▼ハットする切り口と考察で目からウロコが落ちると評判のメールマガジン。経営戦略情報・経済情報・IT情報▼欧米の新情報を含む高度な内容を、基礎から分かりやすく分解して提供 【分野】経営戦略・小売/流通・IT・ロジスティクス サプライチェーンマネジメント
- 最新号:2008-09-20
- 発行周期:週刊
- 読んでる人:1782人
- 創刊日:2000-10-23
- Score!:95点
- コメント数 : 6
- メルマガID:21960
- バックナンバー:全て公開
- 発行者サイト:あり
- >> 月間ランキング
030217ビジネス知識源:個へ分極する世帯
発行日: 2003/2/17※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。
<<あなたと、チームの、知識とスキルのブラッシュアップを>>
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ビジネス知識源:無料版
2003年2月10日号:Vol 137
<個へ分極する世帯>
【良質な経営・IT・ビジネス・経済知識の提供を目標に】
(読者数: 30,286名)
著者:Systems Research Ltd. chief consultant 吉田繁治
著者へのひとことメール⇒ yoshida@cool-knowledge.com
申込・解除・バックナンバー⇒ http://www.cool-knowledge.com
※120余編の無料版バックナンバーを掲載しています。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【ご案内】姉妹誌:『ビジネス知識源プレミアム』
600円/月:毎週水曜日発行
■2月はビジネスと仕事の突破口として<小さく考えよ>という方法
を、本格的な内容でとりあげています。権限と手続き(procedure)で
はなく、原則(principles)による現場主義の仕事の手法は秀逸です。
申込月の既発行分は、その月の全部を読むことができます。
(1)会員登録で支払方法とパスワードを決めたあと、(2)受付メ
ールが送ってきて、(3)その後、購読誌の登録です。
【↓会員登録の方法の説明】
http://premium.mag2.com/faq/rd_howto.html
【購読誌の登録↓】
http://premium.mag2.com/reader/servlet/Search?keyword=P0000018
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
こんにちは、吉田繁治です。10年以上も前から、高齢社会と言われ
ています。確かに日本は、2000年に65歳以上の人口が17.4
%(2204万人)を超え、スウェーデンを抜き世界最高の高齢者比
率です。人口構造の変化はいつの時代も、経済・社会・生活の基底を
決めます。
先日、仕事で熊本に行きました。伊丹からの飛行機は高齢者の団体で
満席だった。通りを歩いても商店に入っても、高齢者が目立つ。時折
地方都市へ行けば、どこも共通の風景です。公共投資の設備と、郊外
には30兆円産業と言われるパチンコ屋が偉容を誇る。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<Vol .137 個へ分極する世帯>
【目次】
1.隠れている世代
2.個への分極化
3.所得と資産の格差
4.高齢者に偏る金融資産
5.住宅・土地資産も高齢者に偏る
6.高齢者世代の所得と資産をまとめれば
7.65歳以上の世帯の預金と職業
8.40:30:30
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■1.隠れている世代
高齢世帯の生活と経済の現在と将来の内容についてのはっきりしたイ
メージは、作られていないと感じています。これが本稿を書く理由で
す。
高齢社会を、増税と福祉費用増額の根拠としてとらえるのが政府、財
務省、厚生労働省です。こうした、世論操作の意図をもった政治的な
見方が、高齢社会の将来映像をゆがめていると感じます。
(補注)01年9.11以降の米国マスコミも、論議のタブーが増え、
歪んでいますね。
増税と国民負担率の増加、生命保険の予定利率の切り下げ、そして商
品の売上傾向、そして金融問題、需要縮小、社会の気分、こうしたも
のの全体に高齢社会が絡んでいます。正視する必要があると感じます。
高齢社会は、「世代」でくくることができるような平均の社会ではな
い。本稿では、高齢社会を<世帯の個への分極化>としてとらえます。
夫婦と子供2人という過去のニューファミリーイメージは激しく変
わった。単身世帯および夫婦二人だけの分極化された世帯が、90年
代から急増しています。
・1960年代までの「大世帯」
・1970年代以降の「核家族」
・1990年代以降の「分極家族」に変わっています。
(分極家族は本稿の新造語です)
21世紀は、GDPの数字に代表される「経済」だけで解くことはで
きない。「社会」という要素、および「文化」という共有価値観の要
素を含ませる必要があります。皆が暗黙に大切にするものを、モノの
経済のみではとらえられなくなってきた。
日本は次の意味で、世界の先頭ランナーです。
(1)米国より10年前に、金融膨張と金融崩壊を経験した。
(2)商品のライフサイクル(新商品誕生から消滅)期間が最短であ
る。平均すれば5万品目の店頭陳列商品うち、4万品目(80%)が
1年で消えます。この短い商品寿命は、メーカーの製品開発、問屋の
在庫、小売の店頭品揃えのすべてを難しくし、適切な商品製作をもっ
とも大きく左右している要因です。
(3)そして、個への分極化
高齢世帯(65歳以上の世帯主)は資産・所得、および生活意識で大
きな格差がある「個性化世帯」です。同時に個別サービスを価値と評
価する世帯でもある。年金負担や社会福祉の問題という観点だけでと
らえることはできない。
若い世代は、大枠で言えば、成長と学習のプロセスです。こうしたと
き価値観(大切にするもの)はほぼ共通です。高齢世代は、30年余
の仕事と生活の中で、個性は作られ強化されて「違い」が大きくなる。
データを挙げながら、その意味を考察し、現在そして将来の高齢社会
の映像を明確にし、日本の近未来の経済・社会を解くための、素材に
します。高齢世帯の内容は意外に明らかにされず「隠れている」ので
す。「老」のイメージが否定的だからです。
本稿を読みながら、大きくイメージをまとめ、記憶しておいてくださ
い。あらゆる時の判断で、役に立つはずです。
若い世代は、日々マーケティングで研究されます。高齢世帯は、多く
のマーケティングで消えているのです。増加する世帯を含まないマー
ケティングや製品開発、サービス開発には限界がある。
米国には老年学(Gerontology)という分野があるようです。「高齢者
の生活の質をどう高めるか」を研究する。メール交換をしている香港
在住の方から教えてもらいました。米国留学で学んだとのことです。
80歳を超え、新しい外国語を学び、初めて教壇に立つような人がい
るという。このイメージは鮮烈です。高齢者については、一律の映像
で語ることはできない。
老年学の参考のために以下のサイトを挙げます。
http://www.trinity.edu/~mkearl/geron.html
高齢社会がどうなるか、そしてどうするかは、今後の日本の経済・社
会の中心テーマになります。考えざるを得ない課題。
■2.個への分極化
▼高齢者比率
最初に、人口の中に占める高齢者割合と平均余命を示します。
データは、特に注をつけない限り『国民生活白書:平成13年』から
抽出し、映像を作るために新たに作成したものです。
高齢者(65歳以上) 平均余命
の人口構成比 男性 女性
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1950年 4.9% 12年 14年
1980年 9.1% 15年 18年
1990年 12.0% 16年 20年
2000年 17.4%↓ 17年 24年
[2204万人]
2010年 22.5%
2020年 27.8%
2030年 28.7%
2040年 29.6%
2050年 35.7%↓
[3586万人]
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今後、65歳以上の高齢者は、10年間で、人口構成比で3から5ポ
イントくらい、実数では380万人〜640万人増加します。そして
65歳以降に、平均すれば約20年以上の生活がある。
われわれのイメージは、20年も前の過去を引きずります。今起こっ
ている変化を見ない。現在の高齢者は人口100人のうち17名(2
204万人)、2030年には29名になり、2050年には36名
(3586万人)に増える。多くの地方都市は、こうしたことを大都
市部より先取りしていますね。急激な変化は、今起こっています。
商店も昼間は、高齢者が多い。若い世代の主婦の60〜70%は昼間
は、パートなどで仕事をしているからです。
コンビニエンス・ストアのように、POSで商品と購入者の推計世代
を10年区分で入力し、商品と結びつけたデータにすべきです。商品
開発とマーケティングの最重要データが得られます。増加する世代に
焦点を合わせない商品開発もマーケティングも有効性が薄い。
▼65歳以上が世帯主になる世帯
全世帯数 うち高齢者世帯
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1990年 40百万世帯 658万世帯(16.5%)
2000年 47百万世帯 1114万世帯(23.7%)
2010年 48百万世帯 1418万世帯(29.8%)
2020年 50百万世帯 1760万世帯(35.2%)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
90年から00年の10年間で、65歳以上の世帯主は2倍近くにま
で増えています。更に今から7年後には1718万世帯(構成比29
.8%)になって、3世帯に1世帯は高齢者世帯主の住まいです。2
020年になれば90年の3倍弱に増え、65歳以上の人が世帯主で
ある世帯は、新興の最大勢力になることがほぼ確定しています。
過去のファミリーイメージを、来るべき事実に合わせ、改める必要が
ありますね。若年層中心のマーケティングではなく高齢者とのダブル
フォーカス・マーケティングが必要です。
▼個への分極
日本の全世帯の、一軒の家での同居家族の内容は、今どうなっている
か?
子と同居 夫婦のみの世帯 単独世帯
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1980年 69.0% 8.5% 19.6%
1990 59.7% 11.2% 25.7%
2000 49.1% 14.1% 33.1%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
40年前の1960年代までは3世代同居の大家族だった。70年代
には、これが核家族化した。80年代は一軒の家に住む家族は子供が
いるというのが常識(69.7%)でした。
90年になると子供がいる世帯は、6割に減った。現在では構成比で
5割以下に減っています。急速に増えたのが夫婦のみの世帯(66%
増)、そして単身世帯(構成比で69%増)です。
100件の住宅を見渡したとき49軒は子供がいるが、33軒は単独
世帯(特に高齢女性が多い)であり、14世帯は夫婦のみです。
食の面での個食化、惣菜化、デリという傾向が露わになっています。
全国で3.6万店に増えたコンビニエンス・ストア(主要客は個食人
口)が成立する理由です。キャベツを一玉買ってもムダになる。食の
面の対応は、いつも早い。衣はもともと個人です。しかし住の面、住
関連商品、白物家電商品、AV商品、情報機器での対応は遅れていま
す。
高齢社会、単独世帯では、モノの価値よりハイサービスの価値が重ん
じられる。
わが国では「夫婦+子供」という過去の固定的なファミリーイメージ
が当てはまるのは、すでに半分以下の世帯数でしかない。夫婦のみが
14%、単独世帯が33%と認識すべきです。
ファミリーから「個に分極化する日本の世帯」の実相がここに見えま
す。これをまともにとらえた企業は、不思議にまだ少ない。
携帯電話の急速な普及の理由も、設置型では不在が増えたからです。
個対個(PtoP)の通信社会、個へ分極化する社会でコミュニケーショ
ンへの渇望が生じるのも、こうした事実を背景にしていますね。
■3.所得と資産の格差
以下は高齢者世帯を同居の内容、つまり属性で分け、世帯別の所得の
内容を示す表です。いろんな場面で利用できる情報価値があるでしょ
う。
▼平均年収
世帯人数 総年収 1人当り 主たる所得
同居属性 (人) (万円) (万円) (万円)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
全世帯平均 2.9 626 220 512(稼動所得)
全高齢者世帯平均 1.5 329 219 203(年金)
(高齢者世帯内訳)
夫婦のみの世帯 2.0 466 233 257(年金)
高齢者単独世帯 1.0 204 204 135(年金)
夫婦+未婚子女 3.1 753 240 476(稼動所得)
1人親+未婚子女 2.2 479 221 219(稼動所得)
3世代同居 5.3 1043 247 839(稼動所得)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日本の全世帯で言えば世帯年間所得の平均は612万円、そのうち稼
働所得の512万円が夫と妻の仕事で得られた所得です。家族は2.
9名で、1人当たり所得は220万円です。1人あたり月間平均で、
18万円と記憶しておけばいいでしょう。
65歳以上が世帯主になる高齢者世帯では、総年収が329万円でそ
の額は全世帯平均の53%、約半分です。しかし、世帯人数が1.5
名なので1人あたりの所得は219万円であり、全世帯平均と変わり
ません。
上の表の、1人当たりの所得の欄をタテに見て下さい。家族形態の属
性いかんにかかわらず、1人当たりは200万円から250万円です。
しかしながら、これは「平均値」です。
高齢世帯は平均で見ることはできない。
▼高齢世帯の年収の格差
65歳の以上の世帯になると、有業と無業そして自営や資産所得等の
要因で大きく収入が変わります。購買行動や生活スタイルも大きく、
「個」で変わる。いかに高齢者世帯の、年収分布を、低い順に示しま
す。
年収ランク 構成比 累計構成比
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
50万円未満 3.4% 3.4%
50〜100万円 9.5% 12.9%
100万円〜150万円 16.1% 29.0%
150万円〜200万円 14.2% 43.2%
200万円〜250万円 10.2% 53.4%
250万円〜300万円 8.7% 62.1%
300万円〜350万円 7.8% 69.9%
(平均所得 329万円)
350万円〜400万円 7.6% 77.5%
400万円〜450万円 5.2% 82.7%
450万円〜500万円 3.2% 85.9%
500万円〜600万円 5.0% 90.9%
600万円〜700万円 2.1% 93.0%
700万円〜800万円 1.5% 94.5%
800万円〜1000万円 2.0% 96.5%
1000万円以上 3.6% 100.1%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
高齢世帯1114万世帯(2204万人)の所得格差は大きい。平均
年収は329万円(年金203万円:稼動所得91万円:他35万円)
ですが、平均値以下が約65%です。大枠で言えば10世帯のうち
7世帯は、平均値である329万円以下の所得です。
平均値を超える350万円から500万円までは16.0%です。
500万円〜800万円の世帯は8.6%であり、800万円以上の
リッチ階級が5.6%です。
高齢者の100世帯を以下のように4区分でイメージ化したらいいで
しょう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(1)70世帯は329万円の平均値以下の年収。
(2)16世帯が、350万円から500万円で20代から30代前
半のサラリーマン並み。
(3)9世帯が、500万円から800万円で、30代後半から40
代のサラリーマン並み。
(4)6世帯が、800万円以上で高級サラリーマン並み。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
単純化すれば、高齢者マーケティング、商品開発、サービス開発とは
言っても、一つではなく、(i)ストックは別にして、年金依存でフロー
の収入が少ない70世帯、(ii)所得の余裕がある30世帯、ではそ
の内容と方向が変わることになります。
70世帯はディスカウントストアであり、30世帯は比較的にブラン
ド消費とサービスの高質化です。
米国の80年代以降は、平均的ワーカーの時間給の実質所得(=名目
所得−物価上昇)は減少しました。Kマート、ウォルマートを代表と
するディスカウントストアの隆盛の一因がこれです。
わが国も米国の20年遅れで、大枠ではディスカウントストアの時代
へ向かいます。高齢者世帯の総収入の62%を占める年金が増額され
る要因は、今後はないからです。
米国は生産の移転で国内のワーカー賃金が下落し、ディスカウントス
トア隆盛になった。日本で「増加する世帯」の内容を見れば、こうし
た方向がはっきりと見えますね。
以上は、フローである所得の実相です。
次にストックである金融資産を見ます。
■4.高齢者に偏る金融資産
金融資産と金融負債の残高を世帯主の世代別に見て行きます。90年
代の激しい変化が、手に取るように見えてくるはずです。単位は万円
です。
(注)金融資産には預貯金、生保、損保、株、有価証券をすべて含ん
でいます。負債は住宅ローンや消費者金融を含む全負債です。
▼30歳から49歳の世帯の金融資産:10年間の変化
1989 1994 1999
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
30歳未満純資産 131 170 60
金融資産 333 402 365
金融負債 202 232 305
30〜39歳純資産 204 152 −59
金融資産 587 700 707
金融負債 383 548 766
40〜49歳純資産 431 488 279
金融資産 910 1099 1108
金融負債 479 611 829
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
30歳世代から49歳までの、純金融資産(金融資産−金融負債)は、
94年以降、急速に減っています。他方金融負債は1.5倍から2
倍くらい増加しています。
主要因は、90年代に高い住宅を買ってローンを組んだことの結果で
す。会社の現場の中心世代で、金融資産の減少が起こっているのが
90年代の日本の特徴です。憂うべき事態です。
住宅を買ったのは自分の選択とは言え、賃金の上昇をあてにして住宅
を買い、給与や賞与の停滞、または減額で返済が苦しくなり、負債が
増えた様子がはっきりと伺えます。金融資産の増加分は、ほぼ生命保
険の積み立てのみでしょう。すぐに使える預金の増加ではない。預金
は、教育費を含む家計の赤字補填で逆に減少していますね。
マスコミ、政治家、官僚の認識は、日本は「金融大国」だと言います。
しかし30歳から49歳を見れば事実は逆です。90年代に、金融
の純資産を半分以下にまで減らしています。
特に30歳から39歳は、純金融資産がマイナスに転じています。こ
の世代は転職世代でもあります。転職するなら、ある程度の金融資産
の蓄えが必要です。
政府は、企業の多額の債務カットや特殊法人・公益法人への資金の振
り向けではなく、30歳から49歳までの、金融資産の激しい劣化に
目を向けるべきです。
日本の現場を担う世代の生活不安、ここがこの国の問題の根底でしょ
う。
別の角度から見れば、30歳から49歳と言えば親がまだ存命である
ことが多い。親の世代はどうなったか?
▼50代以上の世帯の金融資産
1989 1994 1999
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
50〜59歳純資産 839 1004 1049
金融資産 1217 1509 1618
金融負債 378 505 569
60〜69歳純資産 1487 1830 1919
金融資産 1697 2087 2189
金融負債 210 257 270
70歳以上純資産 1580 1841 2052
金融資産 1803 2060 2223
金融負債 223 219 171
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
全世代平均純資産 680 847 895
金融資産 1049 1318 1452
金融負債 369 471 557
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
30歳〜49歳とは逆に90年代も金融資産は増加しています。負債
は増加していない。原因で一番大きいのは、50歳以上の世代が住宅
取得済みであることです。加えて65歳の定年時に支払われてきた退
職金があった。
50歳から59歳では純金融資産は1049万円(99年)ですが、
60歳から69歳は1919万円、70歳以上は2052万円になる。
こうして50歳以上では確かに金融資産リッチである国が日本です。
ここが日本の金融資産においての、他国にない特徴です。親の世代は
金融資産リッチ、30歳〜49歳という働きの中心世代は、金融資産
貧困です。世帯は一色ではない。80年代までは、およそ平均してい
た。格差が激しくなったのは、90年代です。
(補注)日本で株式投資を行う個人株主は、722万人(人口の5.
6%)に過ぎません。18人に1名、世帯では6世帯に1世帯です。
これは極めて少ない数字です。半数以上は57歳以上であり40歳以
下の世代では、22万人に過ぎません。他方、米国では個人株主が3
800万人です。若い世代も、高齢者世代と数で等しい。
■5.住宅・土地資産も高齢者に偏る
1983年(20年前)以前に土地や住宅を取得したかどうかで、今、
実物である土地と住宅の資産が決まっています。地価はおよそ20
年前の価格に戻ったからです。
以下は高齢者夫婦(夫65歳以上:妻60歳以上)の金融資産の持高
と住宅資産を示します。高齢者世代は。1983年以前に住宅を買っ
ています。持ち家比率は85%と高い。
金融資産 住宅・土地資産
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
750万円未満の世帯 3000万円
750〜2000万円の世帯 3700万円
2000〜4000万円の世帯 4300万円
4000万円以上の世帯 5500万円
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
高齢者は金融資産が少ない人でも、住宅資産は3000万円はあると
いうのが持ち家世帯の平均です。700万円以下の金融資産であって
も、住宅・土地資産はほぼ平均して3000万円です。
(1)30歳〜49歳はこの国の経済と自分の将来の生活、職業に不
安を持ち、
(2)60歳以上の世代は、およそ過去の蓄積で気分も安定していて、
金融資産、住宅資産もあるという実体がわかります。
(3)50代の団塊の世代は、その中間にある。
この国を覆う気分の面では、以上3色でしょう。
■6.高齢者世代の所得と資産をまとめれば
日本の世帯は80年代〜90年代の20年を経て、激しい勢いで「個
に分極化」してきた。子と同居する世帯は49%に過ぎず、夫婦のみ
が14%、単独世帯が33%です。
2020年になれば子と同居する世帯数を、単独世帯が上回ることに
なる。日本は一軒の家に夫婦二人か、あるいは世代にかかわらず一人
で住む社会に向かう。個への分極化の社会がある。
65歳以上の高齢者世帯では、平均年収は329万円(内年金203
万円)です。平均以下の人は約70%です。高齢世代の70%はフロ
ーの所得の余裕はない。
高齢世代で有業であるか、資産所得がある人は30%と推計されます。
そのうち、5.6%のトップグループは800万円以上の年収があ
る。
わが国の30歳〜49歳は、300万以下の純金融資産です。89年
と比較すれば純資産を半分以下にまで減らし、金融負債だけは1.5
倍から2倍になった90年代の受難世代が30歳から49歳です。
他方50歳以上の世代は平均では50代1049万円、60代は19
19万円、70歳以上なら2052万円の純金融資産を持つ。バブル
崩壊後の90年代も、この世代は純金融資産を増やしてきた。
マクロ経済風に資金循環の総体で言えば、60歳以上の世代の郵貯・
簡保の資金が住宅金融公庫のローン資金になり、加えて銀行預金は銀
行の住宅ローンを通じて、30歳〜49歳の住宅取得資金になった。
30歳から49歳は住宅価格の下落で資産を失ったが、60歳以上の
世代は、郵貯・簡保・銀行預金を、名目額では増やした形になってい
る。金融資産には差があるが、高齢者世帯の住宅資産の差は、比較的
少ない。
■7.65歳以上の世帯の預金と職業
高齢者においてはフローの所得格差が大きいように、貯蓄残高にも格
差があります。(注)以下の貯蓄残高では単独世帯は含まれていませ
ん。
▼預金金額の階級分布
預金金額 65歳以上の 世代にかかわらない
(万円) 世帯主の世帯(累計) 全世帯(累計)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
300万円未満 9%( 9%) 15%( 16%)
300〜 600 9%( 18%) 15%( 30%)
600〜 900 6%( 24%) 12%( 42%)
900〜1200 9%( 33%) 11%( 53%)
1200〜1500 8%( 41%) 8%( 61%)
1500〜1800 6%( 47%) 6%( 67%)
1800〜2100 7%( 54%) 6%( 73%)
2100〜2400 6%( 60%) 4%( 77%)
2400〜2700 4%( 64%) 4%( 81%)
2700〜3000 5%( 69%) 3%( 84%)
3000万円以上 31%(100%) 16%(100%)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
高齢者世帯では預金額2000万円が、下位50%と上位50%の分
節点になります。約半数の人が2000万円以下であり、残りの半数
が2000万円以上です。
夫婦2人がいる高齢者世帯では、その50%は金融資産リッチである
と見ていいでしょう。負債は少ないので、純金融資産に近い額です。
3000万円以上の預金を持つ世帯は31%です。高齢者の3世帯に
1世帯が該当しますね。このグループの預金額は、世界最高です。
(注)高齢者世帯を含む全世帯(単独世帯は含まない)では、高齢者
より1000万円低い預金額1000万円が、上位と下位の分岐点に
なります。
自分の世帯がどのポジションか、計算したくなりますね(笑)
▼65歳〜69歳の就業
65歳から69歳(男性)の就業状況は以下の通りです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・就業を希望しない 30%
・就業希望 18% (以上の合計48%は無職)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・普通勤務 13%
・短時間勤務 8%
・役員 10%
・自営 16%(以上47%は有業者)
・その他 5%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
65歳から69歳で完全退職は30%です。47%は有業者で、役員
と自営合計が26%、普通勤務が13%、短時間勤務が21%です。
就職を希望しているが就業していない人は18%。
現役、またはそれに近い仕事をしている人は10名のうち4名です。
そして、10名のうち約5名は仕事をしていない。ここまで見てくる
と、全体を概観できます。
(1)65歳を超えても現役に近い仕事を続けている人が40%であ
り、これらの人はおよそ年金の倍である350万円以上の年収がある。
(2)2000万円以上の金融資産を持つ人は40%であり、このグ
ループは、土地・住宅資産もおよそ4000万円以上持つ。
(3)そのうち5%(高齢者世帯の20世帯に1世帯)のグループは、
年収、金融資産、住宅資産で十分なものを保有している。
(3)他方、単独者も含め60%くらいの世帯は年金200万円に依
存した生活であり、そのうち30%のグループは貧困である。
■8.40:30:30
2204万人の高齢者をまとめれば、40:30:30に分かれます。
今までの全体をたどると、以下の映像が浮かびます。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
高齢者世帯は以下の3グループにまとめることができます。
(1)40%(2000年で882万人)・・・3000万円くらい
かそれ以上の金融資産があり、住宅資産は4000万円(実勢は30
00万円)あって、年金以外の収入もありほぼ十分な生活。社会福祉
は必要がない。
このグループの預金の有効化が、日本経済の鍵になる。
(2)30%(661万人)・・・年200万円の年金に収入の60
〜70%を依存する生活ではあるが、1000万円以上の金融資産が
あり、住宅資産が3000万円(実勢は2000万円)
(3)30%(661万人)・・・年金も十分でなく苦しい生活。金
融資産、住宅資産も少ない。社会福祉の対象になる世帯です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
全体の増税策や、医療費を含む社会福祉費用の一律な増額と一律支給
ではなく、給付や援助は以上のような格差を考慮したものであるべき
です。ライフラインになる公共料金も同様でしょう。こうした緻密な
行政が欠落しています。
※在宅介護は65歳の全人口の4.8%(100万人)であり、施設
介護は2.7%の60万人。合計で7.5%の160万人です。10
0人のうち8人くらいですね。政府やマスコミが言うより少ない印象
です。
以上、今回は、とりあげられることが少ない高齢者世帯の経済の基底
を描きました。
▼ある風景
高層ビルに挟まれたマンハッタンの真ん中に、芝生を敷き詰めたブラ
イアント公園があります。メリーゴーラウンドが回り、時折コンサー
トが開かれる野外音楽堂がある。お昼時は近くのビルから、サンドイ
ッチやハンバーガーをもったサラリーマンがベンチでお昼を食べる。
ノートブックパソコンを広げる人も多い。
昨年の晩夏にこの公園にあるレストランへ、シーフードの昼食を食べ
にいったとき、入り口の横にあるベンチに、決意したような表情で座
っていた80歳くらいに見える老婦人に目がすいよせられた。
漆喰のように白く塗った深い皺のある顔に帽子をかぶり、高価そうな
白のスーツ。ボタンは金色に輝いていた。白の網ストッキング、そし
てピンクのスカーフ、真紅の口紅。10本の指には指輪。
1時間以上経ち、食事を終わってレストランの外へ出て見ると老婦人
はさっきの姿勢のまま微動だにしていなかった。正面を凝視していた。
買い物カートが横にあった。
この人の人生で、小説が書けそうだなと思ったのです。こうした、強
い個人主義の孤独は日本人にはない。平均化しかできない行政の真の
狙いは権益拡張にある、余計なおせっかいを排すれば、優しい、ハイ
サービスの高齢社会をつくることができる。江戸時代は長屋の国だっ
た。崩壊したコミュニティ再興が鍵になるでしょうね。
世界一長寿であることは、世界一健康であることでもあります。
see you next week!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【ビジネス知識源 読者アンケート 】
1.テーマと内容は興味がもてるか?
2.理解は進んだか?
3.疑問点は?
4.その他、感想、希望テーマ等、ご自由に
5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。
コピーしてメールにはりつけ、記入の上以下に送信して下さい。
著者へのメールのあて先
yoshida@cool-knowledge.com
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【案内1】
『販売革新』の2月号(2月1日発売)は、「収益ドライバーになった
物流システム」というテーマで、二本の原稿を寄稿しています。
3月も引き続き『販売革新』と『商業界』に寄稿しています。
【案内2】
有料版のメールマガジンで昨年11月に数回にわたりとりあげた『ウ
ォルマートのデータウエアハウス:Data Warehousing, Using Wal-Ma
rt Model』が、翔泳社から2月14日に翻訳・出版されています。
知識作業のデジタル化で、話題になるべき内容があります。価格は25
00円。2月5日と言っていましたが、2月14日に遅れたとのことで
す。済みません。2月14日以降はアマゾンで買えるでしょう。
【案内3】
2月19日の第71回商業界ゼミナール(シェラトングランデ東京Bay)で、
新しい商品管理の講座を担当します。1200名の参加予定だそうです。
19日から21日まで3日間で、50名ほどのコンサルタントの講座
から選べます。参加費は76000円です。
企業講演ではなく、公開セミナーのみは本メールで時折お知らせして
います。
▼WEBで、他の考察を体系的に
http://www.cool-knowledge.com
送ったマガジンを含め、後日、修正と付加等を加え掲載
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます
- 経営戦略考
- 第一線のコンサルタントが毎日、日経新聞の記事を題材として経営戦略の原理原則を解説します。経営者はもちろん、キャリアアップを狙うサラリーマン、OLの方...
- 大前研一通信マンスリ−レポート
- ビジネス情報、政治・経済、教育、社会問題までを網羅した、会員制の総合情報誌「大前研一通信」のご紹介です。英国エコノミスト誌で5人の「現代社会のグル」...
- 週刊アカシックレコード
- 02年W杯サッカー韓国戦の「誤審」を世界で唯一「前日」に誌上予測し、誤審報道を「常識化」した推理作家(金正日の「遺書」で始まる「中朝戦争」後の北朝鮮...
- 宮崎正弘の国際ニュース・早読み
- 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
- 社長、「小さい会社」のままじゃダメなんです!
- シリーズ第3弾「世の中は自分のためにお金を出して実験してくれている・編」がスタート! 実は、“見方”がわかれば、世の中は“ヒント”だらけなのです。こ...
![メルマガスタンド[メルマ!]](/img/common/backnumber_article/melma_logo.gif)


