段躍中(日本僑報社編集長・日中交流研究所長)が執筆し、選んだ豊富な情報を毎週水曜日お届け。98年創刊以来、700号以上を無料で発行し、日中交流・在日中国人情報を知る上で欠かせないと自負。【まぐまぐ大賞2006ノミネート】
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在日中国人動態1015-1
発行日: 2003/10/15━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日本僑報電子週刊 第333号 2003年10月15日(水)発行
http://www5b.biglobe.ne.jp/~duan/編集発行:段躍中
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謝崇怡訳書・孫秀萍訳書 刊行特集
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■目次■
●特別報道★訳者あとがき――日本にいる私たちのことを記録/謝崇怡
訳者謝崇怡紹介
原著者銭寧紹介
『満洲国物語』の【内容紹介】
『満洲国物語』の【著者・訳者紹介】
●編集後記★在日中国人女性翻訳者たちのご活躍に感心
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●特別報道★訳者あとがき――日本にいる私たちのことを記録
分厚い原本(原名:美国留学 一九九六年 中国江蘇文藝出版社)の
翻訳が終わると、まるで過酷な受験戦争から解放されたようにほっとし
た。仕事と家事の合間を縫って翻訳することは、自分の体力の限界に挑
戦するようなもので、今回は私が勝った。一体何がこんなに自分を鼓舞
したのだろうか。確かに睡眠時間を削って本当に苦しかったけれども、
自分も含む三十二万人以上の中国人留学生の姿が反映されているので、
翻訳によってじっとこらえている何らかのストレスが発散されるのだろ
う。また全文を通して著者の知的ユーモアが溢れていることもあって、
この翻訳は楽しい作業でもあった。
著者銭寧は本書の中で数々の体験談を記述した。訳者はその中に幾つ
か自分の姿を見つけ、同じ中国から来た夫はその本を読んで、訳者が言
えなかった妻としての気持ちをやっと分り、当時中一の娘は待ち切れな
いかのように翻訳の開始から完成まで、原稿を追って繰り返して読んで
きた。また中国から来た仲間も、共鳴したのか徹夜で一気に読み終わっ
たとその時の感想を興奮して語った。
私たちは日本に留学、就職するという生活を体験した。中には日本に
帰化した人もいる。この本はアメリカでの体験談でありながら、日本に
住む自分たちのことを記録したのではないかと錯覚するほどの類似を感
じ、他国のアメリカのこととはとても思われなかった。これはたぶん中
国人の目から見れば、日本とアメリカは類似した社会構造、経済システ
ム、イデオロギー観なので、同じような視点と感覚になるからであろう。
銭寧は本書を書く当初の目標を達成したと言える。すなわち、中国の
留学史を編纂し、一世紀半の中国人留学生の経歴と感銘を記録し、自分
及び数十万人にのぼる同年代の留学生が自分たちの生きる社会と時代に
対する思考と反省を書き残すことができたのである。
銭寧は訳者に「この本を書くのに三、四年の下準備をしたよ。ミシガ
ン大学図書館、北京首都図書館などで膨大な資料を調べ、百人以上の留
学生を取材、追跡し、また素材を研究解析した」と語った。
このドキュメンタリーは、一世紀半の中国留学史を記録したものだが、
全篇の九四%を、ここ改革開放後二十年間の留学描写に当てている。若
者の単なる出国のためという留学動機、旅券申請の公安局現場、ビザ申
請のアメリカ大使館の室内風景、デマ、情報の乏しさ、海外でのアルバ
イトと私費苦学、のんびりできる公費留学、就職、婚姻関係・・・・・・、そ
して各時期における政府の政策、留学生の人数規模、出身家庭など統計
資料も織り交ぜている。
軽い読み物だが、英国哲学者J.S.ミル著『自由論』を引用し中国
の過去を反省したところもあった。
とても綺麗な生花を見た時、イミテーションかと疑い、そっと手を伸
ばし触って確認したことがあるように、本書はあまりにも写実的なので、
身をもって経験したことのない人にとっては文学的な加工を施したのか
と疑問をもつこともある。監修に当たってくださった山田晴子先生が不
思議そうに「中国で旅券申請の大変さは本書を読んで解ったが、銭寧が
中国の高官の子息で、ほんとうに庶民に混じってあんなことをしたの」
と聞かれた。私がそのままを銭寧に尋ねたら、照れながら
「当時は旅券の入手が大変に厳重だったので、確かに私が書いた通り自
分で申請したのです」と答えた。そして、第二章にある課長が上長の代
わりに旅券を申請したように、誰かに代行してもらうことができないの
かと聞くと、「出張は公務旅券を取ることで、会社の人事課が代行する
規定になっているが、留学の場合は私用ビザになり、本人の出頭が原則
だ。他の方法が絶対にないとは言えないが、自分はそんなことはしたく
なかった」と答えた。
訳者は、本文中で銭寧が格言的表現で真実を語っているのを発見した。
「ビザの申請は結婚と同じく、人生を左右する大事なことで決して手を
抜くことのできない事柄だ。」(第二章)
これは適切な表現だと思う。中国でのビザ申請は政治的にデリケート
な問題を含んでいるので、その対応は全神経を尖らせてあたる必要があ
る。そして、旅券を入手し、海外につくまで留学することを秘密にする
ようにと、同僚が銭寧に忠告している。そのため銭寧は渡米する飛行機
に乗ってからもこの渡航が成功しないのではないかと心配した。
こういう背景を理解していただくために、訳者が日本に留学する時の
体験を少し加えて紹介させていただく。
私は福建省の福州市という沿海にある中規模の都市に生活していた。
一九八七年の末頃、留学願望が芽生えた時、北京ではすでに若者がTO
FEL試験の申込みのため堂々と徹夜で列を作っていたが、福州市は自
費留学がまだ「頭脳流出」と批判されて、密告流行りの時代だった。私
は北京の幸運児のように明るい図書館に座り分厚い留学ガイトブックを
調べることができなかった。また、日本の現地合弁会社に数年間勤め日
本人の知り合いも多かったにもかかわらず、私が留学しようと秘密に計
画していることを日本人にどのように説明するかが分らなかったので、
会社の日本人の友人に入学情報を教えてもらうこともできなかった。私
ができたのは、兎が株にぶつかるのを待っているようにただ静かに機会
がやってくるのを待ちつづけることだった。
一九八八年夏、友人が彼の親戚を私の家に連れてきた。理由は海外の
縁者からもらった日本文の名古屋名城大学入学案内書を私に翻訳して欲
しかったからだ。この時に私は名城大学のことを知り、同大学に留学す
ることを決めた。その結果、幸運にも同大学院に入学することができた。
幸いなことに福州市は華僑の故郷でもあったので、私用旅券申請の際
には会社の証明書は必要ではなかった。ミステリー映画のようにドキド
キしながらこっそりと旅券を手にいれ、上海の日本領事館へビザ申請の
ために大至急飛びだした。
こうして会社の証明書入りの航空券を買うことなく、日曜日早朝に
上海行きの汽車に乗り、二十四時間立ちっぱなしで上海駅に着いた後、
交通渋滞をさけるため白タク(オートバイタクシー)を呼び日本領事館
に直行した。帰りも指定席が取れなかったので、二十四時間立ったまま
で福州駅に着き、不眠のままの顔で会社に直行した。
さらに、留学計画を覆い隠すため、一九八九年三月日本への出発二日
前に留学と退社の意思を会社に伝え、前日まで出社して退社手続きなど
を始めた。間に合わなくて残した手続きは、私が発ってから主人に代行
してもらった。これは、まさに必要は発明の母という諺を体現している
と思う。以上は私の体験談の一部だ。
銭寧の原本が中国で出版された時センセーションを巻き起こし、一九
九七年度のベストセラーとなって、テレサンテンのレコードのように海
賊版が六種類も出回った。ニューヨークタイムズ、交流(台湾)、星島
(シンガポール)、明報(香港)等世界中の有力紙誌とインターネット
に書評が出て、客観的著書として高い評価を得た。後に香港、台湾でも
出版され、本書により知られた留学生第一人者容(ユン)稟(フォン)の胸
像が建てられ、本書の英文版が年内に出版される予定になっている。
しかしながら、某雑誌に、著書には文革の名残りがあると書かれてい
たのも私は読んだ。銭寧と同時代の人間で、同じように文化大革命を経
て毛沢東の「老三篇」を暗誦させられた訳者は、本の中にちりばめられ
ている文革時代の流行語録、文革専用語を見かけた時は、思わず笑って
しまった。
銭寧はこれらの用語をもじって、ユニークな発想で正反対なところに
使う。毛沢東の呼びかけ「全国民皆兵」を「全国民皆商」(九〇年代に
は商業に従事する人が多くなったこと)ともじり、ビザを入手してアメ
リカ大使館の面接室から出た途端申請者に囲まれた場面を、毛沢東が天
安門で紅衛兵を検閲する場面と揶揄した。文革の時、これらの専用語は
毛沢東本人と同じように神聖で冒してはいけないものだっただけに、と
んでもない場面に使われると私たちは笑ってしまう。 古いイデオロギ
ーが若者に拒絶されていることをこのような形で表現され、現在許され
ているよりはるかに大きな自由の獲得が若い世代に高々と掲げられてい
ると、私たちには思われる。
本書の目次は、日本人にも読みやすいように銭寧に頼んで各節のタイ
トルを改めて簡潔に作ってもらったもので、原著書の長い目次は各節の
副題にした。
本書にある日本人に馴染まない言葉などには註書きを入れておいた。
短いのは[ ]の中に入れ、長いものはその段落の後ろに置くことにした。
本書の出版に当たり、まず、第一にYMS創流社と、玉川大学教授山
田晴子先生を紹介してくださった日立製作所名誉顧問の北村敏氏に、深
く御礼を申し上げる。
次に、温かく指導してくださった医学博士山田静雄氏と、長年、日本
語を教えて頂き、本書翻訳の第一原稿を仕上げる作業を一緒にやって下
さった菅野洋子先生、及び翻訳について細かいアドバイスをしてくださ
った、会社の先輩青洋氏、その他お世話になった方々に厚く御礼を申し
上げる。
皆様の親身なご援助がなければ、今日の私も、今回の翻訳出版の夢も
全く実現できなかったと思う。
また、家庭にあって常日頃、励ましや、温かい応援をくれた主人と娘
にありがとうと言いたい。
謝崇怡
2000.8.20
詳しくはhttp://oak.zero.ad.jp/~zab53827へどうぞ
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●特別報道★訳者紹介
謝崇怡 (Xie Chongyi)
日本名:福田崇子(ふくだたかこ)
1982年廈門大学卒業。同年福州市福日有限公司(日立製作所子会社)に
勤務、1989年日本に留学、名古屋名城大学大学院に入学。大学院終了後、
日立製作所入社、グロ−バル事業開発本部中国部のスタッフとして現在
も勤務する。上海国際商務法律研究会公司法専業委員会理事を担当。
1998年夫と娘の家族と共に日本に帰化。訳書として『霧社起義資料集
』(共訳廈門大学台湾研究所出版 1980)、『星新一小説選』(共訳中国春
風文芸出版社 1883)『日本農業的経営管理』(共訳福建農業院農業経済
研究所出版 1987)『情報処理系統』(共訳甘粛省品質性能源標準化情報
センター出版 1988)他がある。
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●特別報道★原著者紹介
銭寧 (Qian Ning)
1959年に南京市に生まれた。父は中国前外相、現副首相の銭其シン氏
である。中国人民大学卒業後、『人民日報』の文芸記者となる。1989年
天安門事件の年米国ミシガン大学に留学しジャーナリズム研究を専攻す
る。後に同大学の講師を勤めるが、1995年帰国、翌年本書を出版し大変
な反響を巻き起こす。屈託のないアメリカ人の学生生活を目にして、作
者が「私は単純な事実を理解した。私たち中国人一少なくとも若い世代
一は今までとは異なった形の生活ができるのだ」と感じたという記述が
ある。この一例にも見られるように、本書では若者達の率直な心情が語
られる。同時に広範囲の取材と実体験に基いた、中国とアメリカの現状
にたいする観察や分析も非常に客観的である。従って本書は優れたドキ
ュメンタリーであり、鋭い文明批評とも言えよう。 銭寧氏は1995年
5月に中国に帰国してのち、企業管理コンサルティグの仕事に従事、
1995年から1997年までは世界大手会計事務所Cooper & Lybrand に勤務。
1998年から現在までは米国大手法律事務所Mayer, Brow & Plattの所属
MBPコンサルティング社の上級コンサルタントとして勤務している。ま
た、著者は2000年から中国のインターネット図書販売の 800図書網社の
董事(取締)を兼任し、2000年に歴史小説「秦相李斯」を上梓した。
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●特別報道★『満洲国物語』の【内容紹介】
【内容紹介】満洲という大地に生きたさまざまな民族と人間の知られざ
るドラマを、中国の女性作家がタブーを打ち破って初めて描く!満洲国
の風土と人間を中国人を主人公にして感動的に綴った幻の国の14年の物
語。
http://www.kawade.co.jp/search/index.htm
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●特別報道★『満洲国物語』の【著者・訳者紹介】
【著者紹介】遅子建 (チー ズジエン)1964年、中国黒龍江省河北極村に
生まれる。第一回魯迅文学賞、女性文学賞等を受賞。中国作家協会会員。
著書『木の下』『黄昏に響く朝鐘』『北極村の童話』『白夜に向かって
旅立つ』『白雪の墓地』他。ハルビン在住。
【訳者紹介】孫秀萍(そん・しゅうへい)翻訳家。在日中国人新聞の記者
も務める。訳書『とう小平伝』(東京新聞出版局)などがある。
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●編集後記★在日中国人女性翻訳者たちのご活躍に感心
謝崇怡と孫秀萍両女史は、近年素晴らしい翻訳作品を刊行してきた。こ
の特集に、二人の最新作品を皆さんに紹介致します。
二人の特徴言えば、単純の翻訳者ではない。二人とも仕事の傍ら、厚い
中国語原書をコツコツ訳してきた。本来なら、中国人にとって、日本語
から中国語に訳すことは、比較的にやりやすいと思います。その逆の場
合、日本人の方にとって、比較的にやりやすいと思います。謝さんと孫
さんは、日本人の方にも負けないほどの日本語で、中国語から日本語に
訳すことに一所懸命に頑張りました。両方とも上下巻の作品集を手にと
って、本当に感心します。
去年の、王雅丹さんの訳した『時は流れて--日中関係秘史五十年』が大
変好評を得ました。日本僑報電子週刊も彼女の事跡を特集で皆さんに紹
介したと同時に、彼女の講演会も開催しました。
これからも在日中国人の女性翻訳者の活躍を応援していきたいです。近
い内に、謝さんと孫さんの講演会も開催したいです、二人の翻訳のノウ
ハウを語って頂きと同時に、その体験した苦労に皆さんに披露したもら
いたいです。
謝さん、孫さん、王さんをはじめ、読者皆さんのご健闘を祈ります。
段躍中 2003.10.15午後7時
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日中関係・華僑華人情報専門誌・毎週水曜日発行 編集発行:段躍中
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