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斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」vol.15

発行日時: 2008/1/22


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斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」vol.15
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第15回「世界に例のない歌会始の儀」─万葉の時代から続く伝統文化─


▼文化の中心におられる天皇

 今上天皇の即位を記念するボランティア活動でバングラデシュに通っていたころ、支援していた孤児院の子供たちからベンガル語のお礼状をたくさんいただきました。翻訳して読んでみると、叙情豊かな詩などが書かれてあり、さすがアジアで最初のノーベル文学賞受賞者、詩聖タゴールの国「ベンガル」だと感心したものです。

 しかし考えてみると、それ以上にすごいのが日本です。朝晩、各家庭に届けられる新聞にはかならず文芸欄があり、読者が投稿する和歌や俳句などが掲載され、熱心な固定層がついています。そんな国はほかにないといいます。

 日本人は少なくとも千数百年前の万葉の時代から和歌を詠み、歌い継がれてきた文学を共通の文化として共有しています。この誇るべき文化の中心におられるのは天皇であり、今年も1月16日に宮中で行われた新春恒例の「歌会始の儀」は国民的な規模で行われる、世界に例を見ない文化行事といわれます。


▼国民参加型の文化行事

 共通の題で人々が歌を詠み、披講する会を歌会といい、奈良時代にはすでに行われており、平安時代には盛んに行われたといいます。

 天皇が主催する歌会が歌御会(うたごかい)で、年中行事として、あるいは月ごとに月次歌会(つきなみのうたかい)が行われるようになりました。その起源はかならずしも明確ではないものの、鎌倉時代には歌御会が催され、室町時代には歌御会始が新年の行事として行われるようになっていたようです。しかし江戸末期になって、しばらく途切れたといわれます。

 その後、歌御会始は近代の幕開けとともに、明治2年に京都・小御所で復興します。ただ、このとき詠進が許されたのは宮中に縁故のある人々に限られました。今日のように宮中と民間の区別なく詠進が認められるようになったのは5年後のことでした。

 さらに明治12年には、一般の詠進歌のうち秀歌が選ばれ、天皇の前で披講される栄誉が与えられるという画期的な改革が行われました。以来、一君万民が和歌によって結ばれる、国民参加型の文化的行事が今日まで続くことになったのです。

 大正末に「歌会始」が正式名称となり、戦後になって御歌所から委員会に事務が移り、選者も民間の歌人に委嘱されるようになりました。


▼世界的な広がりも

 歌会始は古式に従って披講されます。

 陪聴を許された人の話などを聞くと、当日、陪聴者は一人ずつ名前が読み上げられ、会場となる正殿松の間に案内されます。服装は男性がモーニング、女性はロングドレスとされています。

 続いて預選者、選者、天皇から詠進を求められた召人(めしうど)、披講者が所定の席に着いたあと、静まりかえった式場に皇族を従えて天皇が入場し、一同着席ののち、歌会始の儀が始まります。

 披講はまず作者名と歌が節をつけずに読み上げられ、次に独特の節回しで歌い上げられます。荘重な歌声、厳粛な雰囲気は出席者に身震いするほどの感激を与えると聞きます。

 選歌、召歌の披講のあと、皇族御歌、続いて皇太子妃御歌、皇太子御歌、皇后御歌、最後にひときわ荘重に天皇の御製(ぎょせい)が歌い上げられます。

 侍従経験者によると、歌会始の儀のあと、披講された歌が御所に届けられ、さらに後日、選に洩れた、2万を超える一般国民からの詠進歌も御所に届けられ、天皇のご覧に供されるそうです。海外から自国語で詠進された詩もご覧になるとかで、日本にしかない天皇の歌会始は世界的な広がりを見せています。


 参考文献=坊城俊民『歌会始』(五月書房、昭和54年)、入江相政、木俣修、坊城俊民『宮中新年歌会始』(実業之日本社、昭和54年)、『宮中歌会始』(菊葉文化協会編、毎日新聞社、1995年)ほか


((((((((読者の声)))))))))))

◇東京の野田安平さまから

 いつもメルマガの配信を楽しみにしております。

 1月16日に行われた、恒例の歌会初を今年もテレビで見ました。厳粛な儀式の模様は、我が家の茶の間にも、なんとも言い得ない緊張をもたらすとともに、所役の人々の所作から、「恭しさ」「敬い」といった我が国の美風をあらためて感じさせられました。

 神話以来、相聞、述志の手段である和歌が、同じ形で今に伝わって、それが宮中に披講の儀式として毎年、繰り返されます。万葉集や数々の勅撰集の伝統にのっとった、まさに君臣をへだてぬ紐帯のあらわれですね。皇室が国民ととも歩まれていると言われますが、むしろ、国民が皇室に導かれていることを実感できる瞬間が、心あらたまる年頭のこの時期に、毎年おとずれる日本という国は有難い幸福な国だと思います。

 先日の齋藤さんのメルマガでは、年末年始の皇室の祭祀や行事の鄭重さを御紹介になられましたが、歌会始の皇族がたのお歌に、宮中祭祀に参列されたときのお歌などもあって、天皇陛下をはじめ皇族のかたがたがいかに、お祭りを大事になされておいでかが、あらためてよくわかりました。なんとなれば神を敬う心が、五七の調べにのせて国民の前に示される。皇室が国民とともにあるのみならず、まさに人倫の範として仰がれる所以だと思います。

 そういう日本の歴史と文化、未来の繁栄を確かなものとされる皇室のこしかた、ありさまをつぶさに取材され、参考文献なども挙げられている齋藤さんのメルマガは、平易な文章の中に要点を適格に示されていて、勉強になるとともに、視点があらためられることたびたびです。

 一方、皇室をめぐるさまざまな問題も解説され、こうしたことに我々がどう向き合って行くかを考えるとき、何か手がかりとなるものが得られるのではないかと思いつつ、これからも拝読させていただきます。


(((((((( 「天皇・皇室の一週間」 )))))))))))

1月16日(水曜日)

□皇居・宮殿で新春恒例の歌会始の儀が行われました(時事ドットコム)。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008011600459

 陛下をはじめ皇族方のお歌や詠進歌は宮内庁のホームページに掲載されています。
http://www.kunaicho.go.jp/utakai/utakai-h20.html

□皇后さまのご体調について宮内庁が発表しました(時事ドットコム)。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008011600859

 発表の内容は以下の通りです。
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/kougouheika-h200116.html

□秋篠宮さまが「日本インドネシア友好年」の名誉総裁に就任された、と宮内庁が発表しました。今年は国交樹立50周年です(日経ネット)。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080116AT1G1603916012008.html

1月13日(日曜日)

□皇后陛下が東京・上野の森美術館にお出ましになり、ちぎり絵の展覧会を鑑賞されました(MNS産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/080113/imp0801131441000-n1.htm

1月11日(金曜日)

□皇太子殿下が「日本ブラジル交流年」の日本側名誉総裁に就任されることが発表されました。日本人がブラジルに移住して100周年に当たる今年は「交流 
年」とされています(中日新聞)。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008011101000005.html

1月10日(木曜日)

□皇居で講書始の儀が行われました(読売新聞)。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080110ic02.htm


((((((((( お知らせ )))))))))

2月3日(日曜日)の午後1時から靖国神社の参集殿を会場に勉強会があり、歴史問題をテーマに講演します。定員は300名。参加は無料ですが、入場券が 
必要で す。先着順ですので、お早めにお申し込みください。
http://www.yasukuni.jp/%7Esukei/page079.html


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筆者のプロフィール
斎藤吉久(さいとう・よしひさ) 1956年、福島県生まれ。弘前大学、学習院大学を卒業後、総合情報誌編集記者などを経て、現在はフリー。オフィス斎藤吉久を主宰。得意分野は、天皇・皇室、宗教、歴史、食文化など。雑誌「正論」平成19年9月号に「靖国問題を問い直す9つの視点」、同10月号に「昭和天皇の『不快感』は本当か」を執筆、同11月号では「信仰を忘れた聖職者たち」を木下量煕氏と共同執筆。最近の雑誌発表記事などは「斎藤吉久Webサイト」のアーカイヴズで読めます。
http://web.mac.com/saito_sy/

「斎藤吉久メールマガジン」をmelma!より発信中。
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メルマガは「斎藤吉久のイザ! ブログ」でも読めます。
http://izasaito.iza.ne.jp/blog/

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