▼ハットする切り口と考察で目からウロコが落ちると評判のメールマガジン。経営戦略情報・経済情報・IT情報▼欧米の新情報を含む高度な内容を、基礎から分かりやすく分解して提供 【分野】経営戦略・小売/流通・IT・ロジスティクス サプライチェーンマネジメント
- 最新号:2008-10-14
- 発行周期:週刊
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0706ビジネス知識源(金曜増刊)不良債権問題の根底を解く(2)
発行日: 2001/7/6※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。
<<あなたと、チームの、知識とスキルのブラッシュアップを>>
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2001年7月9日(Vol.57増刊号):金融・経済・経営分野
<この国の不良債権問題の根底を解く(2)>
ビジネス知識源:良質な経営・IT・ビジネス知識の提供を目標に
(読者数:12,250名)
Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治
著者へのひとことメール⇒ yoshida@cool-knowledge.com
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こんにちは、吉田繁治です。前号は、多くの方の関心をひいたよう
ですね。<ひとことメール>の感想から、伝わってきます。
小泉構造改革に対して、私は賛成です。しかし構造改革の焦点であ
る<不良債権問題の処理>では、深い洞察を行った上で、戦略的に
実行しないと、マネーの世界で混乱を起こす可能性が大きいことを
指摘しているのです。
今回は、現下のマネーの問題の本質に迫ります。いよいよ本論です。
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<Vol.57 この国の不良債権問題の根底を解く(2)>
■目次と要約
1.グアム島の運転手と宮崎シーガイア
宮崎シーガイア(投資額2000億円)を162億円で買うのが<
収益還元法>の一例です。不良債権処理とは、結局ここに落ちつく。
2.不良債権で、回収不能の見積もりは64兆円
64兆円の回収不能額は、あまりに大きい。全銀行の純益の14年
分。2から3年ではとてもできない。無理すれば恐慌。
3.資産のバーゲンセール
不良債権処理とは、至る所で始まる資産のバーゲンセールで。倒産
予備軍100万社と、機会を作る40万社に分かれる。
4.100万円の預金が1億円に?!:信用乗数効果
銀行がマネーを創造できるとは、一体どんなメカニズムなのか?こ
れを知らない人が多い。日銀の、公開市場操作とはなにか。金利の
みではなく、マネーの総量は、調節が可能なのです。
5.日本の今、とても重要な貨幣数量説
MV=PTで、今の日本経済の問題が解ける。貨幣数量説とは、どんな
ものか? マネーの総量(M)と流通速度(V)、及び物価(P)
と経済活動全体のGDP(T)には、どんな相互関係があるのか?
6.不良債権議論の焦点を解く
不良債権問題は、構造改革である以前に、<マネー還流のボトルネ
ック工程>が、64兆円の回収不能債権を抱える銀行になったこと
である。更に、不良債権処理のデフレ圧力から、ハイパーインフレ
と、マイルドインフレの可能性を読む。
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■1.グアム島の運転手と宮崎シーガイア
【グアム島の運転手】
日本のバブル末期、講演のため深夜グアム島に到着。日帰りグアム
旅行という変った旅でした。ロシアからの訪問者のように、暑苦し
い背広を着ているのは、私一人でした。翌朝、海を眺め不条理を感
じた。
ホテルまでのタクシーで、<大きな新しいホテルが沢山できている
が、経営が大変ですね>と運転手に言った。日本資本での、建設ラ
ッシュの時期だった。現地運転手は、しらっと答えた。
<ホテルがどんどんできると、料金が安くなる。安くなれば日本か
らもっとお客さんがくるから、いいね>・・・確かにそうなった。
倒産してもホテルは残る。結局は採算のなりたつ価格(収益還元価
格)で買収される。従業員の50%くらいのカットはある。競争で
ホテル料金も安くなり、グアム島の観光客は増えた。
▼宮崎シーガイアは162億円だった
【たった8%で買えた】
宮崎シーガイアは2000億円の投資が行われた。しかし収益還元
での価格は162億円だった。米国のリップルウッド・ホールディ
ングが買った。(CEOはティム・コリンズ)
コリンズは<壮大な保有資産を有効活用すれば、収益力は飛躍的に
高まる>と言った。それにしても、2000億とは無謀な投資、1
62億円も、凄いディスカウント価格。夢ではない、現実です。私
はこの価格に、<ハイパー・リアリティ>を感じます。
10年前は2万円だったものが、今は162円と言えばハイパーリ
アリティの意味がわかるでしょう。
(現在、不良債権の回収率は、10%から20%です)
【最終負担者と受益者は?】
売却損の1838億円は融資した銀行と、出資した自治体の損です。
シーガイアの、収益還元価格での買収による再建で、高質のサービ
スを安く利用できるようになれば、国民の益です。それが米国リッ
プルウッドの利益にもなる。ティム・コリンズは、日本は、今、チ
ャンスの国と言っている。言うのが、アメリカ人であることが、癪
(しゃく)です。
2年〜3年での不良債権の完全処理は、ブッシュが要求し、森首相
が米国訪問で約束した。この国際公約を小泉首相は引き継いだ。今
回の訪問で、約束を確認し、欧米マスコミはそれを持ち上げた。ア
ングロサクソンは、いつも国際情報戦略のやり手ですね。7つの海
を支配した歴史はダテじゃない。グローバル戦略は酷薄さを含む。
【結局は銀行救済処置】
不良債権処理は、戦争のような全破壊の損ではない。有形資産を、
採算の成り立つ収益還元価格で、投資家に売却する処理。そのプロ
セスで、資産の所有者が移転し、金融機関の損が出る。
損を放置すれば、銀行が倒産する。銀行倒産は国民経済、及び世界
経済に混乱を起こす。資本注入の救済措置をとる。銀行システム(
血液の還流)の崩壊は、経済システムの崩壊と同じです。
――――――――――――――――――――――――――――――
■2.不良債権で、回収不能の見積もりは64兆円
▼64兆円
民間銀行の、531兆円の融資のうち、111兆円分(21%)が
出血箇所というイメージ。その111兆円のなかで、土地担保や保
証、貸倒れ引き当てがあるのは、47兆円のみと調査(金融庁の最
新集計)されている。64兆円が回収不能になる可能性がある。
不良債権問題は、身体に出血部分(問題先企業100万社)があっ
て、新しい血液(マネーサプライの増加分)が、まわるべき部分(
成長企業)に、届かない状態を思い描けばいいのです。
▼全銀行の利益の14年分
民間銀行の業務純益の合計は、2000年で4.5兆円のみ。回収
不能額64兆円は、銀行利益の14年分余になる。銀行は利益での
自己消却はできない。
小泉政権は<2〜3年で最終処理をする>と、繰り返し公約してい
ます。64兆円の50%の32兆円でも、銀行の業務純益の7年分
です。とすれば、この<最終処理>の中味はなにか?
【展開の予測】
展開を予測すれば、小泉政権は<2〜3年で最終処理を完了はでき
ない。処理方法のメドをつける>ということに留まるでしょう。
銀行の年間純益4.5兆円から見て64兆円の最終処理が、3年で
できるわけがない。無理やりやれば、金融の混乱で最初はデフレ、
次はインフレになる
(※デフレは、血は濃いが、全身にまわる血液の量が、不足する状
態です。インフレは、血液が生理的食塩水で薄められた状態、いず
れも危険です)
▼小泉公約のRTCやRCCが意味すること
【RTC、RCC】
では<処理方法のメド>とはなにか?要は「収益還元価格」での売
却です。小泉政権も、RTC(整理信託公社)やRCC(整理回収
機構)手法での整理を約束しています。銀行からRTCやRCCが
不良債権を買い取って、処理する方法です。
90年代初頭の、米国のS&L(貯蓄銀行)の不良債権処理では、
RTC、RCCを作り、最終的には$1600億(18兆円)の税
を投入して、整理を行った。(野村総研主任研究員:リチャード・
クー)
全米で18兆円(日本で言えば9兆円に相当)だったから、短期で
の立ち直りができた。
【過去に68兆円の不良債権処理】
この程度の金額なら、日本の銀行は、自己消却で、毎年やっていま
す。90年代の不良債権処理は、年平均すれば7兆円でした。総額
で合計68兆円の不良債権の処理は、低金利での所得移転と、20
00年3月には2万円まで行った株の、含み益のはきだしで、やっ
てきた。
【今後、米国のS&Lの7.2倍の追加負担】
日本の不良債権処理では、総額では追加の64兆円が必要になる。
米国の、S&Lの時の3.6倍、日本のGDPは米国の約半分ですか
ら、国民負担は、その7.2倍です。不良債権の処理は<2〜3年
>では、とてもできない。64兆円は、それぐらい巨額です。1世
帯当たり140万円に相当。
【現時点と秋】
9月ころになると、不良債権問題をめぐる論調が変わることが確実
です。2001年7月時点では、不良債権処理のイメージを、マス
コミを含め、みんながつかんでいないで、騒いでいる。
カルロス・ゴーンも言った。<リバイバル・プランの計画作りは5
%にすぎない。95%は実行>
小泉政権の現在は、リバイバル・プラン作りの入り口に至った時点
です。不良債権処理はプランもまだ不明です。あと、98%くらい
のプロセスが残っている。そう見たほうが、いいでしょう。↓
http://www.cool-knowledge.com/0613nissan-Ghosn(1).html
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■3.資産のバーゲンセール
不良債権の処理は、土地・建物、設備の、収益還元価格でのバーゲ
ンセールを始めることです。地価は、更に下落する。損失は、現在
の見込みの、64兆円を超える可能性が大きい。損失確定は、見こ
み損失の額を上回り、当事者の期待を裏切る。
【収益還元価格】
買う側の投資家から見れば、美味い機会になる。主たるプレーヤー
は、海外投資家でしょう。流通ではウォルマート、カルフール等が
狙っている感じ。銀行・保険も、海外投資家から狙っている。
55年前の敗戦後に似ている。焦土となった土地をダタ同然の価格
で買ったのが、私鉄財閥です。国内投資家や企業も、同じチャンス
がある。土地は安価になる、建物や設備は使える。焦土ではない。
【100万社と100万社】
個人企業を含む500万社の会社のうち、100万社が111兆円
の借入れの、問題あり先です。残り400万社のうち100万社(
25%)くらいが、財務優良企業でしょう。そのうち40万社(1
0%)は、次の時代を作る成長会社です。ここ2〜3年は、次の時
代へ向かっての機会が乱舞するとみていい。マクドナルドの藤田田
も、そう見ている。
(まとめ)
以上、不良債権の処理とは、問題先の換金可能な資産(土地・建物
・設備)が、RTCやRCCを通じて、収益還元価格というバーゲ
ン価格で売却されるということです。ブランド価値などの、市場で
換金不可能なものは、消滅しますね。
次に、銀行の<マネー創造>の仕組みを見ます。不良債権問題を理
解するには、銀行の、マネー創造の仕組みの理解が、欠かせないの
です。
――――――――――――――――――――――――――――――
■4.100万円の預金が1億円に?!:信用乗数効果
銀行のマネー創造の仕組みを示します。マネーを創造できるのは日
銀だけではないか? 銀行は預金を預かって、貸しているだけでは
ないか。なぜマネー創造か、というのが素朴な理解。
【素朴な理解】
100万円の現金を定期預金でA銀行に預けたとします。通帳には
100万円の預金数字が印刷される。銀行は、その預金を使って融
資を行って、利ざやをかせぐ。これが、素朴な理解。ここでは銀行
は仲介をやっただけでマネーは増えてはいないように見えます。
【預金準備率】
銀行が100万円を全部貸してしまえば、あなたの預金引き出しに
応じることができない。これでは困るから、実は、銀行は、預金準
備といわれるものを、日銀の当座預金に金利ゼロで、毎日、預ける
義務があるのです。預金準備制度といいます。預金準備率は、日銀
が決める。
※預金準備は、現在、日銀の当座預金に5.4兆円(01年7月2
日、日銀公表分)あります。銀行の総預金約500兆円余に比較す
れば極めてわずかな額ですね。↓
http://www.boj.or.jp/siryo/stat/juqf0106.htm
さて、次は、頭の訓練です。
▼信用乗数効果による銀行のマネー創造
【預金準備利率が決める、信用乗数効果】
仮に、銀行から日銀が預かる預金準備率を1%とすると、実は、銀
行預金の総額は、<信用乗数効果>で、最大で100万÷1%=1
億円に増えるのです。まさか?!
まさかということが、個々のA、B、Cの個別銀行ではなく、(A
+B+C・・・)の銀行の全体では起こる。
【100万円÷1%=1億円になる】
A銀行預金100万円×99%=A銀行の最大貸出し枠=99万円
これをa社が借りると、A銀行のa社の普通預金に99万円が移る。
(A銀行としては、外部へ流出したのは、日銀に準備預金として義
務預けする1万円だけです)
この99万円×99%=98.01万円を、更にb社に貸せる。
98.01万円×99%=97.03万円、これを更にc社に貸せ
る。・・・・という風に、日銀当座に預ける預金準備分を引いて、
銀行は次々に貸せる。(他のB、C銀行に流失しても、A、B、C
の銀行全体での流出にはなりませんね)
これを全部合計すると、あなたが現金を持っていってA銀行に預け
た預金は、(A+B+C・・・)の銀行全体では100万円÷1=
1億円(最大)増えるのです。これが、<信用乗数効果>での、マ
ネーの創造です。
銀行システムが<正常なとき>は信用乗数効果が発揮される。日銀
は預金準備率を増減させることで、簡単に、市中の貸し出しを調節
できる。預金準備率を2倍の2%に上げれば、100万円÷2%=5
000万円が、銀行の最大貸出し可能枠になります。
このことは、銀行システムの秘密とは言えません。(経済学の教科
書なら、説明がある。しかし、理解してる人は少ないですね)
【不良債権が、マネー流通のボトルネックになる】
ところが、途中で不良債権先があると、これがボトルネックになっ
て、十分な信用乗数効果が発揮されなくなる。これが、日本の90
年代です。不良債権は、いかに経済全体にとって怖いかわかります。
▼日銀による市中マネー創造:公開市場操作
日銀が国債(国の借金の証書)を買うかどうか、これが今注目を浴
びています。市中銀行が100万円分の国債を買えば、その分、民
間企業への融資が減るのは分かりますね。
【買いオペレーション:市中マネーの創造】
ところが、これを日銀が買う(買いオペレーション)とどうなるか。
100万円の国債を日銀が買うと、売った銀行には100万円が
入金されますね。これは、銀行にとっては、預金の増加と同じです。
預金準備率が1%なら、市中には100万円÷1%=1億円(最大)
のマネー(預金≒融資)が増えることになる。
日銀が際限なく、国債を買えば、物凄いマネーが銀行と市場に溢れ
ることになるのです。日銀は、そうした機能を持っている。
【売りオペレーション:市中マネーの吸収】
一方逆に、日銀が、手持ちの国債を100万円売れば、今度は、<
信用乗数の逆の効果>で、1億円の、市場マネーを減らすことがで
きるのです。
▼まとめ:マネーコントロールの絶対君主が日銀
以上のように、日銀は、<預金準備率の操作>、及び<公開市場操
作>で、市場のマネーをコントロールできる、法的な権利を付与さ
れています。これと、銀行窓口の<窓口指導>が加われば、金融の
絶対権力と言っても過言ではないのです。
預金準備率は、日銀は1991年以降変えていません。日銀が日々
やるのは、公開市場操作での、流通する市場マネーのコントロール
です。この数字は、新聞の金融欄には毎日出ます。日々、膨大な市
中マネーのコントロールが、公然と行われている。プールの水(市
中マネー)の蛇口も排水口も、日銀が握っていますね。
▼では、次にマネーの総量の増減と、企業活動、個人消費の関係は?
<マネー創造=信用創造>が分かったところで、次へ進みます。
若干、学説風に説明します。日銀や銀行の機能を説明するには、マ
ネーサプライと、経済活動の関係を示す必要があるのです。
<マネー供給の総量と、物価、GDP(企業活動や個人消費)に、
どんな依存関係があるのか?>
それが4つの変数からなる<M×V=P×T>という単純な式です。
――――――――――――――――――――――――――――――
■5.日本の今、重要な貨幣数量説
生産、投資、販売、個人消費、物価と、マネーの総量にどんな関係
があるのか。経済学は解明しています。アービング・フィッシャー
(『貨幣の購買力』1911年)です。マネタリストのフリードマ
ンもこれを使った。
▼有名な、貨幣数量説の公式
(マネーサプライ M)×(マネーの流通速度 V)=
(物価水準P)×(GDP:国内総生産 T)
マネーの総量(マネーサプライ:M)と流通速度(V)をかけたも
のが、物価上昇率(または下落率:P)と国内総生産(T)をかけ
たものに等しいという、公式です。(原案は、ニューコム)
気取って言えば<貨幣速度と貨幣によって媒介される取引数量が変
化しないならば、物価水準は流通貨幣数量と正比例して変動する:
『信用恐慌の謎:トゥヴェーデ(p107)』>
【経済学説の有効性の性質】
経済の学説は、有効な時期とそうでない時期がある。そこが自然科
学と違う。90年代の日本では、ケインズの有効需要はあまり有効
でなかった。また付け加えれば、構造改革はサプライサイド経済学
です。今の日本にサプライサイド経済学が有効かどうか、これが、
政策立案者が見極めるべきことです。貨幣数量説は、私は今の日本
経済にとって、大変重要なものだと考えます
【<M×V=P×T>の意味は?】
(1)右辺:日本の90年代の国内総生産(T)は増えず、物価水
準(P)はだいぶ下がった。つまり右辺は、マイナスかゼロ。
(2)左辺:そうすると、マネーサプライ(M)とマネーの流通速
度(V)をかけたものが、伸びていないことになる。
つまり、マネーサプライ(総信用:M)の増加がなく、マネーが人
から人へ、企業から企業へ渡る速度(V)が下落している。
――――――――――――――――――――――――――――――
■6.不良債権議論の焦点を解く
じゃ、日銀が、マネーサプライ(M)を増やせばGDP(国内総生
産)は増え、物価の下落が止まるか?
ここが、現在の議論の焦点なのです。日銀は、ここで、どう言って
いるか? 簡単に言えば、日銀は、<自分はちゃんとマネーの増加
管理の責任を果たしている、他が悪い>と言っている。以下を読む
と、分かるのです。
【日本銀行理事 増渕稔:日経新聞01.06.29の要約】
(1)現金と、銀行がすぐ引き出せる日銀当座勘定は、日銀が95
年〜2000年まで毎年7.9%を増やした。マネタリー・ベース
といいます。
(2)ところがマネーサプライ(M2+CD、簡単に言えば銀行預
金、フィッシャー公式ではM)は、年3.3%しか増えなかった。
(3)民間銀行の貸し出しは、0.4%ずつ減少した。
(4)GDPは0.6%で、ゼロ成長。
(注)この間、増加する国民の預金(銀行預金は増えず郵貯が増え
た)を使ったのはどこか?国と自治体の公共事業です。銀行は企業
からの返済を受けて、安全な国債を買った。民間の貸し出しは減っ
た。
▼マネーの流通のボトルネック工程が、銀行になった!
【制約理論】
『ザ・ゴール』のゴールドラットが明らかにした制約原理は、<全
体工程のスループット(成果)は、相互依存関係にある一つの制約
(ボトルネック)工程の能力以上には上がらない>ということでし
た。↓
http://www.cool-knowledge.com/0623nissan-Ghosn(4).html
【自己資本規制の結果】
現在の日本の、マネー流通で、ボトルネック工程はどこか?それが、
ポンプ(乗数)を使って、市中のマネーを循環させるべき銀行な
のです。
ところが銀行は、多額の不良債権処理(=損失の確定)をやれば、
自己資本が減ります。BISの国際規制で、銀行は総資産(≒総貸
出し)に対して、自己資本が8%必要です。
▼1兆円の損失確定で12.5兆円の融資を減らすことになる
以下のことが、今の時点では、あまり指摘されていない。大切なこ
とが、どういうわけか無視されている。
【不良債権処理の意味】
不良債権処理で、銀行の自己資本が減れば、融資をふやすどころか
過去の融資までを回収し、銀行は総資産を減らさなければならな
い。
不良債権整理で1兆円の損失が確定すれば、1兆円÷8%=12.
5兆円もの、銀行の総資産を減らさなければならない。銀行が総資
産を減らすとは、なんと優良先企業の融資の回収です。不良融資は
回収できないからです。
その結果起こるのが、総信用(マネー)の縮小、経済活動の縮小で
す。
つまり、総体のマネーサプライが減ることになる。
<(マネーサプライ M)×(マネーの流通速度 V)=
(物価水準P)×(国内総生産 T)>、でしたね。
ここでマネーサプライが3%減れば、マネーの流通速度を一定とす
ると、物価水準×国内総生産は、今より3%も、更に減る。
日本で、これが起こっています。追加の不良債権処理で、銀行の自
己資本が減れば、もっと、マネーサプライは減る。金利の問題じゃ
ないのです。マネーの量の問題。
1929年からの米国大恐慌では、マネーサプライが3分の1に減っ
た。当時はマネーサプライという概念を銀行家も実務家も、知らな
かった。(『信用恐慌の謎』トゥヴェーデ:1998年)
今の日本では、マネーサプライは知られていますが、問題は、
(1)多額の不良債権処理での銀行の自己資本の減少、
(2)BISの8%の自己資本規制で、
(3)不良債権処理をやれば、優良先からの融資回収が起こる。
つまり、不良債権処理の過程で、今よりひどいGDPの低下、物価
下落が、同時に起こることが、想定されていないのです。
そうなると正常融資先とされるところも、赤字になって、問題あり
先になる。地価も下落します。担保価値が下がって、回収額は更に
減る。経済は、負のスパイラルにおちいるのです。
▼空想:クレジットカードでしか買物ができない仮想国では?
こう考えるといいでしょう。ある国では、買物の手段は全部クレジ
ットカードであるという規則があるとします。今までクレジットカ
ードの1人平均の限度額(与信枠=個人へのマネーサプライ)は5
0万円あったので、その限度額を利用していた。
【不良債権の発生で】
ところが急に、カード会社での貸し倒れの増加で、自分の責任では
なく、限度額が平均で40万円の20%減にされた。10万円の買
物を、減らすしかない。その売上の減少が、まさにマネーサプライ
の減少による、GDPの突然の急な減少です。重要なことは、ある
日、急に減るということ。信用(マネー)はそうした性格をもつ。
商品や店舗や工場はあって、労働者もいる。しかし、今日、急に信
用総額の縮小で、経済活動が縮小し、企業は倒産し失業者が溢れる。
【1929年10月24日:暗黒の木曜日】
マネーサプライが、一定率で増加しないことは怖い。
健康であった経済も、マネー(血液)が減れば、急に縮小する。
1929年の米国の大恐慌、10月24日(暗黒の木曜日)の株の
下落を契機に、これが起こったのです。目の前で何が起こったのか
誰も、理解できなかった。マネーサプライは、3分の1になってい
たのです。これで、米国の経済は、40%以上縮小した。
▼正常に融資が回収できる先から回収する
銀行が損失なく融資を回収できる先は、財務優良企業です。ところ
が他社の不良債権の処理で、1兆円の損失確定があれば、銀行は優
良企業への貸し出しから12.5兆円を減らさなければならない。
まさに、<とんでもないことが起こる>のです。優良企業が、返済
を迫られ、黒字にもかかわらず資金繰り難、場合によっては倒産に
なる。
【ほとんどの人が知らない実例】
以下は、北海道拓殖銀行の、事実上の倒産のとき、起こった現象で
す。北海道の友人経営者が語った。ニュースや分析対象には、なっ
ていません。(※重要なことでも、みんなすぐ忘れるのが情報社会
の弊害)
(1)預金者は、危ない北海道拓殖銀行から、預金を引き出した。
(2)銀行は急に資金不足になって、優良企業に返済を迫った。不
良貸付先からは回収ができないからです。
(3)更に、銀行は、優良企業への昨日の融資約束を、平気で破っ
た。銀行マンは上から言われれば、客との約束を破ります。事前に
予測はできない、北海道では、広範囲な悪影響が出た。とても残念
な黒字倒産も、多数起こった。
プールの中のマネー(マネーサプライ)が減ると、こうした現象が
あちこちで起こる。信用崩壊です。
1997年からの北拓現象の分析は、誰も公表していない。不良債
権処理の現場では、あれよあれよと信用崩壊が起こるのです。
▼どうしたらいいのか?
じゃ、どうしたらいいのか、ということですね。<銀行への政府資
金の投入>、それも貸し付けではなく、劣後債などを含めた、何ら
かの形式での出資(自己資本の増強)しかない。
論理的に突き詰めれば、そうなるのです。
【銀行の強い抵抗がある】
ところが、銀行は、どこでも、政府資金の投入に大きく抵抗します。
なぜか?
(1)政府資金の投入では、金融庁とマスコミから、不良債権の内
容の開示(ディスクロージャー)が要求され、総額111兆円のひ
どい融資の実態が明らかになる。
(2)会長・頭取以下、幹部は、バブル期のずさんな融資責任を問
われ、TVやマスコミで、極悪人扱いされる。
(3)株主代表訴訟で、数百億円の個人賠償責任を課されることも
ある。
以上が、銀行側が、政府資金の投入に抵抗する理由です。
▼しかし、銀行の自己資本が減ったままでは
(1)日銀が、国債や債権の買いオペレーションで、マネーを銀行
に供給しても、
(2)銀行が、不良債権処理で自己資本を減らせば、言い換えれば
毎年稼ぐ純利益以上の、損失の確定をやれば、
(3)市場に出回るマネーは増えないところか、減る。
【銀行の、最大自己消却能力は?】
銀行自身が、稼ぐ業務純益は、全民間銀行で4.5兆円(2000
年)です。
つまり、銀行の自己消却の最大能力(業務純益の全てを使っても年
間4.5兆円:3年間で13.5兆円)を超える不良債権消却の要
求は、政府による銀行の国有化宣言と、論理的に等しいのです。
▼不良債権処理の全体シナリオはあるのか?
小泉構造改革の基本方針、民間でできることは民間でやる、という
こと矛盾します。小泉首相は、自分の論理矛盾に気がついていない。
言い換えれば、マスコミを通じて言われる<不良債権処理>の本当
の全体シナリオは、まだ、できていないのです。
骨太の改革は、今の段階では、あちこちに論理矛盾があるのです。
【全体改革と、部分の抵抗の相克】
今年秋から、不良債権処理が現実化してくると、カルロス・ゴーン
の日産改革に見られたような、部分の抵抗、つまり、切り捨てられ
る企業、銀行、業界、官僚の死にもの狂いの抵抗が始まります。
全体改革とは、どんな改革でも、そうしたものです。
▼奇妙に静かな日銀はなぜ?
日銀は、不良債権処理にからむ、銀行の自己資本問題を知っている
はずです。しかし、我々はマネーを増やしたが、銀行が企業に貸そ
うとしない、減らしていると言っている。変ですね。
銀行の自己資本というマネー循環のボトルネックは知っているはず
なのに、6%の増加であるべきマネーサプライが、3%しか増加し
ないと言う日銀、ここに、大きな問題があるように思えますね。
日銀がマネー循環のボトルネック工程を知らない?・・まさか・・
――――――――――――――――――――――――――――――
■7.ハイパーインフレの可能性
つぎに、これも関心の焦点である、ハイパーインフレの可能性を見
ます。その可能性はあるのか? 多少乱暴な推論になります。細か
く丁寧にたどれば、要因が複雑過ぎて、森で迷うことになる。
しかし、これを解かないと、私が提供する情報価値もない(笑)
▼ハイパーインフレとはなにか?
ハイパーインフレとは、1万円の価値が、5千円、千円に下落する
ことです。最近では、中南米、東南アジア、ロシアで起こった。ど
こでわかるか?最もいい指標は、<ゴールドの価格>でしょうね。
現在は1gで1069円(07.06:8月先物)これが、何倍に
も上がる。
ハイパーインフレは、以下のプロセスで起こります。
(1)巨額の不良債権処理の過程で、銀行信用がなくなり、多数の
預金者が預金引き出しをし、1万円札をタンス預金にする。(※ほ
かの銀行に預け替えれば、銀行システムからの資金流出はない)
(2)急に、資金枯渇に陥った銀行システム(相互依存関係)の、
崩壊を防ぐため、日銀が国債や債権の買いオペと、日銀当座勘定で
の銀行貸付けで、市中へ膨大なマネーを供給する。
(3)銀行危機の時は、100万円のマネーの投入が1億円の市中
マネーに膨らむ<信用乗数効果>はない。日銀のマネーの必要投入
額は、とんでもなく巨額になる。
(4)こうなると、外国為替市場ではみんなが円を持つことに危険
を感じ、日本人も含めて、世界中が円を売ってユーロやドルを買う。
日銀は円の買い支えを行って、抵抗するが、最後は負ける。(タ
イの通貨危機を契機に1997年の東南アジアで起こったことです)
(5)円が急激に安くなると、輸入物価が何倍にも高騰する。ユニ
クロのシャツもパンツも、上がります。石油も上がる。中国野菜も
上がる。ハンバーガーも牛丼も上がる。こうして、全体物価が上が
る。
(6)政府・日銀はデノミをやる。1000円を新円の1円にしま
す。
過去の事例では、こうした<通貨の信用崩壊>プロセスに、何年も
かかるわけではない。一旦、起これば6ヶ月くらいで(1)から(
6)が、加速度をもって起こります。つまり、とても勝負が速い。
預金の価値は数分の1になって、666兆円の負債を抱える国、及び
企業は、借金が軽くなる。
▼現時点の2001年7月での判断
(1)日本国民が、銀行を信用して、預金を引き出して、1万円札
の現金で手持ちする行動、
(2)または大規模に、ユーローやドルを買う行動を起こさない限
り、ハイパーインフレは起こらないでしょう。
私はそう判断しています。しかしながら、起これば速いのです。
▼マイルドなインフレの可能性が強い
これは、可能性がありますね。どんなプロセスで起こるか?
(1)不良債権処理のプロセスで、銀行の自己資本が毀損(きそん)
される。
(2)銀行は、総資本圧縮(優良貸し付け回収)をやる。
(3)市中のマネーが急に不足する。
(4)デフレが、更に深刻になって、地価も下落を強める。
(5)担保のある優良貸付先が、つぎつぎに問題あり先になる。
(5)日銀へのマネー増発要求が、世論として強くなる。
(6)日銀総裁が、マネーの蛇口をひねる。
(7)為替相場で、円が急激に安くなる。
(8)輸入物価が上がる。
(9)日銀は、国債や債権の売りオペで、マネーを回収し、金融を
引き締める。
(10)国債が下落し、金利が上昇する。
(11)また、更に追加の日銀へのマネー増発要求が出る。
不良債権の処理は、デフレ圧力です。そのデフレ圧力を消すための
日銀マネーの増発は、避けられない。そうすると、(1)から
(11)のプロセスを、小刻みに、繰り返すことになるでしょう。
▼最も難しい判断(世界の誰も確実な予測ができないこと)
誰も予測ができないと言っておきながら、予測するのが私の悪癖で
す。論理矛盾ですね。(笑)これは「読み」です。
(1)今年中は、大規模な不良債権処理への着手で、デフレ圧力が
もっと強くなる。場合によっては、来年も強いデフレ圧力。
(2)日銀は、デフレ圧力がなくなるまで、マネーを増やすと宣言
している(01年3月19日) 従って、小刻みに、蛇口をひねる。
【波乱要因は米国か?】
急激な景気後退、株価下落にみまわれている米国ブッシュ政権が、
どんな、<国益確保、国益拡大戦略>をとるか?次はここが、焦点
になる。現代の戦争は、マネー争奪戦です。古典的な国土の争奪で
はない。<資源>が、きな臭く匂いますね。
(第3部へ続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【アンケート項目】
(1)内容は、興味がもてるか、もてないか?
(2)内容は、理解が進んだか?
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(4)ご意見は?・・・等ご自由に、<ひとことメール>で
※前号の「分積み預金」は誤字です。「歩積み預金」が正。深く、
おわびします。とてもハズカシイ、赤面のミスです。
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(1)著者へのひとことメール
yoshida@cool-knowledge.com
※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。
あなたと、会社の、知識とスキルのブラッシュアップを。
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