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個性派ライターによる映画レビューのマガジン。毎週1〜2本、新作映画を中心に言いたい放題で斬りまくります。

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Cinemaの王国 vol.343〜『ゆれる』『ローズ・イン・タイドランド』

発行日: 2006/7/21

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☆   「Cinemaの王国」  vol.343(2006. 7.21)
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☆★☆             http://homepage1.nifty.com/pochie/
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このメールマガジンは、ほとんど自腹で年間100本以上の映画を観るライター
(ぽち)が、観た映画の感想を書くマガジンです。
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西日本を中心に大雨で大変な被害が出ているようです。みなさまもお気をつけ
ください。早く梅雨が明けないかなぁ〜。そんなうっとうしい梅雨空とは裏腹
に、今週は素晴らしい日本映画を紹介します。本年度ベストワンは、これで決
まりかも。その他、外国映画のレビューとホームページ情報をお届けします。

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【INDEX】
◆1.今週のこの1本!
  ―『ゆれる』―
◆2.今週のもう1本!
  ―『ローズ・イン・タイドランド』―
◆3.今週のまだまだあります!(HP情報)
  ―『空中庭園』&『運命じゃない人』(DVD)―
◆4.メールちょうだい
◆5.ぽちのひとりごと
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◆1.今週のこの1本! 〜『ゆれる』〜
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●『ゆれる』
(2006年 日本)(上映時間1時間59分)
監督:西川美和
出演:オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文、真木よう子、木村祐
一、ピエール瀧、田口トモロヲ、蟹江敬三
*アミューズCQN、新宿武蔵野館ほかにて公開中
ホームページ http://www.yureru.com/
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<ストーリー>
東京で写真家として成功し、自由奔放に生きる弟・猛(オダギリジョー)は、
母の一周忌に帰郷し、父とともにガソリンスタンドを経営する兄・稔(香川照
之)と再会する。父とは折り合いが悪いものの、稔とは仲が良い猛。翌日、兄
弟はガソリンスタンドで働く幼なじみの智恵子(真木よう子)と3人で渓谷に
出かける。ところが、川に架かる吊り橋で、智恵子が渓流へ落下してしまう。
彼女のそばにいたのは稔。事故か、事件か、やがて稔は殺人犯として逮捕され、
裁判が始まるのだが……。

<レビュー>
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揺れる吊り橋を舞台に、揺れ動く人間心理を描き出す
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人間にはいくつもの顔がある。明るくて誠実な性格の人が、次の瞬間、邪悪な
表情を見せることもある。明と暗、素直と屈折、誠実と不誠実、正義と悪。常
にそんな狭間で揺れているボクたち……。

本年度のカンヌ映画祭でも大きな話題を呼んだ西川美和監督の長編第2作は、
人間の内面を深くえぐった見事な作品。
事前に「良い!」というマスコミや世間の評判を聞いて出かけたのですが、期
待を裏切らない出来。いや、それ以上の映画でした。

物語は、家族の絆、特に香川照之演じる兄と、オダギリジョー演じる弟の関係
を軸に展開します。兄は故郷で家業を継ぎ、マジメすぎる性格。それに対して
弟は東京に出て写真家として成功。いまだに独身の兄とは対照的に女性関係も
激しそう。ある時、その弟が法事で帰郷。久々の再会でも相変わらず仲の良い
兄弟。だが、そこに弟を慕う幼なじみの女性が絡んできて……。

微妙な心理描写が素晴らしいのです。故郷で生きるしかない兄、その故郷に屈
折した思いを持つ弟、対照的な兄弟それぞれの心情が、実にリアルに伝わって
きます。特に見事なのが、感情の揺らぎの捉え方。表面的には明るく振舞いつ
つ、次の瞬間にまったく違った表情を見せる。そのあたりの心理描写が、なん
とも巧みなんですよねぇ〜。

「間」を効果的に使った演出が素晴らしいうえに、香川照之とオダギリジョー
の演技がこれまた秀逸。2人とも過去にたくさん印象的な演技を披露してきま
したが、今回はそれを凌駕するほどの存在感で、繊細な演技を披露しています。
智恵子役の真木よう子も、負けず劣らず存在感がありました。

三角関係のような前半を観ていたら、タイトルの「ゆれる」というのは、兄弟
の心理の揺らぎを指しているのかなぁ〜、と思ったのですが、けっしてそれだ
けではなかったのです。揺れる吊り橋がドラマの大きな転換点となります。

その後、3人で出かけた渓谷の吊り橋で、智恵子が転落死してしまいます。そ
して、やがて兄は殺人罪で逮捕されてしまいます。兄が言い争いの末に彼女を
殺してしまったのか?弟はそれを目撃していたのか?

ここからは法廷劇が中心になります。初めのうち、弟はひたすら兄の無実を信
じて行動します。しかし、裁判の過程で、その心理が微妙に揺らぎ出してきま
す。強固に見えた兄弟の絆にほつれが見え出してきます。

弟の兄に対する複雑な感情、葛藤の描き方をはじめ、繊細でリアルな描写は最
後まで変わりません。しかも、ラストに近づくにつれ、誠実な兄と自由奔放な
弟というそれぞれの性格とは、まったく違う表情が見えてきます。人間の内面
の複雑さ、感情の揺れが伝わってきて、観ていて胸がヒリヒリしてくる感じで
した。

とはいえ、木村祐一の検事と蟹江敬三の弁護士のユニークな対決など、けっこ
う楽しい要素もあって、ただ堅苦しいドラマというわけではありません。

ラスト近くになると、ややバタバタした感じが目につきます。そのあたりがや
や惜しい気も……。

それでも、兄弟の幼少時のフィルムを効果的に使うなどしてラストへ。観客に
判断をゆだねた結末もこの映画にはピッタリ。あの後兄弟はどうなったのか?
それは観た人それぞれが考えること。しかし、そこには微かな光が!?

兄弟の絆の崩壊と再生を描いた、見応えある人間ドラマ。特に繊細な心理描写
は、バツグンに見応えがあります。観ているうちに、どんどん引き込まれて、
観終わってズシリと心に残りました。

西川監督ったら、まだ若いし、写真を見るとごく普通のいまどきの女のコ。こ
んな人が、こんなスゴイ映画撮っていいのかぁ〜〜〜?? と言いたくなるよ
うな映画でした。

《ぽちのオススメ度》
★★★★☆(+1/2★)
(家族の崩壊と再生を描いた見事な映画。心理描写が素晴らしい! 筆者の中
では今年の日本映画のベストワン有力。濃密な人間ドラマがお好きな方はぜ
ひ!!)
                             <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2006年7月15日(土)新宿武蔵野館にて。午後4時25分の回

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◆2.今週のもう1本! 〜『ローズ・イン・タイドランド』〜
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●『ローズ・イン・タイドランド』(TIDELAND)
(2005年 イギリス・カナダ)(上映時間1時間57分)
監督:テリー・ギリアム
出演:ジョデル・フェルランド、ジェフ・ブリッジス、ジェニファー・ティ
リー、ジャネット・マクティア、ブレンダン・フレッチャー
* 恵比寿ガーデンシネマ、新宿武蔵野館ほかにて公開中
ホームページ http://www.rosein.jp/
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<ストーリー>
10歳の少女ジェライザ=ローズ(ジョデル・フェルランド)は、両親が2人と
もヤク中。ある日ついに母親が死んでしまい、慌てた父親はジェライザ=ロー
ズを連れて故郷へ旅立つ。実家は、草原の中に立つ壊れかけた古い家。そこに
着いて間もなく、父親もクスリを打って死んでしまう。1人残されたジェライ
ザ=ローズは、指にはめた頭だけのバービー人形を相手にしながら周囲の探索
を開始するのだが……。

<レビュー>
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毒々しくて妖しげなテリー・ギリアム版「不思議の国のアリス」
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空想好きのおませな女のコが、不思議な世界を旅する物語。
といえば、「不思議の国のアリス」を思い浮かべますね。この映画はまさにテ
リー・ギリアム監督版「不思議の国のアリス」。

しかし、クセモノ監督の映画だけに本家とはかなり違います。何しろ、アナタ、
主人公の少女ジェライザー=ローズの境遇からしてスサマジイ。ロックミュー
ジシャンの父ちゃんはもちろん、母ちゃんもドラッグ漬け。

そして、ある日、ドラッグのやりすぎで母ちゃんが急死。でもって、父ちゃん
と一緒に田舎の祖母の家に向かったものの、祖母はとっくに死んでいて、父ち
ゃんも着いてすぐにドラッグでお陀仏に。

なんという悲惨な物語でしょう。涙なくしては観られません。てのはウソ。
だって、1人残されたローズもブッ飛んだ女のコ。4つのバービー人形(頭だ
け)を指にはめて会話をし、家の周りを探検する。そして、さまざまな不思議
な体験をして、不思議な人たちと出会う。

そんな彼女の姿を想像力豊かに描いていくので、なかなか楽しいファンタジー
になっています。頭の中はアレヤコレヤいろんな空想が渦巻いて、その中をの
ぞき見ているだけで楽しくなってしまうのです。ブラックな笑いもタップリ詰
まっています。

おまけに、映像がとても魅力的。雑草に囲まれた荒れ果てた一軒家をうまく使
って、鮮烈で、妖しげな映像を次々に登場させます。

話が進むにつれて、毒の強さはどんどんエスカレート。あまりにも奇妙な近所
に住む姉弟が登場してくるに至って、物語はますます破天荒になっていきます。
なんたって、死んだ父ちゃんにあんなことしちゃうんですから。

でも、それが逆に魅惑的で、どんどん引き込まれてしまう人もたくさんいるこ
とでしょう。とにかく、キレまくり、ぶっ飛びまくり。パンクロックみたいに、
ヤバイ感じの映画です。この年で(65歳)、依然としてこんな映画をつくるの
だからして、テリー・ギリアムにはもう脱帽です。さすが伝説の毒ガス番組
「モンティ・パイソン」のメンバーだっただけのことはあります。

ローズ役のジョデル・フェルランドの異様なほどの可愛らしさが、この妖しげ
な映画をますます魅力的にしています。「あの年でもやっぱり女は女」なんて
思わせるところもあったりして。近隣に住む障害を持つ青年役のブレンダン・
フレッチャーの怪演も見事。

どんな悲惨な運命も、おとぎ話に変えてしまえる子供のイマジネーションの豊
かさを実感できるファンタジー。ただし、毒に満ちた大人のためのファンタ
ジーです。いえいえ、大人だって顔をしかめる人がたくさんいそう。あなたは
観る勇気ありますか? 思い切って観たら、テリー・ギリアムのぶっ飛びワー
ルドに、もしかしてハマっちゃうかもヨ〜〜〜。 (⌒-⌒)

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(映像美が光るテリー・ギリアムらしい怪作ファンタジー。ギリアム監督のフ
ァンなら十分満足できるのでは? そうでない人が「不思議の国のアリス」の
イメージで観ると強烈な毒にやられるのでご注意を。)
                             <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2006年7月17日(月・祝)新宿武蔵野館にて。午後2時20分の回

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◆3.今週のまだまだあります!(HP情報)
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今週は映画館では2本のみの鑑賞でしたが、自宅で2本のDVDを鑑賞しまし
た。どちらも昨年公開の日本映画。特に『空中庭園』は、かなり見応えのある
映画でした。ホームページにレビューを載せたので読んでみてください。

●『空中庭園』のレビューはこちら
→ http://homepage1.nifty.com/pochie/review2/kuutyuu.html

●『運命じゃない人』のレビューはこちら
→ http://homepage1.nifty.com/pochie/review2/unmeijyanai.html




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◆4.メールちょうだいッ!!
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「Cinemaの王国」は皆さんからのメールを活力に発行を続けておりまッす。

みなさんも「Cinemaの王国」へのメッセージや取り上げて欲しい作品のリクエ
スト、観た映画の感想など、気軽にメールをくださいネ。できれば名前(ハン
ドルネーム可)を本文中に明記してください。(メールは誌面で紹介する場合
もあります。載せて欲しくない方は、その旨を明記してください。)
・メールはこちらまで fwkg4052@mb.infoweb.ne.jp
・ホームページの掲示板もオープン中です。いつも書き込みありがとうござい
ます。

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◆5.ぽちのひとりごと
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*先週土曜日に観にいった『ゆれる』。ミニシアター系とはいえ、土日は大入
りが続く大人気。なんと3時間前に行ったのに、整理番号83番……。もう少し
上映館が増えないかなぁ〜。こんなに良い映画なのですから。

*明日からは、話題の『パイレーツ・オブ・カリビアン』がいよいよ公開に。
さらに『ハチミツとクローバー』『トランスアメリカ』『ダスト・トゥ・グ
ローリー』などが公開スタートです。
                             (ぽち)

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