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在日中国人動態1030
発行日: 2003/10/30━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日本僑報電子週刊 第339号【号外】 2003年10月30日(木)発行
http://www5b.biglobe.ne.jp/~duan/編集発行:段躍中
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□『近代中国における物理学者集団の形成』刊行特集□
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■目次■
●独家転載★推薦のことば/東京工業大学大学院教授 山崎 正勝
目次
研究の背景
研究の対象
本書の構成
謝辞
●編集後記★「このような試みは、この分野で最初のことです。」
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●独家転載★推薦のことば/東京工業大学大学院教授 山崎 正勝
楊艦さんは、近代中国における物理学の形成過程を、綿密な資料分析
をもとに最近の科学史の研究方法にも学びながら、体系的にまとめあげ
ました。このような試みは、この分野で最初のことです。楊さんの研究
は、わが国のもっとも伝統ある科学史方面の学会である日本科学史学会
の年会で発表されて高い評価をえると同時に、学会の機関誌『科学史研
究』に厳しい審査を経て、2度にわたり日本語で掲載されました。このこ
とは、楊さんの研究の学問的な質の高さを示しています。
もし、楊さんの学位論文が出版されたならば、科学史の専門家以外の
多くの日本人読者を獲得するばかりでなく、そこから様々な事実をより
広い歴史的な文脈から理解できるようになるに違いありません。例えば、
現在、日本でよく知られている北京大学、清華大学、上海交通大学など
の教育研究機関の成り立ちや、初期の歴史について、適切で正確な知識
がえられると思います。また、わが国では、中国の近代化過程の中で日
本との政治、文化の分野での様々な交流についは知られていますが、理
工系の分野での影響関係は、これまではほとんど問題にされてきません
でしたが、その点での深い理解が得られると思われます。
以上のような理由から、楊艦さんの学位論文の出版を、ご推薦申し上
げます。
2003年8月去日
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●独家転載★『近代中国における物理学者集団の形成』目次
推薦のことば
序 章 問題設定
第一章 物理学者の誕生とその社会的背景
第1節 近代中国の海外留学運動と物理学者の出現
第2節 「西政」を目指す海外留学
―物理学者の出現と近代教育制度の導入―
第3節 「庚款留学生」
―物理学者の出現とアメリカの植民地の文化政策―
第4節 南洋公学の卒業生―工業界の努力と役割―
第二章 専門教育の創設
第1節 清朝政府による近代学校教育システムの導入
第2節 物理学の専門教育の開始
―辛亥革命による新しい制度の発足―
第3節 本格的物理学教育の開始
―「南高北大」の物理学―
第三章 研究の開始
第1節 二つの国立物理学研究機関の設立
第2節 大学研究院の発足
第3節 物理学者の第2世代
第四章 国家による研究奨励と物理学者たちの実践
第1節 国立中央研究院物理研究所
第2節 国立北平研究院の物理研究機関
―物理研究所とラジウム研究所―
第五章 大学における教育と研究の結合
―清華大学と燕京大学―
第1節 清華大学物理学科の立ち上がり
第2節 ミッション系大学における教育の改造
―燕京大学の場合―
第六章 中国物理学会の創設およびその活動
第1節 創設の背景
第2節 創設過程とその活動
第3節 融合の実現と物理学者の第3世代
終 章 まとめと結論
付録1 中国物理学会初期(1933年)会員略歴
付録2 主な引用と参考文献一覧
付録3 索引
謝辞
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●独家転載★研究の背景
従来の中国本国における中国の科学・技術史研究は,文化史的な視点
から特に古代史を中心とするものが多かったが,1990年代以降,近代史
に注目して社会史的な視点からそれらに取り組む新たな方向が生まれつ
つある.1)アヘン戦争以後の中国社会における近代科学技術の移入,定
着および発展の過程を扱う研究は,開発途上にある中国の今後の発展を
考える上でも重要な意味を持つだろう.
西洋物理学の移植は,中国の近代科学史に関する研究の一つの重要な
課題である.物理学のような近代科学の基礎にある専門分野の教育と研
究が中国で展開される過程に関する資料の発掘および実証的な分析は,
これから展開していく中国近代科学史と技術史の研究にとって重要な一
歩になるであろう.
現在のところ中国の近代物理学史の研究は,やっと本格的に開始され
たばかりである.この10数年間に得られたいくつかの成果は,年代的な
事例の列挙や,物理学者の研究業績の整理などの基礎作業の段階にとど
まっている.2)初期の物理学者に関して集められたデータはまだ少く,
発表された個人に関するいくつかの研究も,それらの人物の物理学者と
しての業績を中心に取り扱ったものが多く,彼らが物理学者となった社
会的な要因や彼らが行った教育と研究の内容と当時の中国の社会変化と
の関係を論じたものは,ほとんど皆無の状態である.さらにそれぞれの
個別な物理学者に関する研究(特に1937年以前に活躍していた物理学者
に関する極わずかな研究)からは,近代物理学の西洋から中国への移植
の歴史的な流れがほとんど見えてこないのが実情である.
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●独家転載★研究の対象
本研究では,20世紀の初頭から日中戦争が始った1937年までの時期を
研究の対象期間と設定し,収集した初期の物理学者のデータをもとに,
彼らを集団的に扱うことにより,中国において物理学者が生まれた社会
的背景,その活動の過程およびその集団のいくつかの特徴を検討しよう
と思っている.
近代物理学の中国への移植過程において,さまざまな人物が種々の形
の貢献を行った.多くの物理学の教科書を20世紀以前に,宣教師ととも
に翻訳した人物の存在は,よく知られている.しかし,西洋近代物理学
の中国への定着化という視点から見た場合,たんなる知識の紹介ではな
く,教育と研究に関わる制度的な確立や,専門的な職業を持つ物理学者
たちが一つの新しい知識人集団として中国の社会に登場したことに,特
に目を向ける必要があるだろう.本論文では,特定の制度に関わるとい
う意味で「集団」という言葉を使用するつもりである.
本研究は,制度の確立にともなう物理学の中国での成長に焦点を合わ
せたために,中国における物理学の専門教育と研究制度の確立や中国物
理学会の成立に関わっていた人たちを,主な調査と検討の対象としてい
る.特に,1932年に中国物理学会が創設された時の初期の会員(88人)
に注目し,それにつらなる各高等教育機関の物理学科や物理学の専門研
究機関で働いた人たちを視野に入れている.
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●独家転載★本論文の構成
本研究が扱う1937年以前の中国の物理学者たちのほとんどは,留学の
経験をもっていた.彼らは,本論文で第1世代と呼ぶ1918年以前に留学
した人々と,それ以後に留学した第2世代と呼ぶ人々に分けることがで
きる.前者は,海外で専門的な教育を受け,後者のほとんどは,国内の
大学で物理学の専門教育を受けた後,さらに留学した.本研究では,20
世紀に西洋近代物理学の中国への移植過程が,この二つの物理学者の世
代に対応した二つの歴史的段階を持っていたことを念頭において,議論
を展開していく.
第1章では,中国における物理学者の出現およびその社会的背景につ
いて検討する.ここでは,第1世代の物理学者を主として分析の対象と
し,彼らが物理学者となる契機になった留学の問題を検討する.
第2章では,第1世代の物理学者の帰国後の活動,特にその当時の課
題となっていた物理学の専門教育の創設の活動を主な分析の対象にする.
ここでは,各時期の物理学者たちによる専門教育の創設の進展状況を明
かにし,それぞれの進展を支えた社会的な要因も検討する.
第3章では,第2世代の物理学者が登場した背景を検討する.ここで
は,おもに1920年代の末に物理学の研究が中国で開始された社会的背景
を,いくつかの重要な学術教育機関が創設された過程の分析を通じて明
らかにする.
第4章では,国立中央研究院と国立北平研究院における物理学者の研
究活動の実態を解明する.ここでは,二つの研究機関はともに国立の物
理学の専門研究機関という特質を注目しながら,それぞれの機関におけ
る研究者の構成や研究計画の作成や研究課題の進め方および研究者たち
が発表した論文の検討を通じて,それぞれにおける物理学者の活動およ
びその成果の特質を分析する.
第5章では,清華大学と燕京大学における物理学者の教育研究の実態
を解明する.外国の影響が強い,この二つの大学における中国人物理学
者に関して,自国で物理学の進歩をはかることに関するそれぞれ独自な
理念と,研究活動に与えた外国の影響を分析する.
第6章では,中国物理学会の成立およびその活動の内容を明かにし,
異なる時期に各国から帰国し全国の各地で働いた中国人物理学者のそれ
ぞれの流れが合流していた様子と,物理学の中国での進歩と普及をはか
る動きを検討する.
終章では,以上の結果をまとめ,1937年の日中戦争が勃発する以前に,
中国人物理学者によって行われた近代物理学の中国への移植について,
その成果と限界を指摘する.
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●独家転載★謝辞
本論文を執筆するにあたって、多くの方々のお世話になりました。
まず、長い間にわたり、研究の指導から細かな日本語の書き方に至るま
で、終始に筆者を導いて下さった東京工業大学の山崎正勝先生に深い感謝
の意を表したいと思います。並びに同大学の梶雅範先生、木本忠昭先生、
中島秀人先生、江上生子先生にもお礼を申し上げます。日本に来た当初、
一言も日本語で話せなかった筆者が、なんとか論文を仕上げることができ
たのは、誠に先生たちのおかげでした。また「火曜日ゼミ」と呼ばれるセ
ミナーの参加者たち、特に菊地重秋様、中根美知代様、綾野博之様、姜雄
様、森本栄一様、小長谷大介様、岡田大士様、姜波様ら先輩と同僚たちの
助言と厚意も忘れられません。
近代中国の資料の収集にあたっては、東京工業大学図書館参考調査係り、
財団法人東洋文庫、東京大学東洋文化研究所、国会図書館アジア資料室の
多くの方々に多大な援助を承りました。この場を借りて感謝致します。
私費留学生として、筆者はとくに生活面を支えてくれた多くの友人のこ
とを忘れることができません。ここで改めて先生と研究室の友人たちに感
謝の意を表すと同時に、私と妻の身元保証人になられて下さった中村忠夫
様と深田明子様、並びに私の勉学に深い理解の意を示し、いつも面倒を見
て下さったアルバイト先の上司である草川繁様にも心からお礼を申し上げ
たいと思います。また日本国際教育協会、財団法人中村積善会からの奨学
金を頂くことにより、研究へいっそう専念することができました。それぞ
れの財団にも、厚い謝意を表したいと思います。
最後に、筆者は、また故郷の言葉で海の向こうの親族や友人たちに感謝
の意を表したいと思います。
本書の出版にあたって、日本僑報社と清華大学科学・技術・社会研究中
心によって多大な援助を与えてくださいました。この場所を借りって、そ
れぞれの機関、特に段躍中編集長と曾国屏主任に感謝のを申しあげます。
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●独家転載★著者略歴
楊 艦 よう・かん
1959年 中国・北京に生まれる
1990年 日本留学
1997年 東京工業大学理工学研究科博士課程修了、学術博士
1998年 東京工業大学社会理工学研究科日本学術振興会特別研究員
2000年 帰国
現 在 清華大学科学・技術・社会研究所助教授
専 門 科学史
著書に《煽雰上的科学名著》(共編著)、《科学家的不正当行葎》(共
訳)等
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●編集後記★「このような試みは、この分野で最初のことです。」
清華大学助教授楊艦博士の博士論文を元に加筆した本書の刊行が出来ま
して、心から嬉しいです。この場を借り致しまして、著者をはじめ、推
薦文を寄せてくださった山崎先生及び多くの関係者に、おめでとうと申
し上げると同時に、深くお礼を申し上げたいです。
この一冊の学術書としての重みは、山崎先生の推薦文にも書かれていま
すが、「このような試みは、この分野で最初のことです。」楊博士は東
京工業大学在学中、この論文の完成によって、一つの空白を埋めました。
留学生としての素晴らしい研究成果を残して、祖国に帰りました。いま
は、名門の清華大学で、学生の指導と新しい研究に力を尽くしています。
この本は、日本僑報社の創刊した博士文庫の四冊目でもあります。その
ため、日本僑報社から第三回華人学術賞をこの一冊に授与することにな
りました。
ここで本書の特集を組み、皆さんに送り致します。ぜひ大学と研究機関
の図書館にご推薦ください。ご注文したい方は、次のホームページをご
覧ください。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~duan/ 研究書コーナーにあります。
皆さんの中国研究、華僑華人研究、日中関係研究に引き続き協力させて
頂きます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
段 躍中
2003.10.30『近代中国における物理学者集団の形成』納品日にて
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日中関係・華僑華人情報専門誌・毎週水曜日発行 編集発行:段躍中
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