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黄土高原だより (NO.453)
発行日: 2008/3/4
中国山西省大同市の黄土高原の農村での緑化協力活動のなかでの体験を
書きつづっています。不定期の発行です。
バックナンバーは緑の地球ネットワークのウエブページとブログにあります。
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黄土高原だより(NO.453)
(2008.03.04)
高見 邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長)
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決断について
共青団大同市委員会の副書記で、
初代の緑色地球網絡大同事務所長だった祁学峰とは、
4年あまり、兄弟のようにして、活動しました。
私の大同滞在は、年に100〜120日はありましたが、
そのあいだ、ほとんど24時間、いっしょにいたのです。
農村部では、いちばん条件のいい宿泊施設が、県の招待所。
それでも、お湯は短時間しかでませんし、
夜間は、水もストップしました。
そのほかに、農家にも泊まりましたし、
郷政府などに泊まることも、多かったのです。
その間、よく議論をしましたし、
口論になることも、少なくなかったのです。
現場で、それを長くつづけていると、考え方まで、似てきます。
王萍がまん中で、通訳するんですけど、
2人がなにかを同時に話したときに、
「2人とも、同じことを言っています」といって、すませますので、
「ああ、この通訳はラクでいいな」といって、笑ったものです。
彼らの奮闘があって、私たちの協力事業は、
中国国内でも、しだいに評価されるようになりました。
日中緑化交流基金(いわゆる小渕基金)ができて、
緑化協力のプロジェクトが急増しました。
どうやったらいいか、中国側でも、手さぐりだったので、
大同のプロジェクトは、ひっぱりだこになりました。
あちこちの中国側の会議で、祁学峰が経験を発表したのです。
日本人と、どのようにつきあうのがいいか、
彼は、つぎの4点にまとめたといいます。
1)誠実につきあう。
双方の関係は平等であるべきだし、
自分の本当の気持ちでつき合わないといけない。
形式的なつきあいをしているだけでは、
いつまでたっても相互の理解が進まない。
誠実につきあうことは協力関係全体の基礎である。
2)バランスをとる。
協力する双方は車の両輪の関係である。
置かれている立場がちがうのだから、
当然、自分の主張はすべきである。
場合によっては激突、ケンカも必要になる。
しかし最後には、相手の立場をも理解しあい、
バランスをとる必要がある。
いい関係をつくるカギはバランスにある。
3)まじめに仕事をする。
仕事はまじめにしないといけない。
馬馬虎虎(マーマーフーフー・いいかげん)ではいけない。
これは態度の問題である。
4)苦労を厭わない。
苦労を厭わず、農村の現場に行く必要がある。
事務所の机の上、紙の上だけで仕事をしてはいけない。
これは精神の問題である。
この4つを実現できたら、合作(協力)は成功できると思う。
この発言は、私とのつきあいを意識していると思うんですけど、
まったくそのとおりだったと、私も思います。
背景も、文化もちがいますから、
日本でのように、阿吽の呼吸とか、以心伝心なんてことは
通じっこないのです。
とにかく、自分の意見を主張し、
少なくとも、何を考えているか、
理解してもらうことがたいせつなんですね。
その祁学峰が、あるとき、私のことを、
「決断するのが、驚くほど早く、
また、決めたことに、責任をもつ」と、ほめました。
私とつきあって、それがいちばんよかった、というのです。
後段は、そのとおりだと、自分でも思います。
口にしたこと、決めたことを、実現するために、
綱渡りをつづけてきました。
しかし、前半は、そうではないはずです。
私は、なにか目標を決めて、そのために努力するとか、
そういうタイプではありません。
はっきりいって、優柔不断です。
明日できることは、きょうはするな、というタイプ。
祁学峰のことばを契機に、考え直してみると、
なるほど、私は、日本では優柔不断にしているのに、
大同では、かなり早く、決断することが多いようです。
自分のことながら、その理由が、
長いあいだ、疑問のままだったんですけど、
最近、あることばを契機に、そのナゾが解けました。
やっぱり、風土に関係があるのでしょうね。
日本は恵まれすぎていて、決断しにくいんですよ。
なにかを決めるのは、ほかの可能性を捨てることなのに、
あれもほしい、これもほしい。
たとえば、なにかを実現するには、当然、リスクをともないます。
なにかの巨大技術を立ち上げれば、
事故の危険を背負わざるをえないわけです。
周囲の住民などは、経済的利益をうるかわりに、
危険を覚悟する必要がある。
建設するがわは、本来なら、そのことをきちんと説明して、
了解を求めないといけないのに、
「絶対に安全です」などといってしまう。
具体的な現場では、私は住民の立場に立つんでしょうけど、
考え方としては、「どっちもどっち」と思いますよ。
大同では、自然環境も、社会的な環境も、
日本では考えられないくらい、きびしかったですからね。
なにか1つでもえられたら、それで御の字なんですよ。
その他のことは、一瞬にしてあきらめるわけです。
それどころじゃない。
ある意味では、協力事業じたい、
いつやめることになっても、それはしかたがないと、
最初から、覚悟を決めていました。
いつも辞表を懐にいれているようなものです。
その覚悟がないと、振り回されちゃいますからね。
こんなことを考える契機になったのは、
『日中戦争見聞記−1939年のアジア』
(コリン・ロス著、講談社学術文庫、2003年)の一節です。
「日本人は他にいろいろのすぐれた特性をもっているが、
一つだけ大きな欠点がある。
日本人は何事も決定できず常にすべてを
しかも同時に望んでいるということだ。」
なんということでしょう。
みながサラリーマン化した最近の現象かと思ったら、
昔から、そうだったというんですね。
根が深い。
それにつづけて、こうあります。
「このことは経済面と同様、政治面、軍事面でもあてはまる。
私の見解によれば、こうした欠点があるがために、
終局的に成果をあげつつ日中戦争を終わらせることに
これまで失敗してきた。」
最近おこる事件や問題、まったく同じ構造があるようです。
このような通信が長くつづけはつづくほど、自戒しないといけないのは、
へたな時事評論に流れることだそうですから、
これから先は、やめておきます。
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