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030930ビジネス知識源:たった6兆円の資金流入だけで・・・(1)

発行日: 2003/9/30

※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。
 <あなたと、チームの、知識とスキルのブラッシュアップを>
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          ビジネス知識源
      2003年9月29日号:Vol 167

  <Vol.167 たった6兆円の資金流入だけで・・・(1)> 
            
 【良質な経営・IT・ビジネス・経済知識の提供を目標に】
                            (読者数: 31,353名)
著者:Systems Research Ltd. chief  consultant 吉田繁治
著者へのひとことメール⇒   yoshida@cool-knowledge.com
登録・解除・バックナンバー⇒ http://www.cool-knowledge.com
       ※150編余のバックナンバーを掲載しています。

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こんにちは、吉田繁治です。先週号は、お休みをいただきました。
お待ちの方には、とても申し訳なく存じています。休むと、宿題をや
り残して学校に出たときのような、気分になります。

今回は、取り上げられることの少ない、「対外資産と外為会計」をテ
ーマにします。貿易黒字は、日本の富として使うべきものですが、そ
れが、財務省による為替介入の名目で、今まで一方的に米国へ還流し
ています。

ところが03年5月からの、株高では、同期間に、財務省がドル買い
で海外流出させた資金と同額の6兆円が、日本の株式市場に還流して
きた。これによって、金融危機が去り、景気回復までが言われるくら
いまでになっています。(実はそう単純ではないのですが)

このように、海外流出していたマネーが、わずかでも日本に流入すれ
ば、日本経済は、大きく回復する。そのメカニズムを、見ていこうと
思います。

しかし、これは、金利上昇というあたらなリスクも生む・・・
6兆円は巨額ですが、GDPに対しては、たった1.2%です。

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 <Vol.167 たった6兆円の資金流入だけで・・・(1)> 

【目次】

 1.合意と異見
 2.事実を認識すれば、世界が未経験なことを経験してきた
 3.日本の高齢化の特徴
 4.資本、技術、頭脳は世界を移動する時代
 5.日本の矛盾
 6.株価上昇は6兆円で果たされた

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■1.合意と異見

先週の金曜日、講演で高知に行ってきました。関東圏に店舗を持つ優
秀な食品スーパー(年商1100億円:経常利益50億円:65店舗)
の主催でした。小売業では最大手のグループは、ほぼ軒並み経営力
を失っています。各業種では、現在の中堅企業に21世紀のリーダー
になるところを多く見ることができます。

この会社では、メーカー・問屋の営業以外の幹部を集め、日本全国そ
して中国・韓国を含めた注目店を見学しながら、経営研究会を実行さ
れています。こうした研究会の形式は、小売業主催では、珍しい。参
加者はレベルの高い、熱心な聴衆の方々でした。

2年半前、カルフールの日本進出の折り発足した会だそうです。
こうした機に乗じて学ぶのが、日本経済や企業の強さです。

金融を含め流通分野でも外資の進出は、日本の企業にとって好結果を
生むと思います。農業においても、輸入品流入のハードルを低くする
ことが、日本の農業の創造的な発展を作ります。米の輸入に、500
%もの懲罰的関税を課すような貿易拒否は、やめる方がいい。

政治的保護は、どこまで行っても、つかの間の、泡沫(うたかた)の
救済に過ぎないからです。

▼合意で強さを発揮する

日本人は、合意ができる方向と方法を見つけることができるなら、世
界のどこの国民よりも、強さを発揮する国民だと思えます。

合意が形成されず、何を行うべきか、多くの人が方向が見えないと思
っている間は、弱い。そのとき、リーダシップを求めます。

他方、方向を見定めるとき、個人のリーダシップにより個々の会社単
位で行うのが、欧米企業です。意見は「異見」であり、マーケットで
異見を戦わせることが発展の原動力と考える。その意味で、市場は弁
証法的です。

他方日本では、新しい事態に対しては、多くは「新しい時流への適合」
として、相互に影響を与えながら、暗黙の合意から一つの方向が形
成されることが多いように感じています。

リーダシップは、方向が見えない危機のとき必要になる。しかし危機
の時期が終われば、だれが決めたのかわからない方向に皆が進み、そ
れによって、強さを躍如とする。

そのとき、ボトムアップの強さが、発揮されます。現場のモラール
(士気)高さは、日本企業の生命です。日本の社員は、欧米型の定型ワ
ーカーとは違う。これは、今後も活かすべき行動文化です。

わが国では「日本国や日本人としてどうすべきか?」という問いが立
てられることが多い。その意味で全体主義的です。こうした国民の気
質は、歴史と行動文化に根ざすため短期では変わらない。

90年代が、一見では「空白の停滞の期間」に映じ、多くの論者がそ
う言う理由は、既得権を守る勢力と市場経済派、大都市と地方の間に
対立があったからです。

こうした対立があるときは、日本人の多くは、無為に空白の時間を過
ごしたような気分になる。ところが実際は、空白どころか、大変なこ
とと戦ってきています。

■2.事実を認識すれば、世界が未経験なことを経験してきた

第一次オイルショック以後の30年間で、世界の国々が未体験であり
、日本だけ経験したことが3つあります。

以下の3項は、いずれも未曾有の事態です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(1)70年代初頭に比較すれば、世界の通貨に対し、3倍の価値
   になった円高。これは国際競争のハードルが3倍に高くなっ
   たことを意味します。走り高跳びの2メートルのバーが、棒
   高跳びの6メートルになったような激しい条件変化です。
(2)90年代の大規模なバブル崩壊、株価・地価の下落。
   1300兆円(GDPの2.6倍:国民1人当たりで100
   0万円)もの、資産価値(富の蓄積)を失った。
(3)特に97年からの、消費者物価の下落。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(1)円高は、輸出企業の採算ラインで100円以下と言われるくら
いまで、克服されています。西欧・米国を、ベンチマーク(比較)基
準とすれば、同じ時期に、生産性を約3倍も高めたことを意味します。

(2)資産バブルの崩壊は、金融機関の全体、国家機関、そして債務
過剰企業のバラスシートを破壊しました。しかし約三分の2の企業と、
三分の2の世帯は、正常なバランスシート(資産−負債)を維持し
ています。

(3)戦後の世界の国々は、日本を除けば、物価下落を経験していま
せん。下落しにくいサービス価格を除いた、店頭商品についての約4
0%もの価格の下落は、多くの企業を潰しました。

残った企業は、40%の生産性を上げていることを意味します。

(注)個人消費である約300兆円(GDPの60%:1人当たり2
35万円)のうち、店舗で売られる商品は、140兆円(1人当たり
110万円)で47%です。残りの53%は、輸送・教育・通信・医
療・サービス、電力等の無形の商品です。

他の国が、これら3つに比肩する衝撃を受ければ、間違いなく大きく
沈みます。指摘されることは少ないのですが、3大衝撃を受けながら
も、今の状態で留まっているのは、驚嘆すべきことでしょう。

そして、4番目の山になる高齢社会への挑戦でも、世界の国は「高齢
化の速度」において未体験です。

3倍の通貨高、1300兆円の資産の喪失、小売り商品の40%の価
格下落、そして次に来るのが、高齢社会です。

高齢社会に対しては認識と政策の誤りがあると感じています。

■3.日本の高齢化の特徴

日本の高齢社会は、1946年〜48年生まれ(現在55歳〜57歳
)が、人口構成グラフで、他国より激しく膨らんでいるという特徴を
もっています。ここが注目しておくべき点です。

ベビーブーマーの裾野が20年と広く、今後10年間にフラットに高
齢化するのが米国です。瞬間風速的な高齢化が、日本です。

日本の高齢者問題は、団塊の世代で健康なグループなら、年金への依
存ではなく、「現役期間を延長」することによって、その衝撃と負担
を弱めることができます。この世代はそうした意志・能力・技術をも
っています。

<GDPの増減=一人当たり生産性の伸び×労働者数増減>です。
日本は5年後からサービス経済部分での労働力不足になります。

今は過剰に見える雇用は、長期では不足です。日本の高齢問題は、50
代半ばの、元気な団塊の世代の問題だと集約すれば、取り組むべき
課題は、クリアになります。

今、50万円以上もする大型のプラズマテレビが売れています。主た
る購買層は、50代、60代以上の世帯。家電のディスカウント量販
は、プラズマテレビの販売でサブチャンネルです。主チャンネルは街
の家電屋さん。高級車の購買や、観光も、顧客層で類似しています。

これだけの現象を取り上げても、西欧風の資産の階級社会での、無産
の労働者の高齢化とは、内容が違います。世界との対照で言えば、日
本は、プラズマテレビでホームシアターを作るような、「多くは富め
る人々」の高齢化です

日本の高齢化は、過半の金融資産(60%は、銀行と郵貯の預金)を
もつ「ゴールデン・コンシューマー」の高齢化です。日本人ほど、多
額の現金をもつ消費者のカタマリは、世界にはないのです。米国の消
費経済は、負債で支えられています。

あと数年すれば、以上のことが、必ず認識されると思っています。

(注1)金融資産の面での、世代的な悲運が、80年代末から90年
代に住宅ローンを組んだ30代と40代に集中していることは問題で
す。これが日本の消費不況の主因です。

(注2)介護と福祉の必要性を否定するものでは、毛頭ありません。
最期は、小さくしぼんで亡くなった母も、正常な脳の働きをなくし、
介護の対象でした。

▼政府の高齢社会イデオロギーの昏(くら)さが問題

日本の高齢社会を、年金と医療費の負担が増え、介護負担が増えるよ
うな国民負担の大きな社会としてだけ描くのは、間違いだと判断して
います。

(i)年金負担と福祉負担、(ii)高齢者介護の必要性を政府が言うときは、
増税と福祉の高負担を世論に訴えるという政策意図をもっています。

調べれば、施設での介護が必要な人は高齢者の約4%、25人に1名
とされています。高齢社会=老人医療+施設介護の社会というイメー
ジは、意図をもって作られたものです。

日本人はローカロリーと菜食の和食がベースあるため、脂肪過多にな
る欧米の高齢者より、平均的には、今後も健康であり続けます。

▼政府予算の赤字と国債の累積は、高齢化が原因ではない

財政の悪化(国債の増加)は、高齢者への年金と福祉費用の増加のた
めではありません。

景気対策と社会資本の不足を政策の名目に、自民党橋本派(旧田中角
栄派)の族議員が、支持母体への利益誘導を含んで権勢をふるった公
共投資が主因です。その代表は田中政治を戯画的に継承する鈴木宗男
です。

こうした、90年代の特殊要因で膨らんだ政府赤字です。
日本は、軍事費の代わりに公共事業を多額に行ってきた。

ムダを含む非効率な公共投資と、政府と自治体事業の赤字が原因であ
るものを、福祉負担の増加という近未来の全く別の要因に、すり替え
ようとする意図をもつのが、政府の高齢社会へのイデオロギーに思え
ます。

増税と福祉で、政府部門を更に肥大させるような形での、高齢社会は
、昏(くら)いものになります。財務省任せの設計では、国民に過度
の負担を強いて、経済の内容を長期で悪化させるものになります。

人口構成の向かう方向は、事実として否めません。しかし、高齢社会
をどう描くかは、人の認識によるものです。そしてその認識を、政治
と政策に結びつけるのも、人の意志です。

      [事実→認識→政策]

人口統計での高齢化は認めなければならない。しかし問題の認識と、
認識に基づく政策は、政府が言う方向だけではない。

こうした認識も、あと数年経てば、様変わりするでしょう。

主として30代の官僚の意識に、官と公共事業の生活共同体を守るこ
とだけとは違うものが、次第に現れつつあることを感じます。

道路公団の藤井総裁が醜悪に見えるのは、この国の行動の美学が、田
中角栄的なものから離脱していることを意味します。これらは、この
国の将来のために、肯定的な要素です。

税が大量に投入されてきた農業・土木・建築でも、政府予算への依存
では、明日がないという認識が強まっています。地方行政では、過去
は求め続けていた政府の補助金での公共事業を、拒否するような逆転
も見えます。

政治が、都市住民の意志を反映するようになれば、予算比重は変わり
ます。経済の内容は、次第に、消費の都市経済と知識経済に傾斜して
います。

中国の工場が生む付加価値は、わずかなものです。作ったモノをどう
流通させ、どう売るか、この流通領域に、製造の付加価値(粗利益)
の5倍から10倍もの、経済価値があります

実物経済の内容で、大きな変化が起こっています。
GDPの数字は同じでも、商品と流通は大きく変わった。

■4.資本、技術、頭脳は世界を移動する時代

ここで認識しておくべきことは、資本・技術・頭脳が、有利な地域を
求め、短期で移動するようになっていることです。これらの流動化は
真に新しい事態です。

この国でも、今後の産業政策は、諸外国からの資本・技術・頭脳を集
めるものでなければならない。金融の外資が進出することは、護送船
団金融を、多様化します。流通外資の進出は、消費者の選択肢の幅を
広げます。

そして、日本の消費者の選択に、任せればいい。世界で最も豊かな消
費選択ができる国になることは、可能です。

外資の進出を排除し嫌うだけでは、世界の孤島です。グローバル&ネ
ットワーク化経済では、優良企業は税とコストの軽減を求め、海外移
転します。これはだれも留めることができない。

税と福祉の高負担で、産業にとって不利な国になれば、企業(特に本
社)は国籍を離れます。それが、インターネット、情報化ロジスティ
クス、サプライチェーンの時代の意味です。

世界の企業が日本に投資し、日本の優秀な企業が本社を置き続けるこ
とができる政策を、とらなければならない。

そのためには、日本に立地するのが有利になるような、政府の税制と
行政施策でなければならない。

中国の経済成長は、経済特区を作り、外資に対し租税と土地の供与で
優遇策をとったことが起点です。中国の強い輸出力は、50%部分を
外資が行っています。中国は中国資本だけではない。激しく国際化し
ています。

80年代からの、ロンドンのシティを中核にした英国経済の再興も、
外資の誘導が起点でした。

90年代の米国の産業の再興は、IT分野で世界の頭脳を集結させ、
投資では日本を筆頭とする外資を呼び込んだことに拠ります。

諸外国が、海外資本・技術・頭脳による「新しい成長策」をとって来
たのに対し、日本政府と日本国民は、マネーを対外供給するだけで、
これを避けて来たのです。国際化と言えば、輸出と考える思考方法に、
偏りがあった。

消費では、人々の居住地で商品が買われます。個人消費300兆円は、
世界で第2位です。高度工業を日本人が担うことは、長期で続くで
しょう。米国は高度工業までを海外に移した。そのため、略奪的に見
えるマネーの還流を、必要としました。

日本では、高度工業が衰微することはない。職人の国だからです。今
後、貿易黒字が縮小し、輸入とバランスすることは肯定的な要素です。

付加価値の小さな日用品工業では、日本人の高い賃金を支えることは
できない。

だから、低付加価値部分を中国に移転する。価格の構成要素(=付加
価値構成要素)の重点は、流通部分に移っています。流通は消費地の
産業です。

日本的な食品スーパーや、緻密なコンビニエンスストアは、米国人に
は実行できない。GDPの80%部分(内需産業)が、保護・規制産
業であったことが問題です。規制と保護が取れれば、競争下で、日本
人の学ぶ才能が、発揮されます。

建築も同様です。地震国という不利な条件から、世界で最も高度な高
層建築ができるのは日本でしょう。

■5.日本の矛盾

今までは、毎年の貿易の黒字分以上が、海外(主として米国)へ流失
しています。これは、稼いだマネーの先端部分が、国内ではなく海外
で使われてきたことを示します。

蓄積された資本が、国内で使われなければ、国内の消費経済も投資も
浮揚しないは、当然です。

2つの原因があります。
(1)政府による、ドルの米財務省証券の購入
(2)機関投資家による、米財務省証券の購入

その累積は、175兆円です。GDP対比で最大の政府赤字国(GD
Pの8%)が、世界最大の対外純資産国であるのは大いなる矛盾です。

財布をすっからかんにして、最新の武器をもち町の警備に当たると言
う隣家(米国)に、貯蓄を貸し付けて続けている働きアリの世帯のよ
うです。

海外に預けている資本余力は巨額です。このことの意味は、国民から
増税で取り上げなくても、ある程度は、対外資産(主として米国債)
があるということです。そして後に述べるように、このある程度の「
呼び水」が、経済では重要なのです。

米国財務省からの要請を重視し、結局は通貨マフィアを富ませ、支え
てきた政策は、もう停止すべきでしょう。

米国は、真正面からの議論には、対抗意見で応える国です。
「異見」を言わなければ、ないものと見るのも米国人です。

▼主要国の対外純資産(財務省集計)

改めて着目すべきは、対外純資産です。対外純資産は、実物投資と債
券投資の合計(対外資産)から、海外からの実物投資と債券投資(=
対外負債)を引いた、純額です。

日本国と民間が、海外にもつ純自己資本と見ていい。

      対外純資産        (GDP比)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日本   175兆円(02年末)     35%
スイス   44兆円(01年末)    137%
フランス  20兆円(01年末)     12%
ドイツ   13兆円(01年末)      6%
イタリア   2兆円(01年末)      2%
英国    −7兆円(02年末)     −4%
カナダ  −17兆円(01年末)    −19%
米国  −304兆円(01年末)     23%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
資料 http://www.mof.go.jp/houkoku/14_g3.pdf

日本の対外純資産の175兆円は、1年間で稼ぐ貿易・サービスの黒
字(02年:6兆3607億円)の、27年分にも相当します。

現在の貿易黒字の、約30年分にも相当する額を、海外に純資産とし
て、保有する国が日本です。(対外純資産=対外資産−対外負債)

30年分の純貯蓄を、町内にばらま続けた働きものの世帯が、豊かな
生活ができるでしょうか? これが日本です。


世界の先進国の国家財政史上、最悪の赤字(年GDPの8%:40兆
円)を抱え、しかし対外純資産も世界史上最大の国という矛盾の中に、
巣ごもりしているのが日本です。

ドイツは、日本と同様、第二次世界大戦の敗戦国です。防衛では、冷
戦時代はNATOであり、核の傘では、日本と同じく米軍への依存で
した。

日本は日米安保条約のために、米国に資金を供出すべきであるという、
ガードマンの雇用つまり「傭兵の論理」が成立するなら、輸出大国
であるドイツも、NATOで防衛をしてくれていた米国に資金供出を
していなければならない。

ところが、上の表に見るように、ドイツはそうはしてはいない。対外
純資産は13兆円で日本の13分の1に過ぎません。わが国の対外純
資産は異常な額です。これは海外からの投資が極度に少ないことを意
味しています。

日本の財務省に戦略性があるなら、ドルが$1=110円の価値を維
持している間に、ドルベースの債券を、奪還する姿勢を見せる何らか
の戦略を立てるべきでしょう。

米国は確かに軍事でダントツです。しかしこの軍事戦略も、途中から
はマネー(戦費)の勝負になる。イラクで必要になるという復興資金
を、世界に求める米国を見れば、わかります。

▼軍事もマネーに依存する

米国には軍事の開発技術はある。しかし軍の維持予算は、マネーです。
マネーのほうが最終的に強い。対外純資産に見るように余剰マネー
を持つのは、日本です。日本政府は、米軍を雇うスポンサーとして、
もっと強い姿勢で、米軍とネオコン一派をコントロールできるはずで
す。

奪還しなくてもいい。貸し付けたままで順次「円ベース」に切り替え
るのも方法の一つです。円ベースなら、ドル安という方法で、米国が
借金を減価させることはできないからです。

ドル債券はドル安になれば、ドル安の分だけ減価します。減価分は日
本人の富の、米国人への移転になります。これを、繰り返してきたの
です。

輸出の黒字の果実は、国内還流せず、対外資産として増えるだけだっ
たのが日本です。

▼当たり前に考えれば・・・

分かりやすく例えれば、日本は隣家(米国)がペーパーマネーで作っ
た数字の借用証をもらい、売った商品代金をそっくり貸し付けて来た。

米国が発行した手形を、外為会計という金庫にしまいこみ、決済は求
めなかったのです。人のいいお旦那が、日本です。

隣家は、5年か10年くらいの通貨戦略のサイクルで、借用証の金額
を、一方的に減価させてきた。これが、円高・ドル安です。

機関投資家も財務省もサラリーマンです。為替介入を含んでドル債を
購入し、ドルの切り下げを受けて富を減らしても、減ったのは国民の
富ではあるが、自分のお金ではないと思っているかのようです。

年間で6兆円はある貿易黒字という国民の富を預かる、財務省の運用
に、無責任の体制があります。

他の国で、こうしたことが許されるでしょうか? 米国人、英国人、
フランス人、ドイツ人、中国人なら、絶対に許さないでしょう。政府
への抗議が殺到するはずです。

米国財務省におだてられ、いい気分で、財布を開くのが日本の財務省
でしょうか。このとき、頭から消えているのは、日本国民の富でしょ
う。

▼60兆円の外貨準備

日本政府の金庫で、もっとも潤沢なものは、財務省管理の外為会計で
あり、その結果として増えてきた$5551億(約60兆円:03年
8月末)の外貨準備です。↓
http://www.mof.go.jp/1c006.htm

外貨準備の、80%($4434億:50兆円)は、$の現金や預金
ではなく、証券であり、大半は米国財務省証券(米国債)です。

【日本の外貨準備の総額(03年8月)】

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
証券        $4434億(50兆円:主として米国債)
預金        $ 921億(10兆円:海外銀行)
IMF預け     $  78億( 9兆円)
SDR(特別引出権)$  25億( 3兆円)
ゴールド      $  92億(10兆円:FRBの金庫に預託)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
合計        $5551億(62兆円)

今の外貨準備は、国際通貨であるドルを、輸入代金支払いのために準
備するという、戦後復興期の性格ではなく、ドル債の購入残です。

【外貨準備の増加】
00年   $3615億
01年   $4015億
02年   $4962億
03年8月 $5551億

ここ3年で、$1936(22兆円)の、円の流失(=外貨準備増加)
です。これは、同期間の貿易黒字を上回ります。

外為会計の運用は、財務省の管轄です。よく言われるような日銀の意
志によるものではない。ドル買いや円買いの為替介入は、日銀が行う
のではなく、財務省大臣の決定で、行われます。

為替介入では、日銀は、財務省の政策で動く代理人に過ぎない。

(注)「外国為替資金特別会計法」は、財務大臣は、外国為替資金の
運営に関する事務を、日本銀行に取り扱わせることができると規定し
ています。(第6条第1項)

財務省が、国家財政の困窮と、財政の破綻を言うのなら、ドルの米国
債を買って、結果はドル安で失う方法は、もうやめた方がいいでしょ
う。

政府を、貯まった外貨を有利に運用する委託機関としてとらえる視点
が、この国には欠けています。一体、為替介入やドル債券買いは、だ
れが、どんな責任で、決定しているのか。国会でも、これを追求しな
い。変な国です。

対外純資産を見れば、世界でどこがもっとも富んでいる国かわかる。
しかし、それは今の日本にとっては数字上のことです。還流先は、米
国だからです。

■6.ここ数ヶ月の株価上昇は、6兆円で果たされた

実は、日本の株の03年4月末からの30%の上昇は、オフショアを
含む海外からの、累計で5兆7600億円(月間平均1兆円)の買い
越しによるものに過ぎないのです。

そしてこの資金の元をたどれば、財務省による6兆円のドル買い介入
です。

これは、何を意味しているか? 年間の貿易黒字(6兆円)にも相当
する額が、海外債券の購入(国外流出)だけではなく、国内の株買い
に向かうなら、以下の表に示すように、10倍以上(71兆円)の、
評価増(信用の増加)を生むことです。

この評価増は、経済の全体を、活性化させます。

(注1)日本人の個人と金融機関は、いずれも、今までの期間中は、
ほぼ売り越しです。買っているのは、日本資本のオフショア+外人で
す。オフショア(off-shore)は、海の向こうの租税回避地(タックス
・ヘブン)に預けられた、日本資金です。

(注2)日本人のオフショア資金は、03年9月の総額で45兆80
00億円、負債を引いた純額で、12兆円に増えています。オフショ
ア資金については、別稿で解説の必要があるでしょう。

http://www.mof.go.jp/offshore/1507.htm

03年4月28日の株価の底値以降、債券を売って、買い続けたのは
、外人の年金等を運用するヘッジ・ファンドと、日本人のオフショア
資金です。

               日経平均   東証1部時価総額
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
03年4月平均        7909円   236兆円
6ヶ月で約6兆円の資金流入→→→ ↓       ↓
03年9月26日      10318円   308兆円
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

株式では、東証1部で1日10〜15億株(1兆円〜1.2兆円)の
売買です。東証1部の全上場株数は3145億株です。

1日当たりで500億円(月20日で1兆円)の程度の買い越しが入
れば、株価は8月までのように、1ヶ月10%の速度で上昇します。

1日あたりでは0.3%〜0.5%の売買率に過ぎない。
年間でやっと1回転しかしないくらいわずかな資金です。

こうしたマネーが呼び水になれば、経済は自動的に変わって行きます。

▼新たなリスクが発生

しかし、株価上昇と、裏腹の関係にある長期金利の上昇(0.5%→
1.5%)は不気味です。金利の上昇は、米国債と日本国債が売られ
ていることを示します。

低金利とデフレ時代の終焉を示すものかどうか、予断を許さない緊張
が、債券市場に走っています。

財政赤字のため、合計で年100兆円の国債を増加発行する日米の政
府当局は、なにがなんでも、金利高騰を阻止しなければならない。他
方、国債を持つ投資家は、国債価格の下落(=金利上昇)にリスクを
感じています。

金利が不確定要素になって浮上しています。株価の上昇、金利の高騰、
債券価格の下落には、相互依存の関係がある。

以下、次号で。

see you next week!!

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アンケートです。いただく感想は、とても参考になります。

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【目次】

 1.経済の4つの領域
 2.企業、個人のミクロ経済
 3.国家のマクロ経済
 4.ストック経済
 5.長期金利とは何か?
 6.債券価格と金利の関係
 7.債券価格の原理
 8.国内と国際金融を支えるアンカーは何か?
 9.根元を更に言えば・・・

【要約】

日本企業は3つに分かれています。
 ・バブル期からの負債が大きすぎ、資産・設備・雇用の整理を迫
  られている「バランスシート破壊」のグループ
 ・肥大していた公共投資の削減により、整理を迫られている公共
  投資関連産業
 ・利益の追求で借金を返済し、フリー・キャッシュフローが超
  過しているリストラ後のグループ

世帯も3つに分かれます。
 ・住宅ローンと地価下落によって家計のバランスシートが毀損(き
  そん)されている、主として30代、40代のグループ
  (これが、個人消費に盛り上がりがない原因)
 ・所得額は伸びていないが負債がなく、預金を増やしたグループ
 ・成果主義賃金で、所得を増やしたグループ

数年のスパンで確定していることは以下です。
 ・日本の国債の新規発行は、40兆円以上を続ける。
 ・米国の財務省証券発行も、60兆円規模を続ける。

日米で年100兆円の国債残高の増加です。世界金融の焦点は、だれ
が、この100兆円の赤字をファイナンスし続けるか、です。

(1)日本国債を多額に100兆円規模で日銀が増加購入しても、世
界からの日銀信用がまだ厚ければ、金利上昇(債券の下落)を抑える
ことができるでしょう。

(2)日銀による国債の増加購入に対し、世界が危惧を感じれば、日
米は同時に高金利になります。通貨価値の下落、国債を含む債券価格
暴落、そして物価上昇が起こって、西欧にまで波及しハイパー・イン
フレの様相が濃くなります。

(1)か(2)が岐路と判断します。果たしてどちらに向かうか?

日本政府によるドル債券買いと、外人投資家の6兆円の日本株買いは、
ほぼその金額が見合います。

外人投資家は、手もち債券の下落を防ぎながら、債券を売って代わり
に株を買った。その1部が、日本にも流れてきました。

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