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1203ビジネス知識源:ERPからサプライチェーンの可視性まで

発行日: 2001/12/3

※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。
<<あなたと、チームの、知識とスキルのブラッシュアップを>>

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     2001年12月3日(Vol.81): 流通システム化論

  <ERPからサプライ・チェーンの可視性まで>

ビジネス知識源:良質な経営・IT・ビジネス知識の提供を目標に
                          (読者数:18,339名)
  Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治
著者へのひとことメール⇒  yoshida@cool-knowledge.com
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こんにちは、吉田繁治です。金曜日朝の<まぐまぐニュース>に本
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 <Vol. 81 ERPからサプライ・チェーンの可視性まで>

1.小売・流通業の問題の整理方法について
2.店舗は産業の合理と生活の非合理の接点に位置する
3.旧共産圏の工場と、<合理化>された店舗
4.流通の付加価値ということ
5.日本の流通小史
6.西欧・米国の大手チェーンと、日本の量販店の違い
7.ERPの遅れという現代化の課題がある

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■1.小売・流通業の問題の整理方法について

12月になって、アジアのとても高価な美人:東京の街にもクリス
マスの電飾が目立ちます。ロックフェラーセンターでは巨大なツリ
ーにスイッチが入った。米国はクリスマス商戦に突入しましたが、
需要減を予想し価格を大幅に下げています。

先週の金曜日は東京で、シンクタンクに勤務するサプライ・チェー
ンの数理的な研究者、及び小売・流通の有力月刊誌の編集者とお会
いし意見交換する機会がありました。

サプライ・チェーンの核は需給をどういう方法で<流通の全体コス
ト最適>に調整するか、需給を決めている要因の定量的なモデル化
と解析です。基礎研究は、重要なものです。サプライ・チェーン研
究も進化しつつある。

午後6時からは流通誌の編集者2名と会い、和室で食事をとりなが
ら4時間、小売・流通問題と流通論を交わしました。流通・小売問
題では、論の前提となる整理が必要だと感じました。

▼問題整理の4つの軸

【日本の流通は近代化と現代化問題の重層的なミックス】
流通・小売では、
(1)流通・小売の<近代化の問題>、
(2)システム化・ネットワーク化を含む<現代化の課題>があり
ます。以上の両方を、整理する必要があります。

【流通業と小売業】
(1)量化を基本に、生産の合理性を追求するのが<流通業部分>、
(2)多くの商品を豊富に並べ「個客」に販売するのが<小売業部
分>と分割すれば理解がしやすくなります。

商品の豊富さの消費文化論を現場技術化するのが、店舗の<商品構
成論・部門構成論、品揃えの豊富さ論>の領域ですね。

商品の価格論・品質論は、<生産と流通の合理化、つまりサプライ
・チェーンのコスト最適>の追求になる。

【まとめ】
まとめれば、
・小売業=<商品調達の流通部分+商品の「小売」部分>
・日本の小売・流通業問題=<近代化軸での合理化問題+現代化軸
でのシステム化問題>

近代化は<規格化・量化と合理化>です。
現代化は<システム化・情報化・ネットワーク化>です。

【問題の4つの整理軸】
こうして、問題は4つの軸上に分類されます。

(1)流通部分の零細性の克服を含む、近代化へ向かった問題
(2)流通部分のシステム化を含む、現代化へ向かった問題
   流通業部分のシステム化は、まとめてサプライチェーン・マ
   ネジメント(SCM)による全体最適と言えるでしょう。
(3)小売部分の零細性の克服を含む近代化問題
(4)小売部分のシステム化(ERPとCRM)を含む現代化問題

小売部分のシステム化は、
(1)まとめればERP(同じデータベースを使い、作業を標準テ
ンプレート化する統合業務システム)、
(2)CRM(RFMIデータを使ったカスタマー・リレーション
シップ・マネジメント)へ向かった課題になる。

以上の4つの軸と方向を記憶しておけば、いつも混乱する小売・流
通業の論が、発展的なものになるように思えます。

現代化では、小売・流通業もシステム化・情報化・ネットワーク化
を抜きにして今後の方向は語れないのです。
次は、店舗の本質的な性格です。ここにも整理すべき事項がある。

■2.店舗は、産業の合理と生活の非合理の接点に位置する

【店舗の本質とは?】
店舗は<産業の合理性>とはなじみにくい<顧客の購買行動や生活
の非合理性>との間の接点に位置します。

生活は非合理の領域に属します。これを研究するのが<生活文化論
、消費文化論、及び商品価値論>です。構造主義人類学が拓いた象
徴論、記号論、文化論、ブランド価値論、差異化論も含まれる。

【工場はコスト合理】
大理石を使った豪華工場はない。工場建設費がコストアップして非
合理だからです。工場は<コスト合理性>で設計します。

【店舗は生活文化と、産業の合理性の接点】
高級店舗では店内をきらびやかに飾り、大理石も使う。コスト的非
合理です。店舗は生活の場ではないのですが、工場のようなコスト
合理性では割り切れない<生活文化、消費文化の領域>が入り込む
からです。しかし一方では小売業は、合理性のコスト計算もする産
業です。

店舗は<産業の合理性>と<生活の非合理性>の接点にある。

【倉庫型店舗は?】
コスト合理性を追求した倉庫型店舗もあります。この倉庫型店舗で
も棚には、普通の生活では必要はないような商品の選択肢までを準
備する。これを<商品選択の豊富さ>と言っている。

商品種類が多いほど店舗は大型化し、稀にしか売れない商品も増え
在庫コスト・在庫リスクは上がります。必要売上も増える。

コスト合理性を追求したように見える倉庫型店舗が、合理性を超え
た(superな)消費文化の領域も含む。豊富と過剰は紙一重です。そ
の紙一重のところに<品揃えの適正な規模>がある。豊富さが過剰
の無駄になって、売れないものが増えれば、店舗は経済合理的に倒
産する。

以上のような店舗における<生活文化と産業の合理性の矛盾>を見
通していたのが、西武のCEO、堤清二です。<非合理の消費文化
論>と<合理の産業論>の接点で、方向性の悩みを訴えていた。作
品の西武百貨店は、矛盾の集大成でした。矛盾は、経済動学の原動
力です。
(『流通変革の透視図』)

■3.旧共産圏の工場と、<合理化>された店舗

東欧の旧共産圏では巨大工場の隣に、商品がパラパラと並んだ小さ
くて粗末な展示場があった。聞けばそれが<店舗>と言う。商品を
満載した自由経済圏の大型豪華店舗とは違います。私には、製造見
本の展示場と見えた。店舗機能の合理性のみで言えば、機能は果す
でしょうが、市場経済的な<豊かさ(または過剰)>を含む店舗で
はない。

【計画生産の意味】
共産経済では、合理的なコストを追求し計画生産をした。ここで言
う計画生産とは、需要に合わせた計画ということではなく<資材と
工場の生産からくる計画化>です。

需要とは無関係に、官僚が決めた商品仕様のものを量産した。商品
規格を絞って減らすことは生産コストのみでは合理的であった。ヒ
トラーが命じた究極の車、フォルクスワーゲン・ビートルも合理性
の設計だった。国民車1車種があれば、用は足りるとした。

生産の合理性と、商品機能と仕様の合理性を突き詰めれば、過剰な
商品の種類は減る。皆が同じ<究極のもの>を使うのが合理的であ
る。人々は、購買では一色になる。共産主義は<無駄な商品差異>
を否定した。服の到達点は人民服だった。自由経済的な店舗は否定
された。

商品機能の合理性の観点では意味のない差異性を製造し売るのは、
合理的ではないとするのが共産主義だった。共産主義は、大衆の貧
困からの脱出を目的としていた。生協的な配給制だった。

【在庫】
共産経済では無駄な在庫という概念はなかった。工場には至るとこ
ろ仕掛品を含め在庫が溜まっていた。売れない無駄な在庫を含めト
ータルに見れば、コスト合理的ではなかった。しかしこの無駄な在
庫もGDP計算には入っていた。生産された商品は価値をもつから
です。

数値計算上は豊かだった。工場長は生産計画に従って作った。理論
上は失業がなく、全員が政府から生産量に比例した給与を受け取っ
て働いていた。生産が付加価値を生むのだから、売れるかどうかは
関係がなかった。商品仕様は少なく豊富な商品から選ぶ選択の自由
はなかった。<商品種類の豊富さは非合理な無駄>だった。

マルクスは言った。富は商品である。国富は在庫である。この思考
では店舗で商品が売れなくても使われなくても同じ富です。マルク
スの当時、商品はきらきらと輝き希少だった。食べるのがやっとだ
った。

【販売ではなく支給】
店舗では、商品仕様の種類が少ないから商品は少ない。自国民向け
に売る商品は主として、部分的な製造不良がある<B級品>でした。

<A級品>はソ連に出荷しソ連の原油や兵器と交換していた。
商品仕様、生産量、価格はソ連の官僚が割り当てた。
『資本論』は資本主義社会の分析です。共産主義経済の分析ではな
い。その結果、共産主義経済はエリート官僚による計画化経済にな
った。

共産主義的生産の合理では、物理的な付加価値を生まない市場経済
の流通・小売りの機能を否定した。価格も一本だった。売れなくと
も生産の合理から計算された価格はいつも同じだった。

至るところで売れない商品在庫が溜まった。裏経済では、売れるも
のは不足し価格は極端に上がっていた。そして、共産主義は、無駄
な在庫を抱えて全体が倒産してしまった。(今それが中国の国有企
業に見られますね。『やがて中国の崩壊がはじまる』(ゴードン・
チャン:91年11月))

【スロベニアで】
大卒が85%の高学歴の国スロベニアで会った工場長やマネジャー
は、悲しそうな眼をしていた。店舗の片隅にあった事務室に行くと
若い女性が、マイクロソフト・エクセルを使って経理事務をしてい
た。

「あぁ、エクセルですね。私もこれを使っていますよ」と声を掛け
たが、彼女は顔をあげず作業を続けた。10代に見える化粧っ毛の
ない白い頬が、パッと薔薇色に染まった。その薔薇色が答えだった。

日本人から声を掛けられたのは、初めてかもしれない。ナイーブさ
があった。工場が1万坪もあるのに付属の店舗は100坪だった。
流通・小売は付加価値を生まない無駄の領域だった。

(注)今は木材の国スロベニアの、自由圏のバイヤー向けの家具の
ショームームには豪華なものがあります。自国民のためのものでは
ない。50万円くらいの豪華商品も並ぶ広大なショールームに自国
の客はゼロです。スロベニア↓
http://www.slovenia-tourism.si/

■3.流通の付加価値ということ

ソ連が崩壊し、東欧の商品を買う力がなくなった後は、ドイツの卸
売業が購買する。彼らはコストの安い東欧で作り、ドイツ・西欧・
米国で売る。これが西欧圏の価格体系を変えている。東欧はマルク
経済圏になっている。2002年正月からは、ユーローに統一する。

工場出荷価格を100とすれば、最終小売価格は300くらいにな
る。それでも従来価格の半分です。スロベニアの工場のGDPは1
00の部分であり、ドイツの卸売業(=流通業)・小売業のGDP
部分が200です。流通の付加価値の部分が2倍大きい。付加価値
は、逆に見ればコストと利益です。

共産主義は、製造の付加価値しか理解しなかった。商品ができ上が
ればそれを価値とした。流通・小売では商品の物理的な加工をしな
い。唯物論では、モノの形が変わらない流通の付加価値への、論の
展開が困難だった。流通の概念はなかった。いたるところ在庫の過
剰と、不足があった。これが共産主義的な合理の限界だった。

市場経済では、商品はマーケット(店舗)で売れて初めて売価とい
う形で価値が実現する。製造で付加価値をつけても、売れなければ
市場価値はゼロに近づく。共産主義にはなかった倒産と失業がある。

店舗の商品価格は、目安に過ぎない。売れる価格、顧客が買う価格
が本当の価格です。製造、流通、及び店舗のコストを積み上げたコ
ストプラスは<計算の目安>です。

▼日本的流通の近代化問題

日本的流通や商取引の問題、返品問題、不透明な取引価格やリベー
トは<近代化問題>と分類できるプレ・モダンの領域のものです。

なぜ近代化領域があるか。メーカーと店舗の取引量、つまり流通の
パイプラインが西欧・米国に比べ一段細いからです。西欧・米国の
商品流通のベースが量流であるの対し、日本では店舗の零細性を原
因として、個々の流通パイプラインが細い。

メーカー販社と卸売業(ベンダー)が網の目のような細い流通網を
持つ。原因は平均的店舗が零細だからです。商店街の店舗は、量の
発注ができない。従って流通部分で、在庫リスクを含めたコストが
上がる。

【日本的流通は固有文化論ではない】
小売のチェーン化(根本は店舗の標準化)が米国並に進めば、日本
的な流通問題は消えます。年間100万円の取引では、ベンダーと
店舗の双方が、コスト合理性を追求できない。1店舗では量販・量
の発注ができない。在庫リスク負担もできない。上流が在庫リスク
を負担し、下流に高く売るのが合理的になる。

1ベンダーとチェーン店舗の年間取引量が10億円にもなれば、ベ
ンダーと店舗双方が、取引価格の合理性を計算して追求する。5%
のコストダウンが5千万円にもなる。ゆるがせにできない。

以上のように日本的流通の問題は、日本のビジネス文化に固有のも
のではない。店舗のチェーン化が進めば、コスト合理化に向かう。
固有のものでなければ、違いは発展段階ということになる。

では、日本の小売・流通はどのポジション、発展段階にあるか?

▼大手小売上位10社のシェアの国際比較

日・米・欧の小売上位10社までの市場占拠率を示します。

 日大手10社(ダイエー、ジャスコ・IY堂・・・   8.8%
 米大手10社(ウォル・マート、クローガー・・・) 16%
 英大手10社(テスコ、セインズベリー・・・)   38%
 仏大手10社(カルフール、アンテルマルシェ・・・)42%
 独大手10社(メトロ、レーヴェ・・・)      47%

(1)米国では大手小売10社の合計シェアが日本大手小売の2倍、
(2)西欧では4倍〜5倍です。

カリフォルニア州の面積の日本で、とても小さな規模の小売が多い。
これが他の<消費>先進国とは際立った特徴です。

日本型の官僚主導経済では、実は、流通・小売を生産より低いポジ
ションに置いた。生産し輸出すれば外貨を稼ぐが、国内流通では外
貨が稼げない。大蔵省は生産には大資本をまわした。流通・小売り
の規模化は無視し、大規模小売店舗法で店舗の進化やチェーン化を
阻害した。官僚の行動は、ソ連も日本も似る。

豊かな国の生活貧困。日本ではせきとめた進化、つまり流通小売り
の近代化・規模化と、現代化問題が一度に現れ、問題が重層的にな
った。

<2001年4月9日号:新しい商品価値のフォーミュラ>でも明らかに
したことです。↓
http://www.cool-knowledge.com

■4.日本の流通小史

70年代まで<流通革命>の旗手と言われ、兆円の売上規模に達し
た大手量販は総崩れの様相を呈している。売上規模だけでは、問題
を解決しなかった。なぜか?

各国の小売業トップ10とは言っても、その内容に違いがある。年
商順に並べれば、各国で同じ性格のトップ店舗が揃うということで
はないのです。

▼日本の大手量販のポジション

【増加顧客層は?】
70年代までの量販は、百貨店と商店街店舗の売上を食ってきた。
一人当たり粗利益での生産性が高かった。消費の増加顧客は核家族
をつくった団塊シニア(現在の40台後半以上の世代)だった。

団塊シニアは兄弟が多く、田園から都会へ出て団地に住み、工場や
店舗の給与生活者になった。彼らは商店街やママパパストア、つま
りプレ・モダン(前近代)店舗の顧客ではなかった。

給与は年功で上がって消費力がついた。量販店の商品は、ファミリ
ー需要だった。ニューファミリー・核家族と言われた団塊シニアは、
中庸なファミリー需要商品を主に買った。

百貨店価格に対抗し、約半分のプライス・ラインで売る商品を集め
た量販は全盛期だった。

▼一方団塊ジュニアは

80年代以降、団塊ジュニア(現在の20台後半から30代前半)
が消費市場に登場した。団塊ジュニアは<貧からの脱出>と、<フ
ァミリー需要>をベースにする量販店の顧客ではなかった。

彼らは80年代から発展した新興の専門店チェーンの顧客だった。
ダイエーの中内氏は90年代末に言った。量販に(品種は)なんで
もある。しかし買いたいもの(品目)がない。

需要はパーソナル化することで、中庸商品を離れつつあった。中庸
商品では飽き足りなかった。団塊ジュニアは、戦後貧困の時代(6
0年代まで)を知らなかった。量販との差異化を求めていた。

兄弟が少ない非貧困世代、つまり団塊ジュニアは<尖ったところが
ある商品>を求めた。米国の中庸の食:マクドナルドは、和食の食
文化の中では尖った商品だった。ユニクロも新鮮で尖っていた。

▼パーソナル需要化:重要

団塊ジュニアの需要はパーソナル商品だった。パーソナル需要の商
品では、商品は中庸から個性化や差異化へ向かう。

品種の幅が広い量販店は、中庸商品を品揃えのコアにしていた。
専門店は限定品種で多くの品目を集め、団塊ジュニアの需要を捉え
た。遅れて団塊シニアもそれに倣った。

テレビも、一家に1台のファミリー需要ではなく、個室のものだっ
た。ウォークマンは家族では共有されない。パーソナル需要化で多
くの尖った品目が生まれた。ソニーが伸びた。歌も個人的なものに
なった。家族は同じTV番組を見なくなった。若い世代は新聞も読
まない。

食も衣も住も家電も置く量販店では、パーソナル需要品目を扱いき
れなかった。店舗のブランドイメージも、団塊ジュニアのものでは
なかった。団塊シニア世代の店舗だった。

【パーソナル需要の意味】
ファミリー需要商品というとき、家族が共有するということだけで
はない。大切なことは、父母が店舗と商品の選定をするということ
です。

誰が、店舗と購買の品目選定を誰が行うかが重要な要素になる。ジ
ャスコやヨーカ堂の商品は、子供や夫のものであっても一般に母親
が選ぶ。そうなると、ジャスコはファミリー需要商品になる。商品
購買者の嗜好が、結果として店頭品揃えを作る。

一方、ユニクロやコンビニエンス・ストアでは、その商品を使う人
本人が店舗と商品を選ぶ。これがパーソナル需要商品です。これで
品目の内容が変わる。

家具では、婚礼タンスは両親が選ぶファミリー需要商品だった。老
舗家具店ではタンス売上が40%を占め、粗利益率も45%はあっ
た。つまり利益のコアだった。

80年代になると、結婚する本人が店舗と家具を選ぶようになった。
タンス需要は激減した。ベッドやダイニング、ホームファニシン
グ商品に分解した。しかし婚礼需要がなくなったのではない。

多くの老舗家具店はファミリー需要からパーソナル需要への商品分
解に対応できずつぶれた。今、家具の店舗数は90年の半分になっ
ている。パーソナル需要になると、店舗と商品に対する価値の方向
がファミリー需要とは変わる。これが、量販店不振の根底にある。
米国のシアーズの不振と同根です。

店舗現場の商品選択での顧客行動を見なければならない。商品比較
のみではなく、バイヤーは顧客の購買決定の現場を見ているか。

【専門店チェーン】
品種を限定したことで、専門店チェーンは<品目の深さと幅>を追
求した。

大量出店でチェーン化の規模が大きくなってくると、卸売りを通じ
た取引ではなく、コスト合理性を求めメーカー直、工場直の取引に
向かった。一方で過去の百貨店・量販店・商店街は、卸売業に依存
する店舗だった。

■3.90年代中期からの外部変化

▼94年からの元安

国内はバブル崩壊だったが、アジアでは変化が起こっていた。90
年代初頭は、1元=30円だった。現在は1元=15円です。中国
は80年代から部分的に経済を自由化し、外資と技術導入を図って
工場を作ってきた。95年は、自由化も15年目だった。

【80年代】
80年代までは、台湾・韓国・香港・タイ・シンガポール等の東南
アジアからの輸入の時代だった。この時期は、輸入は多くが商社経
由だった。在庫リスクは商社が負担し、その結果、価格は中庸なも
のだった。

在庫リスクを商社、輸入卸売業が負担するときは、量販店の仕入れ
価格も専門店チェーンの仕入れ価格も大差はなくなる。

【経験】
10年の東南アジア輸入を経験することで、専門店チェーンは次第
に、海外工場からの<コンテナ直輸入マーチャンダイジングの技術
と方法>を身につけてきた。

▼サプライチェーン・ビジビリティ:重要

更に重要なことは、海外工場からの調達だけではなく、店頭品揃え
の状況、最新売上状況、倉庫在庫(DC)の状況、ならびにコンテ
ナ積送品の状態です。これが、品目別に見えていなければ、最適量
の発注はできない。サプライ・チェーンのビジビリティ(Visibili
ty:リアルタイム可視性)と言います。

PC画面に、店頭品揃えの状況、最新売上状況、倉庫在庫(DC)
の状況、ならびにコンテナ積送品の状態がすべて、一目で見える。

一方で、国内ベンダーに依存してきた百貨店・量販は、輸入でも商
社依存だった。商社依存では小売バイヤーは商社在庫までしか見え
ない。

その先の工場の生産計画、倉庫、積送状態は見えない。これではサ
プライ・チェーンの全体コスト最適の調達はできないのです。

▼スター・プレーヤー

彗星のようにスター・プレヤーが現れた。二分の1の元安になった
94年以降のユニクロです。ユニクロは400品目に限定し中国の
工場から直接調達した。量販店価格の2分の1、またはそれ以下の
価格で売った。安かろう悪かろうではなかった。品質はしっかりし
ていた。小売に、激震が走った。

混迷していた日本の小売・流通のビジネス・モデルになった。
しかしながら、多くの小売は転換ができない。過去の環境に適合し
た店舗、組織、人員構成を引きずる。ユニクロというビジネス・モ
デルができるとともに、むしろ経営の現場は混迷を深めた。

▼量販店のコスト構造

【低価格への恐怖】
量販店は、今まで売ってきた商品との価格バランスから、価格への
取り組みが及び腰だった。4800円で売ってきたものを、198
0円では売るのは容易ではない。売上が半分になるのではないかと
の恐怖が先に立つ。ユニクロ商品のヒットを見て、一部の価格では
追随した。それは商品の主領域ではなかった。

【コストダウン】
店舗コスト構造のすべての項目をコストダウンし、そのために作業
体系を変えなければ、低価格への取り組みはできない。バイヤー世
代の問題もある。幹部が50代を超えると、冒険やリスクは避ける。
環境変化を否定し過去とのつながりを求める。店舗が20年も経
てば、コスト構造は固定される。しかし店舗を建て替えること、立
地を変えることは難しい。

【既存店】
多くの量販店が、土地コスト、店舗コストが高かった80年代のコ
スト構造、問屋調達の商品部体制、複雑な店舗作業で固定されてい
た。量販グループは望まない価格の保守勢力になって行った。

60年代にはあったどこよりも安く売るといウォルマート的なミッ
ションは消えていた。ちょうど『安売り礼賛に異議あり』(筆名:
安土敏:1995年)が出た。中央公論に書いたものが好評だった
ので書き下ろした。著者はサミット・ストアの社長で流通イデオロ
ーグ、荒井伸也氏だった。

日本は店舗コスト・物流コスト・人件費のすべてが世界最高だから、
原価の安い商品を入れても、一定品質を維持すれば高くなるとい
う価格論だった。

30年ほど前には、ダイエー最盛期の中内氏が『価格破壊』を書い
ていた。30年は1世代です。量販店は性格が変質していた。

荒井氏が『安売り礼賛に異議あり』を書いた直後、皮肉にも、商品
価格水準の本格的低下が始まった。彼は、中国の元安・品質の向上
・直接調達・輸入物流のシステム化・土地と店舗コストの低下を見
逃していた。

【若い企業】
ユニクロでは柳井氏が90年代初期までの幹部を入れ替えし、中心
は30代、店長は20代になった。デザイナーも若かった。ウォル
マートのような息吹があった。われわれはなんでもできる。Can Do
 Attitudeで旋風が起こった。

専門店価格、量販価格に向かって、攻撃的な価格を作った。
売上高経常利益率は、前代未聞の25%だった。

■5.西欧・米国の大手チェーンと、日本の量販店の違い

西欧・米国の大手チェーンは、国内であれメーカーからの直接調達
部分が多い。一方、日本の百貨店・量販・多くの専門店では、卸売
りをかませる間接調達部分が多い。

東南アジア、及びそのすべてを凌駕する中国からの調達では、<作
る前の生産計画>まで踏み込む直接調達をすれば、価格は劇的なも
のになる。

▼ディスカウント・ストア

90年代の米国で、流通の主役に浮上した3大ディスカウント・ス
トア(ウォルマート、Kマート、ターゲット)は工場への直接発注
を行っていた。米国内であれ海外であれ、工場からの直接調達の方
法は変わらない。発注から入荷までのリードタイムが輸送期間分長
くなるだけです。店舗数も1000店から3000店での、量の調
達競争をやっている。ディスカウント・ストアは世界から最適価格
の調達をした。

西欧・米国型のディスカウント・ストア、専門店チェーンは商品調
達や物流はシステム化された流通業だった。日本はチェーンストア
とは言っていたが、量販はまだ流通業ではなかった。近代化・規模
化を残していた。それでも商店街には勝っていた。競争レベルが低
かった。

▼日本の小売業

間接調達を行ってきた百貨店、量販店、そして多くの専門店は、一
品目あたりの量の調達ができなかった。総売上こそ兆円レベルには
なったが、品種が多く1品目あたりの量は少なくなる。これでは、
工場への量の発注はできない。試みたが、大量に売れ残った。

売上では兆円規模を作った。1品目あたりの販売量は、少なかった。

日本の百貨店、量販店、多くの専門店は<棚割り論>、<商品構成
論>の小売業ではあっても、流通業ではなかった。店舗作業を劇的
に減らす倉庫管理システム(WMS)はなかった。何を(品目)を
どう並べるかが、店舗プランだった。作業の簡素化という言葉だけ
はあった。

実際は店舗の作業総人時を下げるより、安価なパートの雇用で凌い
でいた。多すぎる品種の少量在庫で店舗の必要作業は多く、実際は
欠品と過剰在庫が多発していた。パート化は時間賃金を低下させる
ことで、表面上の生産性をあげたように見えるため、現場作業問題
は隠れた。

▼90年代中期以降の新興専門店チェーン

専門店チェーンは品種を限定し、地価・建築費が安くなった90年
代に大量出店した。新たなビジネス・モデルは量販ではなくユニク
ロだった。中国の工場で、製品仕様指定のSPA的な商品開発をや
った。

国内の工場では1品目800万着の量産によるコストダウンはでき
なかった。細かく仕様を変える多品目少量の高付加価値生産に向か
っていた。小売りにしてみれば95年ころから調達の適地がすでに
変わっていた。多くは、調達の適地の変更、物流の最適システムが
できず、少数の勝ち組みと大多数の負け組みに分かれた。

専門店はユニクロに倣った。店舗数が少ない時は集荷調達を、多く
なれば、仕様書発注をやった。競争価格が下がった。コストの高い
店舗オペレーションをやってきたチェーンは、兆円の売上規模にも
かかわらず、凋落していった。品質が同じで価格が三分の1にもな
ると、品揃え論では対抗ができない。価格はインパクトが高い。次
は、生産性の現代化を見ます。

■6.ERPの遅れという課題がある

▼ERP(Enterprise Resource Planning)

ERP(統合業務システム)は、全社業務を<標準テンプレート>
にする。標準テンプレートは<作業標準>と言い換えてもいい。更
に、部門間で<データベースを共有化>しリアルタイム更新を行う。

日本に↓SAP(ドイツ)のERPパーケージが紹介されたのは
90年代後期だった。
http://www.sap.co.jp

業務の標準化手法は紙のマニュアルであり、訓練だった。
標準テンプレートでは、PC画面が指定する入出力作業を行えば、
個々の業務が、作業標準になる。標準テンプレートは、ベスト・プ
ラクティスという、生産性比較のベンチマークの概念を取り入れた
ものだった。

▼〔エージェント〕→〔ワークフロー〕→〔標準テンプレート〕

標準テンプレートの上には<ワークフロー>と<エージェント>と
いうシステム概念がある。

ワークフローでは、ある一塊の業務(遂行したい目的=オブジェク
ト)を画面で指定すれば、標準手順と必要データをテンプレート化
(選択化)して示す。ユーザーは、画面指示に従って入出力の操作
と選択をすれば、業務が標準的に遂行できる。経理作業も、商品部
作業、売り場作業も同じである。

類似の概念として、より大きな業務の塊を標準作業にする<エージ
ェント>がある。ある品目の在庫を減らしたいとする。

<在庫適正化エージェント>を立ち上げると、エージェント機能が、
必要な在庫データ・売上データ・発注済未入荷データ・生産計画
データ・数理統計的売上データ等を集めて示す。それを見て判断し、
ワークフローが示す在庫を減らす作業を、手順に従って行う。

まとめれば、
〔エージェント〕→〔ワークフロー〕→〔標準テンプレート〕を使
えば主要業務が作業標準で遂行できる。これが真の生産性上昇。

古いシステムは、細切れなメニューを選択し、作業を遂行していた。
熟練とシステム内部への知識が必要で、使いにくかった。人が変
われば方法が変った。作業標準は確立せず、マニュアルは複雑化し
た。

標準テンプレートで店舗作業、商品部作業、倉庫作業が劇的に変わ
る。人間は判断に集中できる。紙マニュアルは必要がなく、画面上
でクリックすれば表示される助言集(Tip)で済むことになった。

▼サプライチェーン・ビジビリティ

(1)更に、工場〜中間流通(WMS:Warehouse Management Sys
tem)〜店舗統合管理システムの、各ERPを結べば、
(2)デスクの画面上で、工場、倉庫、積送中、および店舗のすべ
ての商品及び在庫・売上がリアルタイムで一覧できる。

サプライ・チェーンの可視性(ビジビリティ)と言っている。
この可視性は、どんなにわくわくする新世界をもたらすか。

【中国の工場と東京の店舗を結ぶ】
(1)無線LANのモバイル端末、またはインターネット上のVP
N(Virtual Private Network)を使って、
(2)中国の工場の商談現場で、東京の店舗のリアルタイム売上、
千葉の倉庫の在庫のリアルタイム在庫(RTI)、及び数理的な売
上予測まで確認できることになる。

【単品データベース】
商談の結果の発注データ、発注予約データを入力すれば、店舗はそ
のデータが確認できる。商品のアイテム(品目)コードはJANコ
ードで統一し、データベースではシリアルナンバー(=単品ナンバ
ー)がレコードのキーコードでなければならない。これが単品デー
タベースです。単品概念も混乱していますね。

正当なシステムとネットワークは、可能性を拓く。
わが国の流通業も小売業はシステム化では西欧・米国の大手に比べ
およそ10年の遅れがあるように思えます。

【人間を活かす】
ERP、ワークフロー、サプライ・チェーンの可視性で、業務問題、
在庫問題が解決するわけではない。それらは基盤システムです。
基盤システムが、個人の業務を支援する。生産性は。一段レベルの
違うものになります。

日本のチェーンストアには、多くの人の理想に燃えた活動で<近代
化論、品揃え論>はあった。しかしシステム基盤にからむ流通・小
売業の<現代化論>では遅れをとった。

流通のシステム化論と、新しいシステム化を加えれば、日本の流通
・小売業もイノベーションを果す。わが国の流通・小売業は業務の
現代化の課題を抱えています。

昨日、NYのビジネス・スクール1年生の家人からメールが来た。
気恥ずかしい内容です。一部を載せます。

お元気ですか?最近よくcool-knowledgeを読んでいます。頭の中は
きっと手塚治虫のようなのね。知識があって、人間味溢れる文章に
することができるのね。

嬉しかった。コミュニケーションが取れたような気がした。<人間
味>という言葉です。機械の極であるインターネットとPCが実際
に傍にいるときより心を伝える。徹底したシステム化・ネットワー
ク化は、人間を消すのではない。人間を活かす。人間は可能性を持
つ。

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1.テーマと内容は興味が持てるか?
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