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斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」vol.6

発行日時: 2007/11/20

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斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」vol.6
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第6回「米と粟(あわ)の祭り」−多様なる国民を統合する新嘗祭−


▼見落とされている粟(あわ)の存在

 毎年11月23日の夜に宮中で行なわれる新嘗祭(にいなめさい)、あるいは天皇が天皇となって初めて行なう大嘗祭(だいじょうさい)という神事で、天皇がみずから神々にささげ、そのあとご自身で召し上がるのは、一般には米の新穀といわれています。しかし、じつはそうではなく、米と粟(あわ)の二種類の穀物の新穀であり、米だけではありません。

 にもかかわらず、大嘗祭も新嘗祭も一般には「稲の祭り」といわれ、大嘗祭に用いる米を納めるために選ばれる農家は「大田主(おおたぬし)」と呼ばれ、重んじられるのに、粟を納める農家は「大田主」とは呼ばれません。実際の神事において、どちらが重要というわけではないようですが、粟の存在はしばしば見落とされています。

 研究者も稲にばかり注目し、なぜ米といっしょに粟が捧げられるのか、ほとんど研究らしいものが見当たりませんが、奈良・平安のころ、民間には粟の新穀を神々に捧げる祭りが行なわれていたのは事実のようです。古い書物にそのような記録があるからです。


▼かつては粟の新嘗があった?

 各地方の情報を集めた書物を地誌といい、日本最初の地誌として奈良時代に元明天皇の命(めい)でまとめられた風土記(ふどき)が知られています。その中で現在の茨城県について伝えている「常陸国(ひたちのくに)風土記」に、母神が子供の神々を訪ね歩く筑波郡(つくばのこおり)の物語が載っていて、「新粟(わせ)の新嘗(にいなえ)」「新粟嘗(にいなえ)」という言葉が登場します。

 日が暮れたので富士山の神さまに宿を請うと、「新嘗のため、家中が物忌み(ものいみ)をしているので、ご勘弁ください」と断られたのに対し、筑波山の神さまは「今宵は新嘗だが、お断りもできまい」と大神を招き入れた、というのです。

 ここから、このころの新嘗祭は村をあげて心身をきよめ、女性や子供は屋内にこもって、神々との交流を待ち、ふだんならもてなす客人を家中に入れることさえはばかったことが分かります。

 それなら文中に出てくる「新粟の新嘗」「新粟嘗」とは何でしょう。たとえば「日本古典文学大系」では、この「粟」に「脱穀しない稲実」と注釈が加えられていますが、どう見ても疑問です。

 「粟」はあくまで「粟」であって、ある民間の研究者が解説するように「宮中祭祀としての新嘗祭は、民間の素朴な新嘗が母体になっていると考え、宮中新嘗祭における粟は、その残影として理解することは無理であろうか」という問いかけの方が素直な理解ではないでしょうか。


▼祭りの霊力で国民をまとめてきた天皇

 それでは、なぜ米と粟をささげるのでしょう。

 民俗学の第一人者、近畿大学の野本寛一教授は、筆者の取材にこう答えています。

 「天神地祇(てんじんちぎ、神々)に米と粟をささげる新嘗祭、大嘗祭の儀礼は、米の民である稲作民と粟の民である畑作民をひとつに統合する象徴的儀礼として理解できるのではないか」

 野本教授は『焼畑民俗文化論』で、水田稲作以前の民が粟や芋を栽培していたこと、この畑作文化は民俗学の先駆者である柳田国男が提唱した、東南アジア島嶼地域に連なる「海上の道」をたどって伝来したこと、を説明しています。

 天皇にとってもっとも重要な神事である新嘗祭、大嘗祭は、「稲の祭り」だけではなく、稲作儀礼と畑作儀礼という淵源の異なるふたつの儀礼の複合と理解されます。天皇は政治力でも、軍事力でもなくて、祭りを通じて、祭りの持つ霊的な力によって、文化的に多様な国と民をひとつにまとめることを務めとされてきた、ということが浮かび上がってきませんか。


 参考文献=『風土記』(日本古典文学大系2、岩波書店、昭和33年)、落合偉洲「新嘗祭と粟」(「神道及び神道史」国学院大学神道史会、昭和50年7月所収)、野本寛一『焼畑民俗文化論』(雄山閣出版、1984年)など


((((((((読者の声)))))))))))

◇北海道の永井承邦様から。

 斎藤先生のメルマガをいつも拝読し、勉強をさせていただいています。
 わが国の憂うべき諸問題を取り上げ、どう取り組むべきかを判り易く解説いただき、参考になります。
 先月から配信されております「誤解だらけの天皇・皇室」も、一般的にはあまり知られていない天皇陛下の日常から、そのお勤め、歴代天皇のことなど、非常に興味深く拝読しています。
 昨今の世情を顧みると、天皇陛下をはじめ、御皇室に対するマスコミの報道姿勢や教育現場での指導、皇室典範改正問題など、あまりにも無知で無責任な発言や指導がなされており、悲しさや情けなさを感じずにはいられません。
 国の安泰と国民の平安、そして五穀の豊穣、また世界平和を日々祈られている天皇陛下への感謝の念を日本国民はもっと抱くべきだと感じています。
 神話から始まる日本の歴史は、建国以来125代の天皇をいただき、2667年の長きに渡る悠久の歴史であり、世界に類を見ない、素晴らしく誇れるものと感じています。この誇りと伝統を合理主義的発想で失われることのないようにしたいものです。


◇「誤解だらけの天皇・皇室」へのご感想・ご質問を受け付け中。
saito_sy@mac.com


((((((((「天皇・皇室の一週間」)))))))))))

11月16日(金曜日)
□皇后さまが都内で開かれている「書に見る近現代日本女流展」にお出ましになりました(朝日新聞)。
http://www.asahi.com/national/update/1116/TKY200711160062.html

□愛子さまが学習院幼稚園の遠足で多摩動物園にお出かけになりました(朝日新聞)。
http://www.asahi.com/national/update/1116/TKY200711160073.html

11月15日(木曜日)
□天皇皇后両陛下は皇居・宮殿で中央アジア・キルギスのバキエフ大統領夫妻と会見されました(朝日新聞)。
http://www.asahi.com/national/update/1115/TKY200711150323.html

11月14日(水曜日)
□皇太子殿下は、静岡市で開かれた「ユニバーサル技能五輪国際大会」の開会式にご出席になりました。同大会は若者が職業技術の腕を競う「技能五輪国際大会」と、障害者の技能競技会「国際アビリンピック」を初めて同時開催しています(日経ネット)。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20071114AT1G1402814112007.html

 殿下のお言葉は宮内庁のホームページに掲載されています。
http://www.kunaicho.go.jp/koutaishi/okotobah19-01.html#2007universal

□秋篠宮同妃両殿下が国立民族学博物館の開館30周年記念式典にご出席になりました(朝日新聞)。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200711140036.html

11月13日(火曜日)
□天皇皇后両陛下が比叡山延暦寺を訪問されました(中日新聞)。
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20071114/CK2007111402064097.html

11月12日(月曜日)
□天皇・皇后両陛下は、甲賀市信楽町をご訪問後、平成3年5月の信楽高原鉄道の事故現場を通りかかったとき、車を徐行させ、犠牲者と遺族に哀悼の意を表されました(MNS産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/071112/imp0711121904001-n1.htm

11月11日(日曜日)
□天皇・皇后両陛下、大津市で開かれた全国豊かな海づくり大会の式典にご出席。外来魚の異常繁殖に言及されるお言葉を述べられました(朝日新聞)。
http://www.asahi.com/national/update/1111/TKY200711110049.html

 陛下のお言葉は宮内庁のHPに掲載されています。
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/okotoba-00.html

11月10日(土曜日)
□常陸宮ご夫妻、茨城県ひたちなか市で開催のねんりんピック開会式にご出席(中日新聞)。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007111001000218.html

□高円宮妃久子さま、第23回京都賞授賞式にご出席(烏丸経済新聞)。
http://karasuma.keizai.biz/headline/300/

11月9日(金曜日)
□秋篠宮ご夫妻、奈良国立博物館を訪問され、「正倉院展」を鑑賞されました(MNS産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/071109/imp0711092206000-n1.htm

11月8日(木曜日)
□皇后さま、昭和女子大学(東京)の人見記念講堂でヘルシンキ大学男声合唱団のコンサートをご鑑賞。コンサートでは皇后さまが翻訳された日本語の歌詞で「アンニの歌」が歌われました(朝日新聞)。
http://www.asahi.com/national/update/1108/TKY200711080450.html

□皇太子同妃両殿下は愛子内親王殿下をご同伴になり、静養のため、栃木県の御料牧場に入られました。数日間、ご滞在の予定(MNS産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/071108/imp0711081848000-n1.htm

□希少野生動物の繁殖計画などを協議する第15回種保存会議(日本動物園水族館協会主催)7日から静岡市内で開催され、日本動物園水族館協会総裁の秋篠宮さまが2日目の会議にご出席になりました(静岡新聞)。
http://www.shizushin.com/local_social/20071109000000000018.htm

□高円宮妃久子さま、鹿児島で開幕した「全国伝統的工芸展フェスタIN鹿児島」をご視察(南日本新聞)。
http://www.373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=7568

11月7日(水曜日)
□愛子さまが学習院初等科に正式に合格されました(MNS産経ニュース)。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/071110/imp0711101403001-n1.htm

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筆者のプロフィール
斎藤吉久(さいとう・よしひさ) 1956年、福島県生まれ。弘前大学、学習院大学を卒業後、総合情報誌編集記者などを経て、現在はフリー。オフィス斎藤吉久を主宰。得意分野は、天皇・皇室、宗教、歴史、食文化など。雑誌「正論」平成19年9月号に「靖国問題を問い直す9つの視点」、同10月号に「昭和天皇の『不快感』は本当か」を執筆、同11月号では「信仰を忘れた聖職者たち」を木下量煕氏と共同執筆。最近の雑誌発表記事などは「斎藤吉久Webサイト」のアーカイヴズで読めます。
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斎藤吉久>葦津様 ありがとうございます。ものごとを対立的に考えるのではなく、祈りによって統合していく。それが天皇のお務めなのだろうと考えています。日時:2007年11月24日

葦津泰國粟と新嘗祭に関する考察、フレッシュに感じました。私などがほとんど考えてみようともしなかったテーマであるだけに、今すぐにどうという感想は述べられないけれど、さすが斎藤さんだ、いろいろ見ているんだなあと感心させられます。日時:2007年11月24日

今回のお話も大変ためになりました。稲作民と畑作民ともに統合する・・・。実は私の町の農家の方も「大田主」に選ばれたんです。田植えと稲刈りの時には、知事さんがやってこられて、近隣住民みんなで作業を楽しんだようですよ。目出度い事です。日時:2007年11月21日

いつも貴重なお話を有難う御座います。今まで知らなかったり無関心だったことを教えて頂きまして感謝に堪えません。
それにしても朝日新聞の皇室に対する敬語使いの粗略さに怒りを禁じ得ません。
今後共のご活躍を祈り上げます。
日時:2007年11月20日


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