個性派ライターによる映画レビューのマガジン。毎週1〜2本、新作映画を中心に言いたい放題で斬りまくります。
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Cinemaの王国 vol.347〜『太陽』
発行日: 2006/8/11★☆★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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☆ 「Cinemaの王国」 vol.347(2006. 8.11)
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このメールマガジンは、ほとんど自腹で年間100本以上の映画を観るライター
(ぽち)が、観た映画の感想を書くマガジンです。
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異常な暑さの後には台風と、何かと大変な毎日ですが、みなさんいかがお過ご
しですか。そういえば、そろそろ世間ではお盆休みですね。帰省や旅行の方は
どうぞお気をつけて。さて、今回取り上げたのは、昭和天皇を描いた話題の映
画です。(なお次号の発行は水曜になるか金曜になるか未定です。)
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【INDEX】
◆1.今週のこの1本!
―『太陽』―
◆2.メールちょうだい
◆3.ぽちのひとりごと
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◆1.今週のこの1本! 〜『太陽』〜
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●『太陽』(THE SUN)
(2005年 スイス・ロシア・イタリア・フランス)(上映時間1時間55分)
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:イッセー尾形、桃井かおり、佐野史郎、ロバート・ドーソン
*銀座シネパトスほかにて公開中。順次全国公開
ホームページ http://taiyo-movie.com/
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<ストーリー>
1945年8月。昭和天皇(イッセー尾形)は、皇后(桃井かおり)や皇太子らを疎
開させ、自らは地下壕と研究所での生活を送っていた。敗戦が決定的となる中、
御前会議では陸軍大臣が本土決戦を唱えるが、「国民に平和を」と願う天皇は
降伏を示唆する。やがて、連合国占領軍総司令官ダグラス・マッカーサー(ロ
バート・ドーソン)との会見の日がやってくるのだが……。
<レビュー>
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ロシアの鬼才が描いた昭和天皇。デッチあげられた神話の哀しさが漂う
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日本人にとっては、いろんな意味で大きな存在の天皇。だったら、それを映画
で描こうとする人がいても良いはず。そこで登場したのがこの映画。
ただし、描いたのは日本人ではなく、ロシアの鬼才アレクサンドル・ソクーロ
フ監督。『モレク神』でヒトラーを、『牡牛座』でスターリンを描いた彼が、
今度は昭和天皇を取り上げました。
舞台となるのは終戦前後の日本。それまで「神」と崇められていた昭和天皇が、
終戦を期に「人間宣言」をするまでが描かれます。
とはいうものの、けっして事実をそのまま描いているわけではありません。基
本的な史実はなぞっていますが、細かな描写は事実とは違うところもあるよう
です。ドキュメンタリーではなく、あくまでもドラマとして描いているわけで
す。
この映画で描かれる昭和天皇は、かなり奇妙な人物です。ブツブツとワケのわ
からないことをつぶやいたと思ったら、同時に日本の行く末や国民の状態を憂
える。その一方で戦局が緊張状態にある中、海洋性生物の研究に嬉々として没
頭する。
いやいや奇妙なのは天皇ばかりではありません。侍従をはじめとする周囲の
人々、天皇がいる地下施設(皇居?)、その他いろんなものが何かヘンなので
す(ちなみに、俳優たちに左右逆で演技をさせて、それを鏡に映した映像をカ
メラが写しているという説もありますが、デマだという説もあってよくわかり
ません)。
また、映画全体を包むのは静けさですが、けっして重苦しい映画ではありませ
ん。天皇とマッカーサーの会見場面や、米軍からの贈り物のチョコをめぐるエ
ピソードなど、ユーモラスで笑えるシーンもたくさんあります。
それらを通して伝わってくるのは、当然ながら天皇はみんなと同じ個性豊かな
人間だということ。どう考えても神なんかじゃありません。天皇自身も侍従に
「私の身体は君たちと同じようだが?」と疑問を呈します。ところが、それが
認められない哀しみと滑稽さの同居する奇妙な世界……。
それは昭和天皇に限らず、様々な時代の様々な権力者をめぐる神話に共通する
世界かもしれません。この映画を貫く奇妙さは、そうしたデッチあげられた神
話の本質をあぶりだしたことによって、浮き出たものなのでしょう。
米軍関係者たちが、昭和天皇を見て、「チャップリンそっくりだ!」と言うと
ころがあります。チャップリンといえば、映画の中で独裁者を演じた人物。そ
のあたりもなにやら意味深です。
ラストでは、天皇の「人間宣言」がある事件を起こしたことが報告されて終わ
ります。それを聞いた天皇の姿には、何ともいえぬ哀愁が漂っていました。
いったいソクーロフ監督は何を描こうとしたのか。天皇の戦争責任を追及する
映画でもなければ、彼を利用した軍部などを批判した映画でもありません。そ
ういうところを越えて、1人の人間としての天皇を描くことで、もっと普遍的
な人間の歴史、特に独裁者とされた人々にまつわる歴史を根源的にえぐり出そ
うとしたのではないかというのがボクの見解。
とはいえ、けっして明確な主張があるわけではなく、観る人によって、いろん
な捉え方ができる映画です。単純に「昭和天皇っておもしろい〜」と思って観
たっていいわけですから。
だって、アナタ、昭和天皇役のイッセー尾形のなりきりぶりときたら、ハンパ
じゃないですヨ。「あ、そう」という口癖も絶妙。日常生活がほとんど伝わら
なかった人物を演じるのだから、並大抵の苦労ではなかったと思いますが、よ
くぞここまで演じきったもの。侍従長役の佐野史郎も最後にチラッと登場する
皇后役の桃井かおりも、なかなか味があります。日本向け映画でもないのに、
前編ほぼ日本語というのもウソくささがなくて嬉しいところ。
人によって見方は別れると思いますが、絶対に一見の価値はある映画です。そ
れなのに、なかなか公開が決まらず、ようやく小さな映画館を中心に細々と公
開だなんて、天皇ってやっぱり今でも映画界にとってタブーなのか???
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆(+1/2★)
(昭和天皇を批判するわけでも、持ち上げるわけでもないので、そういう期待
はしないこと。歴史的人物を描いた映画として一見の価値アリ。イッセー尾形
の演技だけでも必見です)
<ぽち>
〔鑑賞データ〕
2006年8月5日(土)銀座シネパトスにて。午後4時25分の回
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◆2.メールちょうだいッ!!
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「Cinemaの王国」は皆さんからのメールを活力に発行を続けておりまッす。
■前号で取り上げた『パイレーツ・オブ・カリビアン』について、こんなメー
ルをいただきました。
<私も公開早々に見てきて楽しんだのですが、エンドロールを全て見ないまま
に劇場を出てしまいました(苦)。どんな小ネタがあったのでしょう?? 気
になって仕方がありません。ぽちさん、どうか教えてください。(ぞうさん)
さん>
■ならば、ここでネタバラシ……というのもまだ観てない方に悪いので、個人
的にお答えしておきました。他にも気になる方がいればメールください。お返
事しますので。さらに、こういうメールも……。
<やっぱ、連作なんだから 1作目を見てからにして欲しかったですよ。きっ
と1作目を見てからなら それほど長いとは感じなかったのでは?と思うんで
すよ。(みいな)さん>
■はい。観ます。きっと観ます。必ず観ます(笑)。確かに1作目を観てから
のほうが楽しいので、これからの方はぜひ先に1作目を。
みなさんも「Cinemaの王国」へのメッセージや取り上げて欲しい作品のリクエ
スト、観た映画の感想など、気軽にメールをくださいネ。できれば名前(ハン
ドルネーム可)を本文中に明記してください。(メールは誌面で紹介する場合
もあります。載せて欲しくない方は、その旨を明記してください。)
・メールはこちらまで fwkg4052@mb.infoweb.ne.jp
・ホームページの掲示板もオープン中です。いつも書き込みありがとうござい
ます。
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◆3.ぽちのひとりごと
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*ブログにも書きましたが、今回取り上げた『太陽』は、初日は全ての回が満
席で、立ち見が出る混雑。ボクも1時半ごろ行って、4時25分の回の整理券を
もらってようやく座れました。平日はそれほどではないと思いますが、行かれ
る方は混雑状況を問い合わせてからのほうがいいと思います。なお、現在公開
中の東京と名古屋以外は、順次全国公開予定だそうです。
*明日からは『ユナイテッド93』『東京フレンズ The Movie』『狩人と犬、
最後の旅』『紙屋悦子の青春』などが公開スタート!
(ぽち)
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■週刊「Cinemaの王国」 vol.347 (2006. 8.11)
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