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「海を渡った自衛官─異文化との出会い─」

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「海を渡った自衛官─異文化との出会い─」vol.6

発行日: 2008/6/11

 自分たちの信条を通すためには手段を選ばない、あるいは、無意図的であれ嘘をついてしまう人が世の中には存在するということは、よく見られるところです。
 このルワンダ難民支援のときにも、ありました。マスコミの論調や、有識者といわれる方々の主張の中には、何か、ためにするためではないか、あるいは自衛官への悪意すら感じたものでした。

 危険な場所へ行くのに、人道支援だから自衛官は丸腰で行けという意見などは、明らかに何か狙いがあってのことだったのでしょう。
 ある社会党の代議士の女性などは、テレビのワイドショーで機関銃の模型を指して、「こんなもの、名前も知らないけど人を殺す道具でしょ。なんで持っていく必要があるのよ」と言い放ちました。

 当時のゴマ市周辺の治安はひどく悪いものでした。日本から出かけた医療支援のNGOの人たちなどは、現地の武装集団から襲われたこともありました。その救援、輸送を現地で判断したのは、現場の指揮官神本1佐でした。
 このことが、任務を逸脱し、「軍隊」の暴走行為につながると批判を受けました。

 神本氏は、後日、NHKの番組で『自国民を救って、批判されたのが一番辛かった』と心中を吐露されました。(荒木 肇)

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◆「海を渡った自衛官─異文化との出会い─」vol.06
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「メンバーはみんな戦友だった」                            荒木肇
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メンバーはみんな戦友だった
              難民救援隊本部渉外幹部 M2佐


▼日本の常識は、NGOから理解されなかった

 難民を支援しようとキャンプに行った。敵意の目に囲まれてしまった。日本の自衛隊も、他の国の軍隊と同じに、自分たちを無理矢理にルワンダに帰そうとするのではないかと疑っていたのだ。

 こうした事態を解決するには、目に見える支援が有効だったという。ねばり強く人道支援活動を続けるほかに、学校の補修や、文房具、古着を配るといったことが効き目があった。この方式は、良い経験として生かされ、イラクでも同じようなことが行われた。

 現地の混乱、治安の悪さの理由の一つはザイール(現在はコンゴ共和国)軍の存在だった。ザイール軍の兵士たちには、ろくに給与がわたされていなかった。規律は低下しているし、士気もあがっていない。難民たちに金品を要求する。平気で発砲もした。治安のことなど自分たちは知ったことではないという態度だった。

 諸外国からやってきているNGOの人たちも危険を感じることがしょっちゅうだった。
 対立する勢力の抗争に巻きこまれたり、金品や物資をねらう集団に襲われたりということもよく起こった。

 わが国の国内事情を知らない彼ら、彼女らは、自衛隊に安心して働けるために安全な環境づくりを依頼してきた。
 こうした海外の、無法がまかり通る現場では、どこの国の軍隊も、まず、始めることがある。自分自身の安全を確保し、支援活動を円滑に行うために治安維持の行動をとる。
 それが、世界中の常識なのだ。しかし、どれだけそれを望まれようと、M2佐はじめ自衛官はだれ一人、「やりましょう」などと言えなかった。

 「私たちが、自衛隊の任務や権限を具体的に説明しても、日本の常識、つまり世界での非常識が、外国のNGOから理解されることは、まったくありませんでした」

 そこで、M2佐たちは考えた。記念品交換のために用意した、小さな日の丸のピンバッジをNGOの人たちに配り、目立つところに着けてもらうようにした。

 「すると、無法なザイール兵たちも、ああ、あれは日本と関係があるのかと思います。彼らも、私たち自衛隊とトラブルは起こしたくはない。それで、NGOの人たちも身の安全が図れたというわけでした」

 同じ軍隊同士、軍人同士ということで、現地のザイール軍との関係は悪くなかった。
 ザイール軍は、ふつうの国防機能だけではなく、治安維持のための警察機能も果たしていた。行政に対しても、絶大な影響力もあった。各種の許認可権ももっていたのだ。
 同じ軍人同士という親しみから、空港の使用許可なども、ふつうは2カ月かかるところをわずか数日でおりるということもあった。

 日本国陸上自衛隊2等陸佐の身分・階級は、外国軍では陸軍中佐にあたるから、ザイール軍少佐はM中佐の言うことをきく。
 「要人の警護、警備の依頼をしたこともありました。その時を利用して、ザイール軍兵士に対する教育もしました。市民にむやみに暴力をふるわないこと、射撃は私の統制下で行うことなどです。英語を話せるザイール軍の軍曹が3人、いつも私についていてくれて、手助けをしてくれました」


▼現地での活動要領の変更

 M2佐は当時、陸上幕僚監部の防衛部運用課運用第1班で勤務していた。防衛部とか、運用課などとは、自衛隊独特の言葉づかいだが、要するに作戦課、作戦1班ということだ。
 当時の運用課長が、誰か参加しないかということでM2佐に白羽の矢が立った。8月の下旬には参加の意思表示をし、旭川で準備訓練をほぼ1カ月受けた。

 「現地に行ってみると、すでに世界中からさまざまなNGOが活動していました。国連関係機関の方々もたくさんおられた。そこで、他の機関や組織との連絡調整がたいへん大事にされました」

 自衛隊の活動範囲はもともと、難民キャンプへの医療支援だった。ところが、自衛隊がそれをしたら、すでに活動中のNGOへ影響が起きる。NGOにしてみれば、自分たちの活動範囲が狭くなり、実績もあがらなくなる。結果的に、スポンサーに組織の活動をPRできないということになってしまうのだ。スポンサーからの寄付や支援がなければ、活動も続けられない。
 自衛隊の医官や看護官、衛生隊員たちが、難民キャンプの中ではなく、ゴマ病院で医療活動を行った裏には、そうした事情もあった。

 時間をかけたM2佐たちの話し合いが良い結果をもたらした。お互いにゆずり合ったNGOとは、いい関係が築けた。自衛隊がキブ湖の水を浄化すると、NGOの水タンク車が難民キャンプまで運んでくれた。
 防衛庁の担当者、各国と交渉したり、支援事業を担当したりしてくれた外務省の人たち、全般状況をこまめに提供してくれたWHO(世界保健機構)の日本人職員たちの連携は素晴らしかったとM2佐はふりかえる。
 「その原点というのは、何とか、毎日、目の前で多くの難民たちが死んでいくという悲惨な状況を改善したいという使命感をもっていたことでしょう。また、誰もが、現地部隊の指揮官を尊重してくれたことです」

 現地の人に比べて、日本人の貧弱さも感じた。自衛隊は逆浸透型浄水装置という最新型の精度の高い機械をもっていった。どんな汚染された水も、無味無臭の、衛生面では最高の水にできる。
 ところが、現地の人は、塩素の錠剤をぶちこんでかき回した水で十分だった。手早く、目の前で、塩素を入れる。NGOの水タンク車が悪路をドカンドカンと揺れながら走った。
 ちょうど、うまくシェイクされて、とても良かった……というのが、現場第一線の給水隊の若い陸曹から聞かされた話である。


▼自衛隊はこれからも「即応」

 なんで、アフリカなの?そういった気分が、派遣前の隊員たちには確かにあったという。人道援助の大切さは分かっている、でも、詳しい様子が分からない。現地では毎日2000人の難民がコレラや赤痢で死んでいる、治安も乱れているそうだ。でも、なんでアフリカなんだろう。マスコミの言うことや新聞の論調も、反対意見ばかりのようにみえた。武装するな、丸腰で行けという人もいた。

 でも、現地に着いたら、隊員の表情からは、そうした迷いや疑問は完全に消えた。隊員たちは現地の苦しんでいる人たちのために、とにかく一生懸命がんばった。休める日もろくになかったといっていい。給水は24時間態勢で動き、衛生救護も待ったなしだった。

 「日本人の国民性もあると思いますが、隊員たちはどんな時でも、笑顔を絶やしませんでした。真面目に質の高い仕事をこなしてくれたのです。これは国家の宝物だと思います。災害派遣や人道支援、こういった分野の実任務を十分に経験しているのが自衛官です。他国の軍隊とは比較にならないほどの練度をもっています。だからこそ、ふだんから隊員を大切にしながら、しっかりと厳しい訓練をする。これが将来にわたっても、大切なことだと思います。これからも自衛隊は国内外を問わず、すぐに動く。即応ということです」

 最後に、この派遣で得た物は何かという問いをしてみた。M2佐はすぐに、それは戦友ですと答えてくれた。社会学者によれば、軍隊やそれに似た組織では、ある時、家族やふつうの友人たちよりも強い絆で結ばれる集団が現れるという。互いに、それぞれの役割=立場ごとの任務=を果たしきったことを認め合う人間集団がルワンダにあった。
 それがM2佐のいう「戦友」の意味するところであろうと思った。

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