おかまと震災 —あの日、あたしは神戸に行ったの— <第7話>
発行日: 2008/7/23
=========================
おかまと震災
―あの日、あたしは神戸に行ったの―
=========================
<第7話>
余震に遭遇
=========================
「F夫! あんた生きてたん!!」
あたしは二葉百合子よろしく、まるで“息子を見つけ
た岸壁の母”のように駆け寄ったわ。
「お、おまえなんでこんなとこにおんねん!」
「なんでて、自転車で来たんや!」
「あほか! まだ余震がしょっちゅうあるのにっ! は
よ大阪帰れ!」
やだっ、せっかく救援に来たっていうのにひどいわね
ぇ。確かに無謀な旅ではあったわ。でも、余震なんて感
じなかったわよ。ふらふらで自転車こいでたから、きっ
とあたしも一緒に揺れてたのね。
「ところであんた、家は大丈夫なん?」
「ああ、なんとか建ってる。せやけど明け方近所で火事
があって、すぐ斜め向かいまで火がきたんや」
ぎょぇぇぇ〜っ! まさに間一髪ね。でも、そのころ
あたしはまだ自分の部屋で寝てたのよ。知らなかったと
はいえ、罪深いおかまね…。
「とにかく、今から大阪へは帰られへんし、今夜はこの
子とこ泊めてもらうねん」
あたしはそう言って、バイトで知り合ったお友達って
ことにして王妃様を紹介したの。すると、F夫が王妃様
に尋ねたの。
「あー、君とこ、水は出てる?」
「出てるけど、マンションのタンクの水やから、もうす
ぐ止まると思うけど…」
「うちは朝からずっと断水やねん。今も水売ってる店な
いかと思て、おかんと一緒に探してるんやけど…」
「すんませんけど、もしまだお水出てるんやったら、ち
ょっと分けてもらえませんやろか…」とお母様…。
「じゃーーーん!」
あたしは声高らかに、お水のペットボトル2本を頭上
に掲げたわっ!
「大阪から持ってきてんでぇぇぇ〜」
「おおっ〜!」
さすがのF夫もびっくり! 大喜びよ。
「ありがとう! これでなんとか助かるわ」
「いやぁ〜、うれしいわぁ」
お母様も目を細めてらっしゃるわ。
「せやけど、こんだけやったら足りひんやろ?」
「いやー、とりあえず明日の朝、小学校に給水車が来る
らしいねん」
んまぁ〜、給水車ですって? それまではこの4リッ
トルでしのがなきゃならないの? 飲み水だけじゃなく
て、トイレの水も出ないんでしょ?
「とにかく家は危険やし、今は小学校の体育館におんね
ん。そこが避難所になってんねん」
それがあたしが“避難所”っていう言葉を聞いた最初
だったわ。
「ま、その方が安心やな。また後で様子見に行くわ」
「分かった。おまえも余震に気ぃつけろよ!」
そうしていったんF夫たちとは別れたの。そして、あ
たしと王妃様もその辺をいろいろ歩いて回って、なにか
売ってる店がないか探したのよ。でも…。
開いてるお店なんて全然ないの! それどころか、ま
だくすぶってる焼跡もいっぱいあるのよ。おまけに日が
暮れるにつれて、あたりが急に暗くなってきたの…。
そう、電気が来てないのよ。一般家庭の明かりはおろ
か、外灯も点いてないわ。うっかりして懐中電灯も持っ
てこなかったし、あっという間に真っ暗…。あるべき建
物がなかったり、あたりの様子がすっかり変わっちゃっ
てるから、ただ歩くのでさえおっかなびっくりよ。夜が
こんなに暗いものだなんて、ほんと今まで経験したこと
がなかったわ。
と、思ってたら、突然来たのよ。大きな揺れがっ!
「ひ、ひ、ひぇぇぇ〜っ!」
一瞬、足元をすくわれるみたいに下から突き上げたと
思ったら、すぐに横揺れ! すぐ側のお店のシャッター
が「シャシャシャシャシャシャーー」って、下から上ま
でまさに震えるような音を立てたわ。幸いすぐに収まっ
たけど、大阪で最初に感じた揺れよりずーっと大きかっ
たわよ。こんなのがしょっちゅうくるの? これじゃお
ちおち外へも出られないじゃない。水も食料も手に入ら
ないのに、これから一体どうしたらいいの?
と、もっぱらあたしは食べることばかり考えてたんだ
けど、他の地域では死傷者も大勢出てたし、病院に運ぶ
ことさえままならないケガ人もいっぱいいたのよ。ただ、
まだ被害が比較的少ない地域にいたから、そういう現状
を知らなかったの。何しろ震災当日の夜よ。今にして思
えば、被災地ほどすぐ近くの情報が入ってこなかったん
だわ。
=========================
■おかまと震災
―あの日、あたしは神戸に行ったの― <第7話>
■発行:2008.8.23
■著者:熟田津一帆(にきたついっぽ)
=========================
<おかまの広告>
◆ホームページ→☆脳内空想対談 『さびしいGAYのライフレコード』☆
◆ブログ→☆脳内空想対談 『いっぽさんとあたし』
※このマガジンのバックナンバー・登録・解除はこちらよぉ〜。