日本僑報電子週刊(旧:在日中国人動態) |
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日本僑報電子週刊 第429号 2004年10月27日(水)発行
http://duan.jp 編集発行:段躍中
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□『九億農民の福祉--現代中国の差別と貧困』刊行特集□
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■目次■
●特別転載★序文/一番ヶ瀬康子
目次
あとがき
著者紹介
●編集後記★王文亮博士の更なるご活躍を心からお祈り致します。
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●特別転載★序文 本書の意義と今後の期待について/一番ヶ瀬康子
本書は、現在の中国における三農問題に基づく農村生活の貧困を社会
保障との関連で論じたものである。とくに都市における生活者の社会保
障との違いが、平等と人権の観点から見てきわめて不公平、不合理であ
ることに対し、国家責任としての社会保障の今後の明確化について論じ、
また具体的なあり方について述べたものである。
本書の意義は、第一に、従来の日本、中国におけるこの種の先行研究
がいずれも断片的な局面に関する論考もしくは概説で終わっている点に
対して、一応体系的にまとめた論文としてその先駆性を評価できる。
第二に社会保障を所得保障としてのみとらえる論者が多いなかで、福
祉サービスの保障を含め、広義の概念のもとに体系的に検討しているの
みならず、とくに中国の農民生活において根強い家族養老の崩壊につい
て、重視している点に独自性を有している。
本書は、長崎純心大学大学院に博士論文として提出され、以上の二点
が評価されて、学位論文にふさわしいとの結論にいたったものである。
なお、今後この論文については、次のような期待と意見が述べられて
いることも付け加えたい。
第一に、中国、日本の先行研究についてのみならず、おそらくこの種
の研究がなされているであろう欧米諸国の先行研究も、今後、視野に入
れて検討してほしいということである。
第二には、中国が広大な面積を擁する国家であり、農村といっても広
い面積を有している。それだけに、たとえば東西南北それぞれの農村に
おける三農問題の具体的な状況はおそらく異なるであろう。それに対す
る福祉サービスのあり方なども含めて、地域研究とりわけ調査などによ
る実証性に基づき克明に探究してほしいということである。
しかし本書はいずれにしてもそれらの研究の前提として、またその基
礎としての意味を持ちうるであろうと思われる。今後の著者ならびに関
係研究者のいっそうの探究のために、本書が役立つことを心より期待し
たい。
日本にとって、中国は単なる隣国である以上に、歴史的にも、文化的
にもそして何よりも現在経済的にも、深い関連性をもっている。それだ
けに本書の課題としたことについて、私たちの関心は、本書によってよ
り深まるとともに、研究の必要性が明らかになり、研究が一段階をきた
すことを心からよろこぶものである。
著者の今後の努力を期待して、本書の推薦にかえたい。
一番ヶ瀬康子(長崎純心大学大学院教授)
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●特別転載★目次目 次
序 文 本書の意義と今後の期待について(一番ヶ瀬康子教授)
序 章 「三農問題」と農村社会保障
第1節 問題意識、研究課題および研究方法
1、問題意識
2、研究課題の設定
3、研究方法と使用資料
第2節 先行研究の概観
1、国内の社会保障研究と「三農問題」研究
2、日本における中国の社会保障研究
3、日本における中国の「三農問題」研究
4、先行研究の特色と問題点
5、本研究独自の狙いと視点
第3節 本書の全体構成
1、第1章の構成と概要
2、第2章の構成と概要
3、第3章の構成と概要
第1章 都市と農村の二重構造
はじめに
第1節 生活水準における都市と農村の巨大な格差
1、都市化の進展状況
2、農民の苛酷な生活環境
3、困難に満ちた貧困撲滅の国家事業
4、「文盲」一掃の夢
5、農村社会保障の絶対不足
第2節 戸籍制度の束縛と農民の社会的地位
1、二重社会構造と二重戸籍制度の関連性
2、“二等国民”の地位に転落した農民
3、撤廃されつつある戸籍制度
第3節 都市部優先の国家戦略と農民の過重負担
1、工業化の推進における農民の貢献
2、農民の過重負担
3、税・負担金徴収制度の改革
まとめ
第2章 農村地域の家族養老
はじめに
第1節 農村の人口高齢化
1、農村労働力大移動の社会的背景
2、農村の人口高齢化がもたらしたもの
第2節 計画出産政策と農村社会保障
1、計画出産政策の法制化
2、加速的に変異する性別割合
第3節 家族倫理の高揚と高齢者扶養
1、社会主義の精神文明建設と親孝行
2、家族養老の限界
3、生涯の最後まで働く農村高齢者
第4節 高齢者扶養をめぐる家庭紛糾
1、高齢者遺棄・虐待の風潮
2、高齢者扶養をめぐる訴訟
第5節 高齢者扶養における家族の人権
1、家族養老に関する法律的強制
2、人権問題が絡んでいる契約養老
まとめ
第3章 農村社会保障制度の現状と課題
はじめに
第1節 大幅に遅れている農村住民最低生活保障
1、都市住民最低生活保障の急速な整備
2、立ち遅れた農村住民最低生活保障制度
第2節 農村五保戸扶養制度の役割と財源構造
1、制度の構造分析
2、敬老院の財源不足
第3節 農村社会養老保険制度の急速な衰退
1、公的年金制度の模索
2、制度の崩壊に関する原因究明
3、制度の再建策
第4節 農村医療保障制度の未整備と農民の病気治療
1、医療保障における都市と農村の二重構造
2、病気治療難の原因分析
3、農村合作医療制度の再建
まとめ
終 章 本書の結論と今後の研究課題
第1節 本書の全体的結論
1、「三農問題」の解決と農村社会保障の全面的構築
2、農村住民の老後保障を中心とする制度づくり
第2節 本研究の今後の課題
1、社会保障制度の全国統合
2、農村社会保障の段階的整備
3、農村社会保障の国家財政
引用・参考文献
あとがき
現代中国福祉関連年表
索引
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●特別転載★あとがき
本書は長崎純心大学大学院人間文化研究科に提出した博士論文「現代
中国の農民生活と農村社会保障に関する研究」を、今回の上梓にあたっ
て若干補訂を加えたものである。
農業大国であり続けてきた中国は、国民の圧倒的多数を占める農村住
民の生活問題を解決するために、紆余曲折に満ちた長い歴史が今日まで
流れている。中華人民共和国の誕生およびそれにともない社会主義の道
を歩み出したことを境に、現代中国は新しい時代における農村社会の発
展を重要課題の一つとして背負うようになった。それはまた第二次世界
大戦後に起きた社会保障や社会福祉に対するニーズの急速な高まりと時
を同じくして、国民の生活水準の向上をどう保障するかということを真
剣に考えなければならなくなった。
一方で、半植民地と半封建社会と呼ばれるほど大変貧しい中国は、共
産党革命が全国範囲での勝利を勝ち取ったとしても、マルクスとエンゲ
ルスが当初予言した先進資本主義国の中から社会主義革命が起き、その
まま共産主義社会へと進むというように、革命政権の樹立は必ずしも社
会主義社会、さらに共産主義社会の実現が約束されたことを意味しない。
現実に、政権基盤が革命期の農村地域から都市部に移ったこともあって、
新中国は数十年にわたって都市住民の生活安定を最重要課題とし、ひた
すら都市労働者の社会保障・福祉の充実を図ってきたが、そもそも経済
水準が低く、生活環境が劣悪な農村地域における社会保障・福祉の整備
をおろそかにしてきた。結果的には、農村社会の立ち遅れが一向に改善
されず、都市部との格差がますます拡大する一方となった。近年、「三
農問題」と名付けられ、大きな社会問題と政治問題として内外から広く
注目されている農業、農村と農民の問題は、深く掘り起こしてみれば、
まさにこの長い歴史の延長線上にあるものと理解せざるをなくなるよう
な気がする。
現在、中国、日本を問わず、この「三農問題」は学界において様々な
角度と側面から議論が行われ、多くの研究成果が生まれつつある。しか
し、そういった先行研究をよく検証してみると、「三農問題」をとりま
く歴史的、社会的背景に関する分析や、それを解決するための政策論等
はすでに数多く打ち出されてはいるものの、「三農問題」と農村社会保
障・福祉との関連性、さらに国民の平等権といった視点がほとんど欠落
しているといわざるをえない。実際、現在農業の停滞、農村の立ち後れ、
農民の生活難は究極のところ、農村社会保障・福祉制度が大きく欠如し
ているという厳しい現実と深く関連している。したがって、「三農問題」
を最終的に解決するためには、“農民”を都市住民と同等の権利を持つ
国民の一部として扱い、平等原則に基づく社会保障・福祉制度の整備に
よってその生活環境を絶えず改善していくことが求められている。
本書は、このような基本認識のもとで、都市と農村の二重社会構造の
仕組みおよびそれを生み出した歴史的、社会的、政策的要因を明らかに
しつつ、現代農民生活の実態を全体的に把握し、農村住民の暮らしにと
って必要不可欠の社会保障・福祉の構築状況について詳細な考察と分析
を行っている。
筆者は1998年に現任校九州看護福祉大学の着任によって中国の社会保
障・福祉に関する研究の機会を得た。今から約3年前、筆者は当時高知
女子大学在任中の沈潔教授(現在、浦和大学)に博士論文の受理と審査
を依頼してみたが、沈先生は快く受諾して下さり、さらに博士論文の審
査等について長崎純心大学の一番ヶ瀬康子教授にも打診していただいた。
一番ヶ瀬教授も3年ほど前から仕事の関係でお付き合いさせていただい
ている先生である。現在旬報社が毎年発刊している『世界の社会福祉年
鑑』は日本国内で世界各国の社会福祉の動向を紹介する唯一の年鑑とし
て重要な役割を果たしているが、一番ヶ瀬教授はその編集代表を努めて
おられる。年鑑は2002年から中国の社会福祉の動向をも取り入れるよう
になったため、筆者は執筆担当をさせていただいている。
本書は、論文の構想および執筆の段階において沈教授と一番ヶ瀬教授
から大変示唆に富んだアドバイスや有益なご指導をいただいた。また、
博士論文として長崎純心大学に提出するにあたって、論文受付のための
審査から予備審査、本審査にいたるまで、長崎純心大学大学院の塩崎弘
明教授、津曲裕次教授、日比野正己教授からも大変貴重かつ適切なご指
導、ご意見を拝聴致した。ここに以上のような経緯を記して、論文審査
に直接関わられた各先生方および片岡千鶴子学長をはじめ長崎純心大学
のほかの関係者に対して深甚な感謝を申し上げる次第である。
今回、本書の出版にあたって中国書店の川端幸夫氏から多大なご尽力
を賜った。氏の並みならぬ熱意と周到な企画に敬意を表する。
最後に、大変忙しいなか、高いご期待を込めた推薦のことばをお書き
いただいた一番ヶ瀬康子先生に再度心から感謝したい。
王 文亮
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●特別転載★著者紹介
王 文亮(Wenliang Wang おう・ぶんりょう)
1963年中国江西省広豊県農村部に生まれる。
1986年中山大学大学院哲学研究科修士課程修了。
1986年中国社会科学院哲学研究所助手、専任講師。
1994年大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程修了、文学博士。
1998年九州看護福祉大学看護福祉学部助教授。
2004年長崎純心大学より論文博士号(学術・福祉)授与。
中日社会保障・福祉、中日思想文化、中日国際観光交流など多岐にわ
たる研究と執筆活動を展開している。
主な著書
『中国聖人論』(中国社会科学出版社)
『聖人与日中文化』(全3巻、社会科学文献出版社)
『21世紀に向ける中国の社会保障』(日本僑報社)
『中国の高齢者社会保障』(白帝社)
『中国観光業詳説』(日本僑報社)
『中国農民はなぜ貧しいのか』(光文社)など多数。
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●編集後記★王文亮博士の更なるご活躍を心からお祈り致します。
昨日、一つ重い郵便物が届けられました。開いてみると、王文亮博士の
新著であることがわかった。
氏は、これまで日本僑報社より、『21世紀に向ける中国の社会保障』
をはじめ、『中国観光業詳説』、『中国のWTO加盟と国際観光業――
日中観光交流の新時代へ』など三冊の本を出した著書であり、氏の優れ
た情報収集力と分析力にいつも感心しています。
今回の本は、二番目の博士号取得されたときの博士論文を加筆したもの
で、中国の農民の福祉については初めての本ではないかと思っています。
この一冊は日本の中国研究に大きな役割を果たしてくれるはずです。
この本を出版した中国書店の川端さんに応援のメッセージとして、著者
の更なるご活躍をこころから祈りして、この特集を皆さんに送り致しま
す。
なお、日本僑報社が発行した王文亮博士の著書に関する詳細は以下の頁
をご覧ください。
『21世紀に向ける中国の社会保障』 http://duan.jp/item/21.html
『中国観光業詳説』http://duan.jp/item/27.html
『中国のWTO加盟と国際観光業―日中観光交流の新時代へ』
http://duan.jp/item/30.html
段躍中 2004.10.27午前11時49分
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