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斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」vol.34

発行日: 2008/6/3

□□□□□□□□ 伊勢神宮の高床式神殿 □□□□□□□□


▽タイ北部の旅行の思い出

 皇室の祖神・天照大神をまつる伊勢神宮では、5年後に行われる第62回の式年遷宮に向けて、準備が着々と進んでいるようです。20年に一度、社殿を造り替え、新しくするのです。
http://www.isejingu.or.jp/shikinensengu/

 伊勢神宮の社殿は高床式の米倉の形をしていますが、なぜなのでしょうか。なぜこのような建物を、神が住まわれるものとして建てるようになったのでしょうか。

 それで思い出されるのは、もう何年前でしょうか、タイ北部を旅行したときの思い出です。ラオスとの国境に近いチェンライ県の村で意外なものを見ました。

 小学校のそばに農家があって、若夫婦がヤマハのバイクに麻袋入りの米一俵をのせ、これからどこかへ出かけようとしていました。ウソのように暑い日で、主人は上半身裸です。荷台が小さくてバランスよく積み荷を載せることができません。

 どういうわけか、通りすがりの僕が手伝う羽目になりました。重い米の袋を載せ終えると、夫婦はお礼の言葉もなく、二人乗りでヨロヨロしながら自宅を出て行きました。


▽稲倉が祭場だった

 意外なもの、というのは、日本の神社そっくりのかたちをした農家の建物です。

 母屋が高床式の木造家屋なのは北部タイでは珍しくありませんが、わらぶき屋根の納屋は、屋根の両端に千木(ちぎ)がつき出し、尾根のところには鰹木(かつおぎ)のような重しが見えます。

 伊勢神宮の洗練された美しさには遠くおよびませんが、基本構造は驚くほど似ています。

 民家だけではありません。北部第一の都市で、バンコクに次ぐ観光都市・古都チェンマイでは、由緒正しい仏教寺院や、博物館の近代建築、あるいはバス停の屋根にまで、火炎のかたちをした千木があしらわれています。

 千木や鰹木といえば、日本の神社だけかと思っていたのですが、どうもそうではありません。けれどもよりによって、タイ北部に神社に似た建物があるのはどういうわけでしょうか。

 ある人類学者によると、中国・長江(揚子江)流域の低湿地で発生した高床式住居が、のちに水田稲作とともに各地に伝わり、漢の時代までに中国南部全域、東南アジア、西南日本にまで広がったといいます。

 面白いのは、古代中国・前漢の時代、高床倉庫は稲倉であるだけでなく、祭りの場であったらしいことです。インドネシアのボルネオでは、葬儀のときに仮設の高床家屋が登場します。高床は天上世界のひな形であり、穀霊、死霊、祖霊をまつる祭場でもあるといわれます。


▽アジアの文化とのつながり

 伊勢神宮の内宮(皇大神宮)には御稲御倉(みしねのみくら)とよばれる殿舎が、杉木立のなかにひっそりとたたずんでいます。

 神宮は全国8万社の神社の頂点に位置します。日々、行われる神宮の祭りは天皇の祭りであり、稲の祭りです。とくに10月中旬に行われる神嘗祭(かんなめさい)は神田で収穫された稲の初穂を大神にお供えする、一年でもっとも重要な祭りですが、このとき収穫される抜穂(ぬいぼ)を収める米倉がこの御稲御倉です。

 しかし単なる倉庫ではありません。御稲御倉神をまつる、れっきとした社殿なのです。古人は稲を神と見なし、守護神をまつりました。その守護神とは稲の神霊、つまり穀霊そのものです。

 稲の神霊である穀霊が米を収める米倉に宿るという信仰が派生し、米倉がやがて神が住まわれる社殿へと転化していったというのではなくて、むしろ逆に、高床の米倉が最初から穀霊に関わる祭りの場であった、と考えた方が理解しやすいではないか、と思います。

 素朴な自然崇拝の時代、日本人は山や滝、巨岩などを信仰の対象とし、神殿を必要としませんでした。しかしやがて高床建築が稲作とともに伝わり、これが神殿に発展し、神々は神殿に常住する、と人々は考えるようになったのではないか、と思います。

 伊勢神宮といえば、まさに日本文化の神髄ですが、アジアの文化ともつながっています。

参考文献 浅川滋男『住まいの民族建築学──江南漢族と華南少数民族の住居論』(建築資料研究社、1994年)、櫻井勝之進『伊勢神宮』(学生社、1969年)、阪本広太郎『神宮祭祀概説』(神宮司庁指導部、1965年)など


□□□□□□□□ 「国立追悼施設」化する千鳥ヶ淵 □□□□□□□□

以下は斎藤吉久メールマガジン(5月30日、No.399)からの転載です。
http://www.melma.com/backnumber_158883/

 先日、千鳥ヶ淵戦没者墓苑で厚労省が主催する拝礼式が行われ、新たに629柱の遺骨が納骨されたと伝えられます。

 高円宮妃殿下が出席され、福田首相ほか政府関係者、遺族関係者が出席してそれぞれ献花し、桝添厚労相が式辞を述べたようです。

 靖国神社に代わる、国立の追悼施設を建設する、という議論がすっかりカゲを潜めている状況で、この千鳥ヶ淵墓苑がいわば、なし崩し的に国立施設の役割を果たし、既成事実化しているように見えます。

 しかしそれには大きな矛盾があります。つまり、いわゆるA級戦犯の問題です。同墓苑は概念的にA級戦犯を追悼対象としていますから、靖国神社に代わりようがありません。しかし、そのことは見て見ぬふりがされています。

▽靖国神社に代わる国立施設

 国立の無宗教の恒久施設が必要だ、とする報告書をまとめた追悼懇が設置されたのは、ほかならぬ福田首相が内閣官房長官時代だった、7年前の平成13年です。

 同年夏に小泉首相が靖国神社に参拝し、中国、韓国から激しい反発を呼んだのがきっかけでした。誰でも「わだかまり」なく、戦没者に追悼の誠をささげられる施設の在り方を議論することを目的に、福田長官の諮問会議が設置されたのです。

 「わだかまり」の核心は、要するに靖国神社に祀られているA級戦犯問題でした。そして福田長官の諮問会議は、靖国神社に代わる国立施設の建設を提案したのですが、その後は棚上げされています。

 しかし現実において、靖国神社に代わる施設はマスコミにしばしば登場しています。1つは防衛省のメモリアル・ゾーンであり、もう1つがこの千鳥ヶ淵墓苑です。

▽A級戦犯も追悼の対象

 明治以来、靖国神社が国家的追悼施設の中心的存在であることは間違いありませんが、A級戦犯を祀っていることにおいて、国家的施設として相応しくないからといって、千鳥ヶ淵墓苑がそれに代わりうるか、といえば、否です。

 なぜなら、引き取り手のない遺骨を収める納骨施設である千鳥ヶ淵墓苑は、時代的には「支那事変以降」という限定的な戦没者が対象とされ、墓苑での追悼式は、政府の収納遺骨によって象徴される支那事変以降の戦没者に対して行なうもの、とされているからです。

 つまり概念上、戦争状態が続いている、サンフランシスコ講和条約発効以前の、戦争裁判による法務死を公務死と認めているのが日本政府の立場だとすれば、千鳥ヶ淵墓苑の追悼式がA級戦犯を追悼の対象としていることは明らかです。

▽要は靖国神社はずし

 少しでも事情を知る人なら、そんなことを百も承知のはずのですが、A級戦犯を祀る千鳥ヶ淵墓苑に首相は参拝するな、とは誰もいいません。

 千鳥ヶ淵墓苑だけではありません。政府が主催する終戦記念日の全国戦没者追悼式も同様です。

 それはなぜか、といえば、要するに、問題の核心がA級戦犯にあるのではなくて、靖国神社外しにある、ということでしょう。

 官僚たちのやり方は手が込んでいます。高円宮妃殿下にご出席をたまわったのは、反対封じではないか、とも疑われます。皇族が参列されれば、国民としては、公然と反対の声を上げることがはばかれるからです。戦没者追悼式も同様です。

▽いまこそ本格的な議論を

 明治以来、戦没者追悼の中心的な施設といえば、靖国神社以外にはありません。自国の宗教的伝統から生まれ、日々、追悼の誠を捧げている施設として、靖国神社より古いものは世界にはありません。

 靖国神社はどうあるべきか、いまこそ本格的な議論が求められています。


□□□□□□□□□□ 天皇・皇室の一週間 □□□□□□□□□□

5月30日(金曜日)

□天皇・皇后両陛下が皇居で、アフリカ開発会議に参加した各国首脳を招いた茶会を開かれました(日経ネット)。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080530AT1G3001R30052008.html

□皇后陛下が皇居内の紅葉山御養蚕所で、「上蔟(じょうぞく)」と呼ばれる作業をなさいました(MSN産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/080530/imp0805301124000-n1.htm

□天皇・皇后両陛下が第1回野口英世アフリカ賞の授賞式にご出席になりました(時事ドットコム)。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008052801054

5月29日(木曜日)

□皇太子殿下は日本小児神経学会総会の記念式典にお出ましになりました(MSN産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/080529/imp0805291147000-n1.htm

5月26日(月曜日)

□高円宮妃殿下が千鳥ヶ淵墓苑戦没者の拝礼式にご出席になりました(日経ネット)。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080526AT1G2501O26052008.html

5月23日(金曜日)

□皇后陛下が御養蚕所で蚕に桑の葉を与える作業をなさいました(MSN産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/080523/imp0805231218002-n1.htm

5月22日(木曜日)

□天皇・皇后両陛下が「認定こども園」をご訪問になりました(TBS)。
http://news.tbs.co.jp/20080522/newseye/tbs_newseye3858519.html

□皇太子殿下が水源林視察のため笠取山に登られました(時事ドットコム)。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008052200661


□□□□□□□□□□ お知らせ □□□□□□□□□□

1、雑誌「正論」が今年11月号で創刊35周年を迎えることになり、送料無料でご自宅にお届けするキャンペーンを実施しています。ご希望の方には申込書をお送りしますので、私斎藤までメールでご連絡ください。

2、北朝鮮向け短波放送「JSRしおかぜ」がカンパを募集しています。ご協力ください。
http://www.chosa-kai.jp

3、ピアニストの中村由利子さんが6月に東京文化会館でコンサートを開きます。是非おいでください。ファンクラブのメンバーも募集しています。
http://www.yurikopia.com/

4、第53回全国学生青年合宿教室。お伊勢さんでの勉強会です。参加者を募集しています。8月21日から24日まで。
http://www.kokubunken.or.jp

5、「明日への選択」4月号(日本政策研究センター)の「一刀両断」欄に掲載された拙文をアーカイヴズにアップロードしました。
http://homepage.mac.com/saito_sy/tennou/H2004ASkugen.html

6、発売中の「別冊正論」第9号に拙文「靖国合祀『日韓のすれ違い』」が載っています。
http://www.sankei.co.jp/seiron/etra/no09/ex09.html

7、「人形町サロン」に拙文「日本人が大切にしてきた多神教文明の価値」が載っています。
http://www.japancm.com/sekitei/sikisha/index.html

8、斎藤吉久メールマガジンの読者登録もお願いします。おかげさまで4月の総合ランキング30位でした。
http://www.melma.com/backnumber_158883/

9、講演会、勉強会の依頼も受け付けております。メールでお問い合わせください。
saito_sy@mac.com


□□□□□□□□□□ お勧めメールマガジン □□□□□□□□□□

1、軍事情報[まぐまぐ!]
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6、そのほか、斎藤吉久Webサイトにリンクするブログはこちらです
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