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『大人のための勉強法』などの著者である精神科医、和田秀樹氏のエッセイ・最新情報等が掲載されるメールマガジンです。




HIDEKIWADA[2004/1/16] インテリのためのニュースショーは可能か

発行日: 2004/1/16

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 ■ 和田秀樹公式 HIDEKIWADA.COMマガジン ■ 発行部数7476    2004年01月16日号
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 ・編集後記

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 今号では、和田が最近自信をもって出した本『数字のどこをみてるんだ!』
(宝島社)と関連して、増税がなぜ不要なのかということについて、数字の
データを織り交ぜてわかりやすく解説するエッセイをお届けします。
 また、受験生を持つ親や教育関係者に向けての「学力向上!親の会」も
入会受付開始しました。このメールマガジンでは、全てをお伝えきれないので
ぜひ、ホームページの方もご確認ください。

■新着情報―――――――――――――――――――――――――――――――――

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発足し、新規会員募集を開始しました。詳しい内容、ご入会方法は、
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■メルマガエッセイ―――――――――――――――――――――――――――――

【 インテリのためのニュースショーは可能か / 和田秀樹 】

 自己宣伝になるが、私の監修という形で『数字のどこをみてるんだ!』(宝島社)
という本を出した。
 私が前からやりたかった企画であり、コメントの大部分は私への取材によるもの
だから、著書同様に考えてもらいたいが、いずれにせよ、世間の常識を覆す面白い
数字が並んでいると自負している。

 ところで、昨年末の一般庶民にかかわる最も重要な話題として年金改革がある。
 政府与党案では、保険料率を現行の13.58%から平成17年度までに18.35%(労使
折半)まで引き上げ、給付水準は現行の現役世代の平均所得の59.4%から50.1%に
まで引き下げるというものだ。

 取られる分は、大幅に増えるのに、もらえる分は大幅に減らされる。
 また払うほうは労使折半なので、企業の側の負担も増える。
 そうでなくても、人件費の削減に躍起になっている企業は、それを増やしたく
ないことや、給料から取られる金額が増えるとそれだけ、従業員のやる気がなく
なることを理由に、むしろ年金や高齢者福祉の財源は、消費税をあてろと主張
する。そこで、日本経団連は消費税の18%までの増税を主張している。

 読売新聞なども、増税を受け入れる覚悟をしなければならないという囲みの
特集を連日続けていた。

 ただ、私にしてみればちょっと待てよということが数字を見る限りいくらもある。
 まず、一つは増税が消費税でなければいけないと決めつけていることである。
 83年までは、賦課制限(最高で所得の80%)があったにせよ、所得税の最高税率
は75%、住民税のそれは18%で最高税率は93%(税金が所得の80%に満たない間は
増えた所得の93%が税金になったということ)だった。それが84年に88%に、
87年に78%に、89年に65%に、そして99年には50%にまで下がり、来年度から予定
される住民税の一律10%化になると47%にまで下がる。金持ちの税金はどんどん
下げられ(この間、実は法人税も下がっている)、消費税だけが上がっていく。

 要するに、この20年間で金持ちの税金を消費税につけかえているだけなのだ。
このことを誰も言わないのは、マスコミがみんな金持ちだからだろう。
 直間比率の見直しは世界の趨勢だし、当たり前のように考えられているが、
二つの点で疑念がある。

 一つは、日本がめちゃくちゃな所得減税をやってきたおかげで、先進国の中でも
恐ろしいほど所得税の少ない国になっていることだ。
 日本の2003年の租税負担率は20.9%(国税+地方税)、うち個人所得課税は僅かに
6.1%に過ぎない。アメリカ(2000年度、ただしブッシュが大減税をやって今はもう
少し低い)は15.2%、イギリス(2000年度)は14.4%、ドイツ13.0%、フランス
11.2%と比べると、所得税がめちゃくちゃに安いことがわかる。

 もちろん、ヨーロッパの国々(のきなみ消費税が15%から20%)と比べると
消費税も安いが、アメリカの消費税(これは州によって違う)と比べるとむしろ
高いくらいなのだ。

 少なくとも直間比率のことを言うなら、消費税を増税する際に所得税も増税する
ことで(つまり昔のように金持ちにそれなりの税金を払ってもらうことで)、消費
税の増加を緩和してもらわないと、世界で最も累進のゆるい国になってしまい、
逆進性の強い消費税の比率の高い国になってしまう。消費税だけを増税するのは、
このように貧乏人いじめである。しかも、1人の勝ち組と99人の負け組になる時代
には、勝ち組を余計に強くして、負け組がさらに税金をふんだくられる時代になる
のである。

 もう一つの疑念は、このように消費税ばかり増やして、所得税を減らさない貧富の
差をつける税制は、この国の国情に合わないし、余計景気を悪くするということだ。
 所得税の最高税率を下げ続け、代わりを消費税で補う大義名分は、そのほうが
働けば働くほどお金になり、人と差がつくので、労働の活力も生じるし、生産性が
上がるというものだった。

 しかし、これも数字で見る限り嘘である。むしろ所得税の最高税率が高かった
頃のほうがはるかに経済成長率は高かった。実質的には最高税率と経済成長率は正の
相関関係にあるのである。そして99年にドラスティックな最高税率の減税をやった
のに、その後、ちっとも景気は回復せず、失業率はかえって増え、自殺は98年から
急増したが、金持ち向けの減税をやったところで、変わりはなく96年までの過去
2〜30年と比べて、1万人も増えたままだ。

 実は、これは当たり前のことである。90年代、景気回復を目指して所得税の減税を
続けてきたが、前述のように金持ちの最高税率を下げることばかりが主眼だった。

 しかし、金持ちたちは、下げてもらった税金を消費にも投資にも使わなかった。
そのために株価も地価も下がり続けた。そして、結果的に個人金融資産はこの10年間
で400兆円も増えている。要するに所得税を減税しても景気に寄与せずに貯金に
回っただけなのだ。しかも、その多くは金持ちのもののはずだ。というのは、平均
貯蓄額は増えているのに、貯蓄額の中間値は下がっている。つまり、金持ちの貯金が
増え、貧乏人の貯金が減っているので、平均のほうは増えているのに、日本人の
真ん中の人の貯蓄額はむしろ減っているということである。このように金持ち相手の
所得税減税は、景気対策でもなんでもなく、貯金のだぶつきにしかならなかった。

 逆に、97年に消費税を増税して以来、景気が落ち込んだのは衆知の事実だ。
共産党にしても、はっきりと金持ちの増税を言わないが、少なくとも民主党でさえ、
消費税を増税して、所得税は元に戻さないか、あるいは減税と言っているのだが、
貧富の差の是正という(これにしても私は日本の中流維持のために必須のことだと
思っているが)本来の累進課税の目的以外にも、景気対策としても、むしろ上げる
のは金持ちの税金のほうであって(現在私は運良く今の減税の恩恵に与る側にいる。
それでも国を思えば、多少税金が高くなっても、景気がよくなるほうに税制を
いじってほしい)、消費税の増税ではないと数字を挙げて説明すべきなのでは
ないだろうか?

 もちろん、そうしたからといって、景気がよくなる保証はないが、試す価値
くらいはあるだろう。ついでに言うと、所得税を増税する代わりに経費を大幅に
認めるというのであれば、消費を確実に刺激するはずだ。消費税は消費するほど
税金が高くなるシステムだが、所得税増税と経費を大幅に認めることをセットに
すると、金を使うほど、税金が安くなるのである。消費不況にはうってつけの税制
だろう。

 このように増税するのが、とりやすい消費税ではなくて、所得税だということに
なれば、本当に税金を上げる必要があるかどうかを、マスコミも金持ちも本気で
検証するだろう。

 本当に税を上げる必要があるのかということについては、私の答えはNOである。
 現在の年間の国債発行高は36兆5000億円。要するに赤字はそれだけということだ。
 これをなくすには歳出を減らすか、増税などで歳入を増やすかのどちらか
しかない。

 ただ、増税をしなくても歳入を増やす方法が一つある。
 それは、脱税の摘発である。
 2002年の脱税の摘発額は356億円。脱税を摘発してもしれているように思うかも
しれないが、実は査察をしたのはわずか195件だったのだ。日本中に161万件の企業が
あることを考えたら、いかに氷山の一角であるかはわかる。元の国税庁長官である、
矢澤富太朗氏の推計では、日本の脱税額は8兆円から14兆円だという。

 もし14兆円脱税されても、全部を調査していれば日が暮れるし、物理的に無理だと
言う考え方もある。私自身は14兆円も歳入があるのなら、税務署の職員を今の100倍
にしてもいいという考え方だが、ここでも数字を使って別のやり方が考えられる。
 それは期待値の考え方を使って、追徴税を決めればいいのだ。

 日本の場合、多少は重加算税があるが、それがあまりに知れたものなので、
まったく懲罰になっていない。ばれた年だけ5割増しの税金をはらっても、そういう
人間は、その前の何十年にもわたって税金をごまかし続けてきたので、結局は
トータルで考えれば正直に税金を払ってきた人間より生涯納税額ははるかに少ない
ことになる。その上、一生ばれない人間がたくさんいるはずだ。実際14兆円の脱税の
うち350億円しか捕まえていないとすれば、ばれる確率は400分の1ということになる。
40年間現役で金儲けをするとしてばれる人間は10人に1人ということである。10人の
うち9人は40年間脱税しても一度もばれないで済むのである。脱税をしても得を
しないようにするには、理論上は400倍の追徴課税をとらないといけないし、脱税は
損だと思わせるには800倍くらいの追徴課税をとらないといけない。

 さすがにそれでは払いきれないので机上の空論となる。
 だから、脱税の摘発を今の40倍くらい、つまり1兆4000億円くらいを目標にして、
その上で10倍程度の追徴課税を取るのが現実的ではないだろうか?そのくらいは
絶対に貯め込んでいるはずだから。

 実際、北朝鮮の資金源やテロリストの資金源が麻薬や不法送金だとすれば、実は
北朝鮮問題にしても、合法的な送金停止や経済制裁より、暴力団も含めた徹底的な
脱税の摘発のほうが第三国経由の不法送金を捕捉できる。つまり、安全保障上も
重要なことなのである。

 脱税の摘発と、追徴課税の重税化で少なくとも10兆円の金ができるはずだ。
 次にパチンコに対する課税である。
 現在パチンコ産業の年間売り上げは約28兆円。競馬が地方と中央を合わせても
5兆円にもならないのだから、このパワーのすごさがわかる。パチンコ以外の
ギャンブルの売り上げ総額が8兆円なのである。

 実際は80年くらいまではパチンコも競馬もそんなに差がなかった。それが電動パチ
ンコの出現など、はるかにギャンブル性が強くなってから、売り上げが急増した。
 理由は簡単である。宝くじを含む公営ギャンブルと比べて、かけたお金の還元率が
高いからだ(ギャンブルをやる人間はそんなにばかではない。いくら宝くじが一攫
千金を狙えるといっても、換金率の低さはほかのギャンブルと比べて明らかに
見劣りする。実際、売り上げはわずか1兆1000億円、パチンコの26分の1にすぎない。

 パチンコがこんなにお買い得で、圧倒的に競争力の高いギャンブルになっている
理由は単純なことだ。要するに公にもっていかれる金額が少ないからだ。税金を
除くと実質ゼロである。軒並み35%前後を公がもっていく公営ギャンブルと比べて、
明らかにコスト構造が有利なのである。

 今さらパチンコを禁止できないのなら、公営ギャンブル並みに35%の売上税を
とったらどうなのか?もちろん、換金をやらないということで、払わないという
選択肢を残してもいいが、その場合、その店は換金をやった時点で違法賭博で
しょっぴいて廃業させればいいのだ。

 これで10兆円の税収が確保できる。
 合計20兆円の金が所得税にも消費税にも手をつけずに手に入る。このくらいの
公約を野党が出せないのがむしろ不思議である。

 歳出のほうも簡単に減らせる。たとえば、今度の議員会館建設の坪単価は六本木
ヒルズのなんと2倍だという。バブルの頃と比べて建設のコストは2分の1から3分の1
になっているのに、お役人はコスト意識がまるでないのだ。
 現在公共事業は年間50兆円。これを民間並みの(といっても民間の最高級並なの
だが)2分の1に削れば、たちどころに25兆円の金が浮く。
 これで増税ゼロで、国債を年間9兆円返せる計算になる(それでも40年以上かかる
のだが)。

 ただ、超高齢社会をむかえるとそうはいかないという考え方もあるだろう。
 確かに年金も医療費も今とは比べものにならないくらいかかるかもしれない。
 年金に関しては雇用とリンクするしかないだろう。
 実は、これは医療費ともリンクする。70歳以上の就業率と老人医療費は相関係数が
マイナス0.5の逆相関関係になっているのだ。

 医療費を節約する方法も実はいくらでもある。
 たとえば、高齢者に関しては、コレステロールがむしろ高めのほうが寿命が長い
ことがわかっているし、女性に関してはコレステロールを下げる薬で心筋梗塞の
リスクを減らしたという報告は事実上ない。ところが、コレステロールが低いほど、
日常生活能力のレベルは低く、うつ病になりやすく、ガンになりやすいことも
わかってきた。

 血圧に関しても高齢者はむしろ高めな場合でも生存曲線は変わらない。10mmHg
基準をかえれば薬代が1兆円も浮くのだ。
 高齢者に適切な薬の使い方の研究をすれば超単位の金は簡単に浮く(これに
ついては別府宏国著『薬のいちばん大切な話』KAWADE夢新書、柴田博著『中高年
健康常識を疑う』講談社選書メチエ を参照してほしい。ともに私が日本で
もっとも信頼している優秀な学者の著書で信用できる)。

 まず、老人医療費の抑制ができれば、年金は事実上ほとんどが消費に回る金
なので、公共投資に近いものと考えていいのではないか?
 いずれにせよ、安易に増税を打ち出す前にほかの収入源と、歳出カットの方法論を
考えるのが先決だろう(二大政党の最大の問題は、両方ともこんなことを言わず、
いちばんこれに近い考え方をしているのが、共産党だということだ。どうひっくり
返っても政権は取れないのだから、増税にNOを突きつける上で、一回くらい共産党に
大量得票をさせてやるくらいでいいのではないかとさえ思ってしまう)。


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★新刊ピックアップ★--------------------------------------------------------

『数字のどこをみているんだ!』和田秀樹監修 宝島社 ISBN 4-7966-3819-9
 1,300円+税

 最近、マスコミや「当たり前」と言われていることに常に疑問を感じ続け、
 疑問を呈することの意義を訴える和田が、数字を用いて今の一般常識がいかに
 ウソで、でまかせが信じられているかを見事に解き明します。
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■編集後記―――――――――――――――――――――――――――――――――

 世界の総人口って、今何十億人だと思いますか? 自信を持って答えられない
という方もこのメールマガジンの読者の中にきっといらっしゃると思います。
 ほとんどの方が、インターネットも使える環境だと思いますので、信頼の置ける
サイトで調べて確認してみると、自分の思ってた数字と違ってる方もいるでしょう。

 統計された数字は生き物で、どんどん時間とともに変化していくんだという
ことが、今回のエッセイでも取り上げられている『数字のどこをみてるんだ!』
(宝島社)を読むと実感できると思いました。

 次号発行は、2月1日を予定しております。次号もご期待ください。
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