おかまと震災 ―あの日、あたしは神戸に行ったの― |
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ブログも好評→☆『さびしいおかまのライフレコード』☆ ========================= おかまと震災 ―あの日、あたしは神戸に行ったの― ========================= <第12話> 夢か現か ========================= 要するに、道が通じてる地域には救援が届くんだけど、 ちょっと寸断されちゃうともうダメ。だから、ある避難 所には物資がいっぱいでも、ちょっと離れた避難所は困 窮してるなんてことがあちこちで起きてたの。 おまけに震災当初はメディア自身も混乱してたから、 「○○の避難所では△△が不足しています」なんていう 細かい情報までは拾えてなかったの。もちろん避難同士 の横の連絡も、全然取れてなかったのよ。 とにかくそんな混乱状態の中を、文字通り自転車で縫 うように走ってあたしはなんとか大阪にたどり着いたの。 それがあなた、淀川渡りきって市内に入ると、まさにそ こは別天地だったのよ。 まず第一に、お店がみんなちゃんと営業してるじゃな い! 神戸じゃ壊滅状態だったコンビニも、どこも普通 に開いてるわ。すかいらーくやマクドでも、お客さんが 談笑しながら食事してるし、ガラス張りの美容室じゃ、 女の人がゆったりと髪をセットもらってるじゃない。ビ ルも道路もぜんぜん壊れてないわ。サラリーマンやOLも、 いつもと変わらない様子で歩いてるわ。 い、いったい、あたしがさっきまで見てきたものはな んだったの? F夫が給水車を待つ列に並んでたでしょ? あてもなく道に座り込んでた人もいたでしょ? ぐちゃ ぐちゃに壊れてた家は、お店は、駅は、道路は…。 悪い夢でも見てたのかしら? でも、どっちもこのあ たしの目が見ている“現実”なのよ。ほんの数十キロ離 れただけで、こんなにも街の様子が違うなんて、実際に 行って帰ってきたあたしでさえ信じられないわ。 そんな風にまるで狐につままれたような感じで、ふら ふらと帰ってきたあたし…。ところが自分の部屋に着い たとたん、なんとそのまま寝込んじゃったの…っていう か、要するに風邪を引いちゃったのね。食事もろくに摂 らず無理したせいもあると思うけど、あまりにも稀有な 体験をしたせいで、脳と身体がショックを受けたんだと 思うの。知恵熱と過労がいっぺんにきたみたいだわ。 朦朧としたまま、一人淋しく横になるあたし…。そう してる間にも、さっき見てきた被災地の光景が脳裏に浮 かんでは消え、浮かんでは消えするの…。自分の脳では 処理しきれない情報が、まるでパソコンのアラートのみ たいに点滅してるのよ。 と突然、電話が鳴ったの。やだ、こっちじゃ電話も復 旧してるのね。もしかしたら、王妃様かもしれないわ。 でも受話器を取ると、それは東京で働いてる友達のY介 からだったのよ。 「なんや、おったんか。あんたとこ電話しても、全然通 じひんかったで」 「神戸に行っててん、神戸に…」 あたしはそう言うと、受話器を持ったまま泣き出しち ゃったの。 「もう街がぐちゃぐちゃ。なにもかも…。王妃様もF夫 も無事やったけど元気ないねん。布団で寝てる人もおっ たし、何人死んでるかも分からん…」 混乱してしゃべってるのは自分でも分かってたわ。 「テレビでずっとやってるけど、あんたとこは大丈夫な んか?」 「大丈夫もなんも、大阪はほとんど無傷や。なんであん なにちゃうんか、未だに信じられへん…」 「せやけど、こっちの人は大阪もあかんのんちゃうかて みんな心配してるで。関西ゆうたら、神戸も大阪も区別 つかへんのや」 それからは矢継ぎ早に、東京の親戚、京都や滋賀の同 級生とか、あちこちから安否を尋ねる電話がかって来た のよ。もうあたしは早く休みたかったんだけど、部屋を 出るときには、すでに電話が不通だったことを考えて、 できる限り応対したのよ。 みんなテレビの情報ぐらいしか知る術がないからかけ てくるんだけど、あたしが錯乱気味に神戸で見てきたこ とを話すから、少しはその深刻さが飲み込めたみたい。 でも、結局はどうすることもできないから、ただただ当 惑げに気の毒がって心配するだけだったわ。 どんなにテレビで生中継しても、ブラウン管を通して 見る人にとってはあくまでバーチャルなのよ。その目で、 耳で、鼻で、肌で、実際に感じることはできないわ。そ う思えばあたしのこの2日間は、ただ単に行って帰って 来ただけとはいえ、それなりに意味があったと思うの…。 以上があたしの体験した「阪神・淡路大震災の最初の 2日間」よ。予定では12話完結のはずだったんだけど、 その後も何度か神戸には行ったし、王妃様やF夫以外の 当事者たちからいろいろ見聞きしたこともあるから、も う1話番外編を書こうと思うの。明日発行する予定よ。 それまではマガジンを解除せずにいてね。 また、ご感想などがあれば、メールやコメントでお寄 せくださいね。待ってるわ。 ========================= ■おかまと震災 ―あの日、あたしは神戸に行ったの― <第12話> ■発行:2008.6.28 ■著者:熟田津一帆(にきたついっぽ) ========================= <おかまの広告> ◆まずはここから→☆おかまの股ずれ ホームページ☆ ◆こちらが本家本元→☆まぐまぐ!プレミアム『おかまの股ずれ』☆ ◆うちの踊り子さんたち、3〜4行までなら触っていいのよぉ〜→☆バックナンバーおさわりコーナー☆ ◇ブログも開始→☆『さびしいおかまのライフレコード』☆ ◇上京前のお話が読める無料メールマガジン→☆まぐまぐ!『おかま上京物語』☆ ◇上京前のお話が読める日記→☆さるさる日記『おかま上京物語』☆ ※このマガジンのバックナンバー・登録・解除はこちらよぉ〜。
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