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0625ビジネス知識源:鋭利なメスをもつ精神分析医:カルロス・ゴーン(5)

発行日: 2001/6/24

※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。
<<あなたと、会社の、知識とスキルのブラッシュアップを>>

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2001年6月25日(Vol.54)<50号記念>:経営分野
    鋭利なメスをもつ精神分析医:カルロス・ゴーン(5)
      (第5部:スループット最大化の新利益思考)

ビジネス知識源:良質な経営・IT・ビジネス知識の提供を目標に
                          (読者数:11,993名)
  Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治
著者へのひとことメール⇒  yoshida@cool-knowledge.com
   バックナンバー⇒ http://www.cool-knowledge.com

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こんにちは、吉田繁治です。メルマガ開始50号記念シリーズも第
5部になりました。励まされるのが、読者の方からの感想ですね。
本や雑誌はこれがない。書いたときと、出版のリードタイム(=ス
ループットタイム)が長い。講演は、即時の反応があります。

書いて送っても反応がないと、継続はできないでしょう。空漠とし
た闇(やみ)にメールをなげると言えば、感じを分かっていただけ
るでしょうか。当方では、読者数だけしかわからないのです。

(計算ミスのおわび)
前号のA工程の処理コストで12万円÷80個=1400円として
いますが、電卓の正常なアウトプットは1500円。前後の論旨に
は影響がありませんが。深くおわびします。ミス、恐るべし。

【今日のテーマ】
前号第4部の制約理論を使った方法は、衝撃が強かったようですね。
今回は全体最適のスループットへ向かった改善手法(⇒第4部)を
受け、(1)日本的な資本の問題、(2)及びスループット会計の思
考プロセスを解きます。(単純化に、だいぶ時間を取りましたが)

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■目次
<項目から内容を推察する3分>
Vol.54 鋭利なメスをもつ精神分析医:カルロス・ゴーン(5)
(第5部:スループット(出力)最大化の「新」利益思考)

1.若干の予備知識が必要ですが・・・
2.日産の過剰総資本(=過剰設備)の問題の根底を解く
3.戦略的だった日本の発明の「マネーセンター・システム」
4.制約理論の実践の好機が到来した
5.ここで気軽にスループット会計的な思考のクイズなど
6.ビジネスゲームのルールが変わった

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■要約
<インテリジェンスの3分:要約からの内容の読み取りを>

利益とは何かをわかるための、31語の伝統的会計の基礎用語。

日産の約6兆円の総資本は、販売力の6兆円と比較すると2倍の過
剰であると判断します。投資がマネーに変わって戻る効率が悪い。
なぜこんな、投資効率の悪い投資が、ゆるされてきたのか?

財閥系グループ内の資金還流システムと規制金利は、戦略的なシス
テムだった。その本質を解く。この内部還流システムが、収益に係
わらず低利の資金を供給し、長期雇用を支えた日本的資本主義だっ
た。しかし、金融ビッグバンでもうこれはない。我々は、金融ビッ
グバンがもたらすことを、ありありと描けるのか?

制約理論は、20世紀の生産・流通システムの華(はな)であるカ
ンバンシステムを超えることを直感する。しかし固定観念、伝統的
な会計思考で理解が容易でない。今、これが理解される3要素が揃
った。

スループット会計の方法、及び、制約理論を使ったプロダクト・ポ
ートフォリオの新思考を、単純化して解く。

ビジネスのルールが変わった。キャッシュフロー経営である。これ
が21世紀の、最初の大きな変化になる。
(※なお、以降のスループットは「出力」と解してください)

               <Vol.52 Summing up>

<<さぁ、ここから知のジャーニーへ>>
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■1.若干の予備知識が必要ですが・・・

少し、事前の予備知識(伝統的会計学の入門部分)が必要です。そ
れで、どうしようか・・・と思ったのです。一応、並べます。

売上総利益(粗利益)、在庫(棚卸資産)、仕掛り品、売上原価(
商品原価)、一般管理販売費(経費)、固定費、変動費、限界利益
、減価償却費、営業利益、営業外損益、経常利益、特別損益、税前
利益、税引後利益、利益金処分、配当、引当金、キャッシュフロー
、資産、流動資産、売上債権(売掛金)、固定資産、有形固定資産
、流動負債、買掛金、固定負債、引当金、資本、資本準備金等の、
基本的な用語の意味と計算方法、及び回転率の概念です・・・並べ
るとふーうって、感じですね。

32語を解説すれば、それだけで20ページ以上。イメージがつか
めない人は、会計学の初歩テキスト、簿記・会計学辞典、現代用語
事典等で調べて下さい。本稿では、短い説明を入れて、使います。

【会計知識の欠落】
営業中心で、管理会計での数値コミットメントの風土がなかった日
本企業では、多くの人(印象では90%)に、会計知識が欠落。学
んでも面白くない、というのが理由かもしれないですね。(本当は
面白い)

別の機会を見て、<戦略的な解釈>を示しましょうか。経営の迷い
や、戦略ミスを防止する意味は、あるでしょう。会社は利益中心で
動く。利益の内容と意味を理解する必要がある。

――――――――――――――――――――――――――――――
■2.日産の過剰総資本(=過剰設備)の問題の根底を解く

▼総資本(=総資産=流動資産+固定資産)の2倍の過剰

日産の総資本は、連結の313社で6兆4512億円。(01年3
月期)です。同期の売上が、6兆896億円。

商品原価率(66.2%)を引いた売上総利益率(=粗利益率)は
23.8%です。零細小売業より粗利益率(=販売付加価値率)が
低い。

(1)総資本の回転率(売上÷総資本)は0.94回の低回転。
「回転」は、在庫でも資本でも、投資したマネーが戻ってくる「回
収の速度」を表します。

(2)粗利益率は、23.8%の低付加価値
「粗利益率」は販売の付加価値率を表します。商品力、ブランド力
が弱いか、又は、マーチャンダイジング(商品化)のコストが競争
企業に比べて無駄が多いと、粗利益率は低くなります。

【常識の判断】
この二つの効率数値は、世界に冠たる製造業どころか、<衰退産業
>と見て、資本や貸付けを引き上げなければならない。日産への資
金の投入は正常ではない。なぜ正常ではないことが、当然のように
起こったか?ここを、解くべきですね。

【正常な視点での資本効率(=投下資本が稼ぐマネー)】
6兆円の総資本(=投下資本)のままなら、
(1)売上が2倍の12兆で、粗利益率が23.8%か、
(2)売上が6兆円なら、今の経費率では、粗利益率は35%以上
でなければ、有効な投資とは言えない。

▼借入金が総資本の約半分(01年3月期)

(1)短期借入金(1年以内に返済分) 1兆4295億円
(2)長期借入金(1年超の返済分)    7031億円
(3)社債(これも借入)が6994億で、合計2兆8320億円

【国民から、実質的な、所得移転を受けている】
借入金の平均金利は、1.5%で低い。こうしたリスクのある貸出
しを銀行(旧興銀と冨士がメイン)は、よく金利1.5%で出しま
したねという感じです。

(※実は、日本の全銀行の貸し出しリスクを表す「与信費用比率」
は、約1.5%です(2000年)。日産への貸し出しは、正常な
計算では銀行は赤字です)

銀行金利が、歴史的に正常な5%になれば、利息は3.3倍になる。
現在は超低利金利のため、預金者(国民)が受け取るべき金利の
所得移転を、年間1000億円くらい受けていると言える。

【生産能力約500万台:実際の稼動率53%】
ゴーンならずとも、設備の処分が必要と判断する。6兆円の売上で、
全世界の工場稼動率が53%(247万台販売)です。500万
も生産する余剰能力。生産しても売れないなら、最低でも、30%
から40%の工場の売却は、必然ですね。

▼過剰な総資本の、日本的な原因

欧米流のキャッシュフロー(=税引き後利益+減価償却費―配当等)
経営では、ひどい状態になる前に、資金市場がブレーキをかける。

キャッシュフローでの投資の意味は、収益を上げることのできる企
業、または成長性のある企業が、規模拡大ができるという市場原理
です。収益が上がらない企業は、規模縮小か市場から退散。日々、
少しずつ、市場での、新旧入れ替わりが起こる。
(※日本のバブル崩壊も、米国ITバブル崩壊も、元の資本の原理
に戻ったと言える現象です)

キャッシュフロー経営は、世界の常識、日本ではまだ非常識。西欧
・米国企業のアニュアル・リポート(経営年次報告)はインターネ
ットで手に入ります。健全企業の経営と投資を見れば、キャッシュ
フロー経営が敷かれていることが、一目瞭然です。なぜ、違いがあ
るか?

日本企業の、資本面での過去の異常な強さの原因と、反転した現在
の、弱さを解きます。ここに、資本分配での、日本的特殊性があっ
た。

――――――――――――――――――――――――――――――
■3.戦略的だった日本の発明の「マネーセンター・システム」

▼とても精巧な、マネーセンターへの資金循環システム

最高に戦略的であることとは、戦略設計で、儲(もう)かることが
継続することを言います。マネーセンター(メインバンク)も、そ
のひとつです。(戦略=ツール、人、システムの配置)

知っている人は少ないですが、財閥系銀行を「マネーセンター」と
する企業グループでは、マネーの「内部循環構造」があったのです。
私もごく片隅でですが、20歳台から銀行取引の経験が、約10年
あります。そのとき感じていました。これは優秀な戦略システムだ。
(システム=それぞれの工程が、相互に依存関係をもつ系の全体)

【蛇足です:懐かしい恥】
数日前に事務引き継ぎを受けた、俄(にわ)か経理部長として、融
資の実行当日、銀行に行ったときのことです。

私は、支店長に思いきり高級な経営論と、当時ハヤリだったシカゴ
学派の合理的期待形成の金利論の話をした。金融の事務的なことを
聞かれないかと、内心ヒヤヒヤで緊張していたのです。支店長は年
齢が二回りも下の、変な経理部長に、どう受け答えすべきか、困っ
たような表情だったのを覚えています。

金利論を1時間くらい話し、うまく行ったと満足して帰りぎわ、同
席していた融資課長のモリタさんが、「融資した1億の振替伝票を
お願いします」と言った。私はなんでそんなものがいるんだろうと
思った

一体全体なんの意味がある。会社の伝票まで見せろという銀行は横
暴だ、私は不正経理なんかしていないと思い、会社に戻り、経理の
女性に社内の振替伝票をもらって、勇んで、銀行に行った。さぁ見
ろ、どこにも不正はないと、憤然とモリタさんに差し出した。

モリタさんは、唖然(あぜん)としてましたね。普通預金を引出し
て、当座預金へ入金するために、銀行伝票に会社の印鑑が必要だっ
たのです。そうでないと、当座預金不足で、明日は手形が不渡りに
なる。融資の1億円は、会社の普通預金口座へ振りこまれていたの
です。

銀行の事務員や係りや、多くの人がいる面前でゲラゲラ笑われ、赤
っ恥をかいて会社に戻り、自己嫌悪にかられながら、普通預金引出
しの伝票に印鑑を押したものを、持って行きました。その後、私は、
融資課長モリタさんの、1日も早い転勤を待った。(蛇足終り)

【マネーの内部還流システム】
(1)銀行が日産に貸したマネーは、その支払いが、口座の付け替
えで日産グループ企業に流れる。
(2)日産グループ企業は、社員の給料振り込みも含めて、財閥系
銀行の取引先です。
(3)銀行は、日産本体に1兆円貸しつけても、その支払い先の口
座を呼びこめば、日産の預金を、銀行内部口座に振り替えるだけ。
(4)社員への給料の振り込みを含む日産の、一般管理販売費の年
間の支払い(1兆1655億円)すら、銀行の預金として残る。

(5)グループからの流出は、他の財閥のマネーセンターへの流出
のみ。しかし、それも相互勘定だから、流出と同じ分が戻ることに
なる。
(6)銀行は、日産に融資しているように見えて、実は銀行内のコ
ンピュータで、預金名義振替をやっているだけである。

【外部資金の吸収システム】
(1)外部資金は、国民が預金として増やすから、増え続ける。
(2)日産は、銀行部門を持っていたに等しい。
(3)銀行や生保は、製造部門と販売部門を持っていたに等しい。
(4)資金は返す必要がない。なぜなら、預金が増えつづけるから。
(5)旧大蔵・日銀は規制金利で、預金金利を低く保った。なぜな
ら、低金利でも、実質金利マイナスでも、預金が増えつづけるから。
(実質金利率=名目金利率―インフレ率)

【日本型マネーセンターシステム】
まとめれば、個人や世帯のキャッシュフロー(=可処分所得―消費
支出)を集め、低利で企業や公共部門のキャッシュフローに転換さ
せる仕組みが、日本型マネーセンターシステムだった。

▼正常な利を求めた投資行動への誘因が、働かない仕組み

財閥系銀行とグループ企業への「互恵の資金システム」ができあが
る。財閥グループ企業にとっては、安い金利(日産は1.5%)で、
継続的に増加資本が入る。赤字でも、資金の心配はない。

【長期雇用の根源】
この互恵資金システムが(1)日本の大企業の年功序列、(2)長
期雇用、(3)資本面での世界的な強さを支えた。
稼いだキャッシュフローに左右されず、資金は、電話一本で入る。

しかし長期雇用は、2重構造です。全雇用者の70%(4200万
人)は、日本的長期雇用・年功序列とは、ほぼ無縁な中小企業勤め
でしょう。業績不安定な中小企業には、ふんだんな、資金は入らな
い。
長期雇用の恩恵に浴しているのは、30%(1800万人)でした。

4200万人雇用の中小企業は、マスコミが言う「日本的雇用の崩
壊」に踊らされて、不安になる必要はない。中小企業では(1)3
0年も賃金が上昇し、(2)住宅の供給を含む福祉があり、(3)
安定した雇用、(4)50台での系列天下りは、なかった。

マスコミも大会社が多い。山一の自主解散の97年頃(ごろ)から、
長期雇用で生活設計していた記者や編集者が騒いでいるだけです。

【日本の大会社の、利益率の低さの原因】
甘い資金環境では、自己規律の経営を強いられる本源的マネーを生
むためのキャッシュフロー経営への誘因が、働かない。

▼資本の収益を悪化させる構造があった

赤字でも効率が悪くても、オカネが足りなくなれば、マネーセンタ
ーが出す。出した銀行側も、相手が潰(つぶ)れない限り、グルー
プ銀行内部で預金の付け替えを行うだけだから、腹が痛まない。そ
れが、赤字企業である日産への、融資の基本性格だったと言えます。

90年前後のバブル融資は、マネーセンターシステムが膨らんで、
頂点に達した時期のものです。世界の銀行のトップ10を、格付け
AAA(トリプルA)で、日本の都市銀行が占拠した。

しかし還流システムの輪は、どこかが潰(つぶ)れるとシステムが
崩れる。それが1997年以降だった。だから、銀行は、新たな循
環システムを求め、2000年から4大グループへの合併を行った。
(今はリテイル・バンキングと言っています。本質は個人マネー
の還流を、グループ金融機関内部に取りこむ仕組み作りです)

▼最終的に損失を蒙(こうむ)るのは

マネーセンターシステムで腹が痛むのは、だれだったか? (とて
も言いにくいことですが)人類史上最低の低金利しか受け取れず、
1390兆円もの金融資産を持つ国民、本源的マネーの供給者。

日銀は円の増発権を持っているが、それは本源的マネーではない。
紙幣印刷で富は生まれない。富を薄め、薄い水割りにする「水」で
す。ウイスキー部分(本源的マネー)は国民の預金か、企業のキャ
ッシュフローです。(本源的マネー=具体物としての富の増加)

今は正常な金利と比べれば、年間約70兆円の、公共部門(670
兆円の借金)と企業側(600兆円の借金)への所得移転。銀行金
利は実質的カルテルで、横並びだから、金利で銀行の選択はできな
い。

▼財閥システムの優秀さと、蜜月(みつげつ)時代の終焉(しゅう
えん)

「資本の秘密」のひとつがお分かりになりましたか?
日本の旧財閥系グループは、資本の面で戦略的な、世界が恐れた資
本還流システムの恩恵に浴していた。大蔵省も同じグループだった。
天下りでつながっていた。

【資本回収に関係する原価償却は】
減価償却の非現実的に長い年数は、設備産業の新日本製鐵等が中心
になって、国税庁との交渉で決まった。製鐵は儲からないから減価
償却期間を長くした。赤字だと困るからです。(元経理部長からの
直接情報です)国税庁も、税金が取れるから承諾した。

減価償却を長くすると投資資金の自己回収が遅れる。しかし投資資
金は、企業のキャッシュフローではなく、財閥系または政府系銀行
が供給するマネーセンターシステムだから、それでいいとされた。

【崩れた資金還流システム】
この資金還流システムが1997年頃(ごろ)から崩れてきた。旧
大蔵・銀行・財閥系企業との50年の蜜月(みつげつ)時代は、終
った。次の50年の金融システムは? 今システム転換の時期です。

ほぼ毎日、新たな巨大グループ化の再編成が起こっています。
もっともっと、大きな動きが起こる。
システムは、ある安定に達するまで変化するという原理がある。

【2001年〜2002年】
それが2001年〜2002年の、21世紀システムへ向かった時
代です。要はトヨタ、セブン・イレブン、ユニクロのような、キャ
ッシュ・フロー経営へ向かう。

激しく世界が変わる。なぜか? 世界で一番本源的マネー(国民の
預金)を持っている日本の金融機関が、来年頃を契機に、変わるか
らです。(米国金融資産は、実際は、膨らんだ株に過ぎない)

▼グローバル競争の実態とは?

ゴーンは、栄光の<三色旗>を掲げ、ルノー(最大株主はフランス
政府)による日産のデ・コンストラクション(解体と再編)をやっ
ているとも見ることができる。ルノーは以前フランス国営企業だっ
た。
「マネー敗戦後」の、グローバル競争の非情な現実です。

救世主も別のミッションも帯びる。ルノーが、日産に6000億円
余も出した理由です。しかしもう国別のことを言っても無理。マネ
ーは通信回線で瞬時に動く。日産も、日本の3倍の自動車市場であ
る米国での販売台数が多い。顧客数の観点では、米国企業です。こ
の点、ソニーなどの、輸出+海外生産企業も同じです。これがGD
Pの約2割部分。

【資金システムに加え、産業システムも変わる】
20世紀後期は、効率的な生産・流通システムは、在庫が必要で無
駄が多かった欧米流MRP(所要部品調達プログラム)を超えた、
大野耐一のカンバン・システムだったと言えます。

私は、21世紀はゴールドラットの制約理論が、カンバンシステム
を更に洗練させ、それに変わると見ています。SCM(サプライチェー
ン・マネジメント)に興味を惹かれる理由です。
――――――――――――――――――――――――――――――
■4.制約理論の実践の好機が到来した

▼「第4部 制約理論の理解と実践」の反応

メールでの反応を読むと、「第4部 制約理論の理解と実践」は、
あの渡邊泰子以上の衝撃だったようですね。私も7、8年前、初め
て制約理論に接したときは、ショックを受けた。

日本的QC(品質管理)は、部分最適に向かうという弱点があると
分かった。トヨタシステムは、「システムのゆらぎ(後述)」を無
視し、全工程が最大パフォーマンスの時、有効だった。
こうして、制約理論を部分的に、解説しました。

【時期と私の両方が未熟だった】
しかし反応は、芳しくありませんでした。<ああ、ボトルネックで
すね>で終わる。私の説明も稚拙だった。機も熟してなかった。私
は機会をねらっていました。必ずキャッシュフロー経営の時代が来
る。

【誤解なきよう・・・】
制約理論というと、一見難しく見える。大企業のものとの誤解があ
ります。しかしこれは規模の大小、流通、小売り、サービスの業種
・業態を問わない経営ツールとしての「普遍性」がある。

分かると、これほど単純で、常識的なものはない。分からないと藪
(やぶ)の中になる。芥川の名作『藪の中』(黒澤の名画:羅生門)
です。みなが違ったことを言い、なにがなんだか分からなくなる。

【3要素が揃(そろ)った好機到来】
5月に『The Goal』の翻訳が出た。好機だと思った。それに、カル
ロス・ゴーンという格好の素材があり、国は構造改革がある。3要
素が揃(そろ)った、稀有(けう)な時期です。

▼重要:制約工程の前のバッファ在庫

【ここで、トヨタシステムの本質を】
20世紀のカンバンシステムは、
(1)工程間在庫レスで、MRP(必要部品調達計画の手法:西欧・米
国流)を超えるものだったが、
(2)工程稼動の「統計的なゆらぎ」を許容する観点がなく、
(3)全工程が正常なときに、有効なシステムです。

【トヨタのビジネスモデルとは?】
トヨタでは、
(1)各工程に10%上回る効率目標を与えること、
(2)下請けに統計的なゆらぎ分の在庫とコストを負担させること
、(3)下請けは工場内に在庫を直接補充すること、の3点が運営
の秘密ですね。

下請けの賃金は、ピラミッドの頂点の親会社の70%前後であるこ
とが不文律。これを吸い上げトヨタの儲けになった。「トヨタシス
テム」を入れても、他の会社は、トヨタの「ビジネス(儲けの)モ
デル」、つまり下請けシステムは、マネできなかった。

ビジネスモデルとは、システムを使った儲けの仕組みのこと。

▼コスト差と技術差が、莫大な利益になる国内流通やサービス工程

今ユニクロは、20分の1以下の賃金の中国工場を使い、(1)マ
ーチャンダイジングコスト優位、(2)SCMの方法、(3)店舗
の判断プロセスの情報化で、儲ける(経常利益率はなんと25%前後)

儲けの原理は、いつも変わらない。それは空間的及び時間的「差」
「価格の格差(=コスト差)と、利用技術の時差」を作ることです。

ユニクロの経常利益率は、日産の「粗利益率」より高い。日産は、
一般管理販売費ゼロで売ってもユニクロより儲けが少ない。ユニク
ロの技術が、日産より優れているからではない。ユニクロと、他の
流通企業の格差が、(他が遅れているために)とても大きいからで
す。

製造工程(世界競争)は、実はあまり儲からない。儲かるのは流通
工程(国内競争)です。なぜか? 国内流通が遅れているからです。
(※病院などを見ても、同じ感想を持ちます。ボトルネックだらけ
で、患者を客と思わず、平気で待たせる(JOBの待ち行列=在庫)

他が遅れた業界ほど、コスト差と技術差での儲けは、大きい。
オールドエコノミー領域で、制約理論&IT化での儲けは大きい。
一般に成長領域として注目される業種(IT等)は、儲けは小さい。
理由は、競争的参入が起こって、投資が殺到するからです。

▼制約理論の有効性は、カンバンシステムを超える

「制約理論」は、制約工程の前に「統計的ゆらぎ:分散」の(1)
時間バッファ、(2)在庫バッファを持たせることで、カンバンシ
ステムを超えるシステムになる。私が興味を持っている理由がそこ
です。(以上の表現は、理解が難しいはずです)

とても重要なことですから、また別稿で解きましょう。日本の産業
の華(はな)、カンバンシステムを超える、制約理論を使ったシス
テム化競争、ここが21世紀産業のフォーカスポイントになる。

【本物のSCMは、制約理論そのものである】
SCM(サプライチェーン・マネジメント)も、SCMを含むe-Market P
laceも絡(から)みます。SCMは制約理論の実践そのものです。日本
人の理解で弱いところです。単に、受発注と物流のネットワーク化
と思っている。浅い。だから、多くが失敗する。

【西欧・欧米のビジネスエリートがホッとしたこと】
カンバンシステムの原型を発明した元トヨタ副社長大野耐一が「制
約理論」を知らなかったことが幸いだった、日本の産業の世界制覇
(せいは)を、水際(みずぎわ)で止めたと言う西欧・米国エリー
トが多い。ゴールドラットが、17年間日本語だけへの翻訳を止め
た理由でもあります。

▼制約理論の有効性と、理解の障害

【保証できること】
「制約理論」を応用できるまで理解し、適切な指導で実践すれば、
日本も、日本の企業も、あなたの会社も、そして、あなた自身も、
変われることが保証できる感じをもっています。
ビジネスマンも得意の武器(ツール)をもつ必要がある。

制約理論は、ゴールドラットも付記しているように、浅い誤解が付
きまといやすい。過去の固定観念や慣習を乗り越え、理解に至るま
でが、大変です。

指導者が必要なことを付け加えておきます。特に日本人にはQC的
な、部分最適は得意ですが、全体最適の概念が理解できないことが
ある。

理由は、資本家的視点での、事業の<観>をする人が少なかったた
めです。資本の収益を、全体として見る視点がとても弱い。
(ソフトバンクの孫正義、マクドナルドの藤田田などは、例外)

【なぜ日産はゴーンが必要だったか】
日本的な学歴秀才(多くが受け身の知性)が集まっている日産も、
(1)QC的な「部分改善」に凝り固まり、
(2)カルロス・ゴーンという、全体最適の、攻撃的発想ができる
人物を、COO(今日、CEOになった)に迎える必要があった。

『ザ・ゴール』のストーリーで、工場長アレックスも、ジョナ(ゴ
ールドラットの分身)をメンター(導師)として導きを受けます。

【社内の抵抗】
本社と原価計算部門が、アレックスによる「スループットを目的に
した生産性改革」に抵抗し、アレックスが説明に苦労することが詳
しく書かれています。現実も、この筋書きのとおりのことが起こる
のです。(※経営では、いつも、改革の抵抗勢力と惰性は、社内に
ある)

――――――――――――――――――――――――――――――
■5.ここで気軽に、スループット会計的な思考のクイズなど

▼最初に伝統的会計とスループット会計の考え方を対比

その前に、少し予備の説明が必要です。(ここは気軽ではない)

【伝統的会計の方法】
伝統的会計(全部原価計算:標準原価計算)での原価計算では、
(1)加工分の経費(=加工の直接労務費+間接製造費)を、各工
程での、付け加えられた価値(付加価値)とし、
(2)製品1個1個に比例按分(あんぶん)する方法を取ります。
(3)これが、他の(依存)工程を無視した100%稼動を促し、
工程間在庫、又は最終製品在庫が増える理由でした(⇒第4部)

全部原価計算の方法は、実は、20世紀初期に考案されたのです。

20世紀の初期は、
(1)工場の労務は、ピース(個数)ワーカー制度(1個1個の加
工賃を出来高払いする方法)でしたから、
(2)加工の直接労務費は、現在のような固定費ではなく、原材料
への支払いと同じ「変動費」だったのです。
(3)したがってマーケット需要に合わせて減産しても、直接労務
費の、製品への按分(あんぶん)高が上がる、つまり製造原価が上
がることはなかった。(その代わり、労働者の賃金が減る)
(4)ですから、需要を無視して、工程の稼動率を維持し、その結
果無駄な在庫が増えることは、なかった。

【20世紀初頭の、変動費だらけの工場】
我々が「工業簿記」として学ぶ伝統的会計も、20世紀初頭の変動
費の時代は、合理的だった。20世紀初頭は、工場はわずかな道具
や治具を除いてほとんど手作業でした。現代の工場のような機械だ
らけで人が少ない工場とは違う。工場のコストでは80%くらいは
「変動費」でした。この時代は伝統的会計思考でよかった。

【現代の、固定費だらけの工場】
現代の工場は、社員の給料は固定、しかも工作機械や工業用ロボッ
トだらけで「装置産業=固定費のカタマリ」になった。80%くら
いが固定費になる。(小売業やサービス業も同じですね)

【固定費の多い工場では、原価を下げるために部分最適】
固定費の多い工場では、原価を下げるには、各工程の機械の能力を
最大限に使うことが必要になる。工程間、及び最終製品の、過剰在
庫が生じる誘因が、常に働く。しかも、伝統的会計での全部原価計
算では、在庫高の要素を考慮しない部分最適を正当化することにな
る。

▼スループット会計の思考方法と計算

【思考方法】
スループット会計では、「製造原価に、工場での加工分を付加価値
として含まない方法(=限界利益発想)」をとります。
理由は(1)制約工程の能力以上には(2)他の非制約工程を含め
た全体成果(スループット)は生まれないという原理があるからで
す。

【スループットの計算】

ここで、スループットの計算方法を示します。伝統的会計より、ず
っと簡単。「商業簿記」の方法に似ています。ご安心を。

【「書棚」を生産している工場とします】
(1)販売単価         6万円とします
(2)原材料費         3万円とします
製品1個当たりスループット=6万円−3万円=3万円です。
(※原材料のみを変動費とした「限界利益」の概念と同じです。だ
だし、従来型の「限界利益」は、製造費を按分して控除していた)

(3)月間販売数量        100個
スループット合計=3万円×100個=300万円です。

(4)業務費用合計       200万円
 【内訳】直接製造費      100万円とします
     間接製造費       50万円とします
     一般管理販売費     50万円とします
(5)当月営業利益
=スループット合計300―業務費用200=100万円

【たった2つの概念で・・・】
(1)「業務費用」とは原材料をスループットに変換するためのす
べての費用(直接・間接製造費、及び一般管理販売費)という意味。
(2)在庫の価値は、原材料費と同じとします。

これだけです。販売できる数量だけを作り、在庫を増やす誘因が働
かない利益計算です。スループット会計は経営管理のための会計で
す。

つぎに、スループットと制約条件を使った思考プロセスを示します。
スループットの制約条件の意味が、より具体化するはずです。

▼プロダクト・ポートフォリオ(最適解)の思考プロセス

プロダクト・ポートフォリオというと難しく感じますが、複数の製
品(プロダクト)があったとき、(重要:時間当たり)の利益の観
点でどっちをどう選ぶかということです。
以下、AB2つの製品のどちらを、選ぶかのクイズです。

(※製品個々の「貢献利益」の計算方法に似ていますが、「貢献利
益」は原価に製造費を含むので、原価計算でポートフォリオ選択を
間違えます。これが多く見られる。)

【条件】
        (製品A)   (製品B)
販売価格    5000円   2000円
原材料費    2500円   1500円
利益      2500円    500円

どちらを選びますか? この条件では製品Aを選ぶに決まっていま
す。でもなにか、不安が残りませんか?

▼スループットを得るための必要時間という「制約条件」の加味

何か条件が足りないという不安です。何の条件?
足りない条件は、商品Aと商品Bが、スループット(利益)に変わ
るための「必要処理時間という制約条件」の比較計量ですね。

この「必要処理時間=スル−プットタイム」は、
(1)工場でのスループットタイム(原材料の投入から製品が店舗
に販売されるまでの時間)と考えてもいいし、
(2)店舗での販売のスループットタイム(仕入れから店舗展示、
顧客販売までのリードタイム)と考えても同じです。

【スループットタイムの制約条件を加えると・・・】
まとめればスループット(成果であるキャッシュ)を得るまでの時
間です。コンピュータで言えば、入力して目的の結果が出力される
時間です。固定費では、時間はそのまま全体コストですね。

製品Aは制約条件である処理時間に、6時間かかるとします。
製品Bは制約条件である処理時間に、1時間かかるとします。

※単位時間当たりスループットの比較ではどうなるでしょう。
製品A=2500円÷6時間=416円(1時間当たりスループット)
製品B=500÷1時間=500円(1時間当たりスループット)

スループットタイム(制約条件)を加味をすると、製品Bの選択が
正解です。

これが「時間当たりスループットの最大化を図るスループット」思
考です。要はスループットに至る時間、つまり投下資本がマネーに
変換される速度(資本回転の概念)がキーです。ここまで理解する
と、0.01%のグループや、ゴーンに近づきました。制約理論と、
スループット会計(新しい利益評価方法)の結合です。

――――――――――――――――――――――――――――――
■6.ビジネスゲームのルールが変わった

日産のような資本の低収益が許容されたのは、マネーの内部還流を
図る「マネーセンター」が原因であることを示しました。

マネーセンターは1997年以降、あちこちで穴があいた。日産は、
不適合企業になった。80年代までの、特殊に日本的な資本のパ
ラダイム(枠組み)での、企業だった。日産だけではない。日産は、
多くの企業なかの、たったひとつの、代表的な事例です。

資本主義は、マネーの自己増殖の仕組みです。マネーのルール変更
(金融ビッグバン)があれば、基盤が変わり、その結果、全てが変
わる。

経営はキャッシュフロー経営、投下資本回収の速度の追求になる。
そのための方法を与えるのが「スループット会計&制約理論の思考
方法」です。これが、日本では、まだまだ理解されていない。

みんな(1)不況が終われば、(2)価格下落が止まれば、(3)構造
改革をやればと思っている。問題は、その後ですね。「あれ?ゲー
ムのルールが変わっていた」と思うはずです。はっきりと見えます。

チャンスを作るのは、制約理論の思考、ゴーンのスキルもこれがコ
アです。経営領域の「新限界利益の革命」と言ってもいい。

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