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『大人のための勉強法』などの著者である精神科医、和田秀樹氏のエッセイ・最新情報等が掲載されるメールマガジンです。




HIDEKIWADA[2004/8/9] 無能な首長は何をやらせても無能

発行日: 2004/8/9

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 ■ 和田秀樹公式 HIDEKIWADA.COMマガジン ■ 発行部数:8462   2004年08月09日号
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 ・編集後記

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 今回のエッセイは、教育問題と政治の絡みについて和田が考察しています。
 また、雑誌やウェブマガジンで連載が好評だった公開カウンセリングコーナー
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■新着情報―――――――――――――――――――――――――――――――――

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■メルマガエッセイ―――――――――――――――――――――――――――――

【 無能な首長は何をやらせても無能 / 和田秀樹 】

 とある人から(この人はふだん私の敵と思われている人であり、向こうのほうが
より私のことを憎んでいるかもしれない)情報をもらって、小泉首相というのは、
どこまで教育を軽視しているのかとあきれてしまった。

 この人の親分の森喜朗氏も首相在任中、学力低下が進行中だというのに、これ
からは知育より体育といって問題になったが、小泉首相もブームに乗じて米百俵の
話を勝手に解釈した。この話は、貧しい藩が米百俵の援助をもらった際に、それで
腹を足すのを我慢して、その後の教育のために使ったという美談なのだが、小泉
首相は、後半の話をすっ飛ばして、民衆が我慢することの大切さを説いていた。
そして、子供の本離れが進む中、図書館の予算を減らしたり、教育を完全に軽視
したりしている。もちろん、ゆとり教育の導入も(これは文部科学省が先に
レールをひいていたようだが)黙認した。

 その情報で得た次なる小泉首相の教育軽視は、地方への財源委譲である。
 小泉改革の基本方針は「官から民へ」「国から地方へ」ということで、後者の
具体化として、平成16年6月4日に出された「経済財政運営と構造改革に関する
基本方針2004」の中でも、平成17年度から18年度に3兆円程度の地方への
税源委譲が謳われている。

 私自身は、以前から地方分権のほうが、地方地方で、試行力が発揮できて
いろいろなことが試せるので、方向性としてはまったく異論はないが、しかし、
この中身がひどいのだ。

 平成16年現在、国からの地方向け国庫補助負担金は約20兆円で、社会保障関係が
約12兆円、文教・科学振興が約3兆円、公共事業関係が約5兆円などとなっている。

 今回の税源委譲案の問題は、委譲予定の3兆円のち2.6兆円までが、義務教育の
国庫負担金のような文教予算であることだ。仮にほかの4000億円の財源が文教
以外の予算から回ってきたとしても、文教予算を増やせる上限はその程度という
ことになる。逆に、それを減らして公共事業や福祉に使う気になれば、かなりの
金額を自治体が得ることになる。つまり、教育予算に関しては減らす方向の
選択肢しか事実上残っていない予算案なのである。そうでなくても、赤字の貧しい
自治体が多いのだから、そんなことをすれば各県が教育予算を減らすことは
十分予想できることである。

 逆に公共事業の予算を財源委譲していれば、公共事業の縮小や教育予算の拡大に
充てられたのであろうが、それをすると地方のほうで公共事業の予算が決められて
しまって、中央への陳情の必要がほとんどなくなってしまう。それでは国会議員や
中央官庁の力が相対的に弱まってしまうので見送られたというのは私の邪推でない
と信じる。

 小泉首相と同じようにバカと思われているブッシュにしても教育にだけは熱心で、
ヒスパニックが多く、教育レベルの低さが問題になっていたテキサス州の教育を
建て直し、全米でも有数の教育州にしたし、減税を繰り返し、軍事費を膨張させ
ながらも教育予算だけは増やしている。私がいくつかの本やこのエッセイでも
何度も書いているように諸外国では、教育予算は増える方向に向かっている。
先進国が教育重視であるのに、日本は将来どうなってもいいようだとしか思えない。

 右翼の連中も君が代と日の丸の強制には熱心だが、教育レベルの向上には不熱心
だ。でも、このまま韓国や中国に教育レベルで負け、製造業で負ければどうなる
のか? 頭を下げないと日本製品が買ってもらえなくなれば、北朝鮮の現状と似た
ようなものだ。韓国の会社が日本企業を買収し、社長の座を射止めた場合、
日の丸や君が代をあげていれば、出世ができないということもありえない話では
ない。そうなった場合、戦後の日本人がアメリカ人の言いなりになり、魂を売った
ように、出世のために日の丸や君が代を捨てる人の少なくないのではないか?
そして、日本人は韓国人に差別を受けるようになる。とは言っても、向こうの
人間のほうは教育レベルが高く、こちらが低いのであれば差別されても仕方が
ない。彼らがどれだけ差別的(日本では差別反対を言うくせに、国内では出身地や
家柄による差別が平気で行われる。在日の人が本国に帰ると受ける差別を考える
と、彼らが日本より経済が上になった際に日本を差別することは当然予想できる)
なのかを考えたことがあるのか?

 教育レベルの低下はまさに売国的行為なのだ。
 さて、国のこの動きに対して優秀な知事とそうでない知事の差がはっきりして
いる。
 今回のことは総務省と文部科学省の権益争いという要素があるので、旧自治官僚
の知事は軒並み賛成のようだ。地元の人間より、自分の出身である官庁の権益を
大切にするというのは、官僚上がりの悲しい性としか言いようがない。

 実際、今回の件については、できが悪いと私が思っている知事は反対している。
 たとえば、東京都の石原都知事は、5月14日の「地方分権改革に関する
東京都の基本的見解」で、義務教育の水準確保のため、国が責任をもって財源を
保障すべきであり尊属が必要と明言している。これを受けて長野の田中知事(私の
みるところ、病気でスケベができなくなって、正義をやることで自己愛を満たす
ことに燃えているというという話を聞いたことがあるが、ことの真偽はともかくと
して、自己愛を満たす以外、つまり名誉のために、私利私欲を捨てているという
点でいちばん信用できる知事である)も生活保護や義務教育のように憲法で保障
されたものについては国がきちんと金をだすべきだという正論を吐いている。

 あとは、鳥取県の片山知事で、お金をいくら使えるかより、もらったお金が
自由に使えるほうが地方分権の趣旨にかなっているというような意味の発言を
している。

 実は総額裁量制といって、国から与えられた教育費用のかなりの部分を自治体が
自由に使えるようになった。たとえば給与の総額が決まっている場合、国の基準
より給料を減らす代わりに、教師の数を増やすということができるようになった
のだ。財源を維持しながら、地方の裁量に任せるほうがはるかに安全だ。財源が
確保できなければ、地方が教育予算を減額するだろうが、財源だけは確実に
あれば、どう使うかは地方の工夫次第だからだ。

 それに対して、自治官僚出身者は軒並み賛成しているのだが、どういうわけか
通産省(ここはゆとり教育反対で頑張ってくれている数少ない中央官庁である)
出身の大田大阪府知事も、やはり賛成している。この人は私に言わせると何を
やらせてもだめな人だ。わが故郷の大阪がこの人にぼろぼろにされるのは情けない。

 発言の内容がまたすごい。ほかの賛成の人は前に決まったことだからとか、
少子化で教員が減るのは当たり前なので、その予算を自由に使えるようにして
ほしい(減らす口実をちゃんと用意している)などと一応筋の通った賛成案を
出しているが、大田氏の発言は、「3兆円を積み上げるには、どうしても義務教育
国庫負担金というところに議論がいかざるを得ない」と7月6日の記者会見で
語ったそうだ。今度は国会議員になろうとしているとのことだが、公共事業費で
なく、教育予算でないと財源委譲はできないという政府(そして官僚や政治家の
思惑)の言いなりになっている。それだけ教育を低く見ているのだろうが、許さ
れるべきことではない。

 岡山出身の中日ファンであるこの人は、よほど大阪を嫌っているらしい。
 前は、石原都知事が銀行税を導入した際にさっさとまねをしようとして、銀行に
嫌われて、三和が東海と合併した際にも本社を名古屋にもっていかれたし、住友が
三井と合併した際も東京にもっていかれて、大阪にはメガバンクの本社がない
状況を作ってしまった。三和や住友のほうが東海や三井より上なのは明らか
だから、これは銀行のことを考えていない府知事に対する不信任の側面もあった
だろう。銀行というのは不良債権を返し終われば業務純益が1兆円にも対する
企業だ。大阪の税収を考えても痛すぎる。ほんまにアホは困る。「東京で銀行税を
課すんやったら、大阪はやらへんから残って」となぜ言えないのか?もちろん
大阪を愛していないからだろう。

 そして今回は大阪の教育をぐちゃぐちゃにしかねない。赤字府政の建て直しが
教育予算を減らすことであったら(国からの負担金をよそに回すと形式的にそれ
ほど減らしたように見えないのだ)、大阪の将来はない。
 そこまで国に媚を売りたいのか?
 これではアメリカの大学の教授と引き換えに、日本の銀行や会社をばたばた
つぶし、アメリカのハゲタカファンドを喜ばせた某大臣とそっくりだ。

 国会議員になった際の利益が大事で、そうなった際に公共事業費を国の手元に
おいておかないと自分のところに陳情が来ないから、あのような発言をしたと
したら、実は無能知事ではなく、非常に戦略的な知事と言えるだろう。
 それでも東京にいる(これも裏切りといえるのでしょうかね?)大阪人の私と
しては、この人が本当に許せない。


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■編集後記―――――――――――――――――――――――――――――――――

 とにかく暑い日々が続いています。外へ出かけて遊ぶのも大変なので、涼しそう
な水族館に行ってきました。気がつくと夏も後半分ぐらい。久々に旅行へ出かけら
れたらなぁと仕事を片付けています。

 次号は8月下旬頃に発行を予定しております。ご期待ください。
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