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2009さわやかお受験のススメ<保護者編>
発行日時: 2008/1/4●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
「めぇでる教育研究所」発行
2009さわやかお受験のススメ<保護者編>
「情操教育歳時記」
日本の年中行事とむかし話
〜21世紀に活躍する子ども達の心を育てる〜
2008年 1月4日
−9−
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第3章(1) 何といっても正月ですね 睦 月
明けましておめでとうございます。今年もご愛読のほどよろしくお願いいたし
ます。
睦月(むつき)のいわれには、正月は身分の上下、老若男女、別け隔てなく行
き来し、親族一同、仲良く「睦み合う」という説が有力で、その外にも「元つ
月」、草木が萌いずる「萌(もゆ)月」、「春陽が発生する「生む(うむ)月」、
稲の実を初めに水に浸す「実(み)月」なのだからとする説もあるようです。
★★何といっても正月です★★
正月ですね、何といっても正月です。
子どもの頃の思い出といえば、正月に勝るものはなかったと思います。
恥ずかしい話ですが、お年玉をもらえるからです。
現代っ子のように、月々のお小遣いなどありません。
親から、小遣いをもらえたのは、正月やお祭りのときだけでした。
しかし、不思議でした。
前の日の大晦日は、子ども心にも、何やら気世話しく、落ち着きません。
一年の最後の日ですから、緊張するのでしょうか。
いつもなら、こたつに入り、お茶などを飲み、のんびりしているおじいちゃん
も、鉢巻き姿で庭の掃除をするのですから、子どもとしても、じっとしていら
れない雰囲気なのです。
台所からは、お節料理の、いい匂いがしてきますし、三つあるかまど、聞きな
れない言葉でしょうが、私の子どもの頃は、ガスコンロや電気釜はなく、かま
どに鍋や釜をかけ、まきで火を燃やし煮炊きをしたのです。
その三つのかまど、全部に火が入り、おばあちゃんと母と姉が、てんてこ舞い
をしていました。
その様子は、さながら姑と嫁が「料理の腕を競う戦場」のようでしたね。
うっかり足を入れようものなら大変です。
普段は、やさしい母や姉、そして、おばあちゃんまでが、
「シッ、シッ!」
とまではいいませんけれど、邪魔者扱いされたものでした。
今では、デパートやスーパーなどでお節料理を売っていますから、それを買っ
て間に合わせる家庭が多いと思いますが、当時は、そんなことは許されません
でした。
ここが母の料理の腕の見せどころで、面目がかかっていたからです。
しかも、お節料理は種類も豊富で、昔は核家族ではなくて大家族でしたから、
作る量も半端ではありません。
それに、何といっても正月は年に一回の大切なセレモニーです。
普段、顔を見せない親戚や友達が、年始のあいさつにやってきます。
そのもてなしの料理ですから、力も入るわけです。
どこの家庭でも、家にいる女性軍、総がかりでした。
しかし、不思議なことに、なぜか、父は何もしません。
それどころか、昼間から、ちびりちびりと酒を飲んでいます。
「おじいちゃんも、いらっしゃいな。今年の数の子、いい味やで!」
それで、誰も文句をいいません。
「男尊女卑」、明治生まれの父には、これが当たり前だったのでしょう。
子ども心にも、たくましくて、存在感があり、一家の「大黒柱」を実感してい
ました。
きょう日のヤング・パパは、台所で料理を作っています。
「マサオさん、私より味付け上手なの!」
こういうヤング・ミセス、母が聞いたら、腰を抜かすかもしれません。
お婿さんが、それで嬉しがっていますから、それでいいのでしょうけれど……。
一家総出の大掃除も終わって、お風呂に入り、夕食です。
定番の年越しそばをいただきます。
やがて、大晦日恒例の「NHK紅白歌合戦」が始まります。
テレビのない時代ですからラジオです。
ラジオで聞く紅白歌合戦、想像できるでしょうか。
「おこた」、こたつです。
熱源は電気ではなく、炭の粉を野球のボール程の大きさにかためた「たどん」
でした。
おこたに入り、みかんを食べながらラジオを聞くのですが、雑音混じりで聞き
づらいものでした。
真空管のラジオです、トランジスタではありません。
それでも、ひばりちゃん、美空ひばりです。
ひばりちゃんが出ると、ワァーワァー、キャーキャーで、歌なんか聞こえませ
ん。
きょう日のロックバンドの声援といい勝負でしょう。
昔から、若い女の子が、黄色い声を張り上げて騒ぐのは、ちっとも変わりませ
ん。
しかし、今、考えるとおかしいのですが、ラジオですから、声さえ聞こえてく
ればいいわけです。
こたつに入っていると、正面にいる人と目が合います。
目を合わせて、黙ってラジオを聞くなど、よくできたものだと不思議な気がし
ます。
テレビでは、画面を見ていますので、目を合わせることもありませんから……。
そして、不思議なことに、父と一緒に、紅白歌合戦を聞いた記憶がありません。
「歌謡曲は低俗だ!」といっていましたから、おそらく聞かなかったのだと思
います。
これが、明治生まれの父親の背中だったわけです。
それに、母は、あんなに働いて疲れているはずですが、風呂にも入らず、ラジ
オを聞きながら、編み物をやっているのです。
機械を使って、ザーッとやるのではなく、左右の手に編み棒を持って、一目、
一目編んでいくのですから、大変な仕事でした。
ラジオですから見る必要はなくても、体を休めればいいのにと思いました。
それにもかかわらず、「おばあちゃん、お茶をのみますか?」と気を遣うので
す。
昔の母親は、体だけではなく気配りにも手を抜きませんでした。
いや、手抜きできなかったのかもしれません。
嫁姑の戦いは、断然、お姑さんに軍配の上がっていた、嫁さん忍従の時代でし
たから。
おふろも、みんなが寝て、最後の、しまい湯です。
お湯がもったいないからと、洗濯までしていました。
洗濯機などありません、洗濯板と桶だけです。
洗剤も、今のものと比べると、段違いに品質の劣る石鹸でした。
それで、ゴシゴシと手で洗うのですから、これは重労働だったと思います。
昔の母親は、本当に大変でした。
電気洗濯機で洗濯をさせてあげたかったですね……。
思い出すと何だか、しんみりとした気持ちになります。
閑話休題。
やがて、除夜の鐘が鳴り、新しい年を迎えます。
大晦日から正月にかけての雰囲気を表した名文があります。
といっても、私が勝手にそう信じているだけですけれど。
枕草子、方丈記と並んで三大随筆の一つといわれている吉田兼好の「徒然草」
です。
兼好さんって、大変な現実主義者だったと思います。
鴨長明さんは、理想主義者ではなかったでしょうか。
こんな話は、疲れますから止めましょう。
ところで、かつてアメリカでベストセラーとなった「人生に必要な知恵は、
すべて幼稚園の砂場で学んだ」と題名からして、「ナヌッ!」と目をむきた
くなる本がありましたが、著者のロバート・フルガムは、「徒然草」を読ん
だのではと思えるほど、内容の酷似しているところがあるのです。
しかし、著者は牧師さんとわかり納得しました。
兼好さんは隠遁者で僧侶ですから、考え方に共通点があっても不思議ではな
いわけですね。
私は、「徒然草」の十七段が好きです。
十七段 をりふしの移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ
(中略)
つごもりの夜、いたう暗きに、松どもともして、夜半過ぐるまで人の門を
たたき、走りありきて、何事にかあらん。ことことしくののしりて、足を空
に惑ふが、暁がたより、さすがに音なくなりぬるこそ、年のなごりも心細け
れ。(中略)
かくて明けゆく空の気色、昨日に変わりたりとは見えねど、ひきかえめず
らしき心地ぞする。大路のさま、松立てわたして、はなやかにうれしげなる
こそ、またあはれなれ。
大みそかの夜、まっくらな中で、たいまつをともして、夜半過まで人の家
の門をたたいて走りまわり、何を言うのか、けたたましく大声をあげて、足
も地につかぬ勢いで走りまわっていたのが、暁になると、さすがに静まり返
ってしまう。そんなとき、去りゆく年の名残を感じて、物淋しくなる。
こうして明けゆく元旦の空の気色は、昨日と異なっているようには見えな
いが、うって変わって新鮮な感じがする。都の大路のさまは、門松を軒並み
に立てて、はなやかな喜びに満ちた感じがしており、それがまた趣が深い。
(研究資料日本古典文学 第八巻 随筆文学 明治書院 刊)
訳してしまうと、どうも風情の乏しくなる感じがします。
古典の書物を原文で読める人がうらやましいですね。
恐らく、その時代の息吹を感じながら読んでいるのでしょう。
こういうときですね、学生時代に真面目に勉強をしなかったことを悔いるのは。
「後悔、先にたたず」、よく知られている言葉なのですが……。
行く年を送り来る年を迎える、いろいろなしきたりや、けじめなど、昔は貧富
の差が激しく、一般庶民は全国的に貧乏でしたから、年内の約束事などを清算
しなくてはならないこともあって、大人は大変だったようです。
ところが、除夜の鐘が審判役で、それを合図にノーサイド、新年に持ち越しと
なるのですが、これは今も昔も変わらない暗黙のしきたりでしょう。
その駆け引きを種にしたおもしろい落語がいくつもあって、子どもでも腹を抱
えて笑ったものでした。
しかし、生活は貧しくても、人情だけは、昔の人の方が勝っていたと思います。
生活は豊かになり、何かと便利にはなりましたが、失ったものもたくさんあり
ます。
ところで、最近、落語はどうなっているのでしょうか、ほとんど聞けません。
大好きだった古今亭志朝師匠、桂芝雀師匠、共に亡くなりましたが、貴重な語
りがCDとなって残されています。
名人芸を聞いていると、話の情景が自然と頭に浮かび、子どもが本を読んでも
らっているときは、こういったことが頭の中で行われているのではないかと思
うと、やはり、本は読んであげるべきだと痛感させられます。
さて、その朝ですが、いつもの朝と違い、特別の朝という感じがします。
いつもと変わらない朝ですが、元旦の朝だけは別です。
なぜか、天気はよくて、大雪とか氷雨といった経験は、あまりありません。
毎年、いかにも新しい神様がいらっしゃった朝という気持ちになります。
元旦は、その年の新しい神様がやってきて、前の年の神様と交代する日でした。
ですから、神様を中心に生活が営まれていた時代には、「おめでとうございま
す」といっていたのは、人間同士が、「新年、明けましておめでとうございま
す」とあいさつするのではなく、新しい神様を迎える言葉として使っていたそ
うです。
門松、しめ飾り、鏡もち、そしてお節料理も、みんな神様を迎えるセレモニー
に必要なものだったのです。
中には、何やら語ろ合わせのようなものもありますが、「これはすごい!」と、
思わずひざを叩きたくなるものもあります。
(次回は、お正月の三点セットについてお話しましょう)
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