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斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」vol.14

発行日時: 2008/1/15

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斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」vol.14
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第14回「首相による年頭の伊勢参宮」─恒例化したのは戦後─


▼明治、大正の時代は折にふれて

 平成20年1月4日、福田康夫首相が首相恒例の年頭のお伊勢参りをしました。

 伊勢神宮を首相がお参りしたのは、明治7年に創刊した読売新聞のデータベースによると、同40年5月、西園寺首相が最初のようです。明治・大正のころは年頭参拝が恒例ということはなく、折にふれて参宮が行われました。

 年末年始の参宮ということなら、年頭より年末の参宮が先で、最初は大正12年に山本首相が伊勢神宮と桃山御陵(明治天皇陵)に参拝し、さらに沼津御用邸で大正天皇に拝謁(はいえつ)する予定でした。ところが、突如、無期延期されます。摂政宮(のちの昭和天皇)が狙撃されるという虎ノ門事件が突発し、内閣は総辞職したのです。実際にはじめて年末に参宮したのは昭和6年、犬養首相でした。

 1月の参宮は意外にも新しく、昭和14年の平沼首相が最初ですが、日付は12日、目的は親任奉告と伝えられます。年頭の参宮は19年に東条首相が「1億敢闘を誓った」のが最初のようです。時代を感じさせます。

 年頭に参宮し、記者会見するという形式はどうやら戦後になって始まったようで、その先駆けは28年、朝日新聞主筆の経歴を持つ緒方官房長官の参宮で、首相の年頭参宮は30年の鳩山首相に始まります。最近は官邸での会見後、参宮する順序に変わりました。


▼政教分離問題は占領後期に解決済み

 2000年の歴史を持つ伊勢神宮は本来、皇室の神社であり、私幣禁断(しへいきんだん)の社であって、一般民衆の参拝はなかったのですが、鎌倉以後、御師などの発達によって個人の崇敬が盛んになり、江戸時代には熱狂的なおかげ参りの奇習が起こるまでになりました。江戸後期になると年間数十万の人々が全国からやってきたといいます。

 当時は今日のような旅行の自由はありません。しかし伊勢参宮を名目にすれば関所手形の申請を役所は拒否できなかったので、庶民は参詣と称して諸国を物見遊山したのだといわれます。

 そんなわけで、首相恒例の年頭参宮に話をもどすと、政治指導者の参宮も歴史はけっして古くはありません。敗戦・占領で首相の参宮が途絶え、独立後、復活したのというのでもありません。憲法の政教分離規定がネックなのでもありません。

 政教分離といえば、終戦の年の暮れ、占領軍は神道指令を発し、「宗教の国家からの分離」を図り、神道を抑圧しました。被占領国の宗教に干渉することは戦時国際法違反でしたが、あえて干渉しようとした背景には、「国家神道」を「軍国主義・超国家主義」の源泉と見る誤解・偏見がありました。

 しかし占領後期には「宗教と国家の分離」から「宗教教団と国家との分離」に解釈が改められ、つまり、緩やかな政教分離に政策が変更され、24年には松平参議院議長の参議院葬が神式で行われ、26年には吉田首相の靖国参拝も認められています。その意味では、30年の首相参宮「復活」は遅きに失したといえるかも知れません。


▼明らかな論理矛盾

 ところが、なかには年頭恒例の首相参宮は違憲の疑いがある、といきり立つ人もいます。たしかに現行憲法は国家の宗教的中立性を要求していますが、無色中立性までも要求しているわけではありません。

 人間は宗教的存在であり、憲法は宗教を悪とは考えていません。であればこそ、小泉首相とブッシュ大統領による金閣寺参詣も、長崎県による教会群の世界遺産登録運動も認められています。官邸ではイスラムの行事イフタールも行われています。

 既成宗教すべてに対し、公人すべてに宗教的無色中立性を要求することは宗教の否定を助長し、国民の信教の自由を侵すことになりかねないし、仏教やキリスト教は不問に付し、伊勢神宮や靖国神社などについては絶対的に「分離」されなければならない、という主張なら、逆に特定の宗教を特別視することになります。いずれも明らかな矛盾でしょう。

 国家が国民に特定の信仰を強制するというのなら別ですが、そうではないのですから、公人がいつでも自由にお伊勢さんにお詣りできる大らかさがあっていいのではありませんか。


 参考文献=データベース「明治・大正・昭和の読売新聞」、樋口清之『こめと日本人─歴史を動かした米の魔力』(家の光協会、1978年)、ウイリアム・ウッダード「宗教と教育─占領軍の政策と処置批判」(国際宗教研究所紀要4、昭和31年)、小嶋和司『憲法論集3 憲法解釈の諸問題』(木鐸社、1989年)など



(((((((( 「天皇・皇室の一週間」 )))))))))))

1月11日(金曜日)

□皇太子殿下が「日本ブラジル交流年」の日本側名誉総裁に就任されることが発表されました。日本人がブラジルに移住して100周年に当たる今年は「交流年」とされています(中日新聞)。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008011101000005.html

1月10日(木曜日)

□皇居で講書始の儀が行われました(読売新聞)。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080110ic02.htm

1月6日(火曜日)

□三笠宮寛仁親王殿下が苫小牧で開催された日本学生氷上競技選手権大会の開会式に御臨席になり、お言葉を述べられました(苫小牧新報)。
http://www.tomamin.co.jp/2008/tp080107.htm

1月2日(水曜日)

□恒例の一般参賀が行われました(日経ネット)。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080102STXKD001802012008.html

1月1日(火曜日)

□皇居で新年祝賀の儀が行われました(中日新聞)。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008010101000026.html

□天皇陛下は宮内庁を通じて新年を迎えるご感想を発表され、とくに昨年、震災に見舞われた石川、新潟両県の被災者を気遣われました(読売新聞)。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080101i504.htm?from=navr

 天皇陛下のご感想は宮内庁のホームページに載っています。
http://www.kunaicho.go.jp/gokansou/gokansou-20.html

□宮内庁は天皇、皇后両陛下が昨年、お詠みになったお歌のうち8首を公表しました(中日新聞)。
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008010102076521.html

 発表されたお歌は宮内庁のホームページに掲載されています。
http://www.kunaicho.go.jp/gyosei/gyosei-h19.html


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筆者のプロフィール
斎藤吉久(さいとう・よしひさ) 1956年、福島県生まれ。弘前大学、学習院大学を卒業後、総合情報誌編集記者などを経て、現在はフリー。オフィス斎藤吉久を主宰。得意分野は、天皇・皇室、宗教、歴史、食文化など。雑誌「正論」平成19年9月号に「靖国問題を問い直す9つの視点」、同10月号に「昭和天皇の『不快感』は本当か」を執筆、同11月号では「信仰を忘れた聖職者たち」を木下量煕氏と共同執筆。最近の雑誌発表記事などは「斎藤吉久Webサイト」のアーカイヴズで読めます。
http://web.mac.com/saito_sy/

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首相の伊勢参りに反対している人たちもいます。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-01-04/2006010402_04_1.html

それと、最近は修学旅行での伊勢神宮参拝は少なくなっているようです。
日時:2008年1月16日

お伊勢参りの歴史、首相参拝の歴史がよく分かり興味深い内容でした。靖国参拝には批判的なマスコミも伊勢神宮参拝にはビットを立てないのも微笑ましい?限りです。今はどうなっているか分かりませんが、昭和40年代の大阪市立の小学校の修学旅行は等しく一泊二日の伊勢、賢島で、勿論、伊勢神宮参拝が含まれていました。日時:2008年1月15日


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