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030714ビジネス知識源:個別性と可視性序論

発行日: 2003/7/15

※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。
<<あなたと、チームの、知識とスキルのブラッシュアップを>>

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          ビジネス知識源
      2003年7月14日号:Vol 158

    <Vol.158  個別性と可視性(visibility)序論> 
            
 【良質な経営・IT・ビジネス・経済知識の提供を目標に】
                            (読者数: 31,333名)
著者:Systems Research Ltd. chief  consultant 吉田繁治
著者へのひとことメール⇒   yoshida@cool-knowledge.com
登録・解除・バックナンバー⇒ http://www.cool-knowledge.com
    ※120編余の無料版バックナンバーを掲載しています。

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こんにちは、吉田繁治です。日経コンピュータの7月14日号を眺め
ていると<米ウォルマート、05年1月から『IC』タグの実用化を
主要ベンダー100社に通知>という記事が目にとまりました。

05年1月はたった1年半後です。情報量の少ないバーコードに代わ
るICタグの時代だと思え、自分のビジネスキャリアに照らしても、
感慨深いものがあります。ICタグは、単にバーコードの効率化では
なく、質的な進化です。

米国ではバーコードの普及に70年第後期から15年、日本ではその
10年遅れで、80年代後期からの普及に15年を経ています。

今の仕事を始めるきっかけは、2つでした。

(1)85年からの通信の自由化。当時の電電公社の回線を使った、
異なる企業間のコンピュータ接続が可能になった。
(2)インストア・コード(=店舗の専用コード)に代わるメーカー
と流通業の間の共通フォーマット、つまり共通データ形式を使う、
13桁のJAN(Japan Article Number)コード。

両方とも、18年後の今は当たり前のことになっていますね。

今度は、無線で読み取ることのできる微少アンテナのついたICタグ。
数年もすれば過半の商品につき、10年でほぼすべての商品につき
ます。確定したことと見なければなりません。

現在の1個の価格は30セント(36円)。高過ぎます。1セント、
1円以下のコストになる必要がある。使う量が数千億、数兆個になれ
ば、作成は印刷ですから価格は低下します。すぐ数兆個になる。世界
のGDPは3500兆円ですから。

通信では高速なブロードバンドです。日本でもすでに1000万人の
人がADSLを中心とするブロードバンドを使っています。05年に
なると、世界でもブロードバンドが主流になります。

近代社会の神経網を作ったとも言える放送やマスコミは[1→多数]
でした。通信は放送とは違い、本質において[1←→1]です。

情報流通とコミュニケーションの激変をもたらします。組織も変えま
す。会社は情報論で言えば、内部で親密なコミュニケーションを図る
機能共同体です。コースの組織論ですね。

(1)05年からの通信の世界的なブロードバンド、言い換えれば
   [1←→1]の通信が、主流のポジションになること。
(2)部品と商品流通の際の個別認識は、
   ごま粒大のICタグが使われること。
(3)クレジットカードを含む個人カードも、
   電子定期券の「スイカ」のように無線IC化し、
   個人認識を含む電子財布のような機能をもつようになること。

こうしたインフラストラクチャー(生活や仕事の基盤となるもの)の
変化は注目すべきものです。農業は灌漑でした。近代工業社会はまず
鉄道、電話、マスコミュニケーション、そして仕事ではマニュアル化
のテイラーイズムでした。

21世紀の産業の、20世紀にない特徴を一言で言えば、「個別性」
と「可視性(Visibility)」でしょう。サプライチェーンも、メーカ
ーと店舗での双方の在庫、販売の可視化です。

(ICタグ:多数あります↓)
http://www.dnp.co.jp/semi/j/tag/
http://www.zdnet.co.jp/news/0206/24/nj00_autoid.html

※本稿の末尾に、7月25日、『ウチダソリューションフェア200
3(東京赤坂 明治記念館)』での、無料公開セミナーの講演案内を
載せています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     
     <Vol.158  個別性と可視性(visibility)> 

 1.可視性
 2.仮想の中の可視性
 3.ICタグは何を可能にするか
 4.モジュール化という方法
 5.コモディティとライフスタイル商品への区分
 6.POSイデオロギー
 7.コモディティとライフスタイル財

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.可視性

ICタグの機能は、部品や商品の識別をする点ではバーコードと変わ
りません。しかしこれは、馬車と自動車は人を運ぶ機能が変わらない
と言っているレベルでのことです。

▼機能

ICタグは、以下の機能をもちます。
(1)多量のデータをもたせることができる。
(2)ゲートをくぐらせること等によって、多数を同時に自動認識が
   できる。
(3)書き込みが可能なものも作ることができる。
(4)超小型化ができる。

原材料、部品から製品、流通過程、さらには個人の使用過程、廃棄、
リサイクルまでの商品のライフサイクル(寿命循環)の全域にわたっ
て、可視的な流通管理が可能になります。

店舗や倉庫で言えば、常時自動棚卸しです。個品が認識情報を発信す
るからです。物流でもGPS(全地球測位システム)で、何が、今、
どこにあるかを可視化します。

買い物でも、電子財布でレジの必要性がなくなってしまうのです。シ
ョッピングカートに入れることが代金決済です。店も大幅に変わりま
すね。強盗はできても万引きは不可能になります。(笑)

ICタグに関連することを、今から1年前に<ユビキタス・コンピュ
ーティング時代の実相>として、書いています。↓
http://www.cool-knowledge.com/020520Ubiquitous-computing(1).htm

(注)プライバシーは、これとは全く別の位相の問題です。

▼仮想と可視

今、皆さんのPC(パソコン)はインターネットにつながっています。
PCに記憶装置(ディスクやメモリ)がついているはずです。

IT用語に「仮想ディスク」という概念があります。仮想とはVirtua
lつまり[・・・であるかのように]という意味です。電気信号で高速
につなげば、「・・・であるかのように」が実現します。

楽天やアマゾンなどの仮想商店は、店舗はなくても店舗のような働き
を、「実質的に」行います。実質的に同等の機能を果たすという意味
での「仮想」であって、架空とは違います。

He is a (virtual) president of our company.は、彼は会社の(仮想
的な)社長だということではなく「彼は(社長ではないが実質的には)
会社の社長だ」という意味です。

アマゾンは、物理的には地球のどこかにあるコンピュータのサーバー
です。しかしそれは、あなたのPCの中での実質書店、別の言葉では
仮想書店です。

心底、すごいことです。アマゾンは仮想的には、一カ所ではない。世
界のPCの数だけ、デスク上のパソコンやモバイルに専用書店をばら
まいています。これがインターネットの「仮想世界」です。

■2.仮想の中の可視性

「仮想ディスク」とは何か? 物理的には、PCの中に存在するディ
スクではないが、実質的には、PC内部のディスクであるかのような
機能を提供する、ネットワークにつながる外部ディスクという意味で
す。

インターネットで見る情報はPCの中にある情報ではない。地球の裏
側にあるものかも知れない。それがリアルタイムで、時間の遅延なく
結ばれるという驚異的なものです。

http://www.google.co.jp と指定すれば、これが電話番号のような個
別認識のためのものでGoogle接続されます。以下は、だれでも自然に
やっていることですね。(皆さんのメールアドレスも同じです)

(1)Googleが公開している検索のアプリケーションソフトを使って、
(2)Googleが、世界中のインターネットサーバーから集め、キーワ
   ードで整理し公開しているデータの入ったディスクの中から、
(3)あなたが指定したキーワードを含む情報を、
(4)ディスクのPCに取り込んで、表示、または保存することがで
   きる。

Googleはあなたのディスクではない。しかしGoogleの中のシステムと
情報を、仮想的に自分のシステムと情報として利用ができる。

インターネットに接続されたPCは、情報利用では無限に思える能力
を「仮想的に」獲得していることになる。当たり前になったことに驚
く感性をもつべきでしょうね。そこから未来発想ができます。マニュ
アル的に覚えてもダメです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    [個人]
     ↓↑
  [PCの閉鎖世界]=[実装ディスク]
     ↓↑
  [インターネット]
     ↓↑
  [無限に思える情報世界]=[仮想ディスク]
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

書物すら著わさず、書かれた文字より目の前の対話を重んじたソクラ
テスがこれを知ったら驚嘆したでしょうね。(笑)

インターネットを、大衆(マス)を前提したマスコミという近代メデ
ィアの変化と見ている人、またはそう思って使っている人は、根本的
な違いへの認識がありません。

Googleのサーバーは、たった一人のあなたの命令で、個別に動くから
です。こここそが、インターネットの個別性という革新です。

近代社会は、[大衆]という概念を作ります。他方でインターネット
は個人の世界が先にあって、個別的な指示や命令で、遠隔のサーバー
が動く仮想世界です。

テレビのような、大衆としての受動的な姿勢では、インターネットは
理解も活用もできない。ここが本質です。

メールマガジンも出版(publishing)に必要だった資本、設備、人を
ゼロに近づけ、多数の読者と著者を、ダイレクトに結ぶ仕組です。し
かし、このpublishはpublicであり、個別には届けながらもまだ近代的
大衆を前提にしていますね。

ここから一歩進んで、近代がメディアとしてはとても高価で経済化が
できなかった[個←→個]を可能にするのがインターネットでしょう
ね。

活用は、まだ5%レベルにも達していないと私は判断しています。9
5%の仮想世界に何を描くか、それが構想力です。以降は皆さんの未
来構想力を助けるための論考です。

どうか自分の今の仕事を、明日の仕事を考えながら読んでください。

■3.ICタグは何を可能にするか

インターネットと、部品・商品のICタグがもたらすのは、
(1)[個人−個品]の生産、流通の経済性、
(2)[個人−個品]の生産、流通の可視性、です。

新たな経済性という意味は、
  ・無駄が多い20世紀型の量産より
  ・21世紀型の個品生産と流通が、
   経済的になるという意味です。

経済性(economical)の本義は資源とコストの節約です。
つまり環境との共生でもある。

見込み生産で資源を大量に使う無駄なものが多い量産より、個別生産
が、地球的に見れば経済的であるに決まっています。ところが近代は、
市場イデオロギーで、量産のほうを経済的であると考えたのです。
資源とコモディティ多消費の近代モデルは、米国でした。

マーケットの効率性のイデオロギーに、最初は部分的に、最後は壊滅
的な修正を加えるのがインターネットとコミュニティでしょうね。

米国で生まれた、産業のポストモダンの具体例として、デルモデルが
典型であると判断しています。
  ・標準部品の調達網をベースに
  ・生産をネットワーク化し、
  ・個別仕様の受注生産のリードタイムを短くして、
  ・販売組織で、個人とのネットワークを作ったものです。

デルモデルで否定されたのは、PCにおいての近代風見込み生産の高
コスト、在庫とコストの無駄、つまり[非経済性]です。

量産をし製品在庫をもつPC生産モデルは「時代遅れ」であることを
証明したのがデルです。

デルモデルの鍵は電子デバイスにおいての「標準部品」です。

 ・「部品の内製→製品の見込み量産→販売」という近代モデルを、
 ・「受注→標準部品調達→個別仕様組み立て→配送」というモデ
   ルに変えたのです。

PCに10年遅れ、自動車も標準部品に向かいつつあります。家電も
同じです。時間のズレはあっても世界の工業はデルの方向に向かいま
す。

工場が見込み生産ライン業からロジスティクス業、言い換えれば、ネ
ットワーク業に変わる変化と見ていい。

ロジスティクスは、顧客からの個別仕様の受注を受け、短時間で商品
を生産し、個別に供給することです。

【現象】
標準部品化が進行する産業では「すべての企業は受注生産&短納期の
デルモデルを目指す」ことになります。

生産・流通工程の可視化はICタグがなくてもできますが、高コスト
です。ICタグは個品認識を自動化することによって、個品生産と流
通を促進します。

  ・見込み量産の近代化モデルが、
      無駄な見込み在庫から非経済的になって、
  ・低額品に至るまで、
      生産と販売のリードタイム短くした、
      受注生産風に変わるという変化です。

こうして終わるのが、近代モデルです。
我々はすごい時代に立ち会っています。

(1)インターネットの利用形態:
パスワードをもつ特定者がアクセスできる会社間の「イントラネット」
です。イントラネットが商取引の場になります。

(2)VPN:
公衆回線上に、実質的に(仮想的に)、セキュリティの確保された専
用回線を実現するバーチャル・プライベート・ネットワー
ク(VPN)の回線をインフラとします。

(3)ICタグ:
在庫管理・流通管理で、個品認識をするためのICタグが使われます。

(4)可視化:
[受注→部品調達→生産→物流→「個客」供給]の全プロセスが、個
品単位で可視化します。

企業間競争はどうなるか?イントラネットに属するグループ間競争に
なります。これが新たなコミュニティです。

最も強くなるのは、個人と、直接深い結びつきをもち、流通の最下流
を担う企業群です。上流産業は、下流産業に従属することになる。顧
客との接点こそが、付加価値の源泉になるからです。

イントラネットの総合機能の1形態が、e-Maket Placeでしょう。
e-Maket Placeは取引と流通プロセスの全体を参加者にとって可視化す
るものです。機能は、仮想的に分有されます。

■4.モジュール化という方法

今年からトヨタが数千億円を投資し「世界的な部品調達−組み立て−
販売−「個客」管理]までをサプライチェーンのネットワークにしま
す。

<資材−部品−組み立て−物流−販売−「個客」>までの流通を含み
、顧客を含む全工程の可視化です。電子化され、仮想化され、個人と
リアルタイムになるカンバンシステムです。

イメージとしては、だれかがトヨタ車を個別仕様のオプションを含ん
で注文すると、必要な部品がネットワークで瞬間に調達され、組み立
てられて届くという感じです。こうしたことはトヨタのような大企業
の占有モデルになるのではない。規模の大小は関係がない。

車のデルモデルです。デルもアマゾンも中小企業でした。トヨタがデ
ルより10年以上も遅れた理由は、車が数万の部品を必要とする複雑
系だったからです。

コンピュータは微細な部品をモジュール(一塊)にした回路である互
換性のある標準規格の「ボード」によって、部品数を少なくしていま
したから、90年代初期にデルが成立します。

他方、車は部品の面で内製を含む個別仕様が多く、モジュール化が進
展していなかった。今後は、量産車の領域は車体の共通化を含むモジ
ュール化に進みます。

すべての工業製品の量産領域で進行するのがモジュール化です。これ
は、量産製品の更なる低価格化も意味しています。

モジュール化での先行は、あらゆる領域でおそらく10年くらいの競
争優位をもたらすことになるでしょう。

モジュール化は何を意味するか。組み立てプロセスの付加価値の減少
です。今のパソコン生産です。10万円になると組み立てプロセスの
付加価値は、ほとんどない。

過半の工業はグローバル・ネットワーク化によって、付加価値を低下
させます。限りなく[原材料+部品代+中国での加工費]に接近しま
す。これはすでに起こっていることです。

例えば売価1980円の、ユニクロ製品の製造の付加価値合計はせい
ぜい200円(10%)です。残りの90%(1780円)は、流通
の付加価値です。200円で作ることができないと、競争には勝てな
い。

ユニクロだけではない。現在進行しているのは、あらゆる消費財の領
域においての、工程分業のユニクロ化です。国家・官僚機構だけが、
時代遅れですね(笑)

今後、大切になる付加価値プロセスは顧客への販売と接点のプロセス、
つまり流通プロセスです。生産よりも、販売の方法、過程、関係の
維持が大切な付加価値工程になる。

最終的にゴールとして最も大切なものは<個品−「個客」>の関係に
なります。店舗は「個客」との関係を深めれば、リーディング産業に
なる。「個客」と今日、直接に接すること、そこが付加価値になる。

マクロ経済で言うなら、流通の付加価値が大きく、生産の付加価値が
縮小するのが、グローバルな可視化経済です。

■5.コモディティとライフスタイル商品への区分

 ここで、商品分野を、
  ・だれもが一定量を需要するような共通コモディティと、
  ・人によって需要量が異なるライフスタイル財に分けて、
                       考えます。

共通コモディティとライフスタイル財に、明確な一線があるわけでは
ない。境界線は曖昧です。

ライフスタイル財から定義します。
[個人の価値観によって、大切になる商品]

頂点の例:エルメスの製品やパテック・フィリップの時計は、愛好家
にとっては、100万円、200万円を出すような価値ある商品です
。価値を認めない人にとっては、ばかばかしい。時計も時間を見るだ
けなら1000円のコモディティ・ウォッチでいいからです。

今、あらゆる商品分野で以下に示す「分化」が起こっています。

▼ライフスタイル財1(ブランド財)

エルメスを頂点とする商品を「ブランド財」と名付けましょう。ルイ
・ヴィトンも、大衆「ブランド財」でしょう。ブランド財では、製造
原価と小売売価にほとんど「合理的な」比例関係はない。

流通価値 =小売売価   −製造原価
ブランド財=小売価値(大)−製造価値(小)=流通価値(大)

プラダのバッグの中国工場での製造原価が1000円であっても、イ
タリアへもって帰り品質の最終チェックをして化粧箱に入れ、しゃれ
た内装とスマートなマヌカンがいる、薄いグリーンを基調色とした店
に並べば7万円になります。69000円の付加価値は製造価値では
なく無形の「流通価値」です。

プラダの付加価値=中国の工場1000円+流通価値69000円

ブランド財の価値は、
(1)製品がもつ心理的な価値
(2)ブランドの有名度の価値、で構成されます。

価値の構造はタレントの経済価値とおなじです。ベッカムが使えば、
アラジンの魔法の手にかかったように「ベッカム価値」が発生します。

ベッカムは一人で、中国の大規模工場の、年間100億円の生産に匹
敵する経済価値を生みますね。工員数で言えば中国人の5000人分
でしょうか。変なことですね。中国のテイラーイズムの工場を恐れる
ことはない・・・(笑)

中田英寿も似ています。彼らは工場ではない新しい付加価値の生産装
置です。ベッカムや中田の付加価値生産の機能がなくなると、また別
のタレントが現れます。先進国の価値工場は、こうしたことに象徴的
に現れるような、ブランド価値の製造です。

▼ライフスタイル財2(趣向価値)

スコッティキャメロンの最新のゴルフパターは25万円くらいもしま
す。タマ転がしの機能には、ばかばかしい値段です。こうした特殊な
ブランド製品ではなく、ゴルフ用品一般でも、ゴルフを楽しみにする
人にとっては、その価格価値は有効なものです。

ゴルフをやらない人にとっては、ゴルフ道具は何の経済価値もない。
テニスの道具も、釣りの道具もおなじです。茶道具も、ファッション
財一般もおなじでしょう。

こうした商品は、その商品を使う生活や場面に価値を認める人々にと
って経済価値があり、価格が成立するような「趣向価値」をもつもの
として整理することができます。

近代経済学が前提する、だれにとっても共通な価値をもつ「経済財」
とライフスタイル財は違います。

食品でも、その人の趣向で「認める価値」が違います。鰹のはらわた
の塩辛である臭い「酒盗」に、価値を認める愛好家もいれば、タダで
も、賞金をもらっても食べたくないと思う人もいる。食べたくない人
が多数派でしょう。あなたはどうでしょう?(笑)

共通コモディティ=「多くの人にとって共通価値をもつ商品」
ライフスタイル財=[個人の価値観によって大切になる商品]

21世紀は、共通コモディティの価格が下落し、反比例してライフス
タイル財の価値が拡大します。現在でも、すでに家計支出の中では
40:60くらいでしょうか。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【モノの形をとるもの】
 (1)共通コモディティ
 (2)ライフスタイル財
   (1−1)ブランド財
   (1−2)趣向財
【無形のもの】
 (1)サービス財
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

先進国10億人の21世紀は、共通コモディティの価格が下がり、ラ
イフスタイル財とサービス財の価格が上昇、または価値化します。

デフレやインフレというマクロ経済論は、大ざっぱ過ぎて、「お話に
ならない」のです。マクロ経済論には、商品の具体性が欠けています。

▼顧客との関係での価値

共通コモディティは「商品−大衆」の関係であり、いろんな人に共通
価値をもちます。

ライフスタイル財の特性は、「商品−特定顧客」の関係の中に経済価
値があるということです。

サービス財は、まさに個別仕様です。病院でも1対1でしか診断や手
術はできない。手術台におなじ病気の人が横たわるベルトコンベアで
は、ちょっと嫌でしょうね。離婚訴訟もおなじでしょう。(笑)

■5.(商品のみを記録した)POSイデオロギー

POS(Point of  Sales:販売時点の商品記録機)には、暗黙のイデ
オロギーがあります。正確には、POSそのものがイデオロギーマシ
ンではない。データの使われ方に、タンピン管理のイデオロギーが忍
び込んだのです。

タンピン管理は、根本では、ほぼABC分析です。20%のAクラス
商品が、60%〜80%の売上げを占めるから、それを売れ筋として
重点管理するという商品管理のイデオロギーです。数が売れない商品
は「死に筋」になります。

POSの前提は、より多くの「大衆」に共通に売れる商品を重視する
というコモディティ発想です。これがイデオロギーです。

テレビの視聴率とおなじです。視聴率の内容ではなく、合計数字、つ
まり個人を1と見たときの合計数字の大きさが、価値があるとされて
います。

こうした価値観は大量に作って大量に売ることが、経済的であり正義
であるという「近代量産〜量流」を源泉とします。

個人によって商品に認める価値が違うという部分は、モダニズムでは
抑圧してきた。近代の産物である勤労者階級は、給料も生活も価値観
もお互いが似ていた「大衆」だったのです。大衆は作られた。

【モノの形をとるもの】
 (1)共通コモディティ
 (2)ライフスタイル財
   (1−1)ブランド財
   (1−2)趣向財
【無形のもの】
 (1)サービス財

共通コモディティを拡大することが、近代でした。

▼コモディティのエンゲル係数が縮小する時代

エンゲル係数という古い経済用語があります。所得が大きくなるにつ
れ、可処分所得のうちで食費は小さくなるという法則です。

食材も食品も豊富になった。カロリーもオーバーする。しかし食費の
割合は減ってきた。食品の価格が、所得に比べて下落してきたことを
示していますね。

経済成長に比例し、生命を維持する基礎商品、つまり食のコモディテ
ィ(共通財)価格は下落してきた。下落したから経済成長があったと
言えますね。これを、価格デフレとは言わなかった。

今起こっているのは、<モノの購買の、エンゲル係数の低下>です。
特に共通コモディティの価格は50%以上も下落し、平均所得は、ほ
ぼ横ばいですね。

皆に共通に多く売れるコモディティの商品は、今後も「所得に対する
相対価格」が下落します。コモディティはウォルマート風の地域寡占
に向かいます。

他方で、共通財ではないブランド財とサービス財が浮上する。コモデ
ィティ領域のラーメンですら、ブランド化やライフスタイル財化へ向
かうのが21世紀です。これらは産業のポストモダン(後近代)と見
ることができるでしょう。

日本経済の停滞は、共通コモディティ以降のライフスタイル財の経済
価値と、サービス財の経済価値を見つけていないからでしょうね。逆
に言えば、そこがチャンスです。

■6.コモディティとライフスタイル財

コモディティは大衆を前提にしていました。大衆は数だった。他方、
ライフスタイル財とサービス財は、名前をもつ個人との関係で、経済
価値をもちます。

個人には一人の人で2つの側面があります。匿名の大衆としての側面
と、名前をもつ個人としての側面の両方を持つ。惹きつけられるのは、
個人として接遇されるときです。

共通の特性でのグループになるとき、これを顧客ターゲットと言って
もいいでしょうね。それと、個人です。

顧客という要素を加えれば、以下のようにすこし精密になります。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 (1)共通コモディティ
    (1−1)多くの人に共通なコモディティ
    (1−2)特定グループに共通なコモディティ
 (2)ライフスタイル財
    (2−1)ブランド財
       (2−1−1)多くの人に共通なブランド財
       (2−1−2)特定グループに共通なブランド財 
       (2−1−3)特定の少数者に共通なブランド財 
   (2−2)趣向財
       (2−2−1)多くの人に共通な趣向財
       (2−2−2)特定グループに共通なブランド財
       (2−2−3)特定の少数者に共通な趣向財
【無形のもの】
 (3)サービス財
       (3−1)多くの人に共通なサービス財
       (3−2)特定グループに共通なサービス財
       (3−3)特定の少数者に共通なサービス財
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

この領域分類でどこを主たるターゲット(=事業ドメイン)にするか、
これが今後の事業戦略の最初に来るべきです。

ICタグと、ブロードバンド・インターネットは、
(1)共通コモディティをますます低価格化すると同時に、
(2)個別財の生産・流通を経済化させます。

個別財の生産・流通、つまり<個品−「個客」>の関係の維持・強化
が、21世紀の経済成長の領域です。

個別財が経済性を獲得する、そうした経済がポストモダニズムです。
逆説的ですが、大衆を狙うのではなく個別性と差異性を狙うことが、
多数の「個客」を獲得できることになる。21世紀の要諦です。

本稿は、<個別性と可視性(visibility)>の序論に当たります。

【後記】
2年前に右目を緑内障で失明し、2週間前に乳ガンの手術を受けたシ
ャーリー(シーズー:10歳:メス)が、昨夜、左目も突如失明。

昨日のお昼まで正常でした。今日、好きだった散歩に行こうとしても、
玄関の階段で動かない。匂いをかいで歩くのですが、室内の壁やテ
ーブルの脚にぶつかります。

何が起こったのか、訳がわからないのか、頼りない顔をしています。

ガンは左足の付け根のリンパに転移した。固い腫瘍があります。数週
間後に専門医で手術です。秋までは延ばせないと近所の医者が言いま
す。痛みを言わず、不安そうな目が、何かを訴えています。

留守番が嫌いで、じゃ、おまえも来るか?と言えば小躍りし、車に乗
せると窓を開けることを要求し、顔を出し風にあたって、必死に見え
る形相で毛をなびかせ(表情が滑稽でした、道行く人が笑います)、
動く景色や人々を見るのが好きだったのですが・・・もぅダメでしょ
うね。

月並みに悲しく、月並みに切ない。

【公開講演の案内1】
7月25日(金)、『ウチダソリューションセミナー』でのキーノー
ト・スピーチに招かれています。午前10時から11時30分までの
90分です。32人の講師が来て、32の講座(ワークショップ)が
あるセミナーとのことです。

会場は東京・赤坂の『明治記念館(元赤坂2−2−23)』です。
入場は無料です。

内田洋行の主催で、富士通、IBM、オラクル、NTT他40社くら
いの協賛のようです。

詳細な案内と申し込み込みは↓以下です。
http://www.uchida.co.jp/2003s/

see you next week!!

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【ビジネス知識源 読者アンケート 】

読者の方のご意見や感想を、書く内容に反映させることを目的とする
アンケートです。いただく感想は、とても参考になります。

1.テーマと内容は興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
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<100号記念:行動ファイナンス理論とは何だろう?3部構成>

【101号の目次】 

 1.テーマ:行動ファイナンス理論とは何か?
 2.人は合理的に判断するという仮想の世界と、人間の世界の矛
   盾:曖昧さの効果
 3.初頭効果とは?
 4.プライミング効果
 5.アンカリング効果
 6.最高の学習方法は
  
【102号】
 1.心理的な現実はプロスペクト(期待)が作る
 2.2つの現実がつくる(正常な)市場価格
 3.行動ファイナンス理論のエッセンス
 4.「認知的不協和」を知っておこう
 5.リファレンスポイント(参照点)の理論
 6.数学的確率に対する態度の違い

【103号】
 1.世界の株価上昇
 2.人々の判断の偏り
 3.3つのタイプの人の、感応度プロファイル
 4.トレーディングで成功する41の原則
        :行動ファイナンス理論の実践的応用

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雑誌『販売革新4月号』から<新・リテイルマネジメント>の連載を
開始しました。デジタルプロセス時代の新しい小売業経営を考察する
シリーズです。

雑誌『商業界』には、一部を送信した<サム・ウォルトンが残した経
営の普遍原則>を連載しています。

▼WEBで、他の考察を体系的に
http://www.cool-knowledge.com
送ったマガジンを含め、後日、修正と付加等を加え掲載

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