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田口ランディのコラムマガジン

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[ 田口ランディ:一人で、できる]

発行日: 2000/11/27

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★★田口ランディのコラムマガジン★★2000.11.27
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「一人で、できる」
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 今日は、糸井重里さんがとある密談のために湯河原にいらっしゃった。
いいな。密談って言葉、なんかわくわくするな。「越後屋、そちも悪じゃ
のう、ほっほっほ」の悪代官みたいだ。

 糸井さんはとても気さくでフレンドリーな方で、話はあっちこっちへ
飛び回る。とはいえ、私と糸井さんの唯一の共通項はやっぱ「インター
ネット」だ。自然とインターネットの話に落ち着く。

 糸井さんは「ほぼ日刊イトイ新聞」というサイトを運営している。こ
のサイトは本当に日刊で更新しているので凄いなあ、と感心する。私の
メルマガは「ほぼ週刊」である。私は自分のホームページを持っていな
い。それは更新し運営する自信がないからだ。

 インターネットのいいところは「一人で、できる」だと思う。だから
こそ私も続けて来れた。一人でできることをコツコツとやっていれば、
自分以外のあらゆる人の力は「自分への手助け」である。こりゃあもう
感謝するしかない。恨むことはない。

「一人で、できるって、いいですよね」と糸井さんが言う。「そうです
よね、一人で、できることの可能性が広がった時代ですよね」「今は、
一人で一生懸命やると目立ちますよね」「そうそう、今こそ、一人で一
生懸命な人が報われますよね」

 急激な情報化が人をイデオロギーから解放している。徒党を組まなく
ても、携帯電話とインターネットがあれば、必要な時に必要な人とだけ
繋がれる。だから、一人で、組織に属さなくても、孤立しないで済むよ
うになった。

 情熱のある一人が存在すればいい。その一人になればいい。すべてを
網羅しなくてもいい。自分が最も好きなことに情熱を傾ければいい。そ
して、繋がればいい。誰かと同じことをしなくていい。それぞれが一人
で、それぞれに頑張れば、一気に世界は面白くなる。

 糸井さんと話していて、そんなことを思い、なんだか嬉しくなってし
まった。

■山田和尚、その後

 土曜日の朝日新聞関西版の夕刊に、山田和尚と「ヒロシマの火、ここ
ろ」の事が大きく掲載されていた。

 今年の春、山田さんが「ヒロシマの原爆の残り火を、日本中に分灯し
て歩く」と言ったときは、ほんまかいな?と思った。「一人で?」「一
人です」「日本中を?」「はい」

 いったい年末までに日本全国歩くことなんて出来るのかなあと思った。
でも、山田さんがやると言うのだからやるんだろうな。しかし、それっ
て、何のため?私のような凡人はすぐに意味を考える。
 
 でも、山田さんはどうやら「原爆の残り火が今だに燃えている」とい
う話を知ったときに、「よし、それを20世紀の送り火にしよう」と思
いついてしまっただけらしい。そこに意味はなかったみたいだ。そうし
たい、と思った強いインスピレーションだけが、山田さんの行動動機だっ
たように思える。

 「20世紀最後の夜に、日本中に原爆の残り火が、平和の祈りの火となっ
て灯るんですよ。それを宇宙から見たら、きっと日本がうんと明るく輝
いて見えるだろうね」そんなことを山田さんが呟いたのを聞いたことが
あった。ふと、そうかあ、山田さんは神様の視点で日本を見てるのかも
しれないなあと思った。神様の眼に映ったら、確かに、祈りの火で日本
が輝いて見えるかもしれない。

 でも、そんなのって、センチメンタルすぎるよな。それで世界が平和
になったらそりゃあ万万歳だけど、そんなの男のロマンじゃねえの。山
田さんを見ていると、そういう思いも去来する。なんとなく複雑な気持
ちのまま、この1年間、それでも山田さんの活動が気になってしょうが
なかった。

 山田さんは本当に一人で歩き出した。でっかいリュックを背負って、
梅雨のときも、真夏も歩いていた(らしい)。時々、携帯に電話すると
「ランディ〜、元気〜!」と、激励してるはずがこっちが元気づけられ
てしまう。

 でも、9月に会った時はさすがに旅の疲れで身体がボロボロで、顔色
も優れなかった。荷物を背負って歩いているから、肩と膝をかなり痛め
ているらしかった。それでも、まだ、山田さんの活動はなんだかイマイ
チ世間からは認められてない。

 説明が難しいのだ。「なぜ原爆の残り火を20世紀の送り火にするの
か」私のように、その意味をみんなが問う。特にマスコミはこの意味が
絶対に必要だ。

 私の熱海の友人が、山田さんのことを知って「分灯」を申し出てくれ
た。その友人ですら「俺は戦中世代だし、原爆にはそれなりの思い入れ
がある。しかし、これにどういう意味が……」と最初は首をかしげてい
た。でも、とにかく山田さんの情熱にみんな納得してしまうのである。
だって山田さんは本気だから。

 分灯式の日、熱海は気持ちのよい快晴。地元のバンドも入って、なん
だか田舎らしいほほえましさで分灯が行われた。やっぱり山田さんはひょ
こひょこと一人でやって来た。

 風をよけるためにみんなが輪になり分灯が行われる。仰々しさも緊張
感もない。「え〜この火は、これから熱海の花火大会の付け火に、結婚
式のキャンドルサービスにと、あらゆる場面で使わせていただきます」
と挨拶が行われる。

 うおう。な、なんというアナーキーな大らかさだ、とあっけにとられ
る。ああでも、こういうことなんだな。山田さんは言った。「原爆とい
う人類最大の災いの火を、平和の祈りの火に転換する」そのためには意
味なんか考えてたってダメなのだ。変えちゃうんだよ、思い切って、世
界を。

「ランディ、まだまだだ。これから関西から九州方面に入る」と山田さ
んは言う。でも、だんだんそのころになると、山田さんの動きが世間を
動かし始めていた。

「あのね、ローマ法王が分灯を受けて下さることに正式に決まったんで
すよ。それから、埼玉では県をあげて分灯に協力してくれて、分灯式に
はオノ・ヨーコさんも参加してくださるんです。それに来年から、広島
の8月6日の灯籠流しには、この火が使われることになってね」

「なんかさ、山田さん、凄いことになってきたね」「そうなんだよ、ラ
ンディ、嬉しいよ」11月に入ってから、なぜか山田さんの行動はどんど
ん注目され始めて、なんだか凄い流れが出来てきた。いったいどうなっ
ちゃったんだよ、って感じだ。

 山田さんの分燈の旅の鳥取までの距離。
 長野県神宮寺より、岐阜県高山市まで、ウオーク1291.6Km、カヌー
97.1Km、自転車 1856.2Km、車 138.9Km、電車 57.4Km、フェリー 584Km、
total 4025.2Km

 妙なもので、どんどん「火」の波紋が広がってくと、誰もそんなに意
味を問わなくなる。というよりも、この行動こそが意味になってしまう。
いま、こうして何かが動いていること、そこにこそ、非言語的な意味が
存在するようになってしまう。これが、もしかして祈りってことなのか
なあ。私にはまだよくわからない。わからないけど、凄いなって思う。

 12月の今年最後の満月の夜(11日)には「ひろしま2001」っていう
イベントが企画されていて、山田さんもそこに行く。平和行脚の人々が
広島に運んでくる火を種火とし、それを灯篭に点火して川に流し、今世
紀最後の満月の日に死者の霊を慰め、平和を祈るそうだ。

 相変わらず、私は平和イベントというのが苦手である。だけど、今年、
8月6日に行った広島の夜のあの灯籠流し、そしてそこに流れていたヨー
ヨーマが演奏していたバッハの曲を思い出すと、なぜか切なくなる。あ
の夜、生きている人と亡くなった人が私の中で交差していた。

 今世紀最後の満月と、不思議な静謐さを湛える原爆ドームのシルエッ
ト、そして灯籠の火。それはきっと忘れ難いような美しい風景だろうな
あ。それを眼にしたときに、自分の中にどのような感情が湧いてくるの
かを、体験してみたい、そんな気持ちになっている。

 そんとき、私はこの世界に、何を思い、何を感じるのか。体験してみ
なければわからない。もしかしたら怖いのかもしれない。なにが……?
わからない。あんまり世界をいとおしく思ってしまうことが怖いのかも
しれない。

 山田さんはいつも言っていた。「僕は一人でできることしかしないで
す。一人でできることをやっていれば間違いない。一人でできることを
し続けていれば、続けられる。ひどく遠回りな方法に見えるかもしれな
い。だけど、実はこれが一番の近道なんです」

 糸井さんは、山田さんの話を聞いて「凄いですね、その人」と感心し
てくださった。「一人で、できる。まさに山田さんが体現してますね」
と。

 実は糸井さんと密談した旅館の部屋、私が今年の2月に初めて山田和
尚と会って密談したのと同じ部屋だったのだ。不思議な偶然だなあ。来
年はもしかして、糸井さん、なんか凄いこと初めちゃうのかな?

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 私的田口ランディ通信 →→→ メール読者のみなさまへ
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●竹筒の火のセレモニー
日時 2000年12月11日(月)
満月 午後5時〜
場所 原爆ドーム対岸
「平和の火・こころ」を1000客の灯籠流しと、2001本(予定)の竹筒に灯し、被
爆者の皆様に対し慰霊の心をささげます。それらの火が、静かで、清らかな瞬間を
生み出します。やがて空には20世紀最後の満月が輝きます。竹筒はセレモニー終
了後、全国の「かぐや支援ネットワーク」メンバーにより竹炭に焼かれ、以後の全
国の様々な催しで、この竹炭の由来と世界調和のメッセージをこめて、多くの方々
にプレゼントされます。

参加費 無料 準備のためのボランティア募集中です。
主催 OPEN JAPAN 代表 山田和尚 
事務局
〒657-0033 神戸市灘区徳井町1-2-33 神戸元気村内
tel. 078-842-2070   fax. 078-842-2071 
〒730-0051 広島市中区大手町1-5-31-303
tel. 082-543-6088   fax. 082-543-6177
http://www.peace2001.org
open-j@peace2001.org


■田口ランディは11月29日〜12月6日まで旅行のため留守になります
 来週はお休みです

■がーん。先週号で、布施英利さんの名前を間違えて布施英人と書いてしまいまし
た。
 布施さん、ご、ごめんなさい。
 布施英利サイトB http://www.fuse-b.com

■イベント「神話を語り継ぐ人々」
(ワタリガラスの神話の語り部 ボブ・サム)
 12月9日(土)13時開演
 場所 明治神宮会館
 *このメルマガでおなじみのアイヌのアシリ・レラさんがゲスト出演します
 問い合わせ先 オフィス・テン 03-3828-5070

■オンラインブックサービス「bk1」において単行本『ぐるぐる日記』(筑摩書房)
『からだのひみつ』(メディア・ファクトリー)の予約販売が始まりました。
(田口ランディの「救われる読書」のコーナーに案内が出ています)
  http://www.bk1.co.jp/

■オンラインブックサービス「bk1」およびクロネコブックサービスにおいて恋愛短
編集『ミッドナイト・コール』の予約販売中です。
  http://www.bk1.co.jp/
  http://www.bookservice.co.jp/

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