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斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」vol.18

発行日時: 2008/2/12

▼皇室発祥の地・南九州

 今回も宮崎県の旅を続けます。

 県北部・耳川の河口にある古い港町、日向(ひゅうが)市の美々津は、天皇が東征のため船出されたところと伝えられています。立磐(たていわ)神社という小さな神社は、天皇が航海の安全を祈られたといいます。境内には天皇が腰を下ろされたという「御腰掛岩」があり、遠い過去の物語がいまも生き生きと伝えられています。

 『古事記』『日本書紀』を読むと、天孫降臨(てんそんこうりん)から神武天皇御生誕までの舞台が、この日向に集中していることが分かります。ただしこの場合、「日向」というのはいまの宮崎県のことではなく、南九州全体を指しています。大隅、薩摩両国が分かれるのは8世紀の初頭です。

 『古事記』は、天孫・邇邇藝命(ににぎのみこと)が「竺紫(つくし)の日向(ひむか)の高千穂の久士布流多気(くじふるたけ)」に天降られた、と記しています。日向は皇室発祥の地なのです。


▼内陸アジア系と東南アジア系の神話の融合

 『古事記』はこのあと、邇邇藝命が石長比賣(いわながひめ)と木花之佐久夜毘賣(このはなのさくやひめ)の姉妹と出会い、醜い姉を嫌って、美人の妹をめとったという物語が続きます。不思議な内容で、「岩のように揺るぎなく、木の花のように繁栄するように」という願いがかなわず、人間は花のように短命になった、と記しています。

 これに似た人間の寿命に関する神話は東南アジアに分布するといいます。インドネシアのセレベス島の神話では、人間が神に石ではなくバナナを求めたので短命になったといいます。

 記紀神話が次に描くのは、海佐知毘古(うみさちびこ)・山佐知毘古(やまさちびこ)の物語です。失った釣り針をめぐって兄弟が争うのですが、これに似た話がやはりインドネシアや南太平洋のメラネシアに分布するといいます。

 宮崎県西都(さいと)市には邇邇藝命と木花之佐久夜毘賣の御陵(ごりょう)があります。男狭穂塚(おさほづか)・女狭穂塚(めさほづか)と称されます。御陵にほど近い都萬(つま)神社は木花之佐久夜毘賣をまつる古社です。宮崎市の青島神社は山佐知毘古、つまり彦火火出見命(ひこほほでみのみこと、古事記では日子穂穂手見命)がまつられています。日南市の鵜戸(うど)神宮は彦火火出見命と豊玉姫(とよたまひめ)との間に生誕された鵜葺草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)をまつります。その四子が初代神武天皇(神倭伊波禮毘古命、かむやまといわれびこのみこと)です。

 南九州を舞台とした、天孫降臨から神武天皇御誕生までの日向神話に、内陸アジア系と東南アジア系の神話の融合が見受けられるのは興味深いことですが、なぜ文化の融合が図られたのか。


▼縄文人と渡来系弥生人との混血同化

 もう一度、記紀神話を読み返してみます。天孫・邇邇藝命が結婚されたのは大山津見神(おおやまつみのかみ)の娘・木花之佐久夜毘賣です。山佐知毘古がめとられたのは海神(わたつみ、豊玉彦)の娘豊玉毘賣(とよたまびめ、豊玉姫)で、鵜葺草葺不合命は母の妹・玉依毘賣(たまよりびめ)と結婚されます。

 つまり初代神武天皇は、いわゆる天孫族の直系子孫として生誕になったというより、天孫・邇邇藝命の子孫が中つ国の神々の娘たちと婚姻を重ねたのち、生誕されるのです。

 記紀神話がどのような意図でまとめられ、こうした神武天皇御出生の物語が描かれたのか。そのことを探究することはとりもなおさず、天皇、あるいは日本民族、国家の成り立ちの謎に迫ることにほかなりません。

 たとえば日本民族はどのように成立したのか。有名な人類学者・埴原和郎氏は次のように説明します。

 ──縄文人は東南アジアに源流をたどれる。アイヌや琉球人はその直接の子孫と考えられる。他方、北九州や山口地方から出土する弥生人は朝鮮半島からの渡来人で、原郷は北東アジアにある。この縄文人と渡来系弥生人とが混血同化して「本土日本人」が成立し、いまもなお同化は進行中である。

 面白いことに、人類学の研究が記紀神話の内容と符合します。記紀神話は、よくいわれる単一民族説ではなく、多元的民族の成り立ちをみごとに描き上げているように見えますが、いかがですか。


 参考文献=『古事記・祝詞』(日本古典文学大系1、岩波書店、1969年)、『日本書紀・上』(日本古典文学大系67、岩波書店、1967年)、大林太良『東アジアの王権神話──日本、朝鮮、琉球』(弘文堂、1984年)、埴原和郎「日本人集団の形成」(埴原編『日本人と日本文化の形成』朝倉書店、1993年)、佐藤洋一郎『稲のきた道』(裳華房、1992年)など



(((((((( 「天皇・皇室の一週間」 )))))))))))

2月6日(水曜日)

□葉山御用邸で静養されていた両陛下が帰京されました(MNS産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/080206/imp0802061746001-n1.htm

□秋篠宮妃紀子さまが都内で開かれた結核予防関係婦人団体の開講式にお出ましになりました(MNS産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/080206/imp0802061644000-n1.htm

1月31日(木曜日)

□高円宮妃久子さまが洋らん展にお出ましになりました(MNS産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/080131/imp0801310002000-n1.htm

 
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