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続・新米女将のひとり言/明日へのあゆみ
発行日: 2002/5/19
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■ 「続・新米女将のひとり言/明日へのあゆみ」
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■ ■ ■■■■ ■ 新米から一人前へ向かって歩み始めた女将が綴る
■ ■ つれづれ日記。
■ ■■■■■ 経営の悩み、お客様への思い、社員や家族達との
■ ■ ■ ■ かかわり等など。
■ ■■■■■ 日本初の旅館の女将によるメ−ルマガジンです。
■ ■ ■
■ ■■■■■ http://www.monya.co.jp 2002.5.19発行 第68号
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◇ GWの出来事 ◇
毎年ゴールデンウィークには多くのお客様がお見えになります。連休時は道路
も混雑しお越しになるだけでも大変。料金も安くありませんし、宿側の方も余
裕もなく、有難いながらもお疲れになっていらっしゃるお客様をお迎えしなが
ら、申し訳なく思っている次第です。
今年は中休み的な日もありましたから、いくらか冷静にGWを乗り越えられるか
と思っていました。自分自身が少しづつ業界に慣れ、出来なかったことも段々
こなせるようになって行くのは、嬉しくも楽しくもあるのですが、反面お客様
のお気持ちに添えなくなったり、立場的に責任が重いため、心身供に追い詰め
られたような状況になるのは辛くもあります。なるべくならどんなに忙しくて
も、いつもと同様ベストな自分でお迎えをしていきたいものです。
そうした中で、恐らくこれからも決して忘れないであろう出来事が発生しまし
た。5月3日から3泊のお客様でした。旅行代理店からのお客様で、パンフレッ
トをご覧になってのお越しでした。私共の宿には離れの部屋が3室ございます。
比較的落ち着いた雰囲気の数奇屋造りの部屋です。しかし旅館では一般的なこ
とですが、すべて全く同じ部屋ではありません。特に一番端の部屋はおなじみ
様にも人気がある少し広めなお部屋です。これもまた良くあることですが、大
抵一番良い部屋がパンフレットや雑誌のイメージ写真に使われます。今回お越
しになったお客様もそのイメージ写真を元にご予約をなさったのです。
客室係によると「部屋のタイプが違いすぎる。」というクレームだったそうで
す。一番広い部屋は当然ご人数が多いお客様が優先となります。三日間のうち、
初めの二日はどうしても取替えが不可能でした。『「最後の一日でしたらお部
屋移動が可能です。」とお伝えして。』と社長に言われたので、私もそれほど
深刻には受け止めずにお部屋へ伺いました。
旅行代理店のパンフレットには、「写真はイメージです」と言うコメントがつ
けられているという話しでした。お客様は、「いくらなんでもこれでは同じタ
イプの部屋とは言いがたい。僕達にしてみたらパンフレットの写真でしか判断
は出来ないのだし、来てみて気に入らないでは困るから、写真つきのパンフレ
ットで決めたわけです。」とおっしゃいます。私は社長に言われた通り、写真
はイメージだと書いてあること、旅館に限らずホテルやその他の販売などでも
一番良い部分をお見せするのが一般的であること、出来れば明日からでもお部
屋を移動して差し上げたいところですが、部屋割りがどうしても上手くいかな
いことなどを説明して帰ってきました。
旅行代理店との契約条件の部屋なので、私達宿側は、誰もこちらに非はないと
考えていました。三日目だけでもお部屋移動して差し上げることが、せめても
の好意とさえ考えていました。客室係によると、それ以降お客様は一言も口を
聞かないそうです。「そんな風で楽しいのかしら?」とみんなで言い合いまし
た。係も「私が三日間担当するんですか?」と言います。逃れられない係は気
の毒だと私も思いました。
二日目の夜も同じくして、口を利かない状態が続きました。しかも「三日目だ
けなら部屋は移動しなくて結構です。」とおっしゃっているということでした。
「せっかく好意でお部屋移動して差し上げようとしているのに、そんなにかた
くなにならなくても良いのにねえ。」とみんなで話していました。
でも私は何となく気にかかり始めました。(何故お部屋移動を拒むのだろう?
明日もこうして楽しくない一日をお過ごしになるだろうか。本当にこれで良い
のか?)「明日の朝もう一度お聞きしてみてね。」と係に言いました。次の日
出勤してすぐ聞いてみると、やはりお部屋移動はしないということでした。部
屋移動する前提で作成した配置表(どのお客様がどの部屋で係が誰で....など
を書いてある表のこと)を元通り書き直したものの、何となく附に落ちない気
持ちと決まり悪さが私の心を占領し始めました。
「このままでお返ししてはいけない!」強く心の中で叫びが聞こえてきます。
お客様をここまでかたくなにしてしまったのは、私達のせいなのではないか。
全国に沢山ある宿の中から紋屋をせっかく選んでいただいて、しかも御料金は
GWなので通常よりずっと高い。三日間も滞在していただいて、楽しくないお気
持ちのままご自宅へお返ししては、余りにも申し訳ないのではないだろうか。
もう決してお気持ちを緩めては戴けないかもしれないけれど、やれるだけのこ
とはしてみよう。天からの叫びが私の頭の上でとどろいたのです。私達がお客
様の気持になって差し上げられなかったことが、お客様の気持をかたくなにし
てしまったのではないだろうか。
以前、雑誌にお一人13000円からと書いてあるのに、料理イメージとして20000
円の料理写真を掲載してクレームになったことがある。それからはお料理の写
真は載せないことにしたのです。それと同じなのではないか。私達にとっては
当たり前でも、お客様にとっては当たり前ではないことはいっぱいある。この
まま今日もまた、一言もお話して戴けない状態で過ごされるのは余りにも悲し
すぎる。そう社長に話してみたのです。「貴方はえらいね。」と社長は言って
二人で涙ぐんでしまいました。
社長が「お客様がお部屋から出ていらしてからでは遅いよ。」というので、お
部屋の中まで入らなくともドアのところでもお話が出来ればと、近くのパント
リーからお部屋へお電話を入れました。
「おはようございます。女将でございます。少しお話したいことがございます
が、これから伺ってもよろしいでしょうか?ドアのところで結構でございます
ので。」ご了承戴きお部屋をノックしました。全身に緊張が走りました。
「朝から申し訳ございません。実はお部屋の件ですが、ずっとあれから考えさ
せていただきました。せっかく紋屋を全国の宿の中から選んでいただき、納得
のいかないお気持ちのままお返ししたくないと思いました。確かにあのパンフ
レットにはイメージ写真であることが記載されていました。初めは私達に非は
ないと思っていました。でもお客様のご様子を拝見させて戴いているうちに、
違うんじゃないかと思えてきたのです。私達にとっては当たり前のことでも、
お客様にとっては当たり前ではないことはある。以前にも雑誌にお一人13000円
からと書いてあるのに、20000円のお料理写真を載せていてクレームなったこと
がございました。其れからはお料理写真をのせるのはやめたのです。今後あの
お部屋をパンフレットに載せるのは止めようと思います。私達がお客様のお気
持ちを理解できなかったことが、お客様を不愉快にさせたのだとはじめて気が
ついたのです。こんなに大切なことに気付かせて戴いたお礼の意味も含めて、
今日一日だけでもお隣のお部屋で、ご希望のお部屋でお過ごし戴けないでしょ
うか?もちろんお部屋移動は、私達ですべてお荷物の移動などさせていただき
ます。どちらかをお選びくださいというのではなく、お願いでございます。本
日一日だけではございますが、ご希望のお部屋に移って戴けないでしょうか。
本当にお願いでございます。私共の気持をお汲み取りいただけないでしょうか」
初めは奥様が出ていらしたので、ご主人様にも同じようにお話しました。お願
いしているうちに又涙が滲んできました。そうしたらこの時初めて「そこまで
おっしゃって下さるのでしたら....。」とほほえんで下さったのです。自分の
子供が、生まれて初めて私に微笑みかけてくれたときのような感動が体に走っ
て行きました。
事務所に戻り「ご了承戴きました。」と社長に報告。この話しをミーティング
でも話しました。従業員全員の顔が神妙な表情に変わっていきました。それか
ら社長が「フルーツバスケットをお部屋に入れようか。」と言い始めました。
いつもはしていないサービスなので、大皿やフルーツナイフも見栄えが良いも
のがないと社長が自宅まで取りに行き、フルーツも買出しに行きました。私も
フルーツに添えるメッセージを筆書きしました。そうしたことも考えるのは、
難しいながらも楽しい作業でした。「いまさら喜んでは戴けないかもしれない
けれど、すこしでも気持が伝わると良いね。」と言い合いました。
お客様はお昼ころ釣りへ出かけられ、そう長くないうちに戻っていらっしゃい
ました。そしてしばらくして又お出かけになられたようでした。夕方、お戻り
になられたとき、お客様は「お気遣いありがとうございました。」とおっしゃ
ってくださいました。そして夜、係は心づけを戴いたと私に報告してきました。
「ご迷惑をおかけしました。」とおっしゃったそうです。
お客様の立場になって考えること。ケースbyケースで難しいものです。今回の
場合もこちらに大きな非があったわけではありません。しかし、お客様を不愉
快にしてしまったのは、私がお客様のお気持ちに理解を示せなかった点です。
お部屋を替えて差し上げなくても、理解があれば少しは違ったかもしれません
ね。なんという繊細で、しかも大きなことなのでしょうか!すごく大切なこと
を忘れかけていた、どんなにお礼を申し上げても言いきれないような思いが致
します。
人間である以上、人と関らざるを得ないわけで、そういう意味で人と接する時
の言葉や表情、態度の示し方はものすごく重要です。同じ意味を示す言葉でも、
ちょっとしたニュアンスで大きく変わってきてしまいます。言い方、物腰、人
としてぬくもりが伝わるような一個人でありたいですね。これからもお客様か
ら色々なことを教えて戴き、努めて参りたいと思います。
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◆宿屋の雑学◆
旅行業界/その2
旅行業界は一見、電通・博報堂があり、中堅・中小が続き、その他多数の広告
代理店がある広告業界に似ています。そのピラミッド構造の他に、何種類かの
「系列」に分かれます。
旧国鉄系・・・JTB、日本旅行
私鉄系・・・近畿日本ツーリスト、東急観光、阪急交通社、名鉄観光サー
ビス、西鉄旅行、東武トラベル、南海国際旅行、等々
物流系・・・日通旅行、日新航空サービス、等々
農業系・・・農協観光
JR系・・・JR東海ツァーズ、JR各社の旅行部門
新聞系・・・読売旅行、朝日旅行会、日経旅行
流通系・・・パシフィックツァーシステム、ゼロファースト、等々
航空系・・・ジャパンツァーシステム、全日空トラベル、等々
独立系・・・HIS、マップインターナショナル、ビッグホリデー、ジャ
パンアメニティートラベル、タビックスジャパン等々
大手旅行社系・・・JTBトラベランド、ツーリストサービス、日旅サー
ビス、JTBサン&サン、JTBゆうゆう旅行
ハウスエージェント・・・日立トラベルビューロー、東芝ツーリスト、N
ECツーリスト、郵船トラベル、等々
ハウスエージェントとは、企業が独自に自社社員の為に設立した旅行社ですが、
広く一般の旅行者に門戸を開放しているところも多いようです。(by aruji)
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| 宿┃泊┃ご┃招┃待┃ 日本旅館について日頃お感じになっている |
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| ア┃ン┃ケ┃ー┃ト┃ お聞かせ下さい。 |
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≪次回予定≫
2002年5月26日は、「皆様からのお声/増刊号」をお届けする予定です
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e-mailエッセー「続・新米女将のひとり言/明日へのあゆみ」(隔週日曜発行)
著 者:高尾葉子 okami@monya.co.jp
発 行 者:高尾憲資 aruji@monya.co.jp
発 行 所:季粋の宿 紋 屋 otazune@monya.co.jp
295-0102 千葉県安房郡白浜町白浜232
TEL 0470-38-3151 FAX 0470-38-3153
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◆素顔の女将◆
今回の出来事への女将としての対応は素晴らしかったが、家内は時々訳のわか
らない事を言う。何でも、よくお日様を浴びて育ったのが「トメィトゥ」、あ
まり浴びていないのが「とまと」だそうだ。きっと天の声なのだろう。(爆)
(by aruji)
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この記事へのコメント
全1件表示途中のお部屋移動への女将さんの言い方、私も接客業をする身なので尊敬に値します。
しかし、最後のフルーツバスケットを届けたという点は・・・
こういう風に文句を言ったりする方が良い気分を最終的には味わえるんですね。
がっかりです。
日時:2008年4月11日
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