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Cinemaの王国 vol.496〜『ノーカントリー』
発行日時: 2008/3/19
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『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー賞監督賞を受賞したアンソ
ニー・ミンゲラ監督が18日、ロンドンの病院で死去しました。54歳。その後に
監督した『コールドマウンテン』もなかなかの力作だったし、まだ若いだけに
残念です。
本日は、今年のアカデミー賞で4部門を受賞した話題作を取り上げます。
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【INDEX】
◆1.今週のこの1本!
―『ノーカントリー』―
◆2.メールちょうだい
◆3.ぽちのひとりごと
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◆1.今週のこの1本! 〜『ノーカントリー』〜
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●『ノーカントリー』(No Country for Old Men)
(2007年 アメリカ)(上映時間2時間2分)
監督・製作・脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリ
ン、ウディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド、ギャレット・ディラハント
*シネマメディアージュ、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国公開中
ホームページ http://www.nocountry.jp/
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<ストーリー>
1980年のテキサス。ベトナム帰還兵モス(ジョシュ・ブローリン)は、荒野で
ハンティング中に、死体が散乱する銃撃現場に遭遇する。どうやら麻薬取引の
トラブルによるものらしい。そこで、彼は200万ドルの大金を発見して持ち帰る。
その後、不用意な行動から、冷血非情な殺人者シガー(ハビエル・バルデム)
に追われるようになるモス。そんな中、老保安官エド・トム・ベル(トミー・
リー・ジョーンズ)が事件の捜査に乗り出すのだが……。
<レビュー>
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重たく深いテーマ性を持つ異様な緊張感に満ちたバイオレンス・ムービー
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『ファーゴ』『ビッグ・リボウスキ』のコーエン兄弟による作品。コーマッ
ク・マッカーシーの犯罪小説「血と暴力の国」の映画化で、第80回アカデミー
賞において、作品、監督、脚色、助演男優の4部門を受賞しました。
そう聞いて、「わー!面白そう」と気軽に観に行こうとする方もいるでしょう
が、うーん、ちょっと考えたほうがいいかも……。かなり凄惨だし、テーマが
重たいし、難解な部分もある映画なので。
とはいうものの、途中までは普通のサスペンスとして観ても、かなり楽しめま
す。
オープニングは荒涼とした大地をバックに、トミー・リー・ジョーンズ演じる
老保安官が「最近の犯罪は理解できない」とボヤきます。
続いて登場するのが冷酷な殺人犯シガー。自分を捕まえた保安官補を何のため
らいもなく殺害します。
その後、場面は荒野でのハンティング風景に。ベトナム帰還兵モスが、偶然に
も死体が転がった現場に遭遇。麻薬取引でトラブったらしく、そこには大金が
落ちています。危険と知りつつ、それを持ち帰るモス。
このモスが殺人鬼のシガーに追跡されるドラマが物語の柱です。自分の決めた
ルールに従って、次々に殺人を犯しながらモスを追いかけるシガー。そして、
妻を守るために必死で追跡を逃れようとするモス。両者の息詰まる攻防が展開
されます。
スクリーンを包むのは異様な緊張感。光と影を巧みに使うなど細かなテクニッ
クを駆使した映像が、観客の全神経をスクリーンに釘付けにします。
殺人鬼シガーの恐さも戦慄をもたらします。高圧ボンベつきのガンという不気
味な武器を手に、無表情で平然と人を殺していく男を演じるのはハビエル・バ
ルデム。オスカーも納得の渾身の演技です。受信機を使った追跡もスリリング。
彼に追われる男を演じたジョシュ・ブローリンも、負けず劣らずの好演技でし
た。テキサスの荒くれ男の無骨さと、追われる男の恐怖を的確に表現。
この2人に絡んでくるのがトミー・リー・ジョーンズ演じる老保安官です。何
だかんだとボヤきながら捜査をするのですが、その複雑な心理がドラマに深み
を与えています。
やがて、犯罪組織の男なども絡んできて、ドラマはさらに緊迫していきます。
モスは逃げ切れるのか?シガーは逮捕されるのか?
普通のエンタメ映画なら、この後には明快な結末が用意されているはず。しか
し、この映画の展開はまったく違います。シガーは殺しを続けていきます。老
保安官は虚しさを抱えつつ引退します。
ラストが近くなるにつれて、難解なシーンが増えます。老保安官が、犯人に撃
たれた経験を持つ先輩を訪ねた際の会話。老保安官が、妻に語る昨晩見た夢の
話……。それらはいったい何を意味するのか。
スッキリするようなあと味はありません。いったいこの映画は何を語りたかっ
たのか。あちらこちらに散りばめられた様々な断片をかき集めて、観客自身が
コーエン兄弟の投げかけたテーマについて考えるしかありません。人間は暴力
的な存在なのか? 暴力を止めることなどできないのか?
ハラハラドキドキのサスペンスを通して、そんな人間の本質に関わる重たい問
題にまで迫ったコーエン兄弟。彼らのキャリア中でも最高の部類に入る映画だ
と思います。
エンタメ映画のような快感はなくとも、個人的には観ておくべき映画だと思い
ます。暴力という普遍的なテーマを持つ映画だけにネ。
それにしても、こういう映画が受賞するのだからやっぱりオスカーはすごい。
日本アカデミー賞では絶対に考えられないものなぁ〜。
《ぽちの満足度》
★★★★☆
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆(+1/2★)
(緊張感あふれるサスペンスと重たいテーマ性にノックアウトされました。た
だし、凄惨なシーンが多いし、後半は難解なので、どなたにでもオススメとは
いきません。)
(ぽち)
〔鑑賞データ〕
2008年3月15日(土)ワーナー・マイカル・シネマズ板橋にて。午後1時30分の
回
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◆2.メールちょうだいッ!!
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「Cinemaの王国」は皆さんからのメールを活力に発行を続けておりまッす。
▼今週は(badboy)さんから『バンテージ・ポイント』について、<私も観て
面白かったですね。事件に関係する人々からの視点で語られる物語は、繰り返
されるものの緊張感が途切れないのがいいですね。ある点で『メメント』に通
じるものがあるように感じました。>というメールをいただきました。
また、ある読者の方からは『ダージリン急行』について、<設定がフランス映
画の『サン・ジャックへの道』に似てるような気がします。>というメールを
いただきました。未見なので調べてみたら、なるほど行き違いの多い兄弟が旅
をするという設定は似ていますね。
みなさんも「Cinemaの王国」へのメッセージや取り上げて欲しい作品のリクエ
スト、観た映画の感想など、気軽にメールをくださいネ。できれば名前(ハン
ドルネーム可)を本文中に明記してください。(メールは誌面で紹介する場合
もあります。載せて欲しくない方は、その旨を明記してください。)
・メールはこちらまで fwkg4052@mb.infoweb.ne.jp
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◆3.ぽちのひとりごと
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*次号は、『犬と私の10の約束』を取り上げます。なんだ?この脈絡のない映
画の取り上げ方は……(笑)。
(ぽち)
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