの医学なんでも相談室
- 読者の質問に内科医であるドクタースマートがお答えするメルマガです。病気に関するどんなことでも、なんでも質問してください。すべての質問に、ドクタースマ...
- 速読!今週の医療界
- 医療界のニュースを1週間分まとめてダイジェスト。医療・福祉関係者の“生”の声を取り上げる「今週の一言」のほか、セミナーや書籍情報など医療・福祉経営に...
![メルマガスタンド[メルマ!]](/img/common/melma_logo.gif)








