▼ハットする切り口と考察で目からウロコが落ちると評判のメールマガジン。経営戦略情報・経済情報・IT情報▼欧米の新情報を含む高度な内容を、基礎から分かりやすく分解して提供 【分野】経営戦略・小売/流通・IT・ロジスティクス サプライチェーンマネジメント
- 最新号:2008-10-14
- 発行周期:週刊
- 読んでる人:1784人
- 創刊日:2000-10-23
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- コメント数 : 6
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1126ビジネス知識源:グローバリズムと価値観の対立
発行日: 2001/11/26※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。
<<あなたと、チームの、知識とスキルのブラッシュアップを>>
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2001年11月26日(Vol.80): 経営分野
<グローバリズムと価値観の対立>
ビジネス知識源:良質な経営・IT・ビジネス知識の提供を目標に
(読者数:16,666名)
Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治
著者へのひとことメール⇒ yoshida@cool-knowledge.com
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こんにちは、吉田繁治です。マスコミは、アフガン戦争、米国と日
本の不況、失業の増加を報じています。CNNを筆頭に米国マスコ
ミには、大本営発表を感じます。
大本営発表は、政府が流す意図を持った情報をそのまま流すことで
す。ジャーナリズム機能の、停止です。
マスコミが一様の情報を流すとき、基底で、マスコミ情報とは異な
る動きが起こっている。米国の事実上の情報統制は、今回はきつい。
ブッシュ政権に、余裕がない証拠ですね。米国は、深く追い詰め
られているのではないか・・・
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<Vol.80 グローバリズムと価値観の対立>
【目次】
1.日本人が判断停止する領域
2.一足速かった金融のグローバリズムの結果は?
3.商品流通のグローバリズムでの変化
4.90年の円高以降
5.米国と先進諸国の国益:アフガン戦争から
6.価値間の相克という根本問題
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■1.日本人が判断停止する領域
本稿では、産業のグローバリズムと、その対極である文明主義等に
よる価値観の対立を解きます。
理由は以下の3項。
(1)日本人が、中国との関係で直面する問題であること
(2)直近の、アフガン戦争の帰結と、湾岸への展開を予測するた
めに必要なこと
(3)21世紀の経済世界を想定するのに、不可欠であること
▼日本人にはいつも<判断停止>の領域がある
日本人は、大きな問題や体制の選択では<判断を停止>する。
<長いものには巻かれろ>の態度になる。
【大問題への無関心】
実は講演でも、
・実務的な、具体問題には関心を示す人が多いが、
・経営と実務の枠にあたる大問題や、大きな方向、枠組みの選択で
は、トップですら、自分たちは無関係として関心を示さない人が多
い。
<町人国家または職人国家=日本>の特徴であるとも言えます。
【2つの過去】
第一は、
(1)大問題に対する選択は、政府、大蔵、通産が行ってきたとい
うクローニーキャピタリズムの<官僚主導国家>であったこと。
民は、選択に関与しなかった。関与していないから、最後は何でも
官僚や政治家の責任としてあげつらうことにもなる。責任を問われ
るのが嫌いな官僚は、民に決定のプロセスを隠す。
官僚は、選択の理由と、政策決定のプロセスでは、情報公開と議論
を避け、<知らしめるべからず>との態度を取っていた。
大問題への選択は<密室外交、多数派工作のための派閥領主の料亭
政治、そして国会は国対政治の3点セット>で決まった。ワイドシ
ョー内閣は、3点セットに穴を開けようとする最初の試みです。
(2)更に言えば、大蔵や通産、政治家すら、大問題で必要になる
選択は行っていなかった。
・80年代までは、米国の冷戦戦略の追認であり、
・冷戦後の90年代は、米国発の経済構造改革への要請に沿った<
国際対応>だった。
日本人にとって、お上のお上が、米国政府でした。
国家体制、機構、企業経営にかかわる大問題で、方向を論じるリー
ダシップのプロセスはカットされていた。
方向(理念・ミッション)を問わず、方法を工夫し、決まったこと
を忠実にやったのが日本人。その意味で、日本人全員が官僚だった。
官僚には、方向を決める権限はない。決まったことの、実行の手
順と方法をQC風に工夫するだけです。
▼関心の領域
こうした中で日本人が関心を示したのは、日本的な経営と、欧米的
な経営の違い、つまり行動文化と価値観の違いだった。これに関し
て、膨大な書があり、議論があった。いわゆる<日本人論>です。
この比較文化論のなかで、
・結果がいい時期は、日本人と日本的な経営が優秀だとし、
・結果が悪い時期は、欧米人と欧米流経営が正しいとする。
80年代までは、アングロサクソン流資本主義を超えた日本的経営
(=3点セットは長期投資、共同体としての終身雇用制、成果配分
での年功序列)が称揚された。欧米の時代は終わり、日本の時代に
なるとしていた。そこに日本人の自尊とアイデンティティがあった。
90年代は、土地価格の崩落とともに、一転して欧米流経営(=3
点セットは、短期利益主義、機能組織の雇用契約、個人利益を計算
した成果主義)への転換が、正当化されている。
10年で一転するこの国の人々の軸足は、どこにあるのかと嘆息し
ます。
▼思想的な周辺国
<日本の国民にとって、国がどういう状況になっているのかを正確
に説明できるエリートが存在しない。・・・中身のある実質的な改
革に関する議論がまったくなされていない。・・・政治に対して大
衆は無関心であり、インテリたちは自己満足に浸り、非常に安閑と
した姿勢でいます>と言うのは、カレル・ヴァン・ウォルフレン・
アムステルダム大学教授です。オランダは文化の厚い国。(01.11.
25.日経新聞 経済論壇から 奥村洋彦の引用による)
ウォルフレンが言うのは<思想的、文化的、学問的周辺国>の特徴
です。右へも左へも、軸がなく、生活の知恵や、実利で揺れる。
今後も、こんな態度でいいのか。
冷戦時代は、米国の国際戦略の枠組みの中で、米国の後ろに隠れ、
黙って稼いだ。それが、コストも人間的なエネルギーも要らない方
法だった。体制順応という町人の知恵が、見事に生きた。
21世紀は、世界の枠組みで言えば、米国がひとつの国家(one of
nations)になるプロセスです。西欧はそれを直感し、2002年
1月から、ユーローの通貨統一圏を作り、経済の地域連合を試みる。
米国の世界戦略が有効性を失っても、米国自身は、豊かな国家とし
て生きていける。米国に行くと、北アメリカ大陸の国土がもたらす、
想像を超える豊かさを感じます。未開の部分がいくらでもある。
人は、世界から集まる。
約50年、米国の世界戦略の下にあった日本はどうか?
アジア諸国との自立した関係を結ぶことができるのか?
<アジア経済圏>を、中国との連携で作れるのか?
21世紀の焦点はここでしょう。町人の知恵で、渡れるかどうか・
・・
冷戦下では、<日本−米国の世界戦略−アジアを含む世界>だった。
だから、日本人にとっての世界は、米国だったのです。
21世紀は、米国の世界戦略という媒介項が消え<日本−アジアを
含む世界諸国>の関係になる。外交と契約には、自立が必要です。
これが、米国も巨大ではあるがひとつの国家になるということの意
味です。日本は自立しなければならない。これがグローバリズムと
いうことの意味です。近隣国中国と、米国の戦略に依存しない<日
本−中国>の関係を築けるかどうか。
現在の中国との関係は、<日本−米国の対中国戦略−中国>です。
だから、中国の外務大臣に<やめなさい>と叱責され、もごもご言
って慌てる。この国に対し軍事大国(武)からの恫喝は、効き目が
ある。
全員の意識が、町人だからです。世界は、それを知っています。
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■2.一足速かった金融のグローバリズムの結果は?
▼グローバリズム
グローバリズムは、市場経済のイデオロギーによる地球一体化です。
経済単位とされてきた近代国家の枠を、現代企業が超える活動で
す。
【金融】
最初に情報ネットワークができて、90年代金融がグローバルネッ
トになった。ネットワークでは、質量ゼロのビット情報でやり取さ
れる。
グローバルネットの金融になったとき、日本の銀行・保険は、比較
生産性の低さを露呈した。
【生産性が低かったことの結果現象】
日本の銀行は、今、M&Aと統合のプロセスにある。
トレンドでは、30%の人員が、金融機関からカットされる。
今後10年での帰結点は、50%を超える人員カットでしょう。
最初は証券で起こった。目下は銀行であり、保険です。証券、銀行、
保険は、世界で、商品やサービスが共通ですから、グローバルネ
ット金融での勝負が、とても早い。
金融で最初に起こった<グローバル化>が、次は商品流通で起こり、
土木・建設・農業へ波及する。その過程が、日本の21世紀経済
になる。奔流は誰もとどめることはできない。とどめようとする動
きが、ユーローのような地域ブロック経済と、地域主義、文明主義
ですが、最後はそれを飲み込むのです。
▼国内閉鎖金融の時代から、グローバルなオープン化へ
【生産性が低いところに合わせていた】
80年代までは横並び主義をとり、大蔵省を司令塔とし、競争を回
避する護送船団で運営していた。大蔵省は、生産性とコストの基準
を、護送船団の、最後尾の中小金融機関に合わせた。
【トップグループの利益】
都銀を含むトップグループは、生産性が低いままに、規模で利益を
出していた。銀行経営者には、自分たちは強いとの錯覚があった。
実は、大蔵省が決めた順列に基づく偽装の強さだった。偽装である
ことは、グローバルネット金融化で、ナチュラルに明らかになった。
【流通も同じ】
流通でも同じです。流通改革の旗手とされた量販店が、生産性の面
で戦ったのは、商店街の零細店、ママ・パパストアだった。量販店
は、国内零細店に、生産性で勝った。商店街の店主より、大手量販
のサラリーマン幹部の年収が、多くなった。
しかしながら、日本型量販店の生産性は、欧州・米国の大規模チェ
ーンストアには劣る。商品流通が、次第にグローバル化した時、量
販店は、利益の低さを露呈し、ナチュラルに偽装が明らかになって、
企業として弱者になった。(だから中小のチャンスです)
【本質】
銀行や流通の統廃合が起こる原因は、不良債権での自己資本不足、
債務超過に見えます。しかし本質は、日本の銀行・保険・証券(そ
して流通)の、一人当たり生産性(=一人当たり業務純益)の低さ
です。
世界最大の本源的な個人マネー1400兆円を借りて投資しながら、
銀行も企業も、付加価値をつけた運用利益を産めない。これが、
問題の本質です。資金が有効に生きない国に陥っている。デフレは
問題ではない。生産性です。
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■3.商品流通のグローバリズムでの変化
商品は、通信回線で瞬間移動させることはできません。
商品はマネーと違い、質量と物理的な形を持つ。
▼1980年代までは、日本は世界の価格破壊勢力だった
日本は、米国、西欧、アジアに向かって商品を輸出した。
価格破壊を行ったのは、80年代までは日本だったのです。
国内流通では、完成品の日用商品が、大量に流れ込むことはなかっ
た。
輸入品は高級なブランドもので、国内購買の5%にも達しなかった。
国内メーカーの販社と、高度に発達した卸売業が、店舗との間に<
キメの細かい、しかしコストが高い日本的商取引>を行っていた。
▼国内取引、国内流通は価格維持が主流
日本的商取引とは、間単に言えば、
(1)手形を使った店舗への商品と資金供与を含む取引、
(2)返品と商品交換を含む、買取をしない取引、
(3)オープンではないリベート体系による取引です。
【国内取引の利用】
最初に発達したのは、百貨店でした。百貨店は、メーカー販社と卸
売業、または専門店が、人が集まる都心の場所を借りて商売を行う
不動産業でした。
日本型百貨店の不動産の機能を、洗練させ、積極的に事業規定すれ
ば、ショッピングセンター開発・運営業になる。
【事業規定の誤り】
ところが百貨店は、自らの事業が物品集荷・販売業であるか、ショ
ッピングセンター開発・運営業であるかの本質規定を問うことがな
かったため、発展を止めた。
単に都市生活の、限定客層にフォーカスする衰退業種になった。
増加する顧客層を、対象から漏らしたのです。
【都市で増加した階層】
農村から都市へ流れ込んだ、膨大な給与生活者に商品供給をしたの
が、60年代からの、米国チェーンストアに学んだ量販店とスーパ
ーです。
量販企業は、百貨店の主力価格帯より50%低い部分で、<ポピュ
ラープライス>を、大規模に作ろうと試みた。
【3つの戦略軸】
量販企業の経営には、以下の3つの戦略軸があった。
(1)店舗立地と、店舗建設コストでのコストダウン(設備費)
(2)住宅ローンと教育費の支払いが目的で働く、主婦パートの大
量雇用によるコストダウン(労働コスト)
(3)出店の速度によって、年商規模を拡大し、メーカー販社と問
屋のリベートを差別的に獲得すること(差益)
いずれも、メーカー販社、および問屋の物流網を利用する戦略です。
量販店は、自前の流通網、物流網を作ることはなかった。店舗を
作っただけです。ウォルマートの調達戦略とは、次元が違います。
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■4.90年の円高以降
90年代は、円高によって、国内商品の価格競争力が衰えた。
$1=200円以上では、米国と釣り合っていた商品価格が、$1
=100では2倍の価格になったのです。
ところが輸入をするには、(1)商品調達での買い取りと、(2)
自社流通網、(3)在庫管理と売り切りが必要になる。
日本的商取引と、問屋の流通網に依存していた量販店は、これがで
きなかった。輸入をしたとしても、中間流通と中間在庫の管理の部
分、及び在庫のリスクヘッジと商品選択では問屋をかませた。従っ
て、価格はあまり下がらなかった。
ところが、特に95年以降、中国が商品品質を上げた。
原因は、80年代中期からの米国チェーンストア、及び世界のブラ
ンド企業の、工場指導。中国の工場は、先進国並の品質を獲得した。
中国の経済自由化は、21年前の1980年から始まっていた。
このアナロジーで言えば、東欧・ロシアも、あと10年で変貌する
ことになる。2010年ですね。(準備はいかがでしょう?)
▼更に、94年の元安以降(多くの人が元安をしらない)
中国の元は、1990年では1元が30円でした。
これが、1994年には1元=10円に低下した。
現在は、1元=15円です。
【米ドルリンクの固定相場制がある】
中国政府は、現在、$1=8.3元の準固定相場をとっています。
理由は、海外からの中国への投資のリスクを減らして外資を導入す
るためです。中国では、政府の力は強大です。日本では住民パワー
のため、開発に10年もかかる高速道路や空港も、2年で完成する。
1元=30円でも安かった中国製品が、更に二分の1、三分の1に
下落したのが94年以降です。品質が上がったにもかかわらず、価
格が低下した。ここで、激変が起こった。
▼当時の、日本の流通イデオロギー
ところが1994年の超元安(1元=10円)の頃、日本では、価
格の低下は困るとの、業者都合論が支配的でした。
私も当時は価格破壊派と見られ、システム論ではなく、価格論での
講演では、しらけた雰囲気が強かったことを覚えています。(笑)
サミットストアの社長で、イデオローグである安土敏(本名:荒井
信也)は、話題になった『安売り礼賛に異議あり(1995年)』
を書いている。よく読めばコストダウンは説いています。ところが
内容は、価格の現状肯定論だった。
価格低下に困っていた業者は、専門店、量販企業、製造、卸を含め、
この論理に飛びついた。代表がニチイ(マイカル)だった。量販
高級化の旗手だった。5年後の結果は、言いますまい。
量販企業も創業30年で、幹部が高齢化し、経営の革新力を失って
いた。調達及び流通と店舗作業のコストダウンへの情熱を失ってい
た。
コストダウンは、生易しいものではない。
だれも、自分が高い調達をしたり、無駄なコストを使っているとは
思いたくない。コストダウンには、経営幹部の自己否定が必要です。
ところが自己否定は、まず仲間内で、非難される。サラリーマン
には、これが辛い。共同体化した組織で、浮いてしまう。
ところが、世間の論調が、ある方向へ一色になったとき、その逆の
方向に、ビジネスのチャンスがあるのが産業の歴史です。
<世論>が示す方向へは、皆が歩く。日経新聞しか読まず、日経論
調のセミナーにしか出かけない役員に対する企画書も、世論の方向
なら通る。
皆が歩くところに機会はない。皆が歩けば、同じことをやるから競
争が激化し、利益は消える。利益とは、戦略差です。戦略差がない
ところに利益はない。同じ戦略なら<規模の競争>に終わるのです。
世論が見落としているところに機会がある。過去を遡れば、日経新
聞の論調の逆張りが、ビジネスの機会、宝庫でした。
今後も、これは変らないでしょう。記憶すべきことです。
▼現実は・・・
94年以降、中国の工場指導、及び製品の調達で、成功を収めたの
がユニクロと100円ショップです。
カジュアルウエア400品目の価格を、三分の1に下げても、粗利
益は50%も取れ、売上高経常利益率は25%という水準。
かつての流通の王、百貨店・量販店の粗利益率に匹敵するのが経費
控除後の経常利益ですから、世界的に見ても、比較を絶します。
それくらい、日本の物価と流通コストは高かった。物価が高いこと
は、ビジネスの機会が溢れていることを示します。価格のパワーは
強い。ユニクロも、3980円で売れば、並みの会社です。
▼ユニクロ型調達は、当たり前の技術だが・・・
ユニクロの中国調達のビジネスモデル(商売の手順と方法)は、世
界から商品調達と、リスクを含んだ在庫販売を行う米国と西欧のチ
ェーンストアでは、当たり前の技術です。
米国と西欧のチェーンストアが、アジアには出ても日本には進出が
できなかった。理由は、(1)まず非合理に高い土地、(2)コス
ト非合理的な部分を含んだ日本型商取引と物流、(3)及び日本人
の品質観です。
低価格のGAPすら高級品になって、コストで価格が高くなる日本
で、ユニクロは(1)コストの安い郊外店と、(2)原宿店以降の
ブランド戦略を両立させ、国内価格の間隙を縫った。
GAPが高級品になる日本のカジュアルウエアは、デザインでも、
価格でも、遅れていた。
業界の遅れを嘆く人が多くいます。奇妙なことに、日本では自分の
業界が遅れていると皆が言う。遅れていれば、機会は大きい。
業界が遅れているから、自分の会社も遅れていて当然とするなら機
会は訪れません。ビジネス発想は、起点での紙一重の違いです。
▼今後は?
本項の冒頭で、<商品は、通信回線で瞬間移動はできない。物理的
な形を持つから>と言いました。
通信回線ではマネーは運べるが、物は運べない。しかしながら<商
品は、通信回線で瞬間移動はできない。物理的な形を持つから>と
いう論は、実は、一面的なことしか述べていない<誤り>です。
工場に発注するための商品仕様も、発注数量もビット情報です、瞬
時に運べる。数量発注では店舗のPOSとの直結、製品仕様では仮
にNYにデザイナーがいても、中国の工場とリアルタイムの協働作
業ができる。ユニクロでは、NYで、先端デザインをやっています
。
物流ともリアルタイムに結べ、どこにいくつあるか、出荷と入荷は
いつかの、全プロセスが見える(サプライチェーンの可視性)
輸配送はリードタイムを持ちますが、物流と製造、在庫に絡む情報
はリアルタイムで回線を流れ、生産計画、在庫、物流は、需要に合
わせたコントロール(制御)が可能になる。(サプライチェーン)
通信回線で、グローバルな商品製造、物流、販売に付帯する人間の
作業を、同時化(シンクロナイズ)できる。場所や国や距離は、関
係がない。今後の商品流通の、全体イメージがこれです。
【中小企業】
大手は戦略を作れるが、中小はできないというのが、この国の論の
相場です。私は、中小企業であるからできないという思考の傾向に、
戦後の中小企業保護の影を感じます。革新は常に中小企業から起
こるのです。
中小企業庁は、中小は弱いから援助の予算が必要だとの論理で税金
を使う役所。中小企業庁からの保護政策で発展した業界、あるいは
企業があるでしょうか。保護をすればするほど、一時は救われても
、最後は産業が弱くなります。
考えるべきは、顧客満足であって、自分の保護ではないのです。
顧客が離れる原因への対策がない限り、どんなことも効果はない。
中小企業ほど組織は硬直化し、衰退期に入った大企業のセクショナ
リズム、旧い体質が溢れていることが多い。
<中小企業の大企業病>が中小企業問題の根底にはありますね。
流通のことを述べると、つい記述が長くなります。
次項では、アフガン戦争とその帰結を述べます。
2002年以降の経済に、深く関係します。
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■5.米国と先進諸国の国益:アフガン戦争から
▼負けるなとの意志が表面に
米国人の発言では、株価、経済を含め、<テロリズムに負けるな>
という意志が先に立っています。なるほど<戦い>の最中です。そ
うした意志が表面に表れることはやむをえないのですが、<正確に
見る>という観点に立つとどうしょうか。
タリバンに対する戦闘も、アフガンに反過激派の政権をつくれば終
結するのか。イラクはどうする。米軍は、すでに湾岸に向かってい
ると言います。そして、イスラエルとアラブの共存ができない問題、
及び米軍のサウジ駐留はどう展開するか。すでに王家支配が危う
いと言われるサウジの国内情勢は、動かないのか。
▼本質は、カスピ海原油の争奪戦です
【2000億バーレル】
カスピ海沿岸、特に旧ソ連のカザフスタンには、サウジアラビアに
匹敵する2000億バーレルの原油埋蔵が推計されています。
世界の総埋蔵量とされる1兆バーレルの20%です。
カザフスタンからアフガンを経て、パキスタンのカラチ港までのパ
イプライン、および中国へのパイプラインをつくれば、原油価格の
主導権をアラブから奪還できる。この戦略は、米、ロ、及び中国の
共同の、win-winとされているのでしょうか。これが、焦点です。
【原油価格の主導権奪還】
産油コストがアラブより安いカスピ海原油がカラチ港からタンカー
にのるようになれば、石油価格は変わる。アラブの地位は、相対的
に低下する。パイプラインのセキュリティを確保するには、破壊活
動を抑える軍の駐留が必要です。アフガンは、今後の原油輸送の要
所です。
【1979年のソ連】
79年からのソ連のアフガン侵略は、カスピ海の原油を、中東を経
ず輸出するための、アフガンへのパイプライン敷設の狙いがあった。
このとき、ソ連を敵にし、イスラムの連帯を旗印に戦ったのがビン
ラディンです。ソ連のアフガン侵略阻止で利害が一致した米国は、
CIAを通じ、ビンラディンへの武器供与を行った。ソ連は負け、
多民族のソ連邦は、民族自決へ向かって分解した。
ビンラディンの武器購入資金は、中央アジアのソ連支配を嫌うサウ
ジ王家から出た。80年代のソ連は、米国とイスラムの共同の敵だ
った。
▼米国、ソ連、中国の目標
今回のテロリズム組織の壊滅作戦が、
(1)テロ支援勢力のタリバンを一掃しアフガンに親米政権を作る
ことを決着点としつつも、
(2)戦線を拡大し、2500億バーレルの埋蔵をもつサウジアラ
ビアへの米軍の駐留を守り、正当化するところまで行く狙いがある
のは、明白です。
これに、必ずフセインが一枚かむ。彼は稀代の戦略家。これ以上は
申し上げますまい。陰謀史観になる。
【先進諸国のスタンス】
先進国10億人の生活を守るには、安い原油が必要です。中国の工
業の発展は、中国人の乗り物が自転車から自動車へ変り、家電が普
及することを意味する。13億人分の石油が必要になる。更に、ソ
フトウエア大国になりそうな、10億人のインドが続く。また、ロ
シア、東欧も、エネルギー多消費に向かう。
旧共産圏諸国は、教育水準が高い。短期で工場ができ、労働の訓練
ができる。2005年あたりからの資源・エネルギーの不足は、明
白です。これへ向かっての、世界戦略があるのです。
▼イスラムの連帯
10億人の先進諸国は、サービス化経済(流通付加価値の増大)で、
資源とエネルギーの節約プロセスに入っている。しかし、30億
人が想定される新工業国は、モノの高度成長と、エネルギー多消費
生活に入る。まさに21世紀の、最大の問題であり、ビジネスの機
会です。
【イスラム世界に眠る】
1兆バーレルの原油は、多くが13億人の過激派・穏健派を含めた
イスラムの地底にある。
近代国家が国民国家として共同体を作ったのに対し、イスラム圏で
は国民国家の枠組みはありつつも、基底では、イスラム教とイスラ
ム文化での共通性、強い連帯性を持つ。
【イスラムの連帯】
キリスト教では、キリスト教を信じることを理由に国家間の連帯が
あることはない。仏教国、儒教国も同じです。日本、韓国、中国は、
宗教的には儒教の国の側面も持つが、儒教を共通の価値観とし、
それを理由に国家間の連帯を叫ぶことはないのです。
イスラム圏は、イスラム教の教義を共通の価値観、ものの見方、世
界観として強く連帯する。これがイスラム教の特徴です。
セプテンバー・イレブンをきっかけにしたアフガン戦争は、その戦
線を、湾岸に移すことが決まった。そして、13億人のイスラム世
界と、ロシアを含む米国連合の対決の様相を、次第に明らかにしま
す。
【プーチン】
ロシアのプーチンの戦略は、ソ連崩壊の契機になった80年代のア
フガンでの敗退を、今度は米国に戦ってもらうことによって失地回
復し、カザフスタンに集中するカスピ海原油の移送路を押さえるこ
とです。
【華国鋒】
中国の華国鋒の戦略は、カスピ海原油の中国までのパイプラインを
築くことです。石油輸入国になった中国の経済発展には、必須のエ
ネルギーインフラです。中国はまだ、石炭エネルギーへの依存国家
です。
▼21世紀のグローバル経済
以上のように、イスラム世界への、他の世界からの関与の根底の理
由は、すべて、石油を安定的に得るための石油戦略です。
だたしそのことは誰も言わない。いわずもがなの前提だからです。
21世紀は、OECD10億人に加え、旧共産圏を中心に30億人
が、市場経済になだれ込んできた。生活水準は上がるが、資源とエ
ネルギーは多消費になる。明白なことです。世界の誰も、他国の経
済発展を阻害し、30億人が、米国までとは言わず、西欧・日本並
みのエネルギー多消費の生活に向かうことをとどめることはできな
い。
OECD10億人の低成長、30億人の高度成長、これが21世紀
です。OECD内の優等生だった日本は、30億人の世界に軸足を
移動させないと、現在のGDPの規模、及び個人所得は維持できな
い。
日本の90年代は、国内問題へ目が向きすぎて、冷戦後の変化を見
逃した。日本は、米国のようには資源面での自立ができない国家で
す。貿易が生命です。戦後の事業家は、ソニーの盛田昭夫も本田宗
一郎もそれを知っていた。90年代の以降の事業家は、未だ現れて
いません。
今後は、対欧米戦略ではなく、アジア戦略の事業家、つまりアジア
戦略の、骨太な戦略を描く盛田・本田登場です。
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■6.しかし価値観の対立という根本問題
明治以降の日本は、日本文化の特殊性は認めつつも<和魂洋才>と
いう概念により、西欧・米国の価値観へ同化した。
『文明の衝突』(サミュエル・ハンチントン:邦訳98年)が話題
になっています。中央公論が巻末に「フォーリン・アフェアーズ」
の翻訳論文を載せていた頃(93年)に、読みました。加筆して9
6年には大部の本になった。お読みの方も、多いと思います。
<普遍的な文明という概念は、西欧文明に固有の産物である。19
世紀には「白人の義務」として未開発国を指導すべきだという考え
に助けられて、西欧が政治的かつ経済的な支配を非西欧的社会へ広
げることが正当化された。20世紀末には普遍文明という概念に助
けられて、西欧文化が他の社会を文化的に支配することや、非西欧
社会が西欧に生活習慣や制度を見習うことの必要性が正当化されて
いる(同書:P91>
普遍的な文明が、西欧・米国社会のものとすれば、他は非普遍的で、
地方的な未開社会になる。問題は、この「普遍」です。この、普
遍の意識はどこから来たか?
<西欧が世界の覇者となったのは、理念と価値観、あるいは宗教が
すぐれていたからではなく、むしろ組織的な暴力(注:武器と軍隊
組織の規律、訓練)の行使にすぐれていたからなのだ。西欧人は往
々にしてこの事実を忘れているが、非西欧人は決して忘れることは
ない(同書:P69>と書くのは、西欧人のハンチントンです。
軍事で卓越していること、これが西欧文明、及び西欧的価値観の普
遍性の保証だった。軍事で負ければ、今の西欧も米国もない。
セプテンバー・イレブン以降の戦闘で、ブッシュは「不朽の自由」
を旗印にしている。
経済は、コストの安い資源や生産物を求める経済原理に忠実に、広
範囲にグローバル化する。この勢いは、誰も止められない。
しかし西欧・米国的な価値観へ、同化できない人々がいる。イスラ
ムの人々が、<イスラム魂洋才>、中国人は<儒教魂洋才>、イン
ドは<ヒンズー魂洋才>で妥協を図れるのか。
日本は島国です。海が要塞になる。国家を意識せずとも、国家や国
土の縁取りは明確です。和魂洋才というような妥協をしても、国家
そのものが崩れることはなかった。ただし日本人は、伝統的な価値
観では、西欧・米国とは違うことを感じていたから<日本と西欧>
という非各論を、近代化の明治以降、繰り返し論じてきたのです。
大陸で国境を接するときは、容易ではない。宗教や文化の違い、価
値観、主義の違い(ハンチントン用語では文明の違い)を表面に出
して、違いを際立たせる。それが国民の<アイデンティティ>にな
る。アイデンティティとは自己や組織、及び国家の存在証明です。
イスラムでは、個人のアイデンティティが、宗教の紐帯になってい
て、国境を越える。ソ連のアフガン侵攻のときがそうだった。ソ連
という外敵に対し、イスラム連合の戦いになってソ連は敗退した。
ビンラディンとタリバン、および他のイスラム過激派の要求は、ア
ラブ世界への、米国・西欧の干渉を排除するということです。テロ
リズムとその後のアフガン攻撃は、国家対国家の戦争ではなく、イ
スラム世界と西欧・米国の戦いの色彩を帯びた。まさにテロリズム、
及びビンラディンの目的です。
ビンラディンの理想は、米国をテロで挑発し、反撃させ、その結果、
イスラムの反米・反西欧の世論をまとめ、イスラム教統一国家を
作ることにある。
イスラム世界は若い。サウジアラビアでは1980年以降、人口は
2倍になり、原油価格低下で収入は減った。若年者の多くが失業者
であり、失業の増大は過激派への傾斜を生む。イスラム教は、信者
が大規模に増加している唯一の教義です。西欧・米国・日本は高齢
化に向かっている。長期で見れば、西側世界の社会的な活力は、衰
える。
武力で制圧してもテロが止むことは、<絶対に>ない。
もともと米国の戦いは、不可能な戦いだった。
過去の戦争は、相手国の支配階級を滅ぼせば、抑圧されていた人民
は戦勝国についてきた。今回の戦争では、そうしたことは起こらな
い。最後はイスラムの民を敵にまわした戦いになり、帰結は、親米
・親西欧の傀儡(かいらい)政権で、一時的に誤魔化す結果にしか
ならない。
産業のグローバリズムと、とりわけイスラムとは、宗教的価値観へ
の配慮が必要です。中国はWTOに加盟した。これは西欧・米国的
な経済価値観への加盟です。中国は過去のイデオロギーを捨て、西
欧的価値観へ同調する方向を示す。
イスラム世界は、20世紀の西欧・米国・日本とって、第3世界だ
った。石油の供給のみで、<商>の関係をもっていた。21世紀は、
西欧・米国とは異なる価値観・行動様式の人々として、世界に浮
上する。これを、武で抑えることは、<絶対に>できない。戦いは
民が勝つ。
自由を奉じる米国の、事実上の言論統制は、気になりますね。
今日はここまで。来週またお会いしましょう。
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