食品偽装に消えた年金!「人気メルマガ発行者」が鋭く斬り込むNEWS評論!【投票は28日迄】
トップ > ニュース&情報 > 国際情勢 > 「海を渡った自衛官─異文化との出会い─」

「海を渡った自衛官─異文化との出会い─」vol.1

発行日時: 2008/5/7

第1回 ゲートに行けば日本のキャプテンに会える/イラク復興業務支援隊

《イラク復興支援軍の概要》
 2003(平成15)年3月、英米軍がイラクへの攻撃を開始した。5月1日には早くも大規模戦闘の終結宣言が出され、7月13日にイラク統治評議会が発足する。
 わが国では、7月26日には「イラク特別措置法」が成立し、自衛隊の部隊が医療、給水、施設の復旧整備に派遣されることになった。
 派遣される陸上部隊は復興業務支援隊と復興支援群に分かれる。
 実際に支援活動を行なうのは支援群の衛生隊、施設隊、給水隊だが、警備部隊や群本部などの人員がかなりの数にのぼった。また、イラク当局や、外国軍や、国連関係組織との交渉や調整・連絡にあたったのは業務支援隊だった。
 そして、前者は第10次、後者は第5次隊の撤収が完了したのは、2006(平成18)年7月29日だが、装備や物資の国内へ送り出す部隊、後送業務隊、約100名がイラクの地を最後に離れたのは9月14日だった。

▼「イラク人の目線で考えよ」ヒゲの隊長の方針

 N1尉に発令された職務は「連絡将校(幹部)」だった。
 イラク暫定政権がスタートする前、ムサンナ県は米・英占領当局(CPA)の治政下にあり、治安の任にあたったのはオランダ軍(CIMIC)である。
 N1尉は、業務支援隊の連絡幹部、つまり、CPA、CIMICと自衛隊復興業務支援隊とのさまざまな業務調整や連絡にあたるのが仕事のはずだった。
 職種(兵科)は通信科であり、通信学校で教官職を務めるほどのベテランである。それが、現地での実際の活動はといえば、働く場所と仕事を求めるイラク人たちの窓口になってしまった。
 「失業問題が何より深刻でした。働き盛りの人たちに仕事がない。就職を希望する人がほとんど毎日、宿営地のゲートに来ていました。通訳などの採用があるからです」
 イラク人の通訳に対応を任せてしまう方法もあったが、N1尉は自分でじかに話を聞こうとした。
 佐藤隊長(ヒゲの隊長で有名になった現参議院議員)の指針も、「イラク人の目線で考えよ」というものだったし、せめて話し合いだけでもしなくてはと考えたからだった。
 雇用できる数は限られていて、希望者は多いので、採用はめったにできなかった。でも、ゲートに行けば日本のキャプテン(1尉=大尉)が話を聞いてくれる。
 それが話題になり、現地の人はぞくぞくとキャンプのゲートに訪れるようになった。

▼毎日が手探りの異文化体験

 これは違うな、これもずいぶん自分たちの常識とは変わっているなと思うことの連続だった。まず、給与の支払い方法である。
 こちらはドル建てで金を渡す。その米ドルと現地通貨、イラク・ディナールとの換算率が高額ドル紙幣ほど有利になっていた。
 例えば、100ドル札は13万5000ディナールになる。ところが、1ドルは1100ディナールにしかならない。細かい札で給料をもらうと、およそ2割も損をする計算になるのだ。
 だから、現地の人はなるべく高額の紙幣で支払いを受けたがった。こうしたことは、現地の事情にうといと何も分からない。どうして、通訳たちはこんなにむきになって高額紙幣を欲しがるのか、その謎はやはり現地の人から聞いたことで理解ができた。
 若い独身男性も就職に必死だった。結婚するために働きたい、金を貯めたいという意欲が並大抵ではなかった。それは、結婚しているかいないかが、現地での社会的地位にひどく影響するからだった。
 イスラムの文化として一夫多妻の制度がある。もともとは、働き手の夫を失った家族は悲惨な目にあうといった歴史が背景にあるらしい。甲斐性のある男は、たくさんの妻をもつ。そうして家族を養うのは一人前の成人男子の役割であり、責任だという考えがたいへん強いのだ。
 「雇っているイラク人が勤務時間についてこぼしたことがありました。自衛隊の仕事は契約では朝9時から、午後5時まで。そうすると、昼に家族といっしょに食事をとることができない。それが悲しいというのです」
 けしからん、仕事だぞ、家族がなんだ、あるいは、何を大げさなことを言うのだ。日本人は家族と夕食もいっしょにしないで働くのが普通だなどと言ってしまうかもしれない。でも、ここはイラクであり、イラク人の常識は違うのだ。N1尉は勉強になったという。

▼戦争をしに行くんじゃないんだから

 N1尉は親子3代陸軍の家系である。祖父は旧陸軍から陸上自衛隊へ、父も陸上自衛官だった。中学生の時には韓国へ行き、分断された国家の厳しい現実を見た。高校ではタイ王国へ研修に行った。そこでベトナム、ラオス、カンボディアなどからの難民キャンプでボランティア活動をした。国を追われた人々の悲しい表情が目に焼きついたという。
 イラクへの派遣前、緊張感はたしかに持った。でも、祖父に報告がてら会いに行ったら、戦争をしに行くんじゃないから任務を楽しんでやってこいと言われた。それで、ずいぶん肩の力がぬけたとN1尉は言う。
 「自衛隊はこれからも多様な任務環境の中で、さらに海外で活動することが増えるでしょう。今まではPKOや、人道派遣などはもともと兵士・軍人の仕事ではないと思われてきました。でも、ほんとうは兵士・軍人でなければなければできない仕事です。自衛隊は力むことなく淡々と活動していくことが大切だと考えています」
 N1尉は太ももに付けた拳銃のケースが目立つ、当時のゲートの写真を見せてくれながら、にこやかに語ってくれた。

 
このメルマガの読者になる
規約 
>> メルマ!の会報誌もお届けします
ブックマーク: はてなブックマークに追加del.icio.usに追加Buzzurlにブックマークニフティクリップに追加ライブドアクリップに追加Yahoo!ブックマークに登録My Yahoo!に追加Add to GoogleRSS

このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます

宮崎正弘の国際ニュース・早読み
 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
頂門の一針
急所をおさえながら長閑(のどか)な気分になれる電子雑誌。扱う物は政治、経済、社会、放送、出版、医療それに時々はお叱りを受けること必定のネタも。
甦れ美しい日本
日本再生のための政治・経済・文化などの発展・再構築を目的とし、メールマガジンの配信を行う
花岡信昭メールマガジン
政治ジャーナリスト・花岡信昭が独自の視点で激動の政治を分析・考察します。ときにあちこち飛びます。
斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」
日本のように君主制を採用する国は世界的に少なくありませんが、神話の世界につながるほど古い歴史を持ち、国の歴史とともに、1つの王朝が連綿と続いているの...


この記事へのコメント

全5件表示
コメントを書く
荒木肇皆さん、購読ありがとうございます。また、ご投稿、ありがとうございました。元気が出て参りました。
海自OB様、炎熱のインド洋で黙々と活動する派遣隊の諸官や、インドやパキスタン、陸自のゆくところ常に物資や人員、資材を運ぶ海自の艦船の乗り組みの方々の取材もしたいと思っております。
日時:2008年5月25日

海自OBの一人配信ありがとうございます。
淡々と任務を全うする。自衛隊員に科せられた姿と思います。荒木さんがそれを代弁して頂けるものと考えています。元自衛官として感謝します。
今後もご活躍を祈っております。
日時:2008年5月12日

本を買おうとクリックしても、「入り口」のページに入るだけで、目的の本のページにたどり着くことができないので、購入しようが無い。
リンクは正確に、わかりやすく貼らねば。
日時:2008年5月8日

最初ですので今後が楽しみです。日時:2008年5月8日

エンリケ航海王子はじめまして。荒木さんの「指揮官は語る」には、とても助けていただきました。深く御礼申し上げます。ありがとうございました。

メルマガ創刊おめでとうございます。
想像を超える充実した内容を拝読し、楽しみが一つ増え嬉しいかぎりです。これから届く、わが陸自隊員の生の声、海外派遣の実際の姿を楽しみにお待ちしております。
日時:2008年5月7日


おすすめキャンペーン

おすすめカードローン!
オリックスVIPローンカードなら

<<年率5.9%〜15.0%、利用可能枠最高500万円>>
ゆとりのカードローンです。
お申込みはこちら⇒

はじめようメルマガ生活
メルマガを読むには
メルマガを出すには
約64000誌から検索

メルマガデータ

  • メルマガID : 174026
  • 創刊日 : 2008-04-08
  • 最新号 : 2008-07-23
  • 発行周期 : 週刊
  • バックナンバー: 全て公開
  • 発行者サイト: あり
  • 読んでる人 : 819人
  • コメント数 : 20
  • Score! : 99点
  • >> 月間ランキング

発行者プロフィール

ペンネーム :


このメルマガの読者になる

規約に同意する



このメルマガの最近の記事


このメルマガの最近のコメント


このメルマガのバックナンバー


注目情報


新着記事トピックス