斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」vol.9
発行日時: 2007/12/18----------------------------------------------------------------------
斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」vol.9
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第9回「万世一系と易姓革命」─世界最古にして最先端の政治システム─
▼中国の律令制との違い
お隣の中国では、国を揺るがす政治闘争が権力中枢で日常的に繰り返されているようです。今秋の第17回党大会直前にも政権内の熾烈な闘争が伝えられました。
一方、日本では、政界、官界、財界の腐敗が伝えられない日はないというのに、社会は安定しています。中国は古代から現代まで幾多の政変を経験し、君主制それ自体が失われましたが、日本は天皇という制度が古代から一貫して続いています。
何が異なるのでしょう。1つのヒントを与えてくれるのは、たとえば、哲学者・上山春平氏の文明史的研究です。
上山氏は日本の君主制の歴史を、
1、成文法のない時代
2、律令(りつりょう)的君主制の時代
3、憲法的君主制の時代
の3つに区分しています。日本の律令制は大化の改新後に導入され、8世紀初頭から明治維新まで1200年間続きました。けれどもその君主観は唐とは根本的に異なる、と上山氏は指摘します。
▼「革命」思想を受け入れなかった
中国の律令体制を支えた国家哲学は儒教であり、その中心思想は「革命(天帝の命令を革[あらた]める)」の哲学です。君主はあくまで人間で、超越者である天上の人格神「上帝」の命令によって天下を統治します。殷(いん)・周をはじめ、古代王朝の交替は神の命令として正当化されました。
これに対して、日本の天皇は天上の神=天照大神の血統を受け継いだ子孫であり、大神が地上に現れた姿と信じられました。「日本」「天皇」を古代、はじめて制度的に確定した「大宝律令」の「公式令(くじきりょう)」は、「明神(あらみかみ)と御宇(あめのしたし)らす日本(ひのもと)の天皇(すべら)」と規定しています。ここにはクーデターや反乱を正当化する中国流の易姓(えきせい)革命の余地はありません。
こうした日本の律令的君主制の由来を説くのが、中国最初の正史「史記」には見当たらない、神々の系譜を描いた、古事記・日本書紀の神代巻のテーマなのだ、と上山氏は理解します。
権力のあり方も異なります。中国では統治の権威は天上の神に由来し、権力は皇帝が掌握しました。しかし日本では権威は天照大神の顕現者としての天皇に由来し、権力は天皇から官僚機構の頂点にある「太政官(だじょうかん)」に委任されたのです。現代風にいえば、権力の制限といえるのでしょう。
太政官の制度は、祭祀などをつかさどる神祇官(じんぎかん)とともに、日本独自の制度として創設されました。唐の官僚制度は「三省六部」ですが、日本は「二官八省」が採用されました。その背景には国家理念の違いがある、と上山氏は指摘します。
日本は律令制を導入したものの、中国流の「革命」思想を受け入れなかったのです。といって、神権天皇制の絶対化というような意味合いとは違うようです。
▼君主制と民主制の混合体制
戦後唯一の神道思想家といわれる葦津珍彦(あしづ・うずひこ)氏によると、日本では北畠親房(きたばたけ・ちかふさ)の『神皇正統記(じんのうしょうとうき)』以来、暴君を追放する放伐の意義が認められてきたのでした。万一、仁政が行われ難きときには、皇位継承は他に移る。ただし、その場合、皇統の系列に属する傍系の仁者に移行し、皇統以外の異姓に逸脱することはあり得ない、とされたのです。
さらに親房は、皇室が仁政を布く資格能力に欠ける場合は、皇室の統治権を存続させつつ、天皇の名で新たな統治権の行使者を承認する可能性もあると考えたようです。
摂関政治の始まり、武家政権の確立、建武の中興、封建制の確立など、数々の政治的変革を経験してきたにもかかわらず、天皇の制度は世界に例を見ないほど長期的に、一貫して続いています。
上山氏は指摘します。プラトンは君主制と民主制とを兼備していなければ善い国家とはいえないとし、アリストテレスは多くの国制が混合された国制ほど優れていると書いた、と。奇しくも天皇という日本の制度はその望ましい混合体制を、古来、実現してきた。もっとも古典的であると同時に、最先端のシステムといえるかも知れません。独裁的権力国家が興亡する中国とは根本的に異なります。
参考文献=上山春平『上山春平著作集4 天皇制のデザイン』(宝蔵館、1994年)、『同5 神と国家』(同)、『同6日本の深層文化』(同、1995年)、「同10日本文明史序説』(同)、葦津珍彦『天皇─日本のいのち』(日本教文社、昭和46年)、同『みやびと覇権』(日本教文社、昭和55年)、同『日本の君主制』(葦津事務所、平成17年)など
((((((((読者の声)))))))))))
◇伊勢の浜荻様から。
第8号の、「知られざる『さば』の行事──明治時代まで1000年以上続いた天皇の祈り」には、祭祀の長い伝統について、あらためて記憶を思い出す機会となりました。
確か、『枕草紙』にも散飯のことについて記されていますよね。筆者は鳥がやってきていささかやかましい様子を評していたと思います。滋賀県犬上郡の多賀大社でも御本殿の西(?)に、鳥に日供を提供する小さな台のようなものがあったと思います。
伊勢の神宮では、外宮の御饌殿においてサバの行事が行われいたことは中世の儀式次第書などから伺われますが、確かに、これを日本古来からの行為伝承と捉えるか、仏教儀礼の移入ととらえるかは、多少とも立場により異なります。
このサバの行事は、神宮の祭祀研究において「外宮先祭」論にも影響を与えています。すなわち、三節祭の由貴大御饌は、外宮・内宮の順ですね。これは、遷宮(神嘗祭と同日であった頃)も同じく外宮先祭となります(実施年は内宮・外宮の順)。
この問題を外宮=サバの神という視点から説かれると、古来の神事作法の意味が浮かび上がってきます。今手元に書物がありませんので、誤解があってはいけませんが、故・星野輝興掌典はこの説ではなかったでしょうか? 真弓常忠氏の『祭祀概論』(?)でしかたも、この説に沿っていたかと思います。
私は、外宮先祭については、このサバ説はあまり興味がなく、もっと御饌殿については外宮・内宮の両宮成立にかかわる根本的な「祭祀上」の興味深い課題があるように思いますが、こんかい「サバ」についての一文を拝見して、このような感想を持ちました。
がんばってください。
((((((((「天皇・皇室の一週間」)))))))))))
12月6日(木曜日)
□皇太子殿下は都内で開かれた「障害者週間の集い」に出席され、お言葉を述べられました(読売新聞)。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071206ic21.htm
殿下のお言葉は宮内庁のホームページに掲載されています。
http://www.kunaicho.go.jp/koutaishi/okotobah19-01.html#shogaisyasyukan
12月5日(水曜日)
□天皇皇后両陛下は、来日中のタジキスタン大統領と皇居で会見されました(日経ネット)。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20071205AT1G0501H05122007.html
12月4日(火曜日)
□天皇皇后両陛下は栃木の自治医大を訪問され、学生らと懇談されました。陛下のご希望によるご訪問と伝えられます(中日新聞)。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007120401000492.html
12月3日(月曜日)
□皇太子殿下は別府市で開かれた第1回アジア・太平洋水サミットの開会式に出席され、記念講演をされました(西日本新聞、日経ネット)。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/science/20071203/
20071203_001.shtml
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20071203AT1G0303103122007.html
朝日新聞が講演の全文を掲載しています。
http://www.asahi.com/special/070110/TKY200712030341.html
水サミットの概要は外務省のホームページに載っています。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/watersummit1/gaiyo.html
12月2日(日曜日)
□皇太子殿下は、学習院OB管弦楽団の定期演奏会に参加され、ビオラを演奏されました(MNS産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/071202/imp0712021634000-n1.htm
12月1日(土曜日)
□天皇皇后両陛下は、小島章司氏の舞踏生活50年を記念したフラメンコ公演にお出ましになりました(中日新聞)。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007120101000593.html
□秋篠宮さまが2007年7月に茨城で開かれる国際生物学オリンピックの名誉総裁に就任されたことを宮内庁が発表しました(時事ドットコム)。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007120100009
□愛子さまが6歳になられました(朝日新聞)。
http://www.asahi.com/national/update/1201/TKY200711300364.html
愛子さまのご近影が宮内庁のホームページに掲載されています。
http://www.kunaicho.go.jp/03/d03-03ph-03.html
11月30日(金曜日)
□12月23日、天皇誕生日の一般参賀の要綱が発表されました(時事通信)。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007113000058
くわしい要綱は宮内庁のホームページに掲載されています。
http://www.kunaicho.go.jp/17/d17-01.html
□天皇皇后両陛下が東京・国立新美術館にお出ましになり、「フェルメール展」を鑑賞されました(朝日新聞)。
http://www.asahi.com/national/update/1130/TKY200711300125.html
□秋篠宮さまが42歳の誕生日をお迎えになりました。それに先立って、妃殿下とともに記者会見に臨まれ、陛下のご公務の負担を減らす必要がある、とお話
しになりました(朝日新聞)。
http://www.asahi.com/national/update/1129/TKY200711290371.html
記者会見の内容は宮内庁のホームページに掲載されています。
http://www.kunaicho.go.jp/akishino/akishino-kaiken-h19.html
11月29日(木曜日)
□天皇、皇后両陛下が東京・豊島岡墓地を訪れ、5年前に亡くなった高円宮さまの墓前で拝礼されました(MNS産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/071129/imp0711291052000-n1.htm
記事には、21日には高円宮さまの5年式年祭の「墓所祭」が同所で開かれ、皇太子さまをはじめとする皇族方が参列したが、両陛下は皇室の慣例に従われ、それぞれの使者が参列していた、とあります。
天皇はたとえ親であれ、肉親の葬儀などに参列することはありません。ひたすら国と民のために祈る、絶対無私のお立場に基づくものと思われます。
半世紀前、その慣例が破られたことがありました。占領中の昭和26年5月に亡くなられた貞明皇后のご大喪では、昭和天皇がみずから葬列に加わられました。葬場殿の儀が昼に行われたのもこのときが最初かと思われます。
□秋篠宮妃殿下が都内で開かれたセーブ・ザ・チルドレンのチャリティーにお出ましになりました(共同通信PRワイヤー)。
http://prw.kyodonews.jp/open/nfrelease.do?r=200711293473
11月28日(水曜日)
□秋篠宮殿下は京都で開かれたアジア学術振興機関長会議に出席され、お言葉を述べられました(京都新聞)。
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?
mid=P2007112800091&genre=G1&area=K10
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筆者のプロフィール
斎藤吉久(さいとう・よしひさ) 昭和31(1956)年、福島県生まれ。弘前大学、学習院大学を卒業後、総合情報誌編集記者などを経て、現在はフリー。オフィス斎藤吉久を主宰。得意分野は、天皇・皇室、宗教、歴史、食文化など。雑誌「正論」平成19年9月号に「靖国問題を問い直す9つの視点」、同10月号に「昭和天皇の『不快感』は本当か」を執筆、同11月号では「信仰を忘れた聖職者たち」を木下量煕氏と共同執筆。最近の雑誌発表記事などは「斎藤吉久Webサイト」のアーカイヴズで読めます。
http://web.mac.com/saito_sy/
「斎藤吉久メールマガジン」をmelma!より発信中。
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メルマガは「斎藤吉久のイザ! ブログ」でも読めます。
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