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030505ビジネス知識源:ウォルマートの経営原理を解き明かす(1)
発行日: 2003/5/6※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。
<<あなたと、チームの、知識とスキルのブラッシュアップを>>
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ビジネス知識源
2003年5月05日号:Vol 148
<Vol.148 ウォルマートの経営原理を解き明かす(1)>
【良質な経営・IT・ビジネス・経済知識の提供を目標に】
(読者数: 31,076名)
著者:Systems Research Ltd. chief consultant 吉田繁治
著者へのひとことメール⇒ yoshida@cool-knowledge.com
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※120編余の無料版バックナンバーを掲載しています。
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こんにちは、吉田繁治です。今日は、もう夏が来たと思えるくらい暑
かった。約1週間の飛び石連休、どう過ごされたでしょうか?
海外ツアーは閑散とした状況だったようです。他方、国内の人気観光
地は、近来稀に見る顧客数を集めていた。関西の有馬温泉も、人出が
多かったと言う。
観光地も、国際競争だということがわかります。海外より国内に魅力
があれば集まる。観光に限らず不況と言われることが、人の移動と情
報の範囲が広くなって、比較の基準(ベンチマークの水準)が上がっ
たことによるものだということが、こうした時はよくわかりますね。
需要はある。比較上の魅力と、価格と価値のバランスの問題だという
ことです。
今年3月頃から、ウォルマートの経営戦略をテーマにした講演を頼ま
れることが増えました。3月20日の、西友巨勢店(佐賀)の開店が
きっかけになっています。
本稿は、今までのサム・ウォルトンとウォルマートについての論考を、
まとめる意味で、包括的に書きます。
今、この国でもウォルマートへの注目が集まっています。多くが日本
の流通・小売業にとって「脅威」であるという視点からのものです。
しかしそうした見方は、何ら有効な果実をもたらさないように思えま
す。
本稿では、20世紀後期の最も偉大な事業家・経営者と言われるサム
・ウォルトンのビジョン・価値観・マネジメント・戦略を、時系列で
たどりながら、成功への原則として明らかにすることを目標にします。
創業者サム・ウォルトンが、われわれに残したメッセージは「小売業
は、すばらしいビジネスだ」ということに集約されます。
40年で世界の最大企業になった結果を見るのではなく、なぜそうな
ることができたのか、その原因を構成したものは何かを解き明かすこ
とは、今、日本の流通・小売業に限らず、すべての経営と仕事にとっ
て、大きな意味があるように思えるのです。
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<Vol.148 ウォルマートの経営原理を解き明かす(1)>
原則1:根底的なものは情熱だった
原則2: 結果を生む原因を見れば、方法がわかる
原則3:事実への意味づけは未来が与える。従って、機会は常にある
原則4:商品の意味を見れば、小売りは、すばらしいビジネスに変わ
る。商品の意味とは生活である。
原則5:商品と価格が与える意味を見れば使命が生じる
原則6:事業を成功させるものは、生み出される共感である
(次号に続く)
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経営と仕事において、絶対的なことは何か?
最初にこのことを考えます。
「どこにでもいる普通の人々に、機会と激励を与え、ベストへ向かう
やる気をひき起こすことができれば、可能なことに限界はない。これ
は、経営と仕事において、絶対的なことだ。」(サム・ウォルトン)
■原則1:根底的なものは情熱だった
死を覚悟した病床にあって、なお書き残す言葉とは、どんなものか。
1992年、サム・ウォルトンは「生きることは、私にとってすばら
しいことだった」という書き出しで、ウォルマートの経営で重きをお
いたことを回顧し、自分が行ってきたことの意味をたどりながら、最
初で最後の本を著わします。(『Sam Walton :My Story(1992)』)
果たして、私は、生きることはすばらしいことだったと人生の終章で
書くことができるか。そう思うことのできる人が何人いるだろうか。
あなたは、どうでしょうか?
ほとんどの人が人生の過半の時間を投入する仕事は、その人の生き方、
価値観、そして世界観と言えるものと、切り離すことはできない。
事業と仕事は生き方そのものから来る。
本稿は、できるかぎり忠実にサム・ウォルトン本人の、ナマの言葉を
たどりながら、彼がわれわれに伝えたかったことの意味と、彼の言葉
や文脈に込められた仕事への価値観、そして大切な経営原理と原則を
明らかにし、事業と仕事でのおそらくは普遍的な成功原則を解き明か
すことを目的にします。
多くの人は、仕事や経営は、技術的でテクニカルなものだということ
から始めます。
しかし実際は、狙い通りには行かず失敗してくじけ失意と困難にある
とき、挑戦し立ちあがるための自分を信じる力または顧客や家族・同
僚・周囲からの期待に応えようとする意志、そしてとりわけすばらし
いことを成し遂げようとする情熱が、何よりも大切なものだと気づく。
そして、とりわけ、自分自身にとって、自分を信用に値する人間にす
ること、これが、もっとも大切な自尊のへの挑戦になる。
そこから生まれる情熱(passion)こそ人を動かし、顧客を動かし、結
果として、将来を作る資本やマネーを引き寄せるものでしょう。
20世紀後半の稀代の事業家、サム・ウォルトンを読み解くと、事業
と仕事にあって根底的なものは、「情熱」であったことに気がつくの
です。
おそらくこれは、経済世界つまり人間の世界にあっての普遍的な真理
です。逆に、皮肉で冷ややかな精神は、すべてを遠ざける。
■原則2: 結果を生む原因を見れば、方法がわかる
サム・ウォルトンを評し、ある人は、「20世紀初頭のフォード以降、
米国で最も偉大なことを成し遂げた企業家であり経営者である」と
言った。
ウォルマートのビジネスは、だれが見ても、全体として、輝かしく成
功しています。われわれの目に見えるのは、サム・ウォルトンが30
年のビジネス人生の情熱をかけ、彼と彼の周囲に集まった人々が成し
遂げた事業の「結果」です。
大切なことは、最高意思決定者であったサム・ウォルトンが、事業の
決定や日々の決断、岐路において、何をどう考え、どう実行したかと
いうことを見ることです。 本稿ではそうしたところ、つまり行動の
原因に立ち返りながら、考察を加えて行きます。
今、われわれの目に見える自然以外の現象は、人の思考、決断、意思、
そして実行がもたらしたものです。
サム・ウォルトンは、特別な人間であり、環境に恵まれ、社員に恵ま
れ、偶然が助けたと見ることも可能です。しかし、そうした見方は、
自分の立場からの密かな自己肯定であり、裏返った自己肯定に思えま
す。
自分のやっていることは正しい。しかし資本もなく、いい社員もいず、
偶然も味方をしていない。周囲が悪い、環境が悪い、デフレが悪い、
マクロ経済が悪い、そして最後は、自社の商品やサービスのよさを
理解できない顧客が悪いと考える人が実に多く目につきます。
経営は、環境としての経済や資源の不足を利用する。そして経済を動
かす。経済に左右されるだけでは決してない。デフレならデフレを利
用すればいい。翻弄されてはいけない。
結果や今の事実、そして資本力にとらわれるのではなく、その原因を
見極めること。結果は終わった事実に過ぎない。
将来の結果を決める原因は、今日から作ることができる。ゼロから立
ち上がらせるもの、それが人間の情熱に根ざす意志です。
仮に事業が破綻した、あるいは失業したという不幸な過去の事実があ
っても、将来の成功があれば、それは成功への一里塚という、逆の意
味を持つことになる。
人間にとって、常に未来は確定してはいない。意志と行動によって、
変えることができる。世界は人間によって変えることができる。
■原則3:事実への意味づけは未来が与える。従って、機会は常にあ
る
目の前にあるコップに、水が半分入っている。だれも否定できない事
実です。人は、事実に意味づけをした上で、自分の外部世界や内的世
界を見る。
動物にとっても事実はある。しかし人間だけが事実に「意味づけ」を
する。意味づけは、過去か、または未来から来ます。
水が半分しかないから、もうすぐなくなると見るか、半分もある。あ
と少し加えれば満たすことができると思えるか。
90年代以降の日本人は、「過去にはあったものが、なくなってしま
う」という否定的な意味づけに傾斜しすぎているのではないか。GD
Pの総額は、500兆円でバブル期と変わっていません。
しかし、その内容は変わった。
地価と株価は、本質では未来収益の現在割引高(DCF:ディスカウ
ントキャッシュフロー)が決める資産価格ですが、今は20年前の価
格に戻っています。こうした変化は、次世代の事業と仕事にとって、
変化が生む機会ではないか。
変化がなければ機会もない。変化が機会です。日本の90年代は、過
半の企業の過去20年の資本蓄積を、見事にご破算にした。
他方、ウォルマートは、変化に対応するのではなく、ウォルマートが
原因になって、逆に、小売業に大きな変化を引きおこしたのです。
わが国では今、店舗をつくるコストは、20年前より安い。資本コス
トである金利は、名目ではゼロに近い。
資産や株価の高さは、後世の人の負担になる。これが20年前の価格
にまで下落したことの意味は、今は、すべての人が、20年前のスタ
ートラインに立てるということです。これが、株価、地価が20年も
前の価格に戻ったことの積極的な意味です。失ったものではなく、こ
れから獲得できるものに照準を定めることです。
わが国のあらゆる業界で、堅固だった大手から中小までの企業序列は
崩れつつある。金融からは若い世代の脱走がある。官も崩れつつある。
いや、既に内部は崩れている。自由経済の世界では、過去を守るこ
とと過去に戻ることは、決してできない。
事実の意味づけは、その人の未来観からきます。人間的な世界は、こ
うした様々な意味づけや未来観に満ちています。
経営と仕事、そして顧客との良好な関係は「意味づけの人間的な世界」
そのものです。
■原則4:商品の意味を見れば、小売りは、すばらしいビジネスに変
わる。商品の意味とは生活である。
ある顧客がPOSに記録される事実としては、今日$6のビーチタオ
ルを買った。ここに何を見るか。ビーチタオル1枚の在庫が、$6の
紙幣に変わっただけか?
売上げとは、果たしてそうしたものだけか?
彼は、明日ワゴン車に乗り家族で海にでかけ、白い砂浜にビーチタオ
ルを敷き太陽の下に横たわるレジャーの時間(近い未来)を思い浮か
べていた。
これが「商品の、生活での意味」です。$6のタオルで、ウォルマー
トが提供したのは、「商品の意味」だった。
ここをめぐって、目指されるものが「顧客満足」と言われるものの正
体です。生活の改善、生活への提案とも言います。
商品を提供することで、それを使った生活を提供する。サム・ウォル
トンは、工場や売場の商品が、現金に変わる現場に居て、顧客の生活
を見ていた。
小売業はすばらしい。商品を販売することで、顧客に満足を与え、生
活を変え、生活水準を上げることもできる。
サム・ウォルトンが、終生、自分の仕事に情熱を持ち、ほとばしる情
熱で周囲を動かし、成功への固い意志を持ち続けることができた理由
は、商品が顧客の生活に与える意味の部分を見ていたからだと思えま
す。
同じ仕事や作業をしていて、顧客の生活で意味を見る人と、経済学的
な、そして無機的な分業の中の、生活の資を稼ぐだけの義務的な労働
しか見ない人がいる。果たして労働は苦役か?
サム・ウォルトンは、仕入れる商品の選定、価格付け、そして棚に並
べる商品を通じ、商品を使う顧客の生活を見ていた。
売場で売るのは、婦人用ショーツ、紳士用シャツ、そして釣り竿かも
しれない。しかしこれは、より安い価格で、より良いものを提供する
生活の提案だ。われわれは、販売を通じて地域住民の生活を変える。
買い物を便利にし、安い価格で提供し、顧客の生活水準を向上させる。
こうした観点に立つとき、ウォルマートが関わるべき必要な商品とは
なにか、つまり、当初はバラエティと言われ、後では日常生活と言わ
れる品揃えの枠が見えてくる。
ずいぶん以前に、ドラッカーも言った。
石切工がいる。何をしているのかと問う。
「私はご覧のように石を切っている」
彼にとって石切は生活の糧をかせぐための労働に過ぎない。
別の石切工に訊ねる。
「私は、寺院を作っている」
石切という分業作業を職人として行うのは、寺院をつくることを目的
としています。
この目的が、石切という作業の「意味」になる。
ここで、労働に意味と目的が付与される。言い換えれば、石切という
個人労働、または分業の中の、課業(個人責任作業)の意味が出てく
る。
小売りのあらゆる分業作業は、顧客への生活貢献に向かう全体を見る
とき、人の情熱を喚起する意味と目的をもつことになる。
ウォルマートの社員は、個人分業(課業)の中で、商品販売を通じ、
顧客の生活水準をあげ、貢献することの意味を今でも見ているように
思えます。
今日売場に立つ自分にとって、仕事の意味と目的は何か? これを考
えるべきです。
想起すれば、作業分析を説いた科学的管理法のテイラー(1910年
代)以降の経営学は、すべて、この仕事(課業)の意味をめぐっての
言説だった。
経営者を含め、組織の中ではあらゆる人は「分業」の中の課業(個人
の責任作業)を行う。その分業の中に、全体の意味を見いだすことが
できるかどうか。分岐点はここにある。
■原則5:商品と価格が与える意味を見れば使命が生じる
年収$2万の世帯に$4万の生活水準を提供すること、まずは、これ
をウォルマートのビジネスでの使命(ミッション)と定めた。
このミッションは、実際の店頭での試行錯誤の中で発見された方法の
原則化と結びつくことで、後に世界を変えることになる。
ディスカウントという方法は、その結果として、試行錯誤の中から、
成功する方法として採用され、実行するたびに次第に洗練され、社員
が実行できるように方法化されてきた仕事の技術です。
価格を、すくなくとも店頭調査した範囲では、どこの店舗より安くす
ることの目的は何か?
そのためには、あらゆる経費を押さえて、店舗は売上げ対比15%で
運営するというローコストオペレーションが条件になる。
そして商品への値入率を、最小限に抑えるディスカウントは、顧客に
向かうミッションと結びつくことで、生涯の情熱を燃やすことのでき
る仕事になる。もちろん小売業にとって、ディスカウントだけが方法
ではない。サム・ウォルトンは、ディスカウントに使命を感じたとい
うことでしょう。
不断の使命感を感じるには、その目的、つまり結局、自分は何をやり
たいのかを自分自身に問わなければならない。
周囲は、あとで、ウォルマートの経営方法をローコストオペレーショ
ンやディスカウントと言っただけに過ぎない。
サム・ウォルトンが繰り返し言う、「どこよりも安く売ることへの情
熱」は、顧客の生活水準の向上に貢献するという使命感と不離不可分
のものです。
目的は、最初は故郷のアーカンソー州の、そして次は米国民の、同じ
所得での生活水準の向上だった。
経営において、厳しさと自己抑制が必要なディスカウントは、その使
命感に基づく目的を実現するための戦略となる。
そして・・・社員に対してあるいは自分自身に向かって、サム・ウォ
ルトンが最も大切だと言う(1)「機会」と、(2)「激励」と(3)
「高い目標に向かった(自発的な)やる気」、経営と仕事が成功す
るための根幹はここにある。
あらゆる経営学、そしてマネジメントの方法が解くところは、結局、
この三つの人間的な要素に集約されます。
機会は、機会を活かすための課題を与えます。これが問題意識です。
課題は実行目標を生みます。これが戦略作りです。
そして激励は、自信と肯定的な態度を生む。最高の教育が激励です。
人は激励によって育ち、教育カリキュラムと評価によって成長する。
サム・ウォルトンが生涯、使命感に満ちていたから、その情熱に共感
し、集まったウォルマートの社員も顧客の生活改善に使命感をもち、
後には世界最大の企業までを生むことになって行く。
■原則6:事業を成功させるものは、生み出される共感である
日本のチェーンストアの草創期の1960年代、皆が資本も技術も組
織も、何もなかった。
たったひとつの小さな1店舗で、地域顧客または国民生活の向上を果
たすという高い使命感と情熱だけがあり、苦楽をともにし、厳しい仕
事が終わると安酒を飲んで語りあう同僚、仲間がいた。
そして、仕事を支える家族や恋人がいた。彼らは、米国の店舗や米国
人の生活を見て、例外なく衝撃を受け、観察して学び、日本に帰って、
興奮をもたらしたことを一つずつ試行した。
顧客は、価格を変えた店を支持した。しかしここで、小売りもチェー
ンも、要は巧みな金儲けであると考えた人の多くは、過程で脱落して
いった。
他方、最初は金儲けであると考えても、米国の小売業を見学し、日米
の生活水準の格差に愕然として、米国並みの流通業作りを使命とした
人もいた。仕事は社会的な意味を帯びることになり、業界の異端児と
言われながら、多くの人の共感を集める。
この分岐点が生じたのは、なぜか?
ここを考えていただきたいのです。おそらく、要は金儲けと考えた人
は事業への共感を、同僚にも社員にも顧客にも、そして銀行家にも感
じさせることはできなかった。レジに落ちるマネーに、人は集まった
が、事業そのものには集まらなかった。
事業への共感こそ、事業の成功の鍵になる。共感から機会が生まれる。
共感から、激励や応援も生まれる。共感から高い目標へのやる気も
生まれる。共感から資本も供給される。事業はゼロから、あるいはマ
イナスから始まるというのは本当のことです。
今の日本では、資本の面で、ほとんどの人が横一線です。獲得したよ
うに見えていた資本は、地価下落とともに大部分が20年分も逃げて、
消えた。
どうすれば、顧客を含む周囲(ステークスホルダー:利害関係者)に、
強い共感を与えることのできる仕事、事業、店舗、サービスをつく
ることができるか。本稿の全体は、それをめぐってのものです。
他のどこよりも強い共感がなければ、ウォルマートのように140万
人もの従業員が集まる事業は作ることができない。
小売りビジネスは、顧客からの共感がない限り存在できない。
小売業は機械と資本力と無機的な技術だけでの仕事ではない。
今日の一人の顧客への、一人の社員の心をこめた応対が、すべてを決
める。
小売り業は、機械が働くのではない。すぐれてヒューマンビジネスで
あるのが小売り業です。人間の判断と労働が成果を決める。
そう見れば、事業と仕事に、人の共感をひき起こすことができるかど
うか、ここが鍵になるはずです。
共感はどこから生じるか? その事業と経営者が目指すビジョンと価
値観、そしてトップ・幹部のビジョンへ向かった行動からです。
ビジョンは、紙に書かれただけの呪文のような言葉ではない。実際の
行動と仕事から、周囲の皆に感得される。
価値観は、実際の判断と、評価される仕事や行動がどんなものである
かを見て、周囲の皆が知る。
■原則7: 事業への共感から、社員と顧客の熱気が生じる
「ウォルマートを発展させていくときに私たちみんなが感じていた熱
気(spirit)を伝えたい」と、サム・ウォルトンは自伝的遺書の序文
で言っています。
10年くらい前、コンサルタントに転身していたウォルマートの元店
長と、昼食をとりながら話す機会があった。彼は、言った。
「ウォルマートでは、われわれはいつも、Can-Do-Attitudeで仕事をし
てきた。その熱気は、心底すごいものでした。ウォルマートで仕事を
してよかったと思った。」
このCan-Do-Attitude(やればなんでもできる)という言葉を、私は、
今でも鮮明に記憶しています。そして時折、自分自身にむかってつぶ
やく。
ウォルマートに参集した普通の人々が、比類のないことをやり遂げた
根底には、おそらく、常にCan-Do-Attitudeがあった。
それは、言いようのない熱気のようなものだった。
目標や計画は達成できる。やれば、できる。
できる方法を探す。決してあきらめない。
そして、自分を、自分自身にとって信用に値する人間にするために、
全力を尽くす。周囲の皆が、全力を尽くしていた。
それがCan-Do-Attitudeの熱気を生んでいた。そして、おそらくその熱
気は、今もウォルマートの人々に脈々と流れているように思えるので
す。
これが、ウォルマートという事業の命でしょう。そして、今日も商品
を店舗に配送するドライバーがいる。
彼は、配送という仕事を通じ、顧客の生活を改善することの映像を見
ている。ドライバーの仕事も、単に配送ではない。
ウォルマートでは店舗にいつも行くドライバーに重きを置いています。
テイラー以降の現代経営学は、分業にこうした意味を与えることので
きる組織と仕事を、長年、様々な概念を作りながら研究してきたもの
です。
■原則8: 根底を見ておけば、経営と仕事の軸はぶれない
『小売りの輪は回る(1976)』を書いたマルカム・P・アクネイアは、
大きく成功した小売業は共通に、最初は最小の営業費しかかけず、
価格を安くしてマーケットに参入すると言っています。
「革新者であればあるほど、最初は周囲から嘲笑され、異端児と言わ
れる。しかし低い営業費で可能になる価格をベースに大衆を引きつけ
る。後になるにつれ、次第に革新者は格上げを行い、よりよい品質の
高い商品を取り扱い、店舗の外観と店格を高め、より高い社会的地位
を得ていく。こうした成功とともに、次第に既存の小売り勢力となっ
ていく。そして、次の(異端児でである)革新者に道を譲る。(アク
ネイア)」
ウォルマートは、日本の第一世代の流通革新組とほぼ同様に、創業以
来40年です。
40年で、小売りのみならず製造を含めた世界の企業で、ナンバーワ
ンの規模になりつつも、小売業として最も低い営業費(売上げ対比一
般管理販売費15%から17%)で経営しています。
ウォルマートの経営の軸と原則は、環境の変化にもかかわらず、企業
規模が飛躍的に大きくなったにもかかわらず、全くぶれていない。
使う技術は、次第に、大枠ではシステム化や情報、作業はワークフロ
ー、物流はクロスドックセンターという方法に変わってきた。
しかし、目的と原則は変わらない。
日本の代表的小売業は、今、売上対比一般管理販売費がウォルマート
に対し10ポイントも高くなっています。最初から営業費が高かった
のではない。
日本の小売り業では70年代から80年代を経て、高くなってきた。
つまり流通のコストは、上がり続けた。ところがウォルマートは、成
功した小売業は既存勢力になり次の革新者に道を譲るというアクネイ
アの法則からは、見事に逸脱しています。
一体、ウォルマートとは何か?
なぜ、ウォルマートの経営の軸がぶれないのか?
更に深く見ていきます。
(以下、次号で)
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2.ターミナル・セブン(1978年〜)
3.情報端末としてのPOSシステム(1982年〜)
4.店舗特性が浮上してきた
5.知識化された、個別店の情報のメニュー
6.[仮説−発注の実行−販売の検証]とはどんなことか?
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ント>の連載を開始しました。デジタルプロセス時代の新しいチェー
ンストア経営を考察するシリーズです。
5月1日に発売の5月号は、その第二回です。
▼WEBで、他の考察を体系的に
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送ったマガジンを含め、後日、修正と付加等を加え掲載
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