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HIDEKIWADA[2003/04/09] 死ぬのが怖くない人たちの犯罪をどうするか
発行日: 2005/4/9━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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最近物騒な事件が多いですが、昔と比べ殺人を犯す人間の心理状態も変化をみせて
います。そんな、死すら恐れない殺人者をどうすべきかを、日本社会の問題点もふま
え訴えた今回の和田エッセイです。またテレビのレギュラー情報もお送りいたしま
す。
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◎『なるほどラボ』テレビ大阪 毎週土曜日レギュラー 夕方18:30〜19:00
◎『情報ツウ』日本テレビ系 4月15日、22日、29日、金曜日 朝8:00〜10:30
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■メルマガエッセイ―――――――――――――――――――――――――――――
【 死ぬのが怖くない人たちの犯罪をどうするか / 和田秀樹 】
仙台の中心部で、無職の男が、トラックをアーケード内で暴走させて、3人を殺
し、計6人が死傷した事件が起こった。
報道を読む限り、「その日暮らしに嫌気がさして、どうせ死ぬなら」とトラックを
暴走させたらしい。
最近は、家族を何人も殺す心中未遂事件(結果的には犯人が生き残って大量殺人の
形になっている)も何件が起こっている。
少し古い話になるが、大阪池田市の大量児童殺傷事件でも犯人の宅間守は、どうせ
死ぬ気と言明し、早く死刑にしろと言って、控訴も取り下げた。
アメリカでは、この10年来、suicide by copということばが多く取り上げられる。
自殺志願者が銃などを乱射して、最後にやけくそとうさばらしをした上で、警官に撃
ち殺してもらう形で自殺をとげるというものだ。まさに銃社会のもっとも怖いところ
をついたもので、本人の自殺のために、2けたの人間が巻き添えになる。
イスラム世界で多発する自爆テロを見てもそう感じられるように、世の中死ぬのが
怖くない人ほど怖いものはない。
やくざや不良少年は何をするかわからないところがあるが、通常、彼らは死ぬのが
怖いので、こちらのほうが強ければ何とかなる。あるいは、重罪化や死刑が抑止力に
なり得る。
しかし、この手の死ぬのが怖くない人たちは、死刑でさえ望んで受ける。逆に死刑
になりたいから、一人じゃ足りないと何人も殺しかねない。
もちろん、あとで多少精神的に安定してから死ぬのが怖くなって、死刑を逃れたが
るかもしれないが、そのときの気分としては死んでもいい、むしろ死にたいと思って
いるのだから、死刑が抑止力にはならない。
ついでにいうと、どうせ死ぬつもりの人間が巻き添えに人を殺す以外に、快楽を求
めて連続レイプなどをやらかさない保証はない。昔、三菱銀行にたてこもった梅川と
いう男がいたが、銀行員に自分の見ている前でセックスを強要して、ソドムの市を演
出したとうそぶいて死んでいった。死ぬ気になれば人間なんでもさせられるし、でき
るのである。彼らは死刑になるためにレイプした相手をわざと殺すかもしれない。
しかし、被害者はいい迷惑だ。レイプされて、あるいは人前でセックスをさせられ
て、死ぬことがなくても、一生心の傷が残る可能性は高い。
では、どう対処すべきなのか?
私は、この手の犯罪は、今後も増えると見ている。
一つは、貧富の差の拡大、国の予算不足による低福祉、そしてリストラ化や合理化
により、正社員でない人間(要するに会社というある種の擬似家族に属していない人
間)が増えていることなどから、こういった「生きていても仕方がない」と思う人間
は増えていく可能性が強い。
すでに東京学芸大学の山田昌弘教授が指摘しているような、希望格差社会は出現し
ている。階層が下の人間は、這い上がる夢を捨て、勉強や努力をしなくなっている。
心理的にはアメリカのスラムと同じだ。この社会で、アメリカ型、スラム型の犯罪が
ふえるのは当然予測できる。また、歴史的な事実としても、貧富の差が拡大するほど
犯罪が増えるのも明らかになっているのだ。
さらにいうと、失うものがなくなっている。昔であれば、やけくそで犯罪を犯せ
ば、終身雇用の枠組みを失い(自分だけでなく、息子なども終身雇用のシステムから
排除されることになることが多かった)、地域社会から排除された。あるいは、一族
や家族がさらし者にされた。自分だけではなく、家族が迷惑するのを恐れるのも十分
な抑止力だった。
しかし、今では、その手の抑止力も働かない。もともとが終身雇用の枠組みをはず
れており、子どもについてもまともな就職を期待していない。地域社会もまともに機
能していない。さらに一族をさらし者にすると差別だといって断罪される。
もう一つは、マスメディアの発達で、そういう「生きていても仕方がない」と思う
人間に、こんな死に方もあると伝えてしまったことだ。最後にぱっと花を咲かせてな
どと思うこの手のやけくそ人間には、毎日報じられるニュースがむしろ刺激となって
しまうだろう。
では、どうすべきなのか?
もちろん、社会のあり方を見直すのは大切なことだ。
本当にアメリカ型社会がいいのかを考え直す必要はある。貧富の差を徒に拡大し、
ダメな人間は、日雇いでいいという考え方では、犯罪が増えるのは当然だ。犯罪のリ
スクは高まるが、金持ちはリッチにやれるほうがいいのか、累進課税は不愉快だし、
どうでもいい人間を終身雇用にするのはもったいないけど、犯罪が少ない社会がいい
のかをもう一度考え直す必要はある。
しかし、これはすぐには難しい。また、こういう人間が増えるといっても多くて年
間100人とかの話だろう(もちろん、100人も出れば社会不安が起こるが)。2000万人
くらいはいると想定される、いわゆる社会の負け組の人の数と比べて微々たる物だ。
社会の負け組、精神的スラムにいる人のうち99%以上は、それなりに善良にやって
いるのである。100人の犯罪を減らすために、社会的コストをかける必要があるのか
という論議は必要だ(私は、それでもあるという立場ではあるが)。
現実には、そういう人を少しでも減らすために必要なのはアメとムチだろう。
ムチというと当然厳罰化である。
江戸時代に近松ものがはやって心中が大流行したことがあった。この際に幕府は心
中ものの上演を禁止したのだが、それ以外に確実に心中の厳罰化を行った。
心中で死んだ者の葬儀を禁止したり、片方が生き残った場合は殺人者扱いしたのだ
が、両方生き残った場合は、日本橋のたもとにさらし者にして、身分をおとしめた上
で、当時の最下層の人々の手下として働く苦役につかせたという。それによって心中
の多発現象は沈静したというのだ。
死ぬのが怖くない人にとっては、死刑は厳罰ではない。
何らかの苦役を用意したり(私はそのために北朝鮮と国交を回復して、北朝鮮で強
化労働刑を受け入れてもらうというような考えがあってもいいと思う)、ある程度以
上、本当につらい刑を(これをいうとアムネスティなどが怒るのだが)用意すべきで
はないかと考えるのだ。
ただ、もちろん厳罰だけで解決する問題ではない。
やけくそを起こす人の多くが、うつ状態に陥っていることを考えるとメンタルヘル
スも重要だろうし、もう一度、地域社会が、死にたいというような人の面倒をみるよ
うな温かさも必要だろう。なんらかの形で仲間なり、聞いてくれる人がいるなりとい
うことになれば、この手の人がやけくそを起こす確率はかなり減る(もちろん、そん
なに簡単なことではないが)。
本来なら、この手の無職やホームレスに対する福祉はお金を渡すことより、何でも
いいから仕事を用意して、仲間を作らせることだろう。少なくとも、この手の犯罪対
策には効果があるはずだ。
日本の場合は、右の人は厳罰化だけをいい、左の人は優しさだけをいうが、両方な
いとこの手の問題は解決がつかない。
もちろん、アメとムチ以外の対策もいくつかある。
一つは、治安の強化だ。言動がちょっとおかしいというような人がいる場合、その
人を監視するシステムも必要だろう。死にたいようなうつ病の場合は、急にひきこも
ったり、やせたり、顔つきが変わることは珍しくない。そういう人を何とか医療に結
びつけることも大切だ。ただ、これも人権屋がうるさいことをいうかもしれない。で
も、犯罪を起こさなければ、本人も含めてハッピーなのだ。
二つ目は、メディアの報道姿勢だ。もちろん、こういう犯人をヒーロー扱いするの
ではないが、やはり、最後に一花咲かせて死にたい人間には刺激になる。こういう事
件を一度は報じるにしても、あまり大々的に報じるべきでないし、動機面でも「死に
たいからやった」ということはあえて報じないに越したことはない。
希望格差社会で、やけくその人が増えている現状では、考え得るありとあらゆる対
策をとらないと、この手のやけくそ型犯罪は増え続ける可能性があることをあえて警
告したい。
それが希望格差社会の社会的コストで、国際競争力を保つためには、ある程度、人
が死んでも(実際に自殺がいくら増えても放置しているのだから)仕方がないという
のなら話は別であるが。
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■編集後記―――――――――――――――――――――――――――――――――
桜はたいへん好きなのですが、花粉症となってから、一刻も早く春が過ぎ去ってほ
しいと願うばかりとなっています。今一番したいことは、スギ花粉がなきに等しい沖
縄への逃亡です。多岐に渡る大量の仕事は責任もってもっていくので誰がつれていっ
て…。
あと個人的になりますが、今回の和田エッセイはたいへん好みなのですが、皆様は
どうでしょう?
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