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哲学クロニクル 第334号
(2002年11月27日)
ロールズ追悼
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朝日新聞でも短く報道されていましたが、ロールズが24日に亡くなりましたね。
ロールズの正義論の原則についてわかりやすい説明を掲載しているニューヨーク・タ
イムズの追悼文の一部と、フランスでロールズが熱心に受け入れられた背景を分
析したクリスティアン・ドラカンパーニュの追悼文の一部をご紹介します。
なお、多くのご要望をいただきましたので、デリダのインタビューの続き
をいずれ掲載します。
たくさんの励ましのメール、ありがとうございました。
いろいろな方に読んでいていただけると思うと、元気がでてきます。
今後ともよろしくお願いします。
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ロールズ追悼
(ダグラス・マーティン、ニューヨーク・タイムズ、2002年11月26日)
アメリカの政治理論家のジョン・ロールズが日曜日にマサチューセッツ州の自宅
で逝去した。享年八一歳。
『正義論』が出版された一九七一年は、アメリカでベトナム戦争と人種的な公正
さをめぐる激しい議論が展開されていた時期であり、正義とリベラリズムをめぐ
る現代哲学の分水嶺と言える時期だった。
ロールズの『正義論』は、論理分析と言語分析に重点をおいていた当時の主流の
考え方から大きく離れていただけではなく、道徳哲学への関心がふたたび集まる
きっかけともなった。ロールズは単純な公正さ(フェアネス)という概念に基づ
いて、正義の新しい概念を精密に構築したのである。
ロールズの『正義論』が出版される前は、社会的な正義は功利主義の考え方で理
解されていた。社会は最大多数の人々の最大の善を目指すべきだと考えられてい
たのである。しかしこの概念では、マイノリティの権利を十分に配慮することが
できないとロールズは指摘した。さらに多数の人々の利益のために、個人の自由
が軽視されるという問題があることも指摘した。
ロールズの新しい理論は、二つの原則でスタートする。最初の原則は、それぞれ
の人は他社の同じ自由を損ねない限りで、もっとも広範な基本的に自由を享受す
る権利があるというものである。第二の原則は、社会的および経済的な不平等は、
それがもっとも不利な立場にたつ人々の福祉を促進することに役立つ限りで容認
されるというものである。
それではこの二つの原則に従って、社会の構造を決定するにはどうしたらよいか。
ロールズはそのために、すでにホッブス、ロック、ルソーなどの思想家が構築し
ていた社会契約の概念を復活させる。
ここでロールズは新しい概念を導入する。人々が社会契約を結ぶために必要な決
定を下す際には、「無知のベール」をかぶるべきだというのである。すべての人
は、これから選択する規則が適用される社会においては、自分が豊かになるか、
貧乏になるかを知ることができない状態で、新しい社会の規則を選択する必要が
あるということだ。これが「原初の立場」である。
この「原初の立場」にある個人は、新しい社会では自分が最悪の状態に置かれる
ことを覚悟して、他のシステムで考えられる最悪の状態よりもましな社会を選択
するだろうとロールズは考える。その場合には、もっとも不運な人が、できる限
り保護される社会が選択されることになる。
後年の著作ではロールズはこの議論を拡張して、複数主義的な社会がすべての目
はにどのようにして公正なものとなりうるかを示した。包括的な宗教や哲学の教
義を受け入れない限り、公衆は正しく判断できるはずだとロールズは考えた。ロー
ルズはカントと同じように、このような妥当な考え方が広まることのできるリベ
ラルな民主主義では、戦争を回避できると主張したのである。
====
フランスにおけるロールズ
(クリスティアン・ドラカンパーニュ、ル・モンド、2002年11月26日)
ロールズがこの著書を書いていたのは、アメリカで黒人の市民権を求める戦いが
進められ、これで不利な立場にあるすべてのマイノリティを保護する「アファー
マティブ・アクション」の政策が採用されるようになっていた。ロールズの『正
義論』の議論が、この政策に理論的な基礎を与えたのはたしかだった。
またフランスでは、ロールズの『正義論』は熱狂的にうけいれられた。それには、
サルトルやフーコーの読者であればそれほど異質ではないテーマが取り上げられ
ていたことも役立った。ともかくラッセルの著書以来、パリで反響のあった英語
圏の哲学書はこの『正義論』だけなのである。
またロールズの著書は、市場の要求と社会の要求を和解させようとする国家につ
いて一貫性のある見方を提示していたために、左翼の一部から歓迎された。社会
主義者たちはマルクス主義を採用するわけにもゆかず、といってまったくのリベ
ラリズムに落ち込むこともできないと感じていたからである。
=====
ロールズの著作リストです。ぼくもロールズを読み直そうと、Collected Papers
を購入したのですが、積読のままに、先に逝かれてしまいました。
A theory of justice / John Rawls ; : pbk. -- Belknap Press of Harvard
University Press, 1971
→正義論 / ジョン・ロールズ著 ; 矢島鈞次監訳. -- 紀伊國屋書店, 1979
The Tanner lectures on human values / [By] John Rawls [et al.] ; St
erling M. McMurrin, Editor ; vol. 3. -- University of Utah Press : Cam
bridge University Press, 1982
Liberty, equality, and law : selected Tanner lectures on moral philoso
phy / John Rawls ... [et al.] ; Sterling M. McMurrin, editor ; : uk :
pbk, : us : pbk. -- University of Utah Press, 1987
Political liberalism / John Rawls. -- Columbia University Press, 1993.
-- (The John Dewey essays in philosophy ; no. 4)
Collected papers / John Rawls ; edited by Samuel Freeman. -- Harvard U
niversity Press, 1999
The law of peoples : with "The idea of public reason revisited" / John
Rawls. -- Harvard University Press, 1999
Lectures on the history of moral philosophy / John Rawls ; edited by B
arbara Herman ; : hbk, : pbk.. -- Harvard University Press, 2000
Justice as fairness : a restatement / John Rawls ; edited by Erin Kell
y ; : cloth, : pbk. -- The Belknap Press of Harvard University Press,
2001
公正としての正義 / ジョン・ロールズ著 ; 田中成明編訳. -- 木鐸社, 1979
人権について : オックスフォード・アムネスティ・レクチャーズ / J. ロー
ルズ他 [著] ; S. シュート, S. ハーリー編 ; 中島吉弘, 松田まゆみ共訳. -
- みすず書房, 1998
====
邦語のロールズ論のリストです。ずいぶんあるなぁ
○ロールズの正義論 = A theory of justice / 村上嘉隆著. -- 村田書店, 1982
○ロールズの基本概念 / 村上嘉隆著. -- 村田書店, 1983
○公正としての正義の研究 : ロールズの正義概念に対する批判的考察 / 藤川吉
美著. -- 成文堂, 1989
○倫理の復権 : ロールズ・ソクラテス・レヴィナス / 岩田靖夫著. -- 岩波書
店, 1994
○ロールズ哲学の全体像 : 公正な社会の新しい理念 / 藤川吉美著. -- 成文堂,
1995. -- (正義の研究 ; 2)
○ロールズ : 「正義論」とその批判者たち / チャンドラン・クカサス, フィリ
ップ・ペティット著 ; 山田八千子, 嶋津格訳. -- 勁草書房, 1996
○ロールズ : 正義の原理 / 川本隆史著. -- 講談社, 1997. -- (現代思想の冒
険者たち ; 23)
○『正義論』以降のロ-ルズのカント主義 / 研究代表者長岡成夫. -- 長岡成夫,
1997. -- (科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))研究成果報告書 ; 平成7年度
〜平成8年度)
○社会契約論の系譜 : ホッブズからロールズまで / D. バウチャー, P. ケリー
編 ; 飯島昇藏, 佐藤正志訳者代表. -- ナカニシヤ出版, 1997. -- (叢書フロ
ネーシス)
○ロールズ正義論の行方 : その全体系の批判的考察 / 渡辺幹雄著. -- 春秋社,
1998
○政治哲学の復権 : アレントからロールズまで / 寺島俊穂著. -- ミネルヴァ
書房, 1998. -- (Minerva21世紀ライブラリー ; 41)
○ロールズ正義論再説 : その問題と変遷の各論的考察 / 渡辺幹雄著. -- 春秋
社, 2001
○ロールズの憲法哲学 / 大日方信春著. -- 有信堂高文社, 2001
○正義の経済哲学 : ロールズとセン / 後藤玲子著. -- 東洋経済新報社, 2002
○西洋思想の日本的展開 : 福澤諭吉からジョン・ロールズまで / 西洋思想受容
研究会編. -- 慶應義塾大学出版会, 2002
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(c)中山 元
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