世界文学リミックス by 池澤夏樹 |
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World Literature Remix by Natsuki IKEZAWA 14/11/2008
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□ エッセー集成第2弾『雷神帖』好評発売中!
池澤夏樹著、みすず書房刊
文字の持つ呪術性の回復、サン=テグジュペリ像の変化、映画と
本と田舎暮らしなど、本をめぐる今日的な省察からジョイスの
『ユリシーズ』、フォークナーの時間と語りの問題や『野生の
思考』と物語の擁護、岡本太郎の異文化に向かう姿勢への批判
まで。
たんに文学の領域にとどまらず、広く現在の文化や政治にかか
わる問題にまで踏み込んだ出色のエッセー集。
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□ エッセー集成1『風神帖』
池澤夏樹著、みすず書房刊
祖先が入植した静内から出土した斧に始まる文学と思索の旅。
辻邦生や須賀敦子の思い出から『苦海浄土』『雲のゆき来』まで。
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□ 池澤夏樹=個人編集『世界文学全集』
河出書房新社刊
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第11回配本『鉄の時代』
J.M. クッツェー 翻訳:くぼたのぞみ
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第12回配本『アルトゥーロの島/モンテ・フェルモの丘の家』
エルサ・モランテ、ナタリア・ギンズブルグ
翻訳:中山エツコ、須賀敦子
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世界文学リミックス 15
http://www.impala.jp/remix/
若くて美貌の作家たち
『悲しみよこんにちは』
今年の初めに川上未映子さんが芥川賞を受賞した時、なにしろあれだけ
の美貌だからマスコミは大騒ぎしたね。
数年前、綿矢りささんと金原ひとみさん同時授賞の時と同じような、お
祭り的な盛り上がり。授賞式も賑やかだったらしい。
だけど、川上さんはまさか美貌ゆえに受章したわけではない。
前の二人だってそれは同じだ。
ぼくは芥川賞選考委員の一人だからよく知っているんだけど、あれは人
を選ぶわけではない。
作品を選ぶんだ。
だから選考の時は顔なんか知らない。
後になって記者会見の写真を見て、へー、こんな人だったのかと思うの
が普通。
川上さんと綿矢さんと金原さんの受章に共通するもう一つのことは、圧
倒的支持で授賞が決まったこと。
選考も回によってはぎりぎりで決まるけれど、この三人の作品は最初か
らまちがいなく抜きん出ていた。
賞って、貰った後が大変だよ。
本人も苦しいけれど、賞を出したぼくらの側もずっと気にしている。
特に自分が強く推した人については、いいものを書いてほしいと思う。
で、若い美貌の女性のデビュー作の話。
フランス文学でいうと、『悲しみよこんにちは』がその典型だね。
作者はフランソワーズ・サガン。
この作品が出版された時、彼女は十八歳だった。
古典的な均整というか、ともかく一部の隙もない小説だよ。
最初から最後まで一行残らずきちっと作られている。
完璧というのはこの本のこと、って感じだね。
大事なのは、これがいかにも、若くて、美しくて、才気にあふれた女性
が書きそうな話であること。
つまり作品と作者がそのまま重ねられる。
本来ならば作者の容貌と作品は別のもののはずだけど、でもイメージが
重なると読者は話に入っていきやすい。
女好きの遊び人の父親と、美しくて頭がいいその娘という二人だけの家
族(母親は亡くなっている)。
父親は半年ごとに愛人を替え、娘はそれを認めた上で、自分は自分なり
に誠実な恋人を求めている。
若い分だけ父より真摯なんだ。
父親がまた恋人を替える。しかし今度はちょっと様子が違う、と娘は考
える。
父は若くてきれいな子を捨てて、ずっと年上の、分別のある、きちんと
した女性を家に入れようとしている。
案の定、この父の新しい恋人はまるで母親のようにふるまって彼女を支
配しようとする。
そんなことは許せないと憤慨した若いヒロインは策略を立てて……
舞台はみんながバカンスに行く先のリゾートで、季節は夏。
気だるくて、暑くて、エロティックで、開放的。
サガンが十八歳でこれを書けた秘密は文学史にある。
フランス文学の伝統である心理小説の遺産を彼女はすっかり自分のもの
にしていた。これは応用問題の完全解答だった。
だから読む者は安心して小説の快楽に浸ることができる。
池澤夏樹
初出:2008年2月28日夕刊フジ
世界文学全集(4)『太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよこんにちは』
マルグリット・デユラス、フランソワーズ・サガン著、
田中倫郎、清水徹、朝吹登水子訳
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【池澤夏樹の最近の著書】
□『セーヌの川辺』池澤夏樹著、集英社刊
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□『パレオマニア』集英社文庫
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□『光の指で触れよ』中央公論新社刊
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□『叡智の断片』集英社刊
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□『やがてヒトに与えられた時が満ちて・・・・・・』角川文庫
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□『虹の彼方にー池澤夏樹の同時代コラム』講談社刊
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□『静かな大地』朝日文庫
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□『アマバルの自然誌』光文社文庫
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□ 短編集『きみのためのバラ』新潮社刊
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□『池澤夏樹の旅地図』世界文化社刊
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□『神々の食』文春文庫
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□『マリコ/マリキータ』角川文庫
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□『イラクの小さな橋を渡って』光文社文庫
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□『異国の客』集英社刊
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□『キップをなくして』角川書店刊
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□『憲法なんて知らないよ』集英社文庫
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□『世界文学を読みほどく』新潮社刊
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■『DO YOU BOMB THEM?』
戦争前のイラクの姿を映し出すビデオ作品です。
本橋成一・監督/撮影、池澤夏樹・文/語り、坂田明・音楽
価格:2000円
詳しくは、ポレポレタイムス社 TEL:03-3227-1870
http://www.ne.jp/asahi/polepole/times/polepole/index.html
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