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黄土高原だより(NO.454)

発行日: 2008/3/11


緑の地球ネットワーク(GEN)が中国山西省大同市の農村で緑化協力をはじめて
16年目に入っています。その間のできごとや自分の思いを書きつづっています。
不定期の発行です。
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  黄土高原だより(NO.454)
     (2008.03.11)
            高見 邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長)

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 カウンターパート

前号で、祁学峰のことを書いたら、
多くのかたから、反響がありました。
こういう話題が、最近はすくなかったようです。
で、それに連なる話題を書きます。

1992年から、この協力事業をはじめ、
私が現地に通って、直接の担当者になりました。
でも、なかなか、状況をつかめません。
地元の人に話をきくと、
たいていは、いいことばかりなんですね。
「活着率は90%以上だ」というふうに。
で、現場にいってみると、せいぜいで20%くらい、といったぐあい。

悪意があって、ウソをいっているとは、思えないんですよ。
知らないのでも、なさそう。
実際のことは、すぐにわかって、悔しい思いをするだろうから、
いま、自分が相手をしてやっているあいだだけでも、
楽しい思いを、させてやろうじゃないか。
ひょっとすると、そのような親切心かもしれないな、と
私は考えましたよ。
それくらい、やさしい。

さらに悩まされたのは、なにかの計画を立てるとき、
「没問題!」(メイウェンティ!)という答えが、
即座に、返ってくることです。
ノープロブレム!
それで動き出すと、たちまち頓挫するわけですね。
つぎにいってみると、なにもすすんでいないで、
「ガオジェン! シアツー」なんていう。
「高見、つぎにだ!」というわけです。

会う人、会う人によって、話がちがうわけですね。
いったい、誰の話をきいたらいいのか、
最初のうちは、まったくわからない。
目にみえることなら、自分の目を信じます。
「信じるのは自分の目だけ」なんて、いっていました。
ついでにいうと、私は中国語が皆目だめなので、そのおかげで、
「ことばでだまされないですんだ」などと、
へんなジマンをしていたものです。
でも、目にみえないことも、たくさんあるわけですよ。
むしろ、そちらのほうが多いでしょう。

最初に、祁学峰にあったのは、1994年3月でした。
2人ではじめて、農村を回りました。
ピーンときたのです。
私が納得できる話を、してくれます。
たとえば、私が新しいプロジェクトを提案すると、
彼はけっして、即答はしません。
ずいぶん考えたうえで、これを実現するためには、
どの問題と、どの問題を解決する必要がある。
そのためには、これくらい時間がかかるから、
着手できるのは、いつだ、といったぐあいです。
自分のなかで、ちゃんとシミュレーションをしているわけですよ。

ここの社会を理解するための、座標軸が、やっと定まった、
という気がしました。
うれしかったですね。
青年団は、人事の異動が速いので、
なんとか、彼を、つなぎとめたかったのです。
それで、この事業を専門的に扱う組織を立ち上げてもらい、
その責任者になるよう、彼を、かき口説きました。

そうやって、できたのが、緑色地球網絡大同事務所です。
私たちの協力事業が、多少なりとも、成果をあげてきたことと、
事務所の成立を、切り離すことはできません。
発端は、いま述べたようなことです。

その後、私たちの活動は、中国でも注目されるようになり、
共青団中央の書記2人が、相次いで、
私たちのプロジェクトを訪れました。
そのあとで、知り合いの幹部が、私に話しました。
「高見さん、あなたは運がよかったのですよ。
祁学峰のような幹部は、全国を探しても、そうはいません」。
そうだろうと、私も思います。

国際協力の成否は、カウンターパートによって決まります。
中国の現場で、私たちにできることは、多くはないのです。
私としては、彼らが動きやすい条件をつくることを、
すべてに優先してきました。
中国側は、中国側で、私たちが日本で動きやすくなるよう、
私たちを、ほんとに尊重してくれたと思います。
まさに、車の両輪の関係です。

1997年夏のことです。
祁学峰と私と、太原のホテルの一室ですごしました。
白酒をチビリチビリやりながら、いろいろ話しました。
こんな飲み方を、中国人はふつうしませんが、
彼は、私につきあってくれたのです。
私は、私がなぜ、中国の環境問題に取り組むことになったか、
思想遍歴を含めて、かなりくわしく話しました。
ふしぎなのですが、そのとき、通訳はいませんでした。
祁学峰は、日本語はまったくわかりませんので、
私が、知っている中国語の単語を、たどたどしく、ならべただけです。
でも、ほんとに通じたんですね。
この一晩で、私たちは深いところで、理解しあったと思います。
祁学峰は、「霊感のせいだ」といっています。
うん、たしかに、スピリッツの力です。

祁学峰は、その後、共青団を卒業して、
大同市南郊区の副書記に就任しました。
親しくしていた、共産党大同市委員会の副書記が、
わざわざ私のところまできてくれて、
「あなたの気持ちはよく理解できるけれども、
今回は、祁学峰にとって、最後のチャンスだから、
どうか、気持ちよく、送り出してください」と話しました。
それより前に、祁学峰を引き止めるために、
私が、けんめいに動いたことが、あったからです。

何年か前、祁学峰は、城区の区長に昇進しました。
激務のようです。
祁学峰と私とで手がけたプロジェクトのなかに、
その後、成果をあげてきたものがあります。
私が「あんたが父親のようなものなんだから、
絶対に、みにいくべきだ」というと、
彼は、「つぎの機会にはかならず時間をとって、
あなたといっしょにいきます」というのですが、
こんどは彼が、「シアツー」(つぎにね)です。
とても、その時間がとれない。
年に数回、いっしょに飲むのが、せいいっぱい。
さびしいことです。

祁学峰は、大同事務所に、後継者を残しました。
2代目の所長の武春珍は、実務面でいえば、
祁学峰より、いいしごとをしているのかもしれません。
成果がみえるようになったのは、
彼女が担当するようになってからです。
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『ぼくらの村にアンズが実った
           〜中国植林プロジェクトの10年』
 高見邦雄著・日本経済新聞社・四六判280頁・1600円+税
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◆税制上の優遇措置をうける認定NPO法人です◆
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 認定特定非営利活動法人 緑の地球ネットワーク(GEN)
 552-0012 大阪市港区市岡1-4-24 住宅情報ビル5F
 TEL.06-6576-6181 FAX.06-6576-6182
 E-mail  gentree@s4.dion.ne.jp
 URL  http://homepage3.nifty.com/gentree/
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