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HIDEKIWADA[2004/12/22]愛国者がいないと学力は落ちっぱなし
発行日時: 2004/12/22━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 和田秀樹公式 HIDEKIWADA.COMマガジン ■ 発行部数:9041 2004年12月22日号
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・編集後記
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■今号のメールマガジン―――――――――――――――――――――――――――
今年最後を飾るHIDEKIWADA.COMマガジンは、今年多く取り上げられた日本の教育方
針について。日本の学力低下を決定的にしたOECD調査、TIMSS調査から、日
本教育だけでなく国としての衰退も示唆する危惧を訴えるエッセイです。またラスト
スパートをかけるように新刊本も多くでていますので、新着情報もお見逃しなく!
■新着情報―――――――――――――――――――――――――――――――――
◆TV情報
◎『情報ツウ』日本テレビ系 12月27日(月)8:00より
◆ラジオ情報
◎『ニュースタックル2004』MBSラジオ 12月31日(金)
12:00より(15時頃から出演予定)
◆新刊情報
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■メルマガエッセイ―――――――――――――――――――――――――――――
【 愛国者がいないと学力は落ちっぱなし / 和田秀樹 】
最近発表された学力低下は、予想されたものとはいえ、私を震撼させるのに十分
な内容だった。
まず2003年度のOECDの調査では、2000年調査で一位だった数学的リテ
ラシーが6位に転落、科学的リテラシーは2位のままだったが、読解力では8位から
14位まで順位を落とし、下げ幅は参加国中最大だった。
すると数日後に今度は国際数学・理科教育動向調査の2003年度版(TIMSS
2003)が発表された。OECDの調査では応用力を主に調べようとするのに対し
て、TIMSSのものは基礎知識を対象にするとのことだが、これについては199
5年調査と比べて、99年調査の成績がひどいものだったので、私はたびたびこのデ
ータを引用していた。
いっぽう、文部科学省や教育学者は学力低下が起こっていない根拠として、往々に
してOECDの2000年調査の結果(数学的リテラシー1位、科学的リテラシー2
位、読解力8位)を利用していた。
TIMSSの調査では順位の低下は大したことはなかった。前回4位だった中学2
年の理科が6位、数学は5位のままだ。しかしたとえば数学は81年調査の際は1
位、95年調査では3位ということを考えるとけっして喜べるものではない。
それ以上に問題なのは、負ける相手である。OECD調査でも、数学では韓国と香
港に抜かれてしまったし、TIMSS調査では、数学、理科ともシンガポール、韓
国、香港、台湾に負けている。
京都大学経済研究所の西村和雄教授と慶応大学経済学部の戸瀬信之教授の調査デー
タでは、99年当時の大学生の学力では中国に大きく負けていたから、OECDにも
TIMSSにも参加していない中国の学力もおそらく日本には勝っているだろう。少
なくともTOEFLの平均点では大勝をしている。仮に日本が勝っていたとしても、
中国の沿岸部の子供には負けているはずだ。
何が言いたいかというと、日本の学力は東アジア最低だということだ。
幸いなことに北朝鮮にはたくさんの飢えのために学校に行けない子供がいるらしい
から、負けてはいないと信じるが、いずれにせよ、東アジアで北朝鮮の次に勉強がで
きない国という事実には変わりがない(ついでにいうとTOEFLの成績でもアジア
――東アジアではない――で日本に負けている国は北朝鮮だけだった)。
日本は何かにつけて北朝鮮を敵視するし、敵視されても仕方がないことを北朝鮮が
やっているわけだが、北朝鮮の脅威より、韓国や台湾や中国に学力で負けているとい
うことのほうがはるかに大きな脅威だと私には感じられてならない。
もう一つの大きな問題は、負けているという以上に低下のトレンドにあることだ。
OECD調査では数学や読解力の順位を大きく落としたので、低下のトレンドがは
っきりしているが、TIMSSのたとえば中学2年生数学の調査では、台湾がわずか
に平均点を落としていることをのぞけば(ただし、統計的な誤差の範囲である)、シ
ンガポール、韓国、香港は平均点を上げている。それなのに日本は9点も点数を下
げ、統計的な誤差とはいえない落ち振りである。
TIMSS調査では、学力だけでなく、勉強に対する態度や勉強時間の点でも問題
が明らかになっている。
この2003年調査の詳細はまだはっきりしないが、95年調査と99年調査をく
らべると愕然とした差がある。
中学2年生で、学校の外に出ると塾も含めて1秒も勉強しない子供の割合が28%
から41%に激増している。平均校外勉強時間も2.3時間から1.7時間に低下し
て、調査国中下から3番目だった。
おそらく、2003年調査の詳細が明らかにされると、勉強しない子供の割合も平
均校外勉強時間も、まだ増え続けているだろう。
つまり学力低下は現状の問題というより、先にいくほどひどくなることが予想され
ていることなのである。このことはきわめて意味深いことである。
実は、TIMSSの95年調査の段階では、日本の中学2年生の数学力は2位であ
ったし、理科は3位だった。当時、学力低下をいうものは誰もいなかった。この時点
で、平均校外勉強時間が世界平均を大きく下回っていたことも、学校の外で1秒も勉
強しない子供が28%もいたのに、誰も問題にしなかったのだ。
このとき中学2年生だった子供が、いま大体23歳くらいになっている。だとする
と、フリーター問題やニート問題を起こしているのは、学力がまだ大丈夫だと思われ
ていた、95年調査の世代か、その上の世代の問題ということになる。実際、当時で
も家で勉強しない子供が28%もいたのであるから、努力や我慢そのものができない
子供がそれに近い数いても不思議ではない。それが41%になる1999年調査の中
学2年生が大学を卒業するのは早くて2007年。まだ先の話である。そして、さら
に低下した2003年調査組が卒業するのは2011年の話である。
まだまだ当分の間、使えない若者が社会に出続けるのだ。
この原因はさまざまに分析されているが、先行きは暗い原因ばかりだ。
まずゆとり教育の影響であるが、2003年調査でさえ、中学2年生はもちろん2
002年施行のゆとり教育の影響はほとんど受けていない。95年調査、99年調査
に関しては、むしろ1989年改訂、92年施行の第二回ゆとり教育(77年にもカ
リキュラムを減らしている)の生徒たちである。
実は、この2回目のゆとり教育を行ってから、学力低下が目立つようになったとい
う現場の声は強いのだが、それなのに、2002年に3回目のゆとり教育を断行して
しまった。2002年以前のカリキュラムに戻せという声は強いが、実はまだそれで
は手ぬるいことが、最近の調査の結果で明らかになったといえる。少なくとも198
9年改訂の第二回ゆとり教育以前にもどす必要があるのだ。
もう一つは、高校全入問題である。80年代後半に第二次ベビーブームに合わせ
て、高校に行けない中学生をなくすべく、高校が大増設され、定員も増やされた。結
果的にこのベビーブームが去って、高校が大幅にだぶつく。しかも公立高校がであ
る。これから生徒の数が減るのがわかっていた私立と比べて、子供たちの救済を引き
受けさせられたのが公立高校の大増設だった。当時はバブル期で景気もよかった。
結果的にクラスでびりでも地元の最低ランクの公立高校の普通科に行けるという県
が、大多数になった。もともと不良学校と言われたような公立を落ちた人が行く私立
高校や、あるいは実習がきびしく宿題も多い工業高校や商業高校が敬遠されて、本当
に勉強する気のない人間の溜まり場に、最低ランク公立高校普通科が低落していっ
た。
勉強しなくても公立高校に入れるのなら、勉強のインセンティブは大きくそがれ
る。地方に行くとその話が散々聞かされるのだが、今の下半分の中学生が勉強をしな
いのはそのためだという声は強い。
しかし、少子化はまだ続く。2007年には大学の入学希望者と定員が逆転する。
そうなれば、多くの高校生の勉強のインセンティブまでそがれてしまう。
つまり今のままでは学力はおちっぱなしなのである。ちょっとやそっと授業時間を
増やして解決のつく問題ではない。ほうっておくと20年くらい日本の若年労働力は
しずみっぱなしだ。
逆に今でも競争力をつけてきている韓国や中国、シンガポールは将来ますます有望
ということになる。抜かれるのは時間の問題だが、その後、当分逆転の芽はない。
さらにすごいのはフィンランドだ。この国は、2002年度、2003年度、20
04年度とWEF(世界経済フォーラム)でアメリカをおさえて世界一の競争力を誇
っているが、今後の人材まで万全であることを示すようにOECD調査で数学的リテ
ラシー2位、科学的リテラシー1位、読解力1位と実力をみせつけた。
この国は、子供だけでなく大人も勉強して、理数系に興味をもつことで国力を立て
直すことを図ったことで知られているが、そのおかげでインターネットや携帯の普及
率が世界のトップレベルとなり、世界一の携帯電話会社のノキアや世界二位のOSリ
ナックスを産んだことで知られる。
それでも彼らは手を緩めず、90年代の半ばからは教員を修士卒レベルにしてさら
なる教育レベルの向上をはかった。学力低下のおりに土建工事のために義務教育費を
削ろうとするどこかの国とは大きな違いだ。もちろん福祉もやり続けている。
フィンランドにしても東アジアの国にしても、勉強のできる人間はすなおに尊敬さ
れる。そういう価値観がある。韓国にしてもタレントは一流大学卒が喜ばれる。
アメリカでさえ、最近映画のヒーローはランボーのようなマッチョ型から天才が主
役が増えている。これだって勉強できるのがかっこいいと子供に吹き込むという国策
が隠れているのだろう。
ところが日本はルックスだけがとりえのバカタレントのほうがいまだに人気が高い
し、テレビの内容もまさに勉強するなといわんばかりだ。彼らがリッチなので、子供
もそれにあこがれる。
日本でも愛国的なスポンサーや愛国的な映画監督などがでて、勉強ができるほうが
かっこいいという番組をどんどん作るべきだし、勉強するなという売国番組には不買
で対抗すべきだ。
私が教育の向上と改善などを訴えるために今年から主催している『学力向上!親の
会』も、会員が増えれば、そういう消費者運動も拡げていきたい。
しかし、そういう風になる前は、私が愛国的大美人女優とスキャンダルでも起こし
て(おそらくはただの芝居で、実際には不倫をするわけではないだろうが)、勉強し
ていればいかに女性にもてるかの範を示したいところだが、それ以前に今の調子で
は、そんな愛国的女優などでてくるわけはないだろう。
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ていける。HWIの研究員でもある植木理恵さんは、東大大学院博士課程を修了した新
進気鋭の心理学者です。
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■編集後記―――――――――――――――――――――――――――――――――
早いもので、2004年も年の瀬。今年もさまざまなことがありましたが、皆さんはど
んな一年でしたでしょうか?HIDEKIWADA.COMマガジンも2004年最後のメール配信で
す。来年も和田のエッセイとともに気持ちよくHIDEKIWADA.COMマガジンをお送りして
いきたいと思います。
それでは皆さん、よいお年を。
次号は1月上旬頃に発行を予定しておりますが、年末年始のため日時が若干早まっ
たり、お休みする可能性もございます。ご了承くださいませ。
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