世界の名詩・日本の名詩に、そこから想い浮かんだ小さなお話などを添えてお届けしています。日曜の朝の楽しみにどうぞ。
- 最新号:2008-08-31
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◆名詩への誘い 第11号/高啓「青邱子の歌」(1)
発行日: 2008/7/20+ ______________________________________________T_a_k_a_o_W_e_e_k_l_y_
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名 詩 へ の 誘 い ◇ 第 11 号
+ __________________________________________________________2008/7/20_
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目 次
・今週の詩------高啓「青邱子歌(せいきゅうしのうた)」(その1)
・自由訳「青丘子の歌」(その1)
・詩人紹介------高啓(こうけい/1336-1374)
・編集後記/虹のあと
◆ 今 週 の 詩━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
高 啓 「青 邱 子 歌」 (その1)
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青邱子 痩* 而清 青邱子(せいきゅうし) 痩(や)せて清(きよ)し、
本是五雲閣下之仙卿 本(も)と是(こ)れ五雲閣下(ごうんかくか)の仙
卿(せんけい)なり。
何年降謫在世間 何(いず)れの年か降謫(こうたく)されて世間(せ
けん)に在(あ)り、
向人不道姓與名 人に向かって姓(せい)と名(めい)とを道(い)わ
ず。
躡履厭遠遊 履(くつ)を躡(ふ)むも遠遊(えんゆう)を厭(い
と)い、
荷鋤懶躬耕 鋤(すき)を荷(にな)うも躬耕(きゅうこう)に懶
(ものう)し。
有剣任銹* 渋 剣(けん)有るも銹渋(しゅうじゅう)するに任せ、
有書任縦横 書(しょ)有るも縦横(じゅうおう)たるに任す。
不肯折腰為五斗米 腰を折って五斗米(ごとべい)の為(ため)にするを
肯(がえ)んぜず、
不肯掉舌下七十城 舌を掉(ふる)って七十城(しちじゅうじょう)を下
(くだ)すを肯(がえ)んぜず。
【*印の字は、原文の漢字を表示できないため、別の字を代用。】
________________________________________________________________□注釈
・五雲閣(ごうんかく)=五彩の雲のたなびく天上の仙宮。
・仙卿(せんけい)=仙界の役人。
・降謫(こうたく)=天上から下界へ流す。
・姓(せい)と名(めい)とを道(い)わず
*本名は本人そのものと考え、親や目上以外は他人を字(あざな=元服の時
に付ける呼び名)で呼んでいた、という背景がある。
・躬耕(きゅうこう)=みずから田畑をたがやす。
・懶(ものう)し=大儀である。おっくうだ。
・銹(しゅう)=さび(る)。
・渋(じゅう)=しぶる、とどこおる。
・書(しょ)=書物。
・縦横(じゅうおう)=自由自在、勝手気まま。
●腰を折って五斗米(ごとべい)の為にする
----陶淵明(とうえんめい/東晋時代の詩人,365-427)の故事による。
彼が令(県知事)となってまもなく、郡から遣わされてきた上役に会うのに、
束帯するようにと部下にいわれ、「われ能(よ)く五斗米のために腰を折り、
拳々として郷里の小人に事(つか)えんや」(わずかの俸給のために、つまら
ぬ人物にぺこぺこできるか)といって、即日職を辞して郷里に帰ったという。
【/『中国名詩選(下)』松枝茂夫編(岩波文庫,1986年)pp.432-434より】
●舌を掉(ふる)って七十城を下す
----漢のれき*食其(れきいき/生年不明-紀元前204年)の故事による。
(*「れき」は本来、漢字。「麗」+「おおざと」)
れき食其(れきいき)は秦から楚漢戦争期の儒者。その家庭は貧しく、それ
でも酒を嗜む生活から「高陽の酒徒」と称された。劉邦の下で主に他勢力との
折衝で力を発揮した。
韓信による斉攻略が進んでいるときに、れき食其は進言して斉との和平交渉
に臨み、一旦はそれに成功する(舌をふるって斉王を説き伏せ、その七十余り
の城を降伏させた)。
しかし、れき食其に功績を独り占めされることを恐れた韓信とその腹心の家
臣は独断で斉を攻撃し、謀られたと思った斉王は激怒。れき食其を釜に放り込
ませ、「お前が漢軍を止められれば命は助けてやる」と言ったが、れき食其は
「大きな事を成すものは細かいことにこだわらないと言う。私はお前のために
前言を変えたりしない」と放言し、そのまま煮殺された。
【出典/ウィキペディア】
━━━━━━━━━◇自由訳「青丘子の歌」(その1)━━━━━━━━━━
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青丘子(せいきゅうし)とみずから称する男があった。すらりと痩せており、
さっぱりした風采(ふうさい)である。
もとはといえば、五色(ごしき)にたなびく雲の上、麗(うるわ)しい天の
お宮にお仕(つか)えする仙人のひとりであった。
ところが、この御仁(ごじん)、宮仕えには少々向かなかったと見える。い
つのことであったか、流罪となってこの下界へと降ろされてきた。
世間の人には、おのれの本当の名を明かそうとせぬ。
靴を履(は)いてはみても、遠い旅路を行く気はなし、鋤(すき)を担(か
つ)いだところで、みずから田畑を耕すなんぞおっくうなことである。
剣はあっても放ったらかし、錆(さ)びついてゆくのに任せ、書物は数多
(あまた)あれど、勝手放題のさばらせるままである。
わずかばかりの俸給のために、つまらぬ上司のご機嫌を伺うなどもってのほ
か、弁舌をふるって大軍を降伏させるがごとき、勇ましい役回りなんぞも御免
である。
【訳/R.O.】
/詩 人 紹 介/_______________________________________________________
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高 啓(こうけい/1336-1374)
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明(みん)代初期の詩人。字(あざな=呼び名)は季迪(きてき)、号(ごう
=筆名)は青邱子(せいきゅうし)。長洲(今の蘇州市)の人。幼少より神童
とうたわれ、書は読まざるなしといわれたほどの博学で知られた。
洪武2年(1369)、明の太祖の召しに応じて『元史』の編纂に従事、才を認め
られて戸部右侍郎に抜擢されたがすぐに辞し、蘇州郊外の青邱に戻り、在野の
詩人として活躍した。
しかしその詩(「宮女図」)に太祖の好色を諷刺したものがあり、また友人で
蘇州知事でもあった魏観のために書いた文章が禍し、南京で腰斬の刑に処せら
れた。
洪武6年(1373)、楓橋において死を覚悟しての北行に際して「絶命詩」を詠
んでいる。
明の詩人では最も才能に恵まれ、この世のあらゆる対象を約二千首の詩に表し
た。日本では江戸時代と明治時代を通じて愛唱された。
「青邱子の歌」は、高啓23歳の作。森鴎外に文語調の訳詩がある。
【参考/ウィキペディア,『中国名詩選(下)』松枝茂夫編(岩波文庫)】
●編者の言葉から______________________________________________________
高啓こそは明朝を通じて最高の詩人といってよい。自由奔放で礼法に拘(こだ
わ)らず、わずか三十九歳で太祖の忌諱に触れて腰斬(ようざん)の刑に処せ
られたが、雕琢(ちょうたく)を事とせずして字句おのずから清新、気魄(き
はく)のこもった力強い歌いぶりは李白を思わせる。(/松枝茂夫)
【『中国名詩選(下)』松枝茂夫編(岩波文庫,1986年)p.39】
+ 編 集 後 記 +_______________________________________________________
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先の水曜日、夕立のあと、虹を見ました。淡い、大きな虹が薄らいでゆき、
微かになり、しずかに消えてしまうまで眺めていました。
そうして虹が消えたあと、夕空はやわらかな輝きを増してゆきました。じっ
と眺めていると、それが世界でいちばん美しいものみたいに思えてきます。
先週お届けしました立原道造の詩について、お詫びと訂正があります。
目次のところで、私は「憩い(いこ)らひ」と読みがなをふっておりました。
これは変だ、と気がついたのは配信後。漢和辞典で調べ直すと、「憩」は人名
では「やす」とも読むとあります。
したがって先週配信しました立原道造の詩は「憩らひ(やすらい)」と読む
のが正しいと思われます。謹んで訂正申し上げます。ただし詩集には、ふりが
なはありません。もしお詳しい方がいらっしゃいましたら、どうかご一報くだ
さい。
◇
「青邱子の歌」は少々長いので、これから数回に分けてお届けする予定です。
古いものを扱うと、説明が多くなってしまいます。注釈など不要な方はどうぞ
飛ばしてお読みください。
数日前、この詩を見出したとき心に湧き起った新鮮な感興を、拙いながら
「自由訳」の形でお伝えしてゆければと思っています。
お便り・コメント・詩のリクエストは、どうぞお気軽にこちらまで。
http://gently.cocolog-nifty.com/blog/
今週も、よきことのあふれる1週間でありますように。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
次号もどうぞよろしくお願いいたします。
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高尾だより◇名詩への誘(いざな)い 第11号 2008年7月20日発行
【発 行】Takao Weekly(毎週日曜日午前5時配信)
【編 集】理 枝 rie.onuki(at)gmail.com(at =@)
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